208: 名無しさん (ワッチョイ ad88-2c1b) :2019/06/19(水) 04:44:21 ID:ulRnjgQU00
「これで小さいアライさんたちも一人前なのだ!」
小さな山の麓、遥か遠くに街を望む一本道で母親のアライさんが3匹の若いアライさんの旅立ちを見送っている。
「アライさんの大事な大事な小さいアライさんたちはこれからヒトの住むところに冒険するのだ!それで美味しいものやあったかモフモフなものをたっくさん持ち帰るのだぁ!!」
「たのしみなのだ!!」「がんばるのだ!!」「おみやげもってくるのだ!!」
3匹の若いアライさんはワクワクした気持ちを抑えられず声を上げる。
そして3匹は声を合わせ「アライさんにおまかせなのだー!!」とまるで勝どきを上げる様に叫んだ。
そして母親である大きなアライさんに背を向けると人里に向かい歩いていく。
「気を付けるのだー!!!」
大きなアライさんは感動の旅立ちを盛り上げる様に旅立つ我が子に声援を送る。
感動の別れを演出しては見たものの、車なら1時間半程の道のりも、ようやく3~4歳児程度の背丈があるかどうかの小さなアライさん達では目指す街までは三日は掛かるだろう。
成長しても10歳児程の大きさにしかならないアライさんだがそれと比べても遥か遠くの人間の街へ冒険させるのは無謀であろう。
事実、既に母親と別れで30分以上経っているのに小さいアライさん達の姿はまだ声の届きそうな距離にいる。
「小さいアライさん達は全然遠くに行かないのだ、とんだウスノロどもなのだ・・・寒くなるまでにご飯やあったかフワフワが必要なのだ、不安なのだー」
大きなアライさんは今頃になって無謀な旅立ちを不安に感じている様だ。
そうこうしているうちに3匹を遮る様に右手の木立から人間が表れた。
人間は背の高い女性で野球のユニフォームに身を包み右手には金属バットを携えている。
「おっ、ゴミパンダの子じゃーん、どこ行くのー?」
女は3匹のアライさんに声をかけた。
「なんなのだ?アライさんはしらないやつとははなさないのだ」
「おまえ、いいヒトさんなのだ?わるいヒトさんなのだ?」
「なんかたべるものもってないのだ?」
3匹はてんでバラバラに返事をする。
「じゃあアタシは良い人か、悪い人か、どーっちだ」
女はそう言うとポケットから飴玉を取り出し包み紙をほどくと食べ物を欲しがったアライさんに飴玉を渡す。透明のカンロ飴だった。
「アライさんにこのキラキラくれるのかー、キラキラたべるものなのだ?」
「そうだよー、とっても甘くておいしいよー、食べてみ?」
女はそういうとポケットからもう一つ飴玉を取り出して口に放り込み美味そうに口の中で転がすと飴玉を貰った小さなアライさんも女に倣って飴をなめ始める。
「んまい!んまいのだあぁぁ!はじめてたべたのだー、キラキラあまあまおいちーのだぁぁあ!」
アライさんは感動で大きな声を上げる。
「おまえいいヒトさんなのだ!アライさんにもキラキラのあまあまよこすのだ!」
「ほいよ!アタシは良い人だからねー」
女はもう1匹のアライさんに飴玉を渡しながら無視を決め込んでいた最後のアライさんに目を向けると「あんたは?」という顔をする。
「ア、アライさんにもキラキラあまあまよこすのだ・・・」
最後のアライさんはおずおずと手を出す。
女は「そうそう、素直が一番だよー」といいながら飴玉を渡す。
「で、ゴミパンダ達は何してんのー?」女の問いかけにアライさんの1匹がはっとした表情をして自分達に言い聞かせる様に答える。
「アライさんたちはー、ヒトのすんでるところにいっておいしいものやあったかモフモフをさがすのだ!!」
ぐっと手を握り高らかに宣言する。
「で、さっきからいってるゴミパンダってなんなのだ?」
「あれ、知らないの?人間の間じゃあんた達のことはかっこよくゴミパンダって呼んでんのよ?ね、ゴミパンダって良くない?」
そう言われたアライさん達は口々に「ゴミパンダ、かっこいいのだぁ!」「アライさんはゴミパンダさんなのだ?」「きょうからゴミパンダさんって呼ぶのだぁ!」と明らかに馬鹿にされているのも気付かずに“ゴミパンダ”を名乗っている。
