天下を取るのだ!

64 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (スプッッ Sded-5i8+)[sage] 投稿日:2017/08/18(金) 22:30:38.02 ID:6xMn9oe/d [2/4]
“天下を取るのだ!”を合言葉に今日も畑を食い荒らすアライさんとチビアライちゃん達。
農家の納屋でかっぱらったペンチで畑に仕掛けられた罠もフェンスも壊してしまう。器用な手先と最低限とはいえ悪意ある知性を持つ、まさに最悪の害獣だった。
毎日たらふく食って滋養をつけたアライさんはポンポンとアライちゃん達を産んでいった。

アライさん「チビたちもだいぶ大きくなったのだ、数も増えたのだ」
アライちゃん達「なのらーなのらー」
寝ぐらには20匹ほどのアライちゃんが、畑から盗んできた野菜を奪い合ったりかじったり、溜めグソをブリブリ漏らしたりしていた。
アライさん「よーし、今日はさーびすえりあに行くのだ!」
月に一度か二度、アライさん達は山中を走る高速道路に設置されているサービスエリアに行く事にしていた。
アライさん達が食い物にしている山中の村からサービスエリアまでは結構な距離があった。アライさんはアライちゃん達の中でも大きく育った三匹を連れて山道を歩いて行った。

アライさん「まずは腹ごしらえをするのだ!」
夕方を過ぎてもう夜になったサービスエリアに着いてまず、アライさん達はフードコートの裏にあるゴミ捨て場で生ゴミを漁って腹を満たした。
アライさん「ほらほらチビたち、いっぱい食べておくのだぞ」
アライちゃん「うまうまなのらー」「おいしーのらー」
同族同士でも食べ物の奪い合いが当たり前のアライさん達にしては珍しく、アライさんはアライちゃん達に生ゴミをくれてやっていた。

食事が終わるとサービスエリアに停まっている沢山の車の中で、アライさんは大きい車、つまりは長距離トラックを探し、その下に潜り込む。
アライさん「チビ、お前はこれに乗って行くのだ」
アライちゃん「いやなのら、おかーちゃんといもーとたちとバイバイするのいやなのらー」
駄々をこねるアライちゃんの顔にアライさんの鉄拳制裁が飛んだ。
アライさん「このバカ!お前には大事な使命があるのだ。この”とらっく”で遠くに行くのだ、遠くのちほーでたくましく生き延びて、どんどんアライちゃんを産んで増えるのだ」



65 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (スプッッ Sded-5i8+)[sage] 投稿日:2017/08/18(金) 22:31:10.23 ID:6xMn9oe/d [3/4]
やがて長距離トラックは走り出す。しがみ付いた1匹のアライちゃんと一緒に。
残る2匹のアライちゃんも、それぞれ別のトラックにしがみ付いて旅立っていった。

このアライちゃんの巣立ちも、もう何度目になるだろうか。アライさんは長距離トラックを見送りながらすっかり満足していた。こうやってアライさん達は生息範囲を広げて増えていくのだ。天下を取るのだ。

キキー! バン!
男「うわ、何か当たったかと思ったらアライさんかよ。人じゃなくて良かったー」
道の上に倒れているアライさんをまた轢いて、車は走り去った。

二度も轢かれたアライさんは重傷どころか致命傷だった。
両脚の骨が折れていて立ち上がれない。鎖骨と肩甲骨が折れていて地面を這う事も出来ない。折れた肋骨は内臓を突き破り、口と鼻から血が溢れてきた。
アライさん「なんなのだ、いたい、いたいのだ…」
自分の身に何が起こったのかも分からず、死に瀕するアライさん。
アライさん「だれか、たすけるのだ…アライさん…死にたくないのだ…」
またサービスエリアを出る車両に何度も轢かれて、アライさんは息絶えた。
次の日、ボロ雑巾のようになったアライさんの死骸は職員の手によって生ゴミと一緒に捨てられた。

アライちゃんA「おかーちゃんがかえってこないのらー」
アライちゃんB「もーよるなのらー。おなかすいたのらー」
アライちゃんC「よーし、わたちについてくるのだ!」
アライちゃんD「あたらしーおかーちゃんなのらー」
寝ぐらに残った中で一番大きなアライちゃんがペンチを拾い上げた。やるべき事は分かっているのだ。

月明かりが、畑へと向かうアライさん達の道を照らしていた。


最終更新:2018年04月06日 01:57