けものフレンズ!こーる・おぶ・くとぅるふ

229: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:07:46 ID:jTV.hXn.00
どうしてこうなってしまったのだろう。

今僕達は遭難している。

キョウシュウエリアでの旅を終え、ゴコクエリアに向かうためにフレンズのみんなが材料を集め船を作ってくれた。

ここから先は僕とラッキーさんの2人だけの旅路になると思っていた。

けどサーバルちゃんやフェネックさんが僕のことが心配でこっそり後をつけてきていた。

また一緒に旅ができる事が何よりうれしかったのに。


不幸なことに、かばんは厄病神にも後をつけられていたのだった。

今回の騒動の原因となった張本人、アライさんである。

かばん達の遭難はアライさんが船の操縦がしてみたいと駄々をこねた事に始まる。

フェネックが止めようとするも暖簾に腕押し、仕方なく一時的にアライさんに操縦を任せることにした。

その結果アライさんは船を岩礁に衝突させてしまった。

船底に穴が開きこれ以上の航行は無理であった。

幸いにも近くに島があったので持ってきた大きなタライを舟にして島に上陸した。

荷物をある程度持ち出せことは唯一の救いだった。

こうして彼女達はどこかもわからない絶海の孤島で遭難してしまったのである。


230: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:12:53 ID:jTV.hXn.00
サ「かばんちゃん、これからどうすればいいかな?」

か「食料や水は持ち出せたから、当分は島で生活するしかないかな」

ラ「カバン コノアタリ ノ カイズ ヲ シラベタヨ。
キョリ ヲ カンガエルト キョウシュウチホウニ ヒキカエスコト ヲ オススメスルヨ」

フェ「島を出るには船を見つけるか、新しく作る必要があるねー。
もしかしたら、海や空のフレンズが私たちに気づいてくれるかもよー」

か「では発見されやすくなるように砂浜に大きく字や絵を書いて、狼煙も上げましょう。
  近くに森があるみたいですし、木の枝を集めるのを手伝ってください。
後は持ってきたマッチで火をつければ完成です。火の管理は僕がやります」

アライさん「そんなことより島を探検するのだ、お宝が見つかるかもしれないのだ」

アライさんは手伝いもせず、そそくさと探検に出た。

自分の犯した過ちの重大さに気付いていないのであった。


231: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:15:50 ID:jTV.hXn.00
かばんたちはまず島を浜辺に沿って一周回ることにした。

すると先に飛び出たアライさんが何かを見つけていた。

それは人一人入れるかという位の大きさの粗末な小屋で、大きめの1枚板が戸のように立てかけてあった。

ア「みんな遅いのだ、それより見るのだ、アライさんが見つけたんだぞ。
  お宝の気配がするのだ、さっそく中に入るのだ」

か「待ってくださいアライさん」

かばんの制止も聞かず板をどかしたアライさん、そこには人間一人分の白骨死体が横たわっていたのであった。

ア「なんなのだこれは、お宝には見えないのだ」

アライさんは頭蓋骨を掴み後ろに放り投げた。

サ「なに、なに、これ!」

ラ「アワワワワワ」

フェ「かばんさーん、もしかしてこれ・・・」

か「恐らく人の骨です、それよりアライさん遺骨を粗末に扱っちゃだめです」

ア「なんでなのだ、そんなものに価値はないのだ」

か「価値とかの問題ではないんです、アライさん少し場所を替わってください」

かばんは放り投げられた頭蓋骨を持つと、アライさんと場所を交替し元の位置に頭蓋骨をそっと戻した。


232: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:21:07 ID:jTV.hXn.00
すると白骨死体の他にも何かを見つけた。