再確認したばかりだというのにあっという間に冒険のことは忘れている様だ。
「おまえのもってるピカピカのぼうはなんなのだ?」別のアライさんが尋ねる。
「あれー、ゴミパンダは知らないのー?これでカコーンとやると空が飛べんのよ、鳥みたいにピューっとね!」
「それは・・・ほんとうなのだ?」アライさんが目をキラキラさせて身をのり出す。
「ほんとほんと、ゴミパンダも飛んでみる?」女が尋ねると3匹のアライさんは一斉に
「とびたいのだー!!!」と手を上げる。
「えー、みんな飛びたいの?結構大変なんだけど、飛ばすの」
「ゴミパンダさんがとぶのだー!」「そらをとんでくろいとりさんみなごろしにするのだ!」「ゴミパンダさんがいちばんゆうしゅうでてきにんなのだー!」
3匹は我先にと女に纏わりつく。
「仕方ないなー、今回だけだよ?じゃあそこに並んで並んでー!」
女はアライさんを山側に向かって一列に並ばせると金属バットを振りかぶる。
209: 名無しさん (ワッチョイ ad88-2c1b) :2019/06/19(水) 04:45:11 ID:ulRnjgQU00
「小さいアライさんたちは何してるのだ?」
我が子の旅立ちを見守っていたアライさんは立ち止まったまま一向に進まない3匹の娘達に苛立ちを隠せないでいた。
「あのバカ達にちょっと言ってやるのだ!」アライさんは娘達のほうへ向かってのたのたと歩き出した。
「じゃあ順番にいくよー、葬らん!!!」
歩いてくるアライさんに向かって金属バットをフルスイングする。
右端のアライさんの後頭部をすくい上げる様に「ゴキン!」と力いっぱいブッ叩く!
アライさんの後頭部はぱっくりと割れ、飛んでいく頭に引きずられる様に宙を舞う。
こちらへ歩いてくるアライさんの頭上を越えて顔面から道路に擦られる様に落ちる。
娘が顔面から落ちたグシャっという音に大きなアライさんは振り返る。
「な、なんなのだ!」そこには後頭部からどくどくと血を流す娘がこと切れていた。
女は残る2匹のアライさんに目をやり「どんなもんよ!」と声をかける。
「すごいのだ!ゴミパンダさんもはやくとびたいのだ!」「おおおー、とりさんもびっくりのスピードなのだ!」と空を飛ぶワクワクを抑えきれない様だ。
「ほんじゃどんどん行くぜー、葬らん!!!」
女は残る2匹も立て続けに大きなアライさんに向かって打ち込む!
「しっかりするのだ!目を覚ますのだ!」
大きいアライさんはこと切れたアライさんを必死に揺さぶるが返事はない。
そのアライさんに向かってさらに2匹の娘が飛び込んで来る。
アライさんの横をかすめる様に飛んで来た小さいアライさんはベシャっと頭から落ちる。
「だからなんなのだー!」大きいアライさんが音のした方向を覗き込もうとした瞬間にその後頭部へ最後の娘が突き刺さる様に飛んでくる。
ゴキンっとひと際大きな音が響いた!
「のごおっ!のだっ、いだいのだあぁぁあ、アライざんのぎぎなのだあぁぁあ!!!」
後頭部に激痛を感じ大きなアライさんは頭をコスコスと擦りながらのたうち回る。
暫くしてようやく痛みが引いたアライさんが目を上げるユニホームを着た女が血まみれの金属バットを手に覗き込んでいた。
「ゴミパンダ、大丈夫?」女は心配そうに声をかける。
大きいアライさんは後頭部をさすりながらこちらを向く。
「い、いったい何が起こったのだ?どうして小さいアライさん達が動かなくなったのだ?」
「いやー、みんな空―を飛びたいって言うからさー、ちょいと手伝ったんだよー」
女はへらへらと笑いながら答えた。
「アタシ言ったんだよ、空飛ぶのは危ないってさ。でもあの子達がどうしてもって言うから」
アライさんがむぅーっと怒りを露わにする。
「おまえがやったのか、ひどいのだ、責任を取るのだ!」アライさんが詰め寄る。
「えー、ゴミパンダはアタシにどうしろっていう訳?」
「ゴミパンダって何なのだ?ちゃんと話を聞くのだ!」
女はあれっという顔をする。
