ネストレ・アーラント(Nestle-Aland)は現代の聖書学の最高水準を示すギリシア語新約聖書テキスト。正式名称は「ギリシア語新約聖書」を意味するラテン語の「Novum Testamentum Graece」(ノーヴム・テスタメントゥム・グラエケ)である。ドイツの聖書学者エベルハルト・ネストレ(Eberhard Nestle,1851年-1913年)が校訂し、同じくドイツの聖書学者クルト・アーラント(Kurt Aland,1915年-1994年)が再校訂したため、一般的に「ネストレ・アーラント」と呼ばれる。1913年に初版が発行されて以来、ギリシア語テキストの研究の進展にあわせて改訂が繰り返されており、最新版は第28版である。現在の学問水準から考えうる最高のテキストであるといっても過言でなく、現代日本語訳の「新共同訳聖書」や「新改訳聖書」など、ほとんどの新約聖書の翻訳元となっている。しばしば「NA」という略称で呼ばれ、たとえば第28版であれば「NA28」と呼ばれる。
「ネストレ・アーラント」が最高水準のギリシア語テキストであるといえるのは、これまでに作成されたギリシア語聖書の中で見ても集めうるもっとも多くの写本をもとにしており、さらに最新の聖書学や歴史学の知識にもとづいて校訂が行われているからである。
「ネストレ・アーラント」では微妙な箇所や意見の分かれる箇所については欄外にすべての異読の例と引用元の写本を示すというスタイルをとっている。このため、聖書研究や翻訳においては研究者がそれらの異読も参照にしながらもっとも適切と思えるものを選ぶことができるようになっている。このようなスタイルをとっていることや、何より学問的にもっとも優れたテキストであることによって「ネストレ・アーラント」は広く認められ、受け入れられている。
参照
最終更新:2018年01月08日 14:01