2枚の紙、分厚い本、空き缶の山、鍵、木箱、スーツケースであった。

この状況を打破する手掛かりはないかを探るため、かばんは白骨死体に手を合わせ、遺品を持ち出した。

サ「かばんちゃん、ヒトの骨があるってことは、ヒトがこの島にいるのかな?」

か「いないと思うよ。大量に缶詰があったから、この人もこの島に流れ着いて缶詰だけで生き延びてきたのかもしれないね」

サ「そっか、かばんちゃんの仲間が見つかると思ったのに」

フェ「かばんさーん、中には何があったー?」

か「とりあえず1つずつ見てみましょう」

まずは木箱、中はガラクタであふれていた。

使えそうなのはノコギリとライターぐらいだろう。

スーツケースは鍵が掛けられていて開かない。

落ちていた鍵ではサイズが合わず開けられそうもない。

次に分厚い本を見てみた。

フェ「この本は何かな?すごく厚いね」

か「これは辞書と言って、わからない言葉があったときこの本で調べるんです。
  辞書にも種類があって、これは昔の言葉を今の言葉に置き換えるものです」

残りは2枚の紙。

片方はこの島の地図のようで、現在位置と思われる所にバツ印がついていた。

そしてもう片方にはこのように記されていた。


233: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:24:58 ID:jTV.hXn.00
<森で怪物に襲われてから3日過ぎた。
足を怪我しここから出られないままとうとう食料が尽きた。
私がこの島に着いて2カ月が経ったが不思議なことに船の1つも通ることはなかった。
この島に流れついた時点で私の運命は決していたのであろうか。
もしあの時森の中の寺院を調べていれば死なずに済んだかもしれない。
流れ着いたスーツケースも明けられず後悔は募るばかりだ>

ラ「カバン カミニハ ナニガ カイテアッタ」

か「この人も遭難してこの島に流れ着いたみたいです。
  救助を待っていたみたいですが2カ月の間船が1つも通らなかったそうです」

ラ「パーク ガ ヘイサシテカラ フネ ノ ウンコウ ハ オコナッテイナイヨ」

か「このメモでは船が通っていないことを不思議に思っています。
  そうなるとこのメモは船の行き来が盛んだった頃に書かれた物なのかもしれません」

フェ「他には何が書かれていたー?」

か「えーと、森の中に寺院があると書いてあります。そこを探索するのがよさそうです」

サ「もうすぐ日も暮れるし、かばんちゃんは夜目が利かないから今日はもう休もう」

か「それじゃあ、上陸した所に戻って夕食の準備をしましょう」

ア「待つのだ、そんなにたくさん物があったのだ。先に見つけたのはアライさんなんだぞ。
  それをよこすのだ、お宝の匂いがするのだ」

アライさんはスーツケースを指さした。

現状スーツケースは開ける手段がないので、かばんにとっては無用の物である。

癇癪を起されてもたまらないのでスーツケースを渡すことにした。

もし必要な時が来たらどう説得して返してもらおうか、かばんの悩みの種が増えた。


234: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:27:07 ID:jTV.hXn.00
上陸地点に帰還後、かばんは今持っている食料や水をラッキービーストやフェネックと相談し分配しようとしていた。

まさにその時だった。

なんとアライさんは欲望のままにジャパリマンを大量に食べてしまったのであった。

ア「ふはは、おいしかったのだ」

サ「アライグマ、みんなの分の食糧まで食べちゃったの?」

か「大変だ、食料が減っちゃった」

フェ「・・・・・」

か「どうしましょう、食料をもっと切り詰めないと」

フェ「かばんさーん、私達は森で食料を探すから、残りは全部取っておきなよー」

か「そしたらフェネックさんやサーバルちゃんは・・・」

サ「大丈夫、私たち自分で食べ物は見つけられるから」

か(アライさんには内緒にして後でこっそり渡そう)

ア「みんな何を落ち込んでいるのだ、食べ物ならまだたくさんあるのだ」


235: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:30:37 ID:jTV.hXn.00
翌日、かばん達は浜辺に万が一誰かが来た時のためラッキービーストを残し、他は地図を頼りに森の中の寺院を目指すことになった。

アライさんも置いていきたかったが、「お宝を独り占めする気なのだ」と譲らないためしぶしぶ承諾した。

森はうっそうと茂っており昼間なのに薄暗い。

フェネックに地図を渡し先頭に立ってもらった。

かばんは帰りに石を目印にするため、拾った石を落として歩いた。

そしてあるところまで来ると森の中に開けた場所があった。

そこには小さな石の寺院があったのである。

寺院をのぞき込むが中は暗く下に続く石階段があることだけが見て取れた。

サ「かばんちゃん、中はだいぶ暗いよ、大丈夫?」

フェ「明かりがないとヒトには大変かもねー」

か「大丈夫です、パークから持ってきた懐中電灯があります」

ア「アライさんはこんなところに入りたくないのだ。行くならかばんさんとサーバルだけで行くのだ。アライさんはフェネックと一緒に待っているのだ」

フェ「アライさーん、私は2人に付いて行くつもりだよ、2人だけじゃ危険だからね」

ア「そしたらアライさんが一人になってしまうのだ。
  困難は群れで分け合うのだ、一人じゃアライさんが危ないのだ」

そんなやり取りをしていると、どこからか視線を感じるのであった。


236: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:32:57 ID:jTV.hXn.00
この時かばんは記述にあった怪物の存在を思い出した。