「なになに?あんたも知らないの、人間はあんた達のことを尊敬の念を込めて“ゴミパンダ”って呼ぶのよー?」
「そうなのだ?そんなことよりゴミパンダさんの小さいアライさんを動かなくした責任を取るのだ!寒くなる前にあいつらがごはんもあったかフワフワも取ってくるはずだったのだ!」
大きいアライさんに詰め寄られた女は困った様に
「うーん、じゃあさ、ゴミパンダの家族は何匹いる訳?」と尋ねると、大きなアライさんは
「たくさんなのだ!1、2、3、たくさんなのだー」とムカつくピカピカ顔で答える。
「ゴミパンダとゴミパンダの子供が3匹、さらに何匹かいるのね?」
「そうなのだ!大家族なのだ!ゴミパンダさんは一家の大黒柱なのだー!」てへへっと笑うアライさんが自慢げでさらに不快感を煽る。
「しょうがないなー、じゃあ今持ってる食べ物分けてあげるから家族のとこに案内してよ」
「任せるのだ!で、何持ってるのだ?全部ゴミパンダさんによこすのだ!罪を償うのだ!」
「はいはい」言いながら歩き出したアライさんの後に続く。
210: 名無しさん (ワッチョイ ad88-2c1b) :2019/06/19(水) 04:46:34 ID:ulRnjgQU00
道を逸れ森の中に入るとよく使っているであろう獣道に出た。
アライさんについて15分ほど歩くとトタン屋根がさび付いた小さな物置小屋があった。
「ここがゴミパンダんちかぁー、良い家だねー」
そういうとアライさんはピカピカ顔でふふんと鼻を鳴らす。
「今ゴミパンダさんのかーいいかーいいちびアライさんを見せてやるのだー!みんなー、出てくるのだぁー!」
「のあー」「のりゃー」「なのりゃー」「ぴゅるるるぅー」わらわらと膝下にも届かない様なアライちゃんが6匹と一抱えもある様な大きなアライグマが物置の隙間から這い出して来た。
「キモっ!」女は一瞬顔をしかめる。
「なんか言ったのだ?」アライさんが怪訝そうに女を見上げる。
「いやー、みんなかわいいなってw」女はへらへらと答える。
「にしても、アライグマもいるのねー」
「このこなのだ?このこはピュルルさんなのだ!ぴゅるるーって鳴くからピュルルさんなのだぁ!毎晩きもちーパコパコしてくれて最高の彼氏なのだ!」
「それからちびゴミパンダさんたちもゴミパンダさんに似てみんな可愛いのだー!」
アライグマを愛おしそうに抱き上げ女に向かって見せびらかしながら、娘たちを褒めながら結局は図々しくも自分を可愛いと自慢気に話す姿がムカつく。
女はうんざりとしアライちゃんに向かってしゃがみ込んだ。
「みんな可愛いねー、アタシのことはミナって呼んでいいよー」
そういって挨拶をした。
「それじゃ、かわいいみんなにはお菓子を上げちゃおうかな?」
ガサゴソと腰のポーチからお菓子の袋を探る。
「いやいや、ゴミパンダさんに一旦全部よこすのだ!」遮る様にアライさんがミナに両手を差し出す。
「えー、大人げないなぁ!じゃあさ、アタシとゴミパンダでゲームしよう!」
ミナはアライさんをじらす様に提案する。
「これからあそこの繁みに飴玉を5つ投げるから全部探せたらアタシの持ってるお菓子全部あげるね」
「めんどくさいのだ、すぐに渡すのだ」
「ダメダメ、お菓子は結構あるから頑張ってよ」そう言ってチョコレートやビスケット、スナック菓子などを大き目のポーチから取り出して見せる。
「お、おおおーすごいのだ!!ゴミパンダさんが飴玉全部見つけたらこれ全部ゴミパンダさんのものなのだ?」アライさんは早くも前のめりでゲームに対する不満も吹き飛んだ様だった。
「いいねー、じゃあ先に一個飴玉をあげるから、しっかり見て、これとおんなじのを5つ探してねー」と包みを剥いた飴玉を一つ、アライさんに手渡す。
「これが飴玉なのかー!ピカピカしててきれーなのだ!それにとってもあまーいにおいがするのだぁ!これは食べていいのだ?」
「いいよー、しっかり味わって匂いを覚えてねー」
ミナがそう言い終わる前にアライさんは飴玉を口に放り込みぺちゃぺちゃと不快な音を立てて舐め始めたるとツリ目を細めながら嬉しそうにしている。
