タルムード

タルムード(ヘブライ語: תלמוד‎ Talmud、「研究」の意)は、モーセが伝えたもう一つの律法とされる「口伝律法」を収めた文書群である。6部構成、63編から成り、ラビの教えを中心とした現代のユダヤ教の主要教派の多くが聖典として認めており、ユダヤ教徒の生活・信仰の基となっている。ただし、聖典として認められるのはあくまでヘブライ語で記述されたもののみであり、他の言語に翻訳されたものについては意味を正確に伝えていない可能性があるとして聖典とはみなされない。

構成

ミシュナー(Mishnah)

ラビ・ユダによってまとめられた「口伝律法」。六書からなる。

Zeraim[ゼライーム] (種々)(זרעים‎)

11編構成。祈りと祝福・什一税・農業に関する法を扱う。
  1. ベラホット Berakhot 祈りの言葉の規則について。9章。
  2. ペアー Pe'ah 貧しき者に土地の一角を与える(レビ記 19:9-10及び23:22、申命記 24:19-22)ためのミツワーに関連した戒律と、貧しき者の権利一般について。8章。
  3. デマイ Demai 生産から供せられる聖職者への寄付が定かでない様々な場合について。7章。
  4. キルアイム Kilayim 農業、衣類、飼育において禁じられている混ぜ物(レビ記 19:19、申命記 22:9-11)の規則について。9章。
  5. シェビイート Shevi'it 安息年(出エジプト記 23:11、レビ記 25:1–8、申命記 15:1–11)に関する農業と会計の規則について。10章。
  6. テルモット Terumot 僧侶に与えられる寄付(terumah)の規則(民数記 18:8-20、申命記 18:4)について。11章。
  7. マアセロット Ma'aserot レビ族に与えられる十分の一税に関する規則 (民数記 18:21–24)について。5章。
  8. マアセル・シェニー Ma'aser Sheni エルサレムで食べられるための十分の一税に関する規則 (申命記 14:22-26)について。5章。
  9. ハッラー Hallah パン生地を僧侶に与えること(ハッラー)に関する法(民数記 15:18–21)について 。4章。
  10. オルラー Orlah 植えた植物をすぐに使うことの禁止(レビ記 19:23–25)について。3章。
  11. ビクリーム Bikkurim 僧侶とエルサレム神殿に贈る初物 (出エジプト記 23:19、申命記 26:1)について。

Moed (祭)(מועד‎)

12編構成。
  1. Shabbat
  2. Eruvin
  3. Pesahim
  4. Shekalim
  5. Yoma
  6. Sukkah
  7. Beitza
  8. Rosh Hashanah
  9. Ta'anit
  10. Megillah
  11. Mo'ed Katan
  12. Hagigah

Nashim (女たち)(נשים‎)

7編構成。
  1. Yevamot
  2. Ketubot
  3. Nedarim
  4. Nazir
  5. Sotah
  6. Gittin
  7. Kiddushin

Nezikin[ネズィキーン] (損害)(נזיקין‎)

10編構成。市民の商売と刑罰、法廷の機能と誓約について。
  1. ババ・カマ Bava Kamma 主に損害と補償に関する民事問題について。10章。
  2. ババ・メツィア Bava Metzia 主に不法行為と財産法に関する民事問題について。10章。
  3. ババ・バトラ Bava Batra 主に土地所有権に関する民事問題について。10章。
  4. サンヘドリン Sanhedrin サンヘドリンでの裁判の規則、死刑、その他の刑事問題について。11章。
  5. マコット Makkot Edim Zomemim (証人)、逃れの町、鞭打ち刑について。3章。
  6. シェブオット Shevu'ot 様々な種類の宣誓とその法的責任について。8章。
  7. エドゥヨット Eduyot ミシュナーの時代の法的な争いの事例と、その他の色々な賢者とハラーハーの原理を説明する証言の紹介。8章。
  8. アボダー・ザーラー Avodah Zarah ユダヤ教徒と、(ユダヤ教徒から見て)異教徒もしくは偶像崇拝者との交流の法について。5章。
  9. アボット Avot 賢者の道徳的格言集。6章。
  10. ホラヨット Horayot サンヘドリンによる大きな過ちのために捧げられる、地域社会の意図的でない罪の贖いのための生贄について。3章。