怪物の正体がセルリアンであるならサーバルやフェネックがいればよほどの強敵でない限り大丈夫であろう。

それに周囲を海で囲まれたこの島であればセルリアンの弱点である海水には事欠かない。

そう思っていたのだが・・・・・

視線の送り主はあっさりと姿を現した。

巨大な翼の音が聞こえてきたかと思うと人型をした全身真っ黒で長い尾を持つ怪物が1体舞い降りてきたのであった。

大きさは2m位だろう、よく見るとその怪物の顔には目、鼻、口がなかった。

その場にいる誰もがこのような邪悪な生き物を見たことがなかった。

セルリアンとは違う、もっと根源的な恐怖を感じた。

その存在を目撃した4人はパニックになりバラバラに逃走してしまった。


237: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:35:20 ID:jTV.hXn.00
気が付くとかばんは森の中で一人になっていた。

そして最悪なことに目の前にはあの怪物がいた、今自分を助けてくれる者はいない。

かばんはノコギリを取り出し構えた。

しかし怪物の長い尾によってノコギリを叩き落とされ、背負っていたリュックを剥ぎ取られ羽交い絞めにされてしまった。

その時誰かの足音が近づいてきた、サーバル達が来てくれたと安堵した。

だが現れたのはアライさんであった。

ア「かばんさんが捕まっているのだ、悔しいけどアライさんでは勝てないのだ。
  アライさんは涙を呑んでこの場を去るのだ」

アライさんはあっさりかばんを見捨てた。

思えばパークの巨大セルリアンを討伐した時もアライさんは一切協力しなかった。

船を作るときも必要な材料は全てフェネックが集めてきたと聞いている。

かばんはこれまでアライさんの身勝手な行動に対してある程度は寛容でいた。

困ったときには手も差し伸べた。

フレンズに悪者はいない、いつかはアライさんとも分かり合えると信じていた。

そんな思いをアライさんは容易く裏切ったのであった。


238: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:37:30 ID:jTV.hXn.00
怪物はかばんを空高くに連れ去ろうとした。

こんどこそ自分は助からないと思ったその時であった、彼女が現れた。

サ「かばんちゃんを返してよ!!!」

その類い稀なる跳躍力で怪物に飛びつくと爪で何度も引っ掻いた。

痛みに怯んで怪物はかばんを離してしまった。

真っすぐ落ちていくかばんであったが、下にはもう1人の仲間が待ち構えていた。

フェ「はいよー」

かばんはフェネックに受け止められ事なきを得た。

怪物は猛攻に堪え切れず大人しく立ち去った。

サ「かばんちゃん大丈夫、ごめんね、私がついていたのに・・・」

フェ「謝るのは私もだよ、私としたことがパニックになってしまうなんて」

フ(さっきアライさんの声が聞こえた、見捨てたんだね、かばんさんを・・・)

か「ありがとう2人とも、大丈夫です。2人も無事でよかった。」

かばんは心に誓った、自分のためにここまでしてくれる2人のためにもこの島からの脱出方法を必ず見つけて見せると。


239: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:41:53 ID:jTV.hXn.00
3人はどうにか寺院に戻ってくるとができた。