よほど飴玉が気に入った様だ。
「ぺちゃぺちゃ、はやくぺちゃ、飴玉ぺちゃぺちゃ、投げるのだぁー」
アライさんがゲームの開始を急かす。
「ゴミパンダが飴玉探してる間にこの子達と遊んでていい?」と女が尋ねると、
「好きにするのだ!早く!早く始めるのだ!!」そんなことどうでもいいといった風にそわそわしている。
「はいはい、じゃあ一つづつ投げるからどこに飛んで行くかよく見ててねー」
そういうとミナは一つづつ別々の方向に思いっきりの力で飴玉を投げていく。
「あっ、ひどいのだ!遠くに投げ過ぎなのだ!」
言い終わる前にアライさんは最初に投げた飴玉に向かってダッシュした。
211: 名無しさん (ワッチョイ ad88-2c1b) :2019/06/19(水) 04:47:47 ID:ulRnjgQU00
アライさんが繁みに消えたのを確認してミナはしゃがみ込むとアライちゃんへ声をかけた。
「ほら、おいでおいでー、美味しいのあるよー」
そう声をかけてキャラメルコーンの小袋を開けると匂いにつられてアライちゃんがわらわらと寄ってくる。
「あまあまのにおいがしゅるのらー」「おいちそーなのらー」「アライしゃんによこすのりゃー」「はやくたべたいのりゃー、いまたべたいのりゃー!」「アライしゃんがみつけたのらー、ぜんぶアライしゃんのものなのあー!」「はやくしゅるのりゃ、はやく、はやくすうのりゃぁー!」
6匹のアライちゃんは袋に向かってぴょんぴょんと飛び跳ねたりミナのズボンのすそを引っ張ったり我先にとミナに群がった。
「はいはい、いっぱいあるよー」袋からキャラメルコーンを掴むとアライちゃんの前で掌を広げて見せる。
「アライしゃんのりゃぁ!」「ぜんぶたべるのあー!」「もっとよこすのりゃー!」「アライしゃんがさきなのらー」「ぴゅるるー!おまえらはたべりゅなぁー!」「はぐっ、はぐっ、はぐっ、んまぁいのりゃあー!!!」
物の数分で最初の分は食べ尽し追加しているうちに中身は半分以下になった。
「ぷふぅー、んまんまなのりゃー」「もっと!もっとよこしゅのりゃぁ!」「おなかいっぱいなのりゃ、ミナはアライしゃんをなでていいのらー」「つぎはミナとあそぶのりゃ!たかいたかいするのりゃ!」「おまえりゃたべしゅぎなのら、アライしゃんはたべたりないのりゃ!」「ほかのでいいからもっとよこすのあー!」
ミナは面倒臭くなり袋の残りをアライちゃんの上へ振りまいた。
アライさんはまだ小さな飴玉を見つけるのに苦労をしている様だ。
「匂いはするのに全然見つからないのだー、ニンゲンはひどい奴なのだー!」
繁みからガサガサという音がうろうろと移動している。
アライちゃん達に目を移すとようやく全員が腹いっぱいになったのか、腹を見せてゴロゴロしたりと野性生物と思えない程に無防備でだらしない姿を見せている。
ミナは1匹を掴み上げると膝に載せ腹を撫でてやる。
「きもちいーのりゃぁ、もっとやらせてやるかりゃどんどんなでるのりゃぁ」
生まれたばかりのアライちゃんでも傲慢さは成獣と変わらない。
膝の上のアライちゃんを俯せにし、頭と身体を掴み素早く捻るとコキャっという首の折れる感触がしてピクリとも動かなくなった。
「あれー、気持ち良すぎて寝ちゃったか―」死んだアライちゃんを足元に降ろすと次を膝に乗せてやる。
「アライしゃんはけづくりょいにはうるしゃいのら、ていねいになでなでするのりゃぁ!」
このゴミを今すぐに磨り潰したいという思いを抑えてまずは背中を撫で警戒心を取り除く。
「うーん、きもちーのりゃーミナはけじゅくりょいのさいのーがあるのりゃー」
「そりゃどうも」そういうと1匹目と同じ様に手早くコキャっとやる。
動かなくなったアライちゃんを降ろすと次、また次と手早く静かにアライちゃんを縊り殺していく。
最後の一匹をコキャっとした後にアライグマに近づく。ずっとミナを遠巻きに眺め、好物であるはずのお菓子も足元に転がってきたいくつかを口にするだけだったがミナが寄ってくると踵を返す様に物置小屋に入っていく。
ミナはタオルを取り出すと口元を覆いマスクにすると小屋の中に入っていく。
