夕暮れ時、アライさんが一人とぼとぼと河川敷を歩いている。
先日ペットアライちゃんを飼ったことがきっかけでアライさんは住む家を失った。
フレンズ保護団体の一つに助けられ住み家と仕事を斡旋してもらい、何とかパークへの強制送還は免れた。
「なかなか天下取れないのだ、辛いのだ・・・」
それでも人間世界から連れ出されなかったのは幸いだとアライさんは思った。
「パークに居たらアライさんは一生脇役なのだ、Cパート止まりなのだ・・・」
顔をぐっと揚げ夕日を見やる。気持ちが高ぶってきたのか、突然両手を上げて叫ぶ。
「天下取るのだぁぁ!!!」
アライさんはすっきりした表情になりまた歩を進める。
手に下げた買い物袋に目をやる。今日は好物の揚げパンが半額で三つも買えたのだ。
ここから大逆転なのだ!などと考えていると、
「おなか・・すいた・・・りゃ・・・」
どこからか、か細い声がする。アライさんがくんくんと鼻を動かす。
どうやら川沿いの草むらからの様だ。
「この臭いは・・・まさか・・・なのだ?」
声のする方へそっと近づくとそこには首輪を付けたペットアライちゃんがいた。
「やっぱりなのだ、こいつは疫病神なのだ・・・」憎々しげに見下ろす。
見るとペットアライちゃんは疲労と空腹で一歩も動けない様だった。
「うゆ?だりかいるのりゃ?」
ペットアライちゃんはくんくんと臭いを追う。目を上げたところにはアライさんがいた。
「のおおおお!あらいしゃんなのりゃ!おおきいあらいしゃんなのりゃぁ!!」
ぐったりとしていたアライちゃんにみるみる元気が戻る。
「おおきなあらいしゃんはあらいしゃんのおかーしゃなのりゃ?」
吊り上がった目をキラキラと見開きアライさんに期待のこもった視線を送る。
「な、アライさんは子供はいなのだ、そもそもペットアライちゃんはアライさんの子供じゃないのだ」
それを聞いたアライちゃんはしばらくぽかんと口を開けていたが、期待とは真逆の答えにどんどんと悲しみと寂しさがこみ上げてすんすんと泣き出した。
やれやれとアライさんは思った、が保護欲を喚起する姿が可愛いとも思ってしまった。
「お前、お母さんを探しているのかー?どこから来たのだ?」
そう聞かれるとアライちゃんはゆっくりと口を開いた。
「ぐじゅっ、あらいしゃんはおかーしゃにあいたいのりゃ!あらいしゃんはまっちろなおーちでたくしゃんのあらいしゃんとくらしてたのりゃ、おかーしゃにはあったことがないのりゃ・・・」
少しずつ身の上を語り出したアライちゃんにアライさんは釘付けになった。
「で、それからどーしたのだ?」
「ちゅぎは“ぺっとしょっぷ”てとこにいったのりゃ!しょこはあらいしゃんのほかに“いぬ”とか“ねこ”とかいっぱいいたのりゃ」
「知ってるのだ、アライさんもペットショップ、大好きなのだ」
アライさんはペットアライちゃんがらみで失敗したことをすっかり忘れている。
「おおー、ぺっとしょっぷしってるのりゃ?すごいのりゃ!あらいしゃんはしょこでかいぬししゃんにかわりたのりゃ」
「かいぬししゃんはとーってもやしゃしくて、おいちーのいーっぱいくれたのりゃ・・・れも・・・」
「どうしたのだ?」アライちゃんは少し暗い表情になる。
「かいぬししゃんからきいたのりゃ、どこかにあらいしゃんのおかーしゃがいりゅって!おかーしゃはあらいしゃんをうんでくりたとっても、とおぉぉってもやしゃしいあらいしゃんりゃってかいぬししゃんがいってたのりゃ!」
アライさんはペットアライさんのお母さんが何か考えた。
聞いた話ではアライちゃん工場で作られてるはずだ、お母さんは・・・いなかったはず。
「あらいしゃんはきのーおさんぽのときにりーどをはずしてにげたのりゃ!じぇったいおかーしゃにあうのりゃ!!あんよしゅるとこみてもらうのりゃー!」
