311: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/30(日) 03:16:23 ID:jTV.hXn.00
ジャパリパークと人間社会の交流協定が施行されてから数年。
フレンズ達の中には能力を生かした仕事に就く者、適応できずパークに帰還する者と様々だ。
だが彼らの愛嬌とひたむきな努力を人間達は好意的に受け止めてくれた。
今ではフレンズを見かけない日はない。
アライさんは現在商事会社で働いている。
フェネックの反対を押し切り人間社会に進出したまでは良かった。
フレンズ雇用枠を利用し事務の仕事に就くも、ミスが目立ち待遇は最悪であった。
課長「おいアライグマまた書類が間違っているぞ、何回同じ事を繰り返せば気が済む」
アライさん「ごめんなさいなのだ」
係長「マニュアルやチェックシートはどうした?ちゃんと見ているのか?」
アライさん「失くしてしまったみたいなのだ」
係長「机を見せてみろ」
机を確認するとお菓子の包装紙で溢れかえっており、整理整頓がまるでなっていなかった。
係長「おまえは会社に何をしに来ているんだ、早く片付けろ」
さらにゴミ箱を覗くとそこには失くしたはずのマニュアルやチェックシートがあった。
係長「アライグマ、これは何だ!仕事に必要なものがゴミ箱にあって、必要のないものが机を埋めている。やる気はあるのか」
アライさん「ごめんなさいなのだ」
係長「謝罪はもう聞き飽きた、それにその語尾を直すように何度も言ったはずだ。勤務態度を改めないと次はないぞ」
アライさん(ツライのだ、パークに帰りたいのだ。
でもパークには美味しい食べ物も、面白い娯楽もないのだ。
パークの生活ではもう満足できないのだ)
312: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/30(日) 03:18:00 ID:jTV.hXn.00
アライさんは帰宅中に奇妙なものを見た。
アライさんの住んでいるアパートは町外れの方にあり、人もほとんど歩いていない。
だが今夜は違った、一人の老婆が露店を出していたのだ。
アライさん(なんでこんなところに店があるのだ、お客なんか来ないのだ)
アライさん「何を売っているのだ」
老婆「必要のないゴミ箱でございます」
それはオフィスなどでよく見かける、プラスチック製のクズ入れだった。
アライさん「なんなのだそれ?」
老婆「必要の無いゴミ箱という意味でございます」
アライさん「げ、このゴミ箱1万円もするのだ」
老婆「高いか安いかはお客様のお考え次第でございます」
アライさん「・・・買うのだ」
老婆「お買い上げありがとうございます」
アライさんは家に帰って思った。
アライさん(なんでこんなものを買ってしまったのだ。仕方ないのだ、明日会社に持っていくのだ)
313: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/30(日) 03:20:21 ID:jTV.hXn.00
翌日いつも通り出勤し仕事をこなすアライさん。
係長「アライグマ、また資料が間違っていたぞ」
アライさん「申し訳ないのだ」
係長「ん?今日は珍しく机の上がきれいだな、ゴミ箱も空のようだ。やればできるじゃないか、その調子で口調や仕事もきちんとしてくれ」
アライさんは係長に言われ驚いた。
いつもと変わらない仕事をしているのに、今日は机の上がきれいだった。
そういえば今日はお菓子を一口も口にしていない。
アライさん「どういうことなのだ、まさか!」
アライさんは昨日買ったゴミ箱に目をやった。
アライさん「必要のないゴミ箱・・・」
その日からアライさんの机は整理整頓が行き届いた机になった。
314: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/30(日) 03:22:54 ID:jTV.hXn.00
ある日の帰宅途中またあの老婆を見つけた。