かばんは再び寺院の探索をすることを提案した。

2人に心配されたがアライさんが食料を食い荒らしたおかげで余裕がない。

いくら2人が自分で食料を得られるといっても限界はある。

脱出方法の有無は早めに確認しておきたい。

かばんを先頭に、懐中電灯の明かりを頼りに寺院に足を踏み入れた。

階段を下りていくと真っ直ぐ伸びる通路があり、その先は行き止まりになっていた。

かばんは懐中電灯を壁に当て目を凝らすと何やら石碑があり文字が彫ってあった。

サ「何か書いてあるよ、う~ん? 相変わらず読めないや」

か「これは何でしょう? 言葉がだいぶ古いみたいで部分的にしか僕も読めません」

フェ「かばんさんでも読めない文字ってあるんだねー。
   そうだ、かばんさん昨日見つけた辞書でどうにかならないかなー」

か「そういえば辞書がありましたね、さっそく試してみましょう」

難しい漢字や古い言い回しが多く苦戦したものの何とか解読に成功した。

サ「かばんちゃん、なんて書いてあったの?」

か「うーん? 読めるようになったけど内容は相変わらず意味が分からない。
  とりあえず声に出して読んでみるね」


240: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:48:27 ID:jTV.hXn.00
か「禍蛇洲(カダス)の王に会いたいものは浜辺で王を讃える以下の言葉を口にせよ
  <幻の夢の都、禍蛇洲を治めし古の大帝よ、数多の夜闇の鬼たちを統べる海の神よ
   蒼き星の子の前にその御姿を見せたまえ イア イア エルダー ヌアザ ノーデンス>
  そうすれば禍蛇洲の王はその海に舞い降り、きっと願いを聞き入れるだろう」

サ「????」

フェ「とりあえずその言葉を浜辺で唱えると私たち助かるかもしれないんだね」

か「さっそく試してみましょう」

寺院を出た3人は浜辺への道を探したが、なぜか行きがけに落とした石が見当たらない。

次から次へと起こるトラブルに疲れ果てていると大きな電子音が聞こえてきた。

この音には聞き覚えがあった、パークでサンドスターローの濃度が上がったときにラッキービーストが出していた警告音だ。

音を頼りに3人は無事浜辺へと帰還した。

ラ「オカエリ ブジデナニヨリ」

か「ラッキーさんありがとうございます」

サ「ボス、どうして私たちが道に迷っているってわかったの?」

ラ「アライグマガ ヒトリデ カエッテキタカラネ。
  シカモ タイリョウノ イシヲ モッテ。
ミチバタニ キソクタダシク オチテイタ ト キイテ モシヤト オモッテ」

ア「すごいんだぞ、石がきれいに並んでいたのだ。
こんな石見たことないのだ。珍しい不思議な石なのだ」

フェ「・・・・・」

か「それより、帰る方法が見つかったかもしれないんです。さっそく試してみましょう」


241: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:52:15 ID:jTV.hXn.00
全員が浜辺に揃うとかばんは詠唱の準備に入る。

か「みなさん何が起こるかわかりません、心の準備だけはしておいてください」

か「<幻の夢の都、禍蛇洲を治めし古の大帝よ、数多の夜闇の鬼たちを統べる海の神よ
蒼き星の子の前にその御姿を見せたまえ イア イア エルダー ヌアザ ノーデンス> 」

かばんが呪文を唱え終わると同時に目の前の光景に大きな変化が現れた。

海が割れるように海水が引き、道が作られる。

そしてそこに生まれた道を翼の生えた馬がソリらしきものを引いてこちらに駆けてくる。

よくみるとソリらしきものは貝殻でできた馬車のようなものであった。

そこには雲のような髭をたなびかせた老人が乗っていた。

しかしその姿はあまりに神々しく一目でそれが人ならざる存在、それも非常に強大な力を持った存在と感じ取れたのであった。

ただ一人を除いて。


242: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:55:11 ID:jTV.hXn.00
ア「誰なのだこいつは、それよりも面白いものに乗っているのだ、おい人間アライさんも乗せるのだ、ムグッ」

フェネックはアライさんの口を塞ぎ、どこかに引きずっていった。

神「とんだ無礼者が混じっていたようじゃが、まあよかろう。
  人の子よ、いや人と呼んでもよいのか?」

か「僕たちの事は好きに呼んでください」

神「そうか、では人の子よ、儂に何の用かな?」

か「僕たちは今遭難していて島から脱出する方法がなくて困っています。
  神様の力で僕たち全員をキョウシュウエリアという場所に連れて行ってくれませんか?」

神「成程、だがタダというわけにはいかん。
  何か儂に差し出すか、もしくは儂を楽しませることはできるか?
  こちらの世界の住人はそのような取引ごとが好きだと聞くぞ」

か「僕たちが今献上できそうな物はこのくらいしかありません。
  気に入った物であれば自由にお持ちください」

神「特にほしいものはないな」

か「どうしよう、他に献上できるものなんて・・・」

神「ん? お主そのようなものを持っているのであれば儂を呼び出す必要などなかったのではないか?」

か「え、これのことですか?」

かばんが手にしたのは白骨死体が持っていた鍵であった。


243: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 00:59:37 ID:jTV.hXn.00
神「なんじゃ、使い方を知らんのか?
  なら願い事はそのカギの使い方を教えることでよいな。
  改めて聞こう、儂に差し出せるものはあるか」

か(どうしよう、みんなの命がかかっているのに。何か他にできそうなことは・・・)