「やっぱし・・・おおきいあらいしゃんはあらいしゃんのおかーしゃじゃないのあ?」
アライちゃんはやっぱり違うの?といった表情で同じ質問を繰り返した。
それを見たアライさんはまたやってしまった。
「アライさん、ペットアライちゃんのお母さんになってやるのだ!!」
そういうとアライちゃんを抱き上げ小脇にかかえた。
「これからアライさんのおうちで一緒に暮らすのだー!!」
「うれちーのりゃぁ!あらいしゃんのおかーしゃ、みちゅかったのりゃー!!!」
二人は利害が合致し、唐突に家族になった。
その頃、近所の交番にペットアライちゃんの飼い主が姿を見せた。
「すみません、迷子のアライちゃんはいませんか?」
アライさんはペットアライちゃんを部屋に連れ帰るとちゃぶ台に座らせた。
そして買い物袋からごそごそと揚げパンを取り出し一つを自分に、もう一つは半分をお皿にのせアライちゃんに渡した。
「さっ、揚げパン食べるのだ、とぉーってもおいしーのだぁ!」
満面の笑みで揚げパンを口に運ぶ。
アライちゃんもそれにならって、目の前の皿にのせられた揚げパンにかぶりつく。
「んまぁあ!んまいのりゃぁ!おかーしゃ、あまあまあげぱんとぉってもおいちーのりゃ!!おかーしゃしゅきしゅきなのあー!」
「なのだー、揚げパンはアライさんのだいこーぶつなのだ!人間のごはんでいちばんおいしーのだ!おなかいっぱいたべるのだぁー!」
丸一日、何も食べていなかったアライちゃんはあっという間に揚げパンを食べ切った。
「おいちーのりゃ、おなかいーっぱいなのりゃぁ!ごちしょーしゃまなのりゃぁ、おかーしゃ!!」
ペットアライちゃんの喜ぶ姿にアライさんはどんどん自尊心が満たされていく。
何もかも上手くいかない、そう思っていた毎日に光がともった様に感じられた。
アライさんはふとした疑問を口にする。
「お前、逃げて来たって、飼い主はどんな奴なのだ?」
アライちゃんはちょっと申し訳なさげな表情になり口を開く。
「ちょーってもいいひとなのりゃ、まいにちおいちーのいっぱいくれるのりゃ・・・おしゃんぽもいっぱいいったのりゃ!!」
「あんよできたとき、だっこちてよちよししてくえたのや、しゅきしゅきなのりゃ・・・」
話しているうちにアライちゃんはかいぬししゃんのことを思い出し声が小さくなる。
アライさんは複雑な気持ちになった。
「帰りたいのだ?」答えは聞きたくないのに、つい聞いてしまった。
「かいぬししゃんはだーしゅきやけりょ、あらいしゃんはやっとおかーしゃにあえたのりゃ!ずっとここにいたいのりゃ!おかーしゃしゅきしゅきなのりゃぁ!」
「しょれにあらいしゃん、もうよちよちあんよできゆのりゃ!ひとりだちのときなのりゃ!!」
アライちゃんは勝手なことを言い出しているが、“おかーしゃ”に会えたことは本当にうれしく思っている様だった。
アライさんは嬉しくなりアライちゃんを抱き上げるとぺろぺろと舐め始めた。
以前ペットアライちゃんにした様な暴力的なものでなく、優しく、繊細に毛づくろいをした。
「うれちーのりゃぁ、おかーしゃのけじゅくりょい、とぉぉってもきもちーのりゃぁ!」
初めて受ける親の愛情にアライちゃんはとろける様な笑顔を浮かべたまま眠ってしまった。
「寝ちゃったのだ、可愛いのだぁ」アライちゃんを起こさぬ様、そっとつぶやく。
アライちゃんの寝顔にアライさんまでとろける様な笑顔を見せた。
こんなに幸せな気分は前の住み家を追い出されてから、いや、人間世界に来てから初めてだった。
アライさんは愛用の毛布を取り出すと寝息を立てるアライちゃんを一撫でし、寄り添う様に眠りについた。
翌朝も穏やかな目覚めだった。
アライちゃんが起きる前に昨日の揚げパンの残りをアライちゃんのために皿にのせる。
