アラくいん―ハリボテの女王

362: 名無しさん (ワッチョイ a5c8-a7ec) :2019/07/14(日) 03:50:14 ID:ulRnjgQU00
一軒家の軒下、小型犬用のケージの中から声がする。

「ごしじんしゃまぁー、あらいしゃんおなかきゅるきゅるいってるのりゃー。あさごはんほしいのりゃー。ごしじんしゃましゅきしゅきなのりゃー」

ちょっと聞いた感じではアライさんの子供、アライちゃんの声の様だが・・・ケージの中に目を移すとそこにいたのは既に成体となったアライさんだった。
座っているがケージの高さが足りず頭がつかえるのだろう、窮屈そうに頭を下げている。

「おへんじしてほしいのりゃぁー、ごしじんしゃまぁー!」

ちゃん言葉を使うアライさんは必死にご主人様を呼んでいる。痩せこけた頬や落ち窪んだ眼を見るとまともにエサも与えられていないのだろう。
いや、それだけではない。アライさんをよく見ると右手は手首から下が無く、足は左が膝下から無い。しっぽも途中から切れてしまっており、ケージはずっと野ざらしなのか毛並みはぼさぼさで埃と泥に塗れている。
顔面も何度も殴られたのだろう。目の周りはあざの上にあざが重なりどす黒く右目は腫れ上がった瞼で塞がっている。もうほとんど見えていないのだろう。

「ごしじんしゃまー、ごしじんしゃまぁぁぁー!ごはんたべないとちんじゃうのりゃー!」

アライさんをこれほどまでに虐待しているご主人様を呼んだところで余計にひどいことにしかならないのではないか・・・。

「うるさい!おい、お前!死にたいのか?」

ベランダからご主人様だろうか、若い男性がサンダルを履きながらおりてくる。
男はアライさんが詰め込まれたケージの前に立つとケージに蹴りを入れアライさんに向かって凄む。

「静かにしろって言ってるだろう?今度は手足じゃすませないって言ったよな?」

「ご、ごしじんしゃまはやさしーのりゃ、しょんなことしなーのりゃぁー・・・ごしじんしゃましゅきしゅきー、なのりゃぁ・・・」

そうは言ったもののアライさんは上目遣いでびくびくとしている。
少なくともご主人様を「しゅきしゅき」な訳はないだろう。余程背に腹は代えられない状況なのだろう。

「いい加減、そのクソウザいガキみたいなしゃべり方止めろや」

男はさらにケージを蹴る。

「のっ、のだぁ・・・おこんないで欲しいのだ。アラくいんが小さなころ、ごしゅじんさまがやさしかったころに戻って欲しいのだぁ・・・」

懇願する様にアラくいんをなのったアライさんは男を見上げる。
男はうんざりした様に備え付けのホースに手を手に取る。そして水圧を最大にしケージの中のアラくいんに向かって放水する。

「水、やってなかったな!おら、好きなだけ飲めや!!」

アライさんの顔面に向かって放水する。

「うっぷ!えっぶ!やべっ、やべでっがぼっ、ごぼぼ」

許しを請うたアラくいんの口を目がけてさらに放水するとあまりの水の勢いにまるで溺れた様にごぼごぼと喘ぎ、逆流した水が鼻から溢れ出す。

アラくいんが窒息しかけたところで水を止めるとアライさんに向かって
「で、てめえはどうして欲しいんだ?え?」と言った。
アラくいんはげほげほと咳込みながら、
「も、もうアラくいんをいじめないで欲しいのだ・・・みんなと一緒におうちの中でくらしたいのだぁ、ぐしっ・・・」
そういうと手首のない右手で涙をぬぐう。

「バカか?みんなはお前が殺したんだろうが!!」

そもそもアラくいんがこれほどまでに虐待されているのには理由があった。
それはこの家に飼われて来た頃まで遡る。



アラくいんはもともとは育ち過ぎたアライちゃんのペットショップでの処分コーナーで四匹三千円のところをご主人様に引き取られた。

「ごしじんしゃま、しゅきしゅきなのりゃー!」

ご多分に漏れず四匹はご主人様の寵愛を独り占めしようと愛想をふりまいた。
こんなご主人様だがその時は心から四匹のアライちゃんを可愛がり大事にした。
しかしその幸せな時間を打ち破ったのは他でもない、このアラくいんだった。
他の三匹よりも少し早く生まれていたアラくいんはこの家に迎え入れられた頃には、ほかのアライちゃんより一回り大きくなっていた。