アライさん「おばあさん、あのゴミ箱すごいのだ。アライさん会社で少しばかり見直されたのだ」
老婆「それはようございました」
アライさん「ところで今日は何を売っているのだ」
老婆「必要のない消しゴムでございます」
アライさん「値段は、5万円!!これは一体どんな物なのだ?」
老婆「それはお買いになった方だけが解るのでございます」
アライさん(仕事は殆どパソコンだから消しゴムを使う機会なんてないのだ、でも・・・)
アライさん「背に腹は代えられないのだ、買うのだ」
老婆「お買い上げありがとうございます」
翌日からアライさんの仕事ぶりに変化が起きた。
あれだけミスを多発していたアライさんが全くミスをしなくなったのである。
係長「すごいじゃないか、君がこんなに早く正確に仕事ができるようになったなんて」
アライさん「アライさんだってやればできるのだ」
係長「口調は相変わらずだが、大目に見よう。次はこの仕事を片付けてくれ」
アライさん「アライさんにお任せなのだ」
この日からアライさんは "できるフレンズ" として有名になった。
315: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/30(日) 03:25:37 ID:jTV.hXn.00
味をしめたアライさんは次なる品を求めて老婆の店を訪れた。
アライさん「おばあさん、今日は何を売っているのだ」
老婆「必要の無い定期入れでございます」
アライさん「必要のない定期入れ?」
アライさん(アライさんは自転車通勤なのだ)
老婆「15万円でございます」
アライさん「高いのだ、でも今回もそれに見合うリターンはありそうなのだ、買ったのだ」
老婆「お買い上げありがとうございます」
翌日アライさんはいつも通り家を出ると目の前に高級車が止まっていた。
そして中から出てきた運転手に声をかけられた。
運転手「おはようございます、さあどうぞ」
アライさん「一体何なのだ」
運転手「ご存じありませんか?先日我が社で緊急の株主総会が開かれました。
そこでアライグマ様はわが社の副社長に任命されました。
今日からは移動には社用車をお使いください」
アライさん「アライさんが副社長!」
そして会社に着くと今までの人間関係は一変した。
課長・係長「おはようございます、副社長」
アライさん(課長と係長が頭を下げているのだ。他にも知らない人達がアライさんに頭を下げているのだ、いい気分なのだ)
アライさんのバラ色生活が幕を開けた。
家も安アパートから豪邸に移り住んだ。
欲しい物はすべて手に入れた。
かつての落ちこぼれだったアライさんはもういない。
316: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/30(日) 03:28:29 ID:jTV.hXn.00
ある夜社用車で帰宅途中アライさんはあの老婆を見つけた。
今までと違い繁華街で店を構えていたようだ。
アライさんはあれ以来老婆を探し続けたが、かつてのアパート付近では出会えず諦めかけていたのだった。
車を止めさせ、急いで老婆の下に向かう。
アライさん「おばあさん、久しぶりなのだ、また何か売ってほしいのだ」
老婆「ではこれなど、いかがです」
アライさん「必要のない棺桶?150万円。お買い得なのだ、買うのだ」
老婆「お買い上げありがとうございます」
翌日
休日を利用しアライさんは食事に出かけた。
アライさん「今日の店はなかなか予約が取れなかった分楽しみなのだ」
その道中事件は起こった。
道を歩いていたアライさんの頭上に工事現場の鉄骨が落ちてきたのだった。
アライさんは鉄骨の下敷きになったかと思いきや、鉄骨がまるでアライさんを避けるように落下し、無傷で生還したのだった。
アライさん(助かったのだ、でもどうして?まさかあの棺桶!
棺桶は人間が葬儀の時に使う遺体を入れる箱なのだ。
棺桶が必要ない、アライさんの葬儀は必要ない、アライさんは死なない!