そうだ、おトイレを忘れていたのだ!以前飼った3匹のケージを押し入れから引っ張り出すと新聞紙を敷いた。
これでアライさんが仕事に出た後のおトイレも安心なのだ。アライさんはてきぱきと準備をしている。
そうしているうちにアライちゃんが目を覚ました。
うーんと両手を伸ばし伸びをすると見慣れぬ部屋にきょろきょろと辺りを見回す。
「おはようなのだ、アライちゃん」
しゃがみ込んだアライさんが挨拶すると
「おかーしゃ、おはよーごじゃりましゅ!」と丁寧に挨拶を返した。
どうやら飼い主には礼儀正しく躾けられていた様だ。
「あさおきちぇ、おかーしゃがいて、しゅっごく、しゅぅぅーっごくしわわしなのりゃー!!」
ちゃぶ台にアライちゃんを載せてやるとペタンとお座りし美味しそうに揚げパンを頬張っている。
「あまあまなのりゃー、うまうまなのりゃー、おかーしゃごちしょーさまなのりゃぁ!」
アライさんは嬉しくなった。お仕事も頑張れる気がした。
「アライさんはそろそろお仕事にいくのだ、おひるごはんはきゃべつを置いていくから、お腹がへったら食べるといいのだ」
そういって四分の一にカットしたキャベツを皿にのせ床に置く。
こういったところはものぐさなアライさんの性格が出ている。
「それからおトイレはここ、ケージの中にするのだ!ほかのばしょにはうんちもおしっこもしてはダメなのだ!」
「はいなのりゃー!あらいしゃんにおまかせなのりゃー!」アライちゃんは両手を上げた。
「じゃ、いってくるのだー、いいこにしてるのだー」
そういうとアライさんは部屋に鍵を掛け出勤した。
アライさんの職場はフレンズの支援を行うNPOが運営する工房だ。
人間世界に向いた職業が見つからないフレンズが主に通う場所で、簡単な工作や手芸などの作品を作り運営費に充てているという施設だ。
フレンズが作った作品は物珍しさもあってそれなりに売れている。
そこでアライさんは手先の器用さを生かし木彫りの人形やレリーフを作っている。
最近は出来の良い作品も多く、ものによってはオークションで高値が付くものもある。
今の仕事はアライさんの天職といえた。
「アライちゃんのために素敵なもの作るのだ!お給料いっぱいもらうのだぁ!」
アライさんはやる気満々だ。
その頃アライちゃんは
「しゃみちーのりゃ!たいくつなのりゃ!おかーしゃ・・・はやくかえってくりゅのりゃー!」
寂しさに泣いていた。
まもなく仕事も終わろうという頃、アライさんは用意された木型を彫り皿の形をしたレリーフを作っていた。
今日一番の出来だ。
皿の真ん中にはひまわりが彫られ周りにはアライさんとペットアライちゃんがいる。
デザインはフレンズに一任されており何を題材にするかは自由だ。
「とっても上手に彫れたのだ!アライさんもペットアライちゃんもいるのだ!」
最高の仕事をした自分を褒めてやりたい。アライさんはそう思った。
「そうなのだ!このさいこーけっ作をペットアライちゃんにも見せてやるのだ!」
アライさんは今日一番の皿を他の作品と一緒に提出はせず、こっそりカバンに忍ばせた。
「おつかれさまなのだー!」
定時の鐘と同時にアライさんは職場を跳び出した。
はやく帰ってさいこーけっ作をアライちゃんにも見せてやるのだ!そう思うと走り出さずにはいられなかった。
帰り道、アライさんを呼び止める人物がいた。お巡りさんである。
飼い主からペットアライちゃんの失踪を聞かされパトロールの際に聞き込みを行っていたのだ。
「君、アライさんだね?」
「そうなのだ、なんなのだ?」怪訝そうにアライさんが聞き返す。
「実は二日ほど前にペットアライちゃんが失踪してね、アライさんなら何か知らないかな?臭いがするとか、声がするとか?」