「あらいしゃんはみんなのじょうおーしゃまなのりゃぁ!ありゃくいんしゃまとよぶのりゃぁーっ!」

ご主人様の不在の間のアラくいんは完全な暴君だった。
エサは真っ先に腹いっぱいまで食べ、自分より可愛がられたアライちゃんはご主人様不在のおりに気が済むまで殴り、踏み付けた。動けなくなるまで苛め抜くとベットに放り込みご主人様へこう言った。

「ごしじんしゃま、あいちゅがぐあいわゆいのりゃ!かんびょうしゅゆかやごはんいっぱいほちいのりゃ!」

もちろんそうしてせしめたエサは自分だけで喰い、余ったエサは自分の糞の山に押し込み、
「おまえりゃなんておなかすいたなりゃ、ありゃくいんしゃまのうんこえでもくえばいいのりゃ!!」
そう言って他の三匹にはエサ入りの糞を喰わせていた。


363: 名無しさん (ワッチョイ a5c8-a7ec) :2019/07/14(日) 03:51:03 ID:ulRnjgQU00
ご主人様がアラくいんの所業を知ったのは四匹を飼い始めひと月ほどたった後だった。
ケージを開けてアライちゃん達を部屋の中に放してやったところ、二匹のアライちゃんがアラくいんの目を盗む様にご主人様へ話しかけて来た。

「うじゅぅー、ごしゅじんしゃまぁー、いちばんちいちゃいあらいしゃんがうごなないのりゃぁ・・・おななしもしないのりゃ・・・」

「いちばんおーきーあらいしゃんがごはんじぇんぶたべちゃうのあ!おなかへってちんじゃうのりゃ、たしけてほしいのりゃぁー!のあー」

二匹の言う通りベットの中からは干乾びたアライちゃんが見つかった。
前日から姿が見えなかったがアラくいんから体調不良と聞かされていたが・・・、まさかエサを独り占めしていたとは。二匹をよく見ると確かにやせ細っており、むしろ仕事にかまけて管理を怠ったことを後悔した。

干乾びたアライちゃんを白いハンカチに包んで棚に移す。
そしてアラくいんを呼ぶ。

「アライちゃん、アライちゃんはみんなの女王様、アラくいんらしいね?」

そう切り出すとアラくいんは急にキョドりだし明後日の方を向く。

「し、しらないのりゃ!あらいしゃんはほかのあらいしゃんのりーだーしてりゅだけなのりゃ」

「エサを独り占めしてたらしいな、小さなアライちゃんはアラくいんがエサを独り占めしたせいで死んだよ・・・」

「しょ、しょんなのあのあほがわゆいのりゃ、よわっちーあほはだいしじぇんではいちていけないのりゃ!ちんでとーぜんなのりゃー!」

あくまでも自分の正当性を主張する。
「じゃあ、アラくいんも弱ければ殺されても文句言わないよな!」
そういってアラくいんを掴み上げ、手足を身体の後ろに廻し紐できつく縛る。
そして二匹の待つケージに放り込んだ。
改めてたっぷりのエサと水を与え、後は当人たちに任せることにした。

「よくもままれやってくりぇたのりゃ、ちんだありゃいしゃんのぶんもぶんなぐゆのりゃ!」

ごすごすとアライくいんの顔面に蹴りを入れる。

「や、やめうのりゃっ!こんなこちょちてこうかいすゆのりゃっ!」

アラくいんは蹴りを防ごうとゴロゴロと芋虫の様に転げまわるがどうにも出来ずただただ蹴られ続け目は腫れ鼻血をダラダラと流している。

「ぶっこよしちぇもたりないのりゃ、とりあえじゅありゃいしゃんのうんこでもくうのりゃ!」

逃げ疲れ動きが止まったアラくいんの顔面に向け、もう一匹が物凄い量の糞をする。

「くちゃっ!やめーのあ、くちゃいのあっ!」

顔を背けようとするアライくいんの頭をもう一匹のアライちゃんが押さえつける。

「いいかりゃくそでもくえばいいのりゃ!うごくなのりゃっ!」

小さなコミニティの女王だった大きなアライちゃんは一転し最下層に落ちた。
ご主人様のお仕置きはそのまま三日間続いた。結果アラくいんは全身傷だらけで糞尿まみれになっていた。