すごいのだ、不死身になったのだ、アライさんの天下なのだ)
不死身になったアライさんにはもう怖い物など無かった。
317: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/30(日) 03:31:42 ID:jTV.hXn.00
ここはジャパリパーク。
現在パークは最大の危機を迎えている。
最近パーク内に天然資源が埋蔵されていることが発覚した。
パークの採掘計画が持ち上がり、パークを守りたい職員と揉めているのだった。
そこで交渉役として白羽の矢が立ったのがアライさんだ。
アライさんは久々にパークに帰還した。
パークの職員たちはアライさんなら故郷を守るため力になってくれると思っていたのだが。
アライさん「単刀直入にいうのだ、採掘を進めるため協力するのだ」
女性職員「アライさん、あなた本気なの?そんなことをしたらここにいるフレンズ達は」
アライさん「他に移ればいいのだ」
女性職員「生活環境の異なるフレンズ達が一堂に暮らせる場所なんてすぐには」
アライさん「ジャパリマン工場」
女性職員「!」
アライさん「先日大型台風が直撃して、工場が破壊されたことは知っているのだ。
修理費が払えずお困りのようなのだ。修理費を出してやってもいいのだ。
ジャパリマン抜きではフレンズは生きていけないのだ。
備蓄にも限界があるのだ、早く工場を稼働させないとどうなるか」
女性職員「私一人の一存では決められません、考えさせてください」
318: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/30(日) 03:34:03 ID:jTV.hXn.00
商談終了後アライさんに声をかける者が現れた。
フェネック「アライさん」
アライさん「フェネック久しぶりなのだ」
フェネック「お願いアライさん、パークを奪わないで」
アライさん「アライさんにはもうパークなんて必要ないのだ。文明社会の生活の方が楽しいのだ」
フェネック「一緒に宝探しをした思い出の場所も無くなるんだよ」
アライさん「カビの生えた思い出に用はないのだ、そんな物よりお金の方が大事なのだ。
お金があれば欲しいものは何でも手に入るのだ。フェネックも文明的な生活をするのだ。
そうすればパークなんていらないのだ」
フェネック「みんなが文明社会で生活できるとは限らないよ。適応できずパークに帰って来たフレンズ達もいるんだよ」
アライさん「環境に適応できない敗北者なんて知らないのだ」
フェネック「アライさんにはもうパークも私たちも必要のない物なんだね」
フェネックは肩を落とし立ち去って行った。
319: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/30(日) 03:35:48 ID:jTV.hXn.00
アライさんがヘリで会社に帰還中の事だった。
操縦士「副社長大変です、ヘリが突然操縦不能に」
アライさん「落ち着くのだ、なんとか態勢を立て直すのだ」
アライさん(棺桶で不死身になったアライさんは大丈夫なのだ)
操縦士の健闘もむなしくヘリは海上に落下した。
アライさん(すごいのだ、アライさんは無傷なのだ)
操縦士「副社長、ご無事ですか」
アライさん「アライさんは無事なのだ、それより早く助けを呼ぶのだ」
するとアライさんのそばを何かが通った。
アライさん(なんなのだ?)
そしてアライさんの足に激痛が走る。
アライさんを襲ったもの、それはサメだった。
しかも近くの操縦士には目もくれず群れを成してアライさんに襲い掛かってくる。
操縦士「副社長ー」
アライさん「や、やめるのだ」
無数の鮫がアライさんを貪っていく。
アライさん(アライさんは、不死身のはずじゃ・・・)
アライさんの肉体は食い尽くされてしまった。
不死身になると勘違いした棺桶の本当の効力は、持ち主に死体すら残らない死に方をさせる物だったのだ。
320: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/30(日) 03:40:18 ID:jTV.hXn.00
その後、採掘計画は白紙に戻った。
アライさんの起こしたある事件が人間とフレンズの間に深い溝を作ったからだ。
アライさんは会社から巨額の横領をしていたのだった。
会社は経営危機に陥り後に倒産。
会社にいた多くの人間が職を失い、取引のあった企業にも大打撃を与えた。
さらに資金の流れを追っていくと、タックスヘイブンやペーパーカンパニーなどを利用し脱税もしていたことが発覚。
挙げ句の果てには反社会勢力に資金が流れていたことも明らかになった。
アライさんは史上初の刑事事件を起こしたフレンズとなった。
純真無垢なフレンズのイメージは根底から覆された。
社会はフレンズに対して疑心暗鬼に陥った。
フレンズ受け入れ拒否、フレンズに対する優遇措置の廃止が行われ、最終的には交流協定は白紙に戻された。
パークでもアライさんの起こした事件の影響は大きかった。