そう尋ねられアライさんはドキリとした。
「し、知らないのだ、アライさんはペットアライちゃん嫌いなのだ!」・・・うちの子以外は・・・。
アライさんがそう言うとお巡りさんは
「気になることがあったら交番に教えてくれないかな?」
アライさんを覗き込む様に言った。
「わ、わかったのだ、見つけたら教えるのだ」アライさんはそそくさと立ち去る。
その姿をお巡りさんは目で追っていた。
「ただいまなのだー」アライさんが勢いよくドアを開けると
「おかいりなしゃいなのりゃー!ちゃびしかったのりゃぁぁ!」
とアライちゃんが飛びついてきた。
「悪かったのだ、いいこにしてたのだー?」
しがみついているアライちゃんを抱きかかえながら部屋を見回す。
用意していたキャベツはあらかた食べられており、ケージには用をたした跡があった。
「ちゃんとおトイレできたのかー、ごはんもぜんぶ食べたのだー!えらいのだぁ、さすがはアライさんのアライちゃんなのだ!」そう言ってアライちゃんの頭を撫でてやると
「おかーしゃにいいこいいこちてほちくてがんばったのりゃぁ」
とアライちゃんが上目遣いでアライさんを見上げる。
「ほんとにいいこなのだぁー!じまんのアライちゃんなのだ―!」そう言うとアライちゃんを床に降ろした。
そして今日一番の出来の木彫りの皿をアライちゃんに見せた。
「どうなのだ?アライさんのさいこーけっ作なのだ!」
アライちゃんはおおーと声を上げた。皿に彫られた細かな模様が気に入った様だ。
「すごいのりゃ!アライしゃんもおかーしゃもいるのりゃ!!おーきいおはなはなんなのりゃ?」
アライさんは嬉しくなってアライちゃんに言った。
「ひまわりなのだー!このお皿はアライちゃんにあげるのだ!今ごはんを用意するのだー!」
そういうと押し入れをがさごそと漁り出した。
「あいつらを飼った時にオマケでもらったペットフードがあるはずなのだ!あのお皿で食べたらおいしさばいぞーなのだぁ!」
アライちゃんはなかなか出てこない晩御飯が待ちきれなくなった。
「ごはんー、はやくごはんたべたいのりゃー!」と催促しだす。
「うー、うるさい奴なのだ、もうちょっとまつのだー」
「うゆー、まちきれないのりゃー、はやくっ、はーやーくー!」
「うるさいのだ!すぐに用意するのだ!」
疲れて帰ってきているお母さんの言うことを聞けないとか、あいつわがままなのだ!
アライさんの中にふつふつと怒りが込み上げて来た。
「うゆー、うんちしたくなったのあー」
ケージに向かおうとするが入り口付近にはアライちゃんの糞が積みあがっている。
「うゆー、おといれいっぱいなのりゃー」
ケージで用を足すことが出来ず、むずむずとおしりを押さえ始めた。
「そうなのりゃ!おさらにうんちするのりゃ!あらいしゃんのきれーなおさらでうんちしたらきっととってもきもちーのりゃぁー、いっぱいうんちしておかーしゃにほめてもらうのりゃー!」
そういうとあらいちゃんはお皿の真ん中に、ひまわりが隠れる程に大量の糞をした。
「ごはん、用意できたの・・・な・・・なにしてるのだぁぁあ!」
最高傑作にこんもりと盛られたアライちゃんの糞を見つけ、イライラが怒りに変わった!
「どおしてごはんのおさらにうんちしたのだっ!」
アライちゃんのしっぽをつまみ上げると鬼の形相で睨み付けた。
「おといれいっぱいでうんちできなかったのりゃ!あらいしゃんのおしゃらをあらいしゃんがどーちゅかってもいいのりゃ!!」
アライちゃんは、しょれに・・・と続けた。
「おかーしゃがおといれかたづけてくれないかりゃうんちできなーのりゃ・・・かいぬししゃんはまいかいちゃんとうんちきれーにしてくえたのりゃ!!」
口答えしたアライちゃんの態度にアライさんは激高する!
