バラ窓

「バラ窓」は教会の正面に作られる円形の窓である。ガラスや彫刻でまるでレース飾りのような繊細な装飾が見られ、主にロマネスク様式かゴシック様式の教会に見られる。

歴史

教会におけるバラ窓の原型は5~6世紀のバジリカ(教会堂の形式)に始まる。バジリカのバラ窓は、ローマ建築やイスラム建築の「オクルス」に影響を受けていると考えられている。12世紀にローマの大理石工が、ローマだけではなくウンブリア地方などでもバラ窓をつくり、教会の装飾として普及していった。

薔薇はカトリックでは聖母マリアのシンボルのひとつだが、「バラ窓」という用語は17世紀から後に見られる。しかし、「バラ窓 rosone」という単語は、「薔薇 rosa」から来たのではなく、「roue 車輪(フランス語)」に由来するのであり、これが後で「薔薇」と関連付けられた。

バラ窓の中央にはキリストの像が入っているものがあり、その光の輪はキリストによる地上の支配のシンボルである。これは中世の時代の神中心思想(teocentrismo:神が世界の中心であるという思想)から来ている。例えば、ダンテの『神曲』における天国でも至高天(empireo:エンピーレオ)は、神を中心に世界がまわっている様子として描かれている。

聖書における「神は光」という思想を体現するものとしてバラ窓が作られていったと考えられることもある。

Ⅰヨハネ1:5
わたしたちがイエスから既に聞いていて、あなたがたに伝える知らせとは、神は光であり、神には闇が全くないということです。


サン・ドニ修道院のバラ窓(12世紀)(北翼廊、南翼廊)

ノートルダム大聖堂のバラ窓(13世紀)(北)
最終更新:2017年08月04日 09:28