サ「ねえ、かばんちゃん、お腹すかない?」

か「サーバルちゃん!!」

サ「私達お昼まだ食べてないし、かばんちゃんも考えてばかりじゃお腹すいちゃうよ。
  神様も一緒に食べよ」

神「何かご馳走してくれるのかな?」

サ「うん、ジャパリマンだよ。私たちフレンズの大好物。神様もきっと気に入るよ」

神「そこまで勧めるなら、頂こう」

サ「色々な味があるから、食べてみてよ」

神「これはなかなか、味も多種多様な物があって実に興味深い」

サ「友達が言っていたの、”美味しいものを食べてこその人生”だって」

か「かなわないな、サーバルちゃんには」

神「馳走になったな、では約束通り鍵の使い方を教えよう。」

か「少し待ってくださいメモを取ります・・・・どうぞ」

神「朝日か夕日が出ているときに鍵を天に掲げ9回ひねり各々が呪文を唱える。
  その時頭の中に思い浮かべていた場所に移動できるぞ。呪文はこうだ。
  <我は願う、鍵に宿りし魔力の導きに従い、我が夢見し地へと旅立つことを>
  正確に唱えないと何処に移動するか分らんぞ」

か「ありがとうございます」

神「では、さらばだ」

貝殻の馬車は天高く飛び立ち、瞬く間に消えていった。

か「夕方まで時間がありそうだね。
  サーバルちゃんしっかり唱えられるように一緒に練習しよう」

サ「かばんちゃんお願い、私自信ないよ」

ラ「フェネック ト アライグマ ヲ ヨンデクルヨ」


244: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 01:04:49 ID:jTV.hXn.00
フェ「流石はかばんさーん、神様との話し合い上手くいったようだねー」

か「いえ、交渉が上手くいったのはサーバルちゃんのおかげです。
  僕一人では上手くいかなかったかもしれません」

ア「フェネック、どうしてアライさんを離してくれなかったのだ?
  さっきの面白そうな乗り物が無くなってしまったのだ」

フェ「そんなことよりアライさーん、この島から脱出できるかもしれないよー」

ア「そんなことじゃないのだ!アライさんはさっきの乗り物に乗ってみたかったのだ。
  あれに乗れば島からも脱出できたのだ」

フェ「まあまあ、アライさーん、後でいい物あげるから機嫌直してよー」

フェ(大きさを考えると、あの馬車はあと一人乗るのが限界だし、鍵の使い方を教わらなければ全員で島から脱出できなかったかもね)

ア「むむむ・・・仕方ないのだ、アライさんの広い心に免じて許すのだ」

フェ「・・・・・」

か「フェネックさん、アライさん、帰るためには呪文を唱える必要があるので、みんなで練習しましょう」

フェ「かばんさーん、3人も面倒見るのは大変でしょ。
   アライさんには私が教えるからまず私に教えてほしいなー」

か「でしたらお願いします」

フェ「任せてー」


245: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 01:06:51 ID:jTV.hXn.00
夕日が浜辺を照らし出す。

か「それでは、みなさん呪文の読み方は覚えましたか?
  帰る場所は到着後の安否確認のため図書館にしてください。
  それと忘れ物はないですか?」

サ「う~~、何とか」

フェ「私はばっちりだよー」

ラ「ボクハ カバンノ リュックニ ハイッテイルヨ」

ア「待つのだ、スーツケースを持ってくるのを忘れたのだ。
  今回の冒険の戦利品なのだ」

アライさんは昨日手に入れたスーツケースを持ってきた。

か「それでは始めます」

かばんは夕日の照らす空に鍵を掲げ9回ひねった。

それぞれが呪文を唱える。

<我は願う。鍵に宿りし魔力の導きに従い、我が夢見し地へと旅立つことを>

すると周りの景色が眩しく輝くのを感じる。

眩しさに目を閉じてしまい、やがて目を開けると、そこは思い描いた場所だった。


246: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 01:09:54 ID:jTV.hXn.00
博士「おや!かばんにサーバルにフェネックではないですか、何故ここに?
   ゴコクエリアに旅立ったのでは?」

