アライさん、いらっしゃい

17 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイWW 2b2e-p5O3)[sage] 投稿日:2017/08/18(金) 20:16:18.02 ID:rBry7PZu0 [1/4]
アライさん「新スレなのだ!ここをアライさんの巣にするのだ!チビ達もくるのだー!」
アライちゃん1「なのだー」ヨチヨチヨチヨチ
アライちゃん2「アライしゃんのおうちなのだー」ヨチヨチヨチヨチ
アライちゃん3「なのらー」ヨチヨチヨチヨチ


96 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイ 1397-fFlY)[sage] 投稿日:2017/08/19(土) 00:15:38.40 ID:WG38hXOh0 [2/7]
ここに住むと言っていたアライさん一家だ。ふーん。
のんきなもんだ。ここがどういうところかも知らないで。
なんとなく、もそもそと体を動かして前進するアライグマの群の姿が頭に浮かんだ。
似ているんだろうなと思った。

「アライさんって、強いのか?」
アライさん「強いのだ!」
アライちゃん1 ノダー!
アライちゃん2 ノダー!
アライちゃん3 ノダー!
爪や牙の自慢がひとしきり続く。アライグマが動物の中でそんなに強いとは思えないが、
当人は自信満々だった。
アライさん「それだけじゃないぞ! アライさんはどんなけがをしてもすぐに回復できるのだ!
他のフレンズにはない特殊能力なのだ!」
胸を張る。

言質を取った。
「アライさん、ご飯を上げよう。子供も連れておいで。」

アライさん「本当か? やったのだ! ちび達もついてくるのだ!」
アライちゃん1「わかったのだー! ごはんうれしいのだー!」ヨチヨチ
アライちゃん2「アライしゃんおなかぺこぺこなのだー」ヨチヨチ
アライちゃん3「なのらー」ヨチヨチ


97 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイ 1397-fFlY)[sage] 投稿日:2017/08/19(土) 00:16:51.35 ID:WG38hXOh0 [3/7]
調理はしてやらない。何でもよかったんだ。まずい肉を置く。まずい菓子を置く。ネズミの死体も置く。

「いいよ。好きなだけ食べな」
それぞれバラバラの方向に置くと、
野生のアライグマよろしくそれぞれが勝手な方向を向いて
互いのことを忘れたかのように食べ出した。
アライさん「やったのだ! いただきますなのだ!」ムシャムシャ
アライちゃん1「ますなのだー」クチャクチャ
アライちゃん2「なのだー」ペチャペチャ
アライちゃん3「なのらー」ヌッチャヌッチャ

汚え。ミキサーを回す。激しい音がする。
リンゴを入れると、リンゴが激しく跳ねる音、それを粉砕する音もあわせて聞こえ出した。
親のアライさんがこっちを見た。
「ちょっとうるさくなるけど、これで美味しい飲み物を作ってるんだ。後のおたのしみだよ」
アライさん「ほんとうか!? お前はいいヤツなのだ! お楽しみなのだ!」


98 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイ 1397-fFlY)[sage] 投稿日:2017/08/19(土) 00:18:45.40 ID:WG38hXOh0 [4/7]
ジュースを容器に開け、再び空になったミキサー。
これに入るのは、小さいヤツだけだ。
さて、じゃあ一番ちっちゃいヤツにしようか。
「ね、これ食べたことある?」真っ白な食べ物。
一番小さいアライさんは、ぬっちゃぬっちゃ音を立てながら首をゆっくり横に振る。
アライちゃん「ヌッチャヌッチャグジュグジュ ないのぁあ」グジュジュジュ

「じゃあ、はい。あげるよ」
口に突っ込んだ。よくついた、柔らかい餅だった。
小さいアライさんは美味しそうに頬張った。
笑顔だった。

だがその顔が曇ってきた。
口を動かすが、思い通りに噛めないし、飲み込めない。
徐々に苦しそうになり、いらだっているようにも見え始めた。
アライちゃん3「……ぉぅぁ……ぅぁ……」モ・・・モ・・・・モッチャ・・・・
声がほとんど出せないようだ。
やがて餅のようにのたうち始める。静かにゴソゴソと手足を動かしている。不気味で滑稽だった。