「だから!な・ん・で・ごはんを食べるお皿にうんちをしたのか聞いてるのだ!!!」
アライさんはしっぽを強く握る。
「ちっぽいたいのりゃぁー、はなしゅのりゃ!おかーしゃひどいのあ!」
アライちゃんはバタバタと手足をふりアライさんから逃げようとする。
「ちゃんとうんちしたのに・・・ほめてくりぇないおまえなんておかーしゃじゃないのりゃ!」
「おまえー、口ごたえなんて悪い子なのだぁ!」
「いいかりゃあらいしゃんをはなすのりゃ!こんなとこででくのりゃ!やしゃしーやしゃしーかいぬししゃんのとこにもどうのりゃぁ!」
アライちゃんはぶんぶんと爪を振り回しアライさんを威嚇する。
「なまいきなのだ!もうゆるさないのだっ!ごめんなさいしない子はおしおきなのだっ!」
そういうとアライさんはアライちゃんのしっぽを勢いよく引きちぎった!!
「ぎにゃー!あらいしゃんのちっぽがーちっぽがぁー!」
アライちゃんのお尻がみるみる血に染まる。しっぽのあった場所をしきりにコスコスするアライちゃん。
「なにしゅゆのあー、ありゃいしゃーのちっぱはなー、がいぬじじゃんがほめてぐれだふあふあぢっぽなんだぞぉ!!」
母の様に慕っていたアライさんの暴挙に対し、ついにアライちゃんも怒りを露わにした。
アライちゃんはふしゃーっと全身の毛を逆立ててアライさんを更に威嚇する。
「おまえなんてちっとも怖くないのだ!やっぱりペットアライちゃんはできそこないなのだ!」
そういうと手にしたアライちゃんを床に叩き付ける。
「ぷげっ!うゆぅぅぅー、いじゃいのりゃぁ!じぇったいがいぬじじゃんにいいづけるのりゃー!!」
そう言って全身の痛みにのたうち回るアライちゃんをアライさんはごりっと踏み付ける。
「おまえなんかこうなのだ!おしおきなのだ!」
お仕置きというには行き過ぎた暴力がアライちゃんを襲う。
「ぶぎゃぁぁぁ!」
アライちゃんの体重の3倍はあろうかというアライさんの踏み付けをくらいアライちゃんの手足はあらぬ方向に折れ曲がっている。
「ほんとにっ!」ごぎっ!!!
「わるいっ!」べききっ!!!
「こなのだあぁぁぁ!!!」ごりごりごりっ!!!
何度も踏み付けられたアライちゃんは折れた骨が内臓に刺さり、肋骨が胸から突き出ている。
顔と言わず、身体と言わず血がにじみ出ており、顔面は腫れ上がり見る影もない。
「だじげでぇぇ・・・がいぬじじゃ・・・だじげ・・・ごろ・・・ざれりゅぅぅ・・・」
アライちゃんは虫の息だ。逃げることも出来ずぴくぴくと痙攣するばかりであった。
「おまえはアライさんの子供なんかじゃなかったのだ、お前はアライさんの今日の晩ごはんなのだー!」
アライちゃんを掴み上げ頭からかぶりつく。
「じにだくないじにだぐないじにだぐないじにだぐげっ・・・」
「んー、やっぱりペットアライちゃんは飼うより食べたほうがいいのだ!」
その時、
「アライさん、ちょっと開けてくれるかな?」ドアの外から男性の声がする。
「なんなのだ?アライさんは今取り込み中なのだ!」
アライさんが玄関を開けるとそこには先程のお巡りさんとペットアライちゃんの飼い主の女性が立っていた。
「ああ!あなたが食べているのは・・・まさか・・・」
飼い主は頭を振り目には涙を溜めている。
「ん、これなのかー?これはアライさんの晩ごはんなのだ、けっこうおいしーのだぁ!」
そういうとアライさんは食べていたアライちゃんを口から出し、飼い主に見せつけた。
血まみれのアライちゃんには既に首から上がなかった・・・。
最終更新:2019年07月15日 23:42