Kodashim[コダシーム] (聖なるもの)(קדשים‎)

11編構成。生贄の儀式に関する、神殿と食事の法。
  1. ゼバヒーム Zevahim 動物と鳥を生贄にする手順について。14章。
  2. メナホット Menahot エルサレム神殿への様々な穀物を元にした供物について。13章。
  3. フッリーン Hullin 屠殺と肉の消費(神聖な理由ではなく日常使われる動物)の法について。12章。
  4. ベホロット Bekhorot 動物と人間の長子の神聖化と贖罪について。9章。 
  5. アラヒン Arakhin 主に財産をエルサレム神殿に奉納した人と農地を奉納することについて。9章。
  6. テムラー Temurah ある動物が生贄として捧げられた動物の代わりになった場合についての法の概要。7章。
  7. ケリトット Keritot 破門(karet)が懲罰となる戒律と、(多くの場合意図的でない)破戒に関連する生贄について。6章。
  8. メイラー Me'ilah  エルサレム神殿の所有物を不正使用した場合の補償について。6章。
  9. タミード Tamid 日々の生贄(Tamid)の手順の概要。6章。
  10. ミドット Middot 第二神殿の採寸について。4章。
  11. キニーム Kinnim 鳥の生贄が混ざった場合に対する複雑な法について。3章。

Tohorot[トホロート] (純度)(טהרות‎)

12編構成。祭儀的な潔・不潔等の法に関係する。
  1. ケイリーム Keilim 様々な器の宗教的な意味での純潔さと不潔さについて。30章(ミシュナーの中で最長)。
  2. オホロット Oholot 死体の穢れと、同じテント型構造の中の物にその不潔さの影を落とす独特の性質について。18章。
  3. ネガイーム Nega'im  ハンセン病に関する法について。14章。
  4. パーラー Parah 生贄に用いる赤毛の雌牛に関する法について。12章。
  5. トホロット Tohorot 様々な純潔さに関する法、特に不潔さがうつる実際の仕組みと、食べ物の不潔さに関する法について。10章。
  6. ミクヴァオート Mikva'ot  ミクワーに関する法について。10章。
  7. ニダー Niddah Niddah(月経周期にあるか産後間もない女性)について。10章。
  8. マフシリン Makhshirin 食べ物が濡れた後に、何か不浄なものに接触して穢れたことを宣言するためのルールについて。6章。
  9. ザービーム Zavim 射精と淋病について。5章。
  10. テブール・ヨーム Yom  ミクワーに入ったにもかかわらずその日の残りは清浄でない、特別な種類の穢れについて。4章。
  11. ヤダイム Yadayim 手の汚れと清め方について。4章。
  12. ウクツィーン Uktzim 果実と茎の関係。両者が互いに対して穢れをもたらすことについて。3章。

バーライター(Baraita)

アラム語で「外側 "external", "outside"」を意味し、ミシュナーには取り込まれなかったタンナーイームというラビ群の言説であり、ユダ・ハナシが編纂したもの。 複数形はバーライトート בָּרַיְתוֹת Baraitot である。バライターとも言う。
ゲマーラーに一部が引用されている。更に、バーライターの集成の一つがトーセフターとなった。
ミシュナーには劣るとされており、ミシュナーとバーライターの内容に違いがある場合、ミシュナーが採用される。

ゲマーラ(Gemara)

アラム語で「完成」「伝統から学んだもの」という意味の言葉。 ミシュナーに関するアモライーム(3世紀-6世紀)の議論・註解書。

ハラーハーとアッガーダー(Halakha and Aggadah)

ヘブライ語の概念用語で、ユダヤ法(Jewish law)とも呼ばれる。
タルムードの大部分を占めているのはハラーハーである。

Minor tractates


最終更新:2017年04月25日 10:10