99 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイ 1397-fFlY)[sage] 投稿日:2017/08/19(土) 00:20:15.32 ID:WG38hXOh0 [5/7]
他のアライさんは、各々が背を向けたまま食べ続けていた。熱中している。別にうまいものでもないと思うのだが。
アライさん「おいしいのだ! おいしいのだ!」ムシャムシャ ゴリゴリ
アライちゃん1「しーのだ」クチャクチャ グジュグジュジュジュ
アライちゃん2「なのだー」ペチャペチャ グジュジュジュジュジュ
親のアライさんはネズミを食べているらしい。人間の姿でネズミを食べているのは異様だ。

餅に苦戦している一番小さいアライさん。だが今回、餅で死ぬことは求めていない。
短時間、口さえ塞がればいいのだった。上首尾だった。

ミキサーをもう一度、作動させる。
そしてスローにのたうつアライさん(餅)の尻尾をつかんでもちあげた。
突然のことで怖いのか、手足を突っ張って、空中で激しく暴れ出す。
アライちゃん3「・・・ンー・・・グー・・・・・・」ジタバタ
本気の抵抗なんだろうがほとんど声を出せてない。おもしろい。
それにちょっとだけ聞こえる小さな声も、ミキサーの激しい音にかき消されてしまう。


100 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイ 1397-fFlY)[sage] 投稿日:2017/08/19(土) 00:21:44.66 ID:WG38hXOh0 [6/7]
ミキサーの蓋を取り、その上にアライさん(餅)をぶら下げた。
アライちゃん3「・・・・・!!!!」バタバタバタバタ
何が起きるのか察知したらしい。抵抗が一層激しくなる。だがもちろん逃げられないし、餅も飲み込めない。

じっくりと下ろしていくのもいい。だが、時間もない。尻尾に手を添えたまま、ほぼ自由落下させた。
どうなるか。
アライさん(餅)は、真っ逆さまに、口を開けたミキサーへ落下する。

顔面と、抵抗のために突き出して両手が、激しく回転する刃に突っ込む。
アライちゃん3「!!!!」
ガイン ガガガガガガガガガ ドガドガドガドガ
ジュッ ゴジョゴジョグリョ ガリャガリャリャ

後ろ足が痙攣するように動く。尻尾がグルグル回るように力が入る。あまりやると死ぬのだろう。ミキサー内の血しぶき。血だまり。

ミキサーから引き上げた。顔がほぼ……ない。
手も、ない。血が滝のように流れている。口だったとおぼしき穴に、餅が少し残っていた。
ピクピクと体が動く。呼吸はあるようだ。ミキサーに入れてみるだけのつもりだった。殺すつもりはなかった。
目の穴だったらしいところが、こっちを見ている気がした。無限の深さの暗い目差し。


101 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイ 1397-fFlY)[sage] 投稿日:2017/08/19(土) 00:24:15.01 ID:WG38hXOh0 [7/7]
他のアライさん達にはリンゴとネズミの血とアライさん(餅)の血が混じったジュースを振る舞うことにしよう。

他のアライさん達は、まだ食べていた。背中が獣じみて動く。群の一頭が生命の危機に陥っていても、
まったく気にせずそれぞれが好き勝手に飯を食い続ける、動物のアライグマの姿を本当に彷彿とさせた。
「ジュース」
アライさん「喉が渇いていたのだ! 美味しいのだ!」
アライちゃん1「なのだー」
アライちゃん2「なのだー」
飲んだか。血族の血の味もするだろうに。
満腹に膨らんだ体を、もそもそと揺すって飲み物を飲み干す姿も、アライグマそのものだった。
友達じゃないアニマルガールは、単なるけものだ。けだものだ。

アライさん一家が帰った。
一番小さいヤツはヒューヒュー息をしている。虫の息だが、生きていた。
これはあの一家には、迷子扱いにして隠していた。すぐに回復する特殊能力があるそうだから、治るのだろう。

まだ残っている耳にささやいた。
ここがどんなところかわかっただろう。
逃げろ。勝手に生きていろ。

だが残りたければ、残るがいいさ。復讐も、するならしに来い。
そのときは、どうなっても知らないけどな。

おわり



最終更新:2018年04月06日 01:58