ケージからアラくいんを助け上げ綺麗に洗ってやるとご主人様はアラくいんに問いかけた。

「今までしたことを自分にされた気分はどうだ?小さなアライちゃんはああやってお前が殺したんだぞ?反省したか?」

「くしょちびがちんだのはありゃくいんのせいじゃなのりゃ!」

「ごしじんしゃまはまちがってゆのや!ありゃくいんはいちばんおーきくてゆーしゅーなのりゃ!ありゃくいんだけだいじにすえばまちがいないのりゃ!」

なるほど、口ごたえだけじゃなく、全く自分に非がないと思っている。
どうする、殺すか?殺してもお仕置きにはならないか?
しばらく迷ったご主人様だったがこのままアライくいんはケージを別にして飼うことにした。

ほかのアライちゃんはというとひと月もの間まともにエサを食べられず、糞尿を喰わされたことでまもなく体調を崩し回復することなく死んだ。
アラくいんの右手、左足、しっぽが切られたのは三匹のアライちゃんを殺した罰だ。
しかし右手を切り落とされた際も、左足を失った時も謝罪や反省の言葉はなかった。

「ありゃくいんのおててかえしてのりゃ!」「あんよなくなったのりゃぁ!あんにゃできそこないのごみのためにぃぃぃ!ゆゆしゃないのやぁぁぁ!」

それからは今のケージに放り込まれ身体をケージに繋がれた。
ケージは外に置かれまともにエサも与えられない日々が続いた。

アラくいんが何か言う度にご主人様は物干し竿でアラくいんを小突いた。

「のだっ!いたいのだ、もうゆるしてほしいのだ、アラくいんはもう反省したのだ!」

「で、何を反省したんだ?」

「アラくいんがあいつらのじょうおうさまだって言いわすれてただけなのだ。さいしょかたじょうおうさまだってごしゅじんさまが知ってたらアラくいんがあいつらをきびしくしてもなっとくだったのだ!」

「ちょっとしたいきちがいなのだ、アラくいんのおててとあんよをとったことはみずにながすのだ!だからごしゅじんさまもみずにながすのだ!」

ご主人様はアラくいんの話しを最後まで聞いてやったことを後悔した。

「全くお前の主張は相変わらずよく判らんな。これからもお前はそこで野ざらしだ」

「のだぁぁ・・・もうこんなせいかついやなのげほっ!」

泣き言をいうアラくいんの喉目がけて物干し竿を突く!
喉元に二、三度突きを入れた後、今度は思い切り鼻っ面に突きを入れてやると
「ふごっ!びどいのりゃぁ!あらぐいんのおばな、つぶでじゃうのだぁ!」
鼻を押さえふごふご言っているアラくいんに向かって
「次に声を上げたら右足の指を一つづつ切り落とす!解ったら黙ってろ!」
そういうと家の中に戻りぴしゃりとベランダを閉めてしまった。

もうにげられないのかー?
アラくいんは考えるが何も浮かばない。仮にケージから逃げ出せたとしても片腕、片足の自分はどこにも居場所を作ることは出来ない、死ぬしかない弱い生き物になってしまったことを思い知らされた身にとってもはやご主人様に媚びを売るしか生きる道はなかった。

アラくいんは「ツライのだ・・・」消え入る様に呟きそっと目を閉じた。


364: 名無しさん (アウアウ e130-0f37) :2019/07/14(日) 09:13:23 ID:n9w0qbgkSa
乙です
やはり生まれながらの邪悪生物
どんな苦痛もこいつらの罪を贖うには全く足りてませんわ


365: 名無しさん (スプー 9265-de39) :2019/07/14(日) 11:17:32 ID:6YpIJjSYSd
アラくいんは罪を理解することなく、罰の意味も分からず死を迎えるのでしょう。
救いのない害獣ぶり、堪能しました。


最終更新:2019年07月21日 22:25