小屋のすみで小さくなっているアライグマに声をかける。
「ピュルルさーん、ご飯ですよー」
今度はお菓子ではなく、毒を練り込んだ団子をポーチから取り出すとアライグマの鼻先にちらつかせるがそっぽを向いたままだ。
「仕方ない、これを使うか」ミナは小さな注射器を取り出すとアライグマの尻に打ち込んだ。
「ぴゅるるるぅっ!」威嚇の声を上げて飛びずさるアライグマだが注射器の中身は筋弛緩剤。次第に体が動かなくなり、声も出せずに5分と持たずに動かなくなった。
ミナはアライグマを死んだアライちゃん達の傍に運んだ。
そのあとは死んだアライちゃんたちとアライグマをさも眠っている様な体勢にしアライさんが飴玉を持ってくるのを待った。
「よ、ようやく全部見つけたのだぁ、はぁあー」
ミナの方へ両手の中の飴玉を5つ、誇らしげに見せつける。
「おー、時間かかってたから無理かと思ってたけどちゃんと全部見つけたねぇ」
大げさに表情を作ってアライさんを褒めてやる。
「ふふん、ゴミパンダさんは何をやらせても完璧な天才なのだ!偉大なのだ!讃えるのだ!」
「そっかー、ほいじゃ今持ってるお菓子と集めた飴玉はゴミパンダにあげるね」
アライさんはツリ目を細めハエの様に両手をコスコスし始める。
「やったのだぁ、美味しーものいっぱいなのだぁ!」
お菓子の袋を開けようと四苦八苦するも開けられず、歯と爪でびりびりと袋を引きちぎる。
「はぐっ、はぐっ、んまい、んまいのだ!くっちゃくっちゃ、あまぁーいのだあぁ!」
チョコレートを銀紙ごとくちゃくちゃと食べているアライさんに声をかける。
「ゴミパンダの子供とアライグマ、お腹いっぱいで寝ちゃったんだけど―?」
アライさんはチョコレートに夢中でミナの声に雑に返事をする。
「ゴミパンダさんはあまーいの食べるのに忙しいのだ!そいつらはおうちに放り込んでおくのだ!!」そういうとアライちゃん達の市外から目をそらし次のお菓子を開け始める。
「やれやれ、じゃあ小屋に寝かせておくからねー」そうみなが返事をするも、
「これはサクサクしてあまあまで美味しーのだ!こっちはぱりぱりでしょっぱくて美味しーのだ!ゴミパンダさんが勝ち取ったゴミパンダさんのごはんなのだ!誰にもやらないのだぁ!」と家族そっちのけでお菓子を貪る。
「じゃ、アタシ帰るからー、また来るねー」そう言うとミナはアライさんの住み家を後にした。口元には笑みが浮かんでいた。
アライさんはミナからせしめたお菓子を食い漁ると物置小屋に戻った。
「なんだーちびゴミパンダさんたちはまだ寝てるのかー、早く起きるのだー!」
返事は帰ってこない。
「早くご飯を探しに行くのだ!お前たちのすきすきな芋虫もザリガニもまってるのだぁ!」
物置小屋の誰も声を発さない。
「どおしたのだ、なんで無視するのだ!ゴミパンダさんを無視するなんて悪い子なのだ!」
小屋は静まり返ったままだ。
「ピュルルさーん、早く起きるのだ!いつものきもちーパコパコするのだぁ!」
子供達よりも大好きなピュルルさんを交尾を餌に起こそうとするも反応がない。
「みんなしっかりするのだぁー!!」
アライさんは1匹づつ家族を揺すり起こそうとするが誰も寝息すら立てていない。
「ゴ、ゴミパンダさんがお菓子を一人で食べたから怒ってるのかー?そんな小さいことで起こるのは頭悪いのだ!早くちゃんとお話しするのだー!無視はダメなのだー!」
もちろん返事はない。家族が一度に死んだ、アライさんの脳裏にうっすらとその考えが浮かぶが受け止められず、家族に何度も何度も呼びかけるだけだった。
「無視しないでほしーのだ・・・早く起きてほしーのだ・・・ゴミパンダさんを一人にしちゃダメなのだ・・・ううっ、へっ・・・へねっくー!へねっくー!早く、早くゴミパンダさんを・・・アライさんを助けてほしーのだぁぁー・・・へねっ、へねっ・・・うわああぁん!」
誰も返事をしない物置小屋でアライさんは一晩中フェネックを呼び続けました。
あった事もない、もう何処にもいないフェネックを・・・。
最終更新:2019年07月08日 00:27