人間社会へ進出しようとしていたフレンズは全員受け入れ先が見つからなかった。
あちら側で暮らしていたフレンズ達もこの事件を境に続々帰還した。
人間は自分たちを二度と社会に受け入れてはくれないだろうと悟ったうえでの決断だった。
帰還したフレンズ達はパークでは使うことはないからと、今までの稼ぎを寄付してくれたおかげで工場が再稼働できた事が唯一の救いだろう。
パークは再び動物園という形でのみ人々と交流することになった。
321: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/30(日) 03:43:18 ID:jTV.hXn.00
数年後
アライさん「ハァ、ハァ、なんでアライさんがこんな目に」
一匹のアライさんがパークを走り回っていた。
今アライさんは銃を持ったパークの職員達に追われている。
このアライさんは事件後にパーク内で生まれた個体である。
先代アライさんが起こした事件がきっかけで、アライさんに対するパーク内の評価は要注意フレンズとなっている。
アライさんが少しでも妙な真似をしないかフレンズも職員も不安視しているのである。
そのためこのアライさんには発信機が付けられている。
ルールを守って生活している限り、このアライさんが特段何かされることはないだろう。
だがもし先代と同じように他者を思いやらない自分勝手な行動を起こすなら・・・。
そう思っていた矢先の事だった。
その時のアライさんは空腹に耐えかねたのか配給されたジャパリマンだけでは満足せず、他のフレンズのジャパリマンを強奪し、怪我を負わせた。
更には保管庫に忍び込み盗み食いを働いたのだ。
フレンズからの通報と、発信機ですぐに悪事がばれ現在追われているのである。
322: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/30(日) 03:46:31 ID:jTV.hXn.00
銃声が響き渡る。
アライさんは足を負傷し身動きが取れなくなった。
アライさん「や、やめてほしいのだ、どうか命だけは」
男性職員「あれほどルールを教えたはずだ。それなのにどうして盗みを働く。
他のフレンズにけがを負わせたのにどうして平気な顔をしている」
アライさん「お腹がすいていたのだ。
でも頼んでもジャパリマンを分けてくれなかったのだ。仕方なかったのだ。
それにアライさんの行ったことは殺されるほどの罪なのか」
男性職員「いいや」
アライさん「だったらこれはお前の独断専行なのだ、悪いのはお前なのだ。
銃で撃たれて痛いのだ、責任を取るのだ」
男性職員「だがそれは昔のパークだったらの話だ、今のお前の処刑はパークの総意だ」
アライさん「どういうことなのだ?」
男性職員「そうだな、昔話をしてやろう」
323: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/30(日) 03:49:50 ID:jTV.hXn.00
男性職員「以上が先代アライさんが起こした事件とその結末だ」
アライさん「だからアライさんを殺すのか、今のアライさんはそんなことしてないのだ」
男性職員「おまえにあの時のフレンズ達の気持ちがわかるか。
人との共存を果たすためにどれだけの努力をしてきたと思っている。
それがたった一人のフレンズの行いですべて水の泡になった。
人間達からの掌返しにどれだけ傷ついたことか」
アライさん「だからなんなのだ、そんなの人間が悪いのだ」
男性職員「お前は本当に他人の気持ちがわからない奴だな。
人間社会に与えた傷も相当なものだった。
失業した人たちがその後どれだけ苦労したか想像できるか。
反社会勢力に流れた資金がテロに使われたとも後々聞いた。
人間達の反応は当然の結果だ、弁解の余地もない。
だから皆恐れているんだよ、おまえもいつか同じことをするのではないかと」
アライさん「アライさんはそんなことしないのだ」
男性職員「だからこれまで様子を見てきた、お前と先代は違うと信じて。
だが結局この有様だ。
おまえはさっきの質問になんて答えた。
お腹がすいていたから仕方なかった。
その答えがすべてを物語っている。
自分さえよければ他人に危害を加えるのは仕方ないと言っているようなものだ。
お前は必要のないフレンズだ」
アライさん「アライさんはいい子になるのだ、償いもするのだ、助けてほしいのだ」
男性職員「もうお前には何も期待していない」
無慈悲な2発の銃弾がアライさんの頭と心臓を打ち抜いた。
この世界では今後アライさんがフレンズとして扱われることは二度とないだろう。
325: 名無しさん (ワッチョイ bca4-888a) :2019/06/30(日) 05:23:33 ID:jTV.hXn.00
324
申し訳ありません。
ネタ元を書き忘れていました。
元ネタは、週刊ストーリーランドの「使えない○○」です
代わりに書いてくださりありがとうございます。
最終更新:2019年07月16日 00:06