七つの大罪

ヒエロニムス・ボッシュ(Hieronymus Bosch)『七つの大罪』
主イエスと銘文「汝ら心せよ、主は見そなわし給う」を中央に、キリスト教において七つの大罪とされる「憤怒」、「嫉妬」、「貧欲」、「大食」、「怠惰」、「淫欲」、「傲慢(虚栄)」を円を描くように配し、その四方には「死」、「最後の審判」、「天国」、「地獄」を配した構図が用いられている。

七つの大罪

キリスト教の正典の聖書の中では七つの大罪については直接には言及されてはいない。

七つの大罪は、4世紀のエジプトの修道士エヴァグリオス・ポンティコス(Evagrius Ponticus)の著作に八つの「枢要罪」として現れたのが起源である。八つの枢要罪は厳しさの順序によると「暴食」、「色欲」、「強欲」、「憂鬱」、「憤怒」、「怠惰」、「虚飾」、「傲慢」である。

これと並行した時期に書かれたものとして、プルデンティウス(Prudentius)によって西暦400年ごろに書かれた寓意的なラテン語叙事詩『プシュコマキア』(魂の闘い)があり、これは7つの美徳が7つの悪徳を倒す物語である。ここでは、最初から、「色欲」、「暴食」、「強欲」、「怠惰」、「憤怒」、「嫉妬」、「傲慢」の七つの罪が挙げられており、それに対する「七つの美徳」も記されている。

6世紀後半には、グレゴリウス1世により、八つから七つに改正され、順序も現在の順序に仕上げられる。その後「虚飾」は「傲慢」へ、「憂鬱」は「怠惰」へとそれぞれ一つの大罪となり、「嫉妬」が追加された。そして七つの大罪は「暴食」、「色欲」、「強欲」、「憤怒」、「怠惰」、「傲慢」、「嫉妬」となった。

13世紀のトマス・アクィナスも、その著作の中で、キリスト教徒の七つの枢要徳と対比する形で七つの「枢要罪」をあげている。

4世紀 590年 4世紀末~5世紀初頭
順番 E. Ponticus 順番 グレゴリウス1世 順番 Prudentius
1 暴食 1 暴食(貪食) 2 暴食(⇔節制)
2 色欲 2 色欲(肉欲) 1 色欲(⇔純潔)
3 強欲 3 強欲(物欲/貪欲) 3 強欲(⇔救恤)
5 憤怒 4 憤怒 5 憤怒(⇔慈悲)
4 憂鬱 5 怠惰 4 怠惰(⇔勤勉)
6 怠惰 - -
7 虚飾 6 傲慢(高慢) 7 傲慢(⇔謙譲)
8 傲慢 - -
- - 7 嫉妬(ねたみ) 6 嫉妬(⇔忍耐)

七つの大罪と悪魔の結び付け

1589年、ドイツのペーター・ビンスフェルト(Peter Binsfeld)は、罪と悪魔の関係を記した著作を著したが、その中で、七つの大罪も特定の悪魔との関連付けている。このような七つの大罪と悪魔との関連づけは、キリスト教の本質的な部分と無関係だが、通俗的なグリモワールにおいて引用されることとなった。
七つの大罪と悪魔の関連を最初に表現したのは、16世紀の版画家ハンス・ブルクマイアーである。これには、悪魔がそれぞれ自分の名の記されたリボンを手にしている姿が描かれていた。また、中世には悪魔でなく動物の姿で表しているものも見られる。

大罪 対応悪魔 動物
傲慢(高慢) ルシファー グリフォン、ライオン、孔雀、蝙蝠
憤怒(激情) サタン ユニコーン、ドラゴン、狼、猿
嫉妬(羨望) レヴィアタン マーメイド、蛇、犬、猫
怠惰(堕落) ベルフェゴール フェニックス、熊、牛、驢馬
強欲(貪欲) マモン ゴブリン、狐、針鼠、烏
暴食(大食) ベルゼブブ ケルベロス、豚、虎、蝿
色欲(肉欲) アスモデウス サキュバス、山羊、蠍、兎

新たな七つの大罪

2008年3月、ローマ教皇庁は新たな七つの大罪を発表した。それは以下の七つである。
  1. 遺伝子改造
  2. 人体実験
  3. 環境汚染
  4. 社会的不公正
  5. 貧困
  6. 過度な裕福さ
  7. 麻薬中毒
遺伝子改造などは、胚性幹細胞への牽制とみられる。

最終更新:2017年10月24日 06:35