助手「どこから現れたのです!さっきまで誰もいなかったのです!」

か「ここは図書館ですか?」

博士「見ての通りなのです」

ラ「マップ ヲ カクニン マチガイナク キョウシュウエリアノ トショカンダネ」

サ「よかった、戻ってきたんだね」

か「一時はどうなるかと思いました」

助手「そういえば、アライグマはどこにいるのです?姿が見えないのです?」

か・サ「え?」

ラ「パークノ スベテノ ラッキービーストニ デンタツ アライグマヲ ソウサクセヨ」

フェ「・・・・・」

この後アライさんの姿を見たものは誰もいなかった。


時は遡る

フェ「アライさーん、今から私の言うとおりにマネしてねー」

ア「大丈夫なのだ、アライさんは天才だからすぐに覚えられるのだ」

フェ「それじゃ始めるよ・・・」

フ(アライさん、私が今まで一緒に行動してきたのは、いつかアライさんも思いやりに目覚めると信じていたからだよ。

  でも今回の一件で悟った。私はもうアライさんについて行けない。

  仲間の命がかかっている状況なのに、アライさんは自分の事ばかり。

  次にこんな状況になったら今度こそアライさんのせいで誰かが死ぬかもしれない。

  そう思うと怖くてどうしようもないんだ。

  本当は私もアライさんと一緒に罰を受けるべきなのかもね。

  アライさんを正しい方向に導けなかったのだから。

  でも私はまだみんなと一緒にいたい。

  恨んでくれても構わない、この決断は私の弱さが招いたことだから)

フェネックはアライさんに偽の呪文を教えた。


247: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 01:12:32 ID:jTV.hXn.00
アライさん「ここはどこなのだ? フェネック、かばんさん、サーバル、ボス」

そこは真っ黒な木でできた船の甲板であった。

船は今大海原を突き進んでいた。

ア「何故なのだ、アライさんはフェネックに教えられた通りに呪文を唱えたのだ」

アライさんは空を見上げると、とんでもないことに気が付いた。

アライさん「太陽が3つあるのだ!!」

ここはもはやアライさんの知る世界ではなかった。

すると声を聞きつけたのか何かが複数やってきた。

それは灰色がかった白い油ぎった肌を持つ目のないヒキガエルのようだった。

更にその皮膚は伸縮自在に形を変え、鼻にあたるであろう部分にはピンク色の短い触手が生えている。

アライさん「ひっ、ば、化け物なのだー」

アライさんは逃げ出した。

しかし船上では逃げ場はない、すぐに追いつかれてしまった。

アライさん「あっちへいけなのだー」

アライさんは化け物に向かってスーツケースを放り投げた。

化け物は飛んできたスーツケースを馬鹿力で叩き落した。

ケースが壊れ中身が出た、それは拳銃だった。

アライさんが人間であったならば拳銃を使ってある程度対抗できただろう。

しかし、アライさんにそんな知恵などあるはずもない。

お宝と称して大事に持ってきたものは宝の持ち腐れに終わった。

アライさんは怪物達に捕まった、ここではアライさんに一切の情けはかけられない。

ア「誰かー、誰でもいいからアライさんを助けるのだー」

アライさんの悲鳴も、助けを呼ぶ声もここでは誰にも届かない。


248: 名無しさん (ワッチョイ 496f-7af3) :2019/06/21(金) 01:31:55 ID:NrFDotTg00
247
ありがとうございます!

むぐるうなふ!

自己愛しかないアライさんには相応しい、一片も希望のない世界で逃れられず永遠に苦しみ続けるのを願います。


249: 名無しさん (ワッチョイ b997-4b39) :2019/06/21(金) 01:36:35 ID:wpWh36pM00
247
新作ありがとうございます!

どこまでも身勝手なアライさんには相応の報いがあらんことを祈ります


251: 名無しさん (ワッチョイ ad88-1553) :2019/06/21(金) 02:03:17 ID:ulRnjgQU00
247
神話と神話が出会って新しい神話が生まれましたね!いあいあ!
アライグマが自覚のないまま着実にヘイトを溜めてくるあたりが素晴らしかったです!


252: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/21(金) 02:09:47 ID:jTV.hXn.00
けもフレ一期のラストで海に出たので、前々から組み合わせられないかと思っていました。
勢いで書いたので虐待要素が少ないです。
元ネタは、コウノスケ様作「絶望の孤島」です。


253: 名無しさん (ワッチョイ ad88-1553) :2019/06/21(金) 03:21:41 ID:ulRnjgQU00
252
いや、アライグマに対するヘイトの上がり方がグングン上がってからの異界転送
眷属に襲われて精神まで蝕まれるだろうなってとこで終わってるのがいいですよー


最終更新:2019年07月08日 00:45