アテン賛歌

 アメンホテプ4世(別名アクエンアテン)の時代(紀元前1353年-1336年)の人が墓に書いた、アテン神をたたえる歌。アメンホテプ4世の行った改革は、アマルナ改革として有名である。アテン神を崇拝し、治世4年目(前1348年ごろ)にアテン神に捧げる新都アケトアテン(現アマルナ)を建設。王朝発祥の地テーベを放棄し、遷都した。その内容は、多神教であった従来のエジプトの宗教を廃し、唯一神アテンのみを祭る世界初の一神教を始めた事が挙げられる。

アテン賛歌


この唯一神アテンをたたえるアテン賛歌は、旧約聖書の詩篇104章と酷似していることが指摘されている。現在、ユダヤ人がエジプトから脱出したとされる考古学的証拠は存在しないが、アテン賛歌が詩篇104章に取り込まれている事実から、ユダヤ人がエジプトにいた時期があることが推測される。アテン信仰は世界初の一神教と呼ばれ、ユダヤ人の一神教信仰もこれに大きな影響を受けている可能性が高い。

アテン賛歌 詩篇104章
汝は空の際に美しくも姿を現す。おお生命の源である生けるアテンよ。
汝が東の地平線より昇り来るとき、汝はすべての国土を美でもって満たし、
汝は美しく気高くすべての国の上に輝きわたる。
汝の光は、国々を、汝が造った万物の果てまでも包み込む。汝は遠く隔っているが、その光は地上にあり、汝は人々の前にあるが、その足取りは見分けがたい。
汝が西の果てに沈むとき、地は死のごとく闇にとらわれる。
人々は頭を包んで部屋の中で眠り、
(目は別の目を見ることは出来ない。)

獅子はみなその穴より出で、這うものが出てきて人を刺す。
夜の帳(とばり)が下り、世界は沈黙した。
造り主は地平線の彼方で休む。
汝が地平線より昇り来るとき、闇は追い払われる。
人々は目覚めて立ち上がり、世界中でその仕事にとりかかる。

国中が活動し、すべての群がその牧草に満足する。
草が緑に育ち、鳥はその巣から飛び立ち、その翼はあなたのカーを礼拝する。
すべての小家畜は、その両の足で飛び跳ね、そして飛び、舞い降りるすべてのものも。
それらはあなたが昇ると生きる。

汝のわざのなせるものはいかに多いことか。しかれども、それらは人々の眼には隠されている。
おお唯一の神よ、汝に比すべきものは他にない。
汝は思いのままに世界を創造された。

そして、人類、大家畜、小家畜、地上にいて、その両足で歩む全てのもの、空中にいて、その翼で飛ぶもの、カルゥとクシュの国々、
エジプトの国を創った。
あなたは、すべての人を、そのあるべき場所に置いた。

あなたは彼らの糧を作り、誰もがその食物を持ち、その寿命が数え上げられる。
舌は言葉によって区別され、彼らの性格もまた、区別される。
彼等の皮膚の色は区別される。
あなたは、それぞれの国の住民を区別した。

すべての遠い国々、それらをあなたは生かす。あなたは天にハピ(ナイル河)を置いた。
それが彼らのために下るように。それは海のように、山々の上に波を作りだす。
それが彼らの畑と彼らの町を潤すように。

あなたは私の心の中にいる。
あなたの息子であるネフェル・ケペル・ラー=ウア・エン・ラー(アクエンアテン)以外に、
あなたを知る別の者はいない。
あなたは彼に、あなたの計画とあなたの力を知らせる。
わたしの魂よ、主をたたえよ。主よ、わたしの神よ、あなたは大いなる方。栄えと輝きをまとい
光を衣として身を被っておられる。天を幕のように張り
天上の宮の梁を水の中にわたされた。雲を御自分のための車とし
風の翼に乗って行き巡り
さまざまな風を伝令とし
燃える火を御もとに仕えさせられる。
主は地をその基の上に据えられた。地は、世々限りなく、揺らぐことがない。
深淵は衣となって地を覆い
水は山々の上にとどまっていたが
あなたが叱咤されると散って行き
とどろく御声に驚いて逃げ去った。
水は山々を上り、谷を下り
あなたが彼らのために設けられた所に向かった。
あなたは境を置き、水に越えることを禁じ
再び地を覆うことを禁じられた。
主は泉を湧き上がらせて川とし
山々の間を流れさせられた。
野の獣はその水を飲み
野ろばの渇きも潤される。
水のほとりに空の鳥は住み着き
草木の中から声をあげる。
主は天上の宮から山々に水を注ぎ
御業の実りをもって地を満たされる。
家畜のためには牧草を茂らせ
地から糧を引き出そうと働く人間のために
さまざまな草木を生えさせられる。
ぶどう酒は人の心を喜ばせ、油は顔を輝かせ
パンは人の心を支える。
主の木々、主の植えられたレバノン杉は豊かに育ち
そこに鳥は巣をかける。こうのとりの住みかは糸杉の梢。
高い山々は野山羊のため。岩狸は岩場に身を隠す。
主は月を造って季節を定められた。太陽は沈む時を知っている。
あなたが闇を置かれると夜になり
森の獣は皆、忍び出てくる。
若獅子は餌食を求めてほえ
神に食べ物を求める。
太陽が輝き昇ると彼らは帰って行き
それぞれのねぐらにうずくまる。

人は仕事に出かけ、夕べになるまで働く。
主よ、御業はいかにおびただしいことか。あなたはすべてを知恵によって成し遂げられた。地はお造りになったものに満ちている。
同じように、海も大きく豊かで
その中を動きまわる大小の生き物は数知れない。
舟がそこを行き交い
お造りになったレビヤタンもそこに戯れる。
彼らはすべて、あなたに望みをおき
ときに応じて食べ物をくださるのを待っている。
あなたがお与えになるものを彼らは集め
御手を開かれれば彼らは良い物に満ち足りる。
御顔を隠されれば彼らは恐れ
息吹を取り上げられれば彼らは息絶え
元の塵に返る。 あなたは御自分の息を送って彼らを創造し
地の面を新たにされる
どうか、主の栄光がとこしえに続くように。主が御自分の業を喜び祝われるように。
主が地を見渡されれば地は震え
山に触れられれば山は煙を上げる。
命ある限り、わたしは主に向かって歌い
長らえる限り、わたしの神にほめ歌をうたおう。
どうか、わたしの歌が御心にかなうように。わたしは主によって喜び祝う。
どうか、罪ある者がこの地からすべてうせ
主に逆らう者がもはや跡を絶つように。わたしの魂よ、主をたたえよ。ハレルヤ。

最終更新:2017年02月15日 09:40
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