大乗仏教では特に般若波羅蜜(智度)が、空の思想や菩薩の在り方とともに重要な用語として位置づけられ教説されたこと、如来蔵説が唱えられたことなどがある。
これは、衆生皆菩薩・一切衆生悉有仏性・生死即涅槃・煩悩即菩提などの如来蔵思想や、釈迦が前世において生きとし生けるものすべて(一切衆生)の苦しみを救おうと難行(菩薩行)を続けて来たというジャータカ伝説に基づいて、自分たちもこの釈尊の精神(菩提心)にならって六波羅蜜の概念の理解を通じ善根を積んで行くことにより、遠い未来において自分たちにもブッダとして道を成じる生が訪れる(三劫成仏)という修行仮説や死生観(地獄や空色を含む大千世界観)へと発展していった。そうした教義を明確に打ち出した経典として『華厳経』、『法華経』、『浄土三部経』、『涅槃経』などがある。
これらの経典は、釈迦の死後500年以上経ってから書きはじめられたものであり、釈迦が生前語っていたという形式によって書かれているが、実際に釈迦が語った言葉であるとは考えられていない。(キリスト教での外典に近い存在である)
大乗仏教で読まれる仏典
大乗でも読まれる上座部仏典
大乗仏典
主にサンスクリット語で書かれた経典の漢訳である。
偽経と疑われるもの
- 『大般若経理趣分』~『大般若波羅蜜多経 Mahāprajñāpāramitā Sūtra』の玄奘三蔵 訳『大般若波羅蜜多経』(通称『大般若経』)(大正蔵220)第578巻:西遊記でおなじみの三蔵法師(玄奘三蔵)がインド(天竺)に仏教の真理を求める旅によって得られた経典がこの『大般若波羅蜜多経』であり、ここには生きとし生けるもの、命あるものすべてが共存して行くための重要な教えが書かれている。『空』の思想が根本として説かれており、般若は智恵を意味し、智恵は人間の本来の持っている力を最大限に引き出すことが出来る。その『大般若経』全600巻の心髄を表わしている経である。
- 『大悲心陀羅尼』〔『千手千眼観世音菩薩広大円満無礙大悲心陀羅尼経』(大正蔵1060)など〕:
- 鳩摩羅什 訳『梵網経盧舎那仏説菩薩心地戒品第十』(通称『梵網経 Brahmajāla Sūtra』)(大正蔵1484):上巻は菩薩の階位である四十種類の法門を述べたものである。下巻は十重四十八軽戒と呼ばれる禁戒を述べたもので、父母に孝順であることなど、中国的な内容が見られる。パーリ仏典の『梵網経』とは全く関係がない。
- 鳩摩羅什 訳『大智度論 Mahā-prajñāpāramitā-śāstra』(大正蔵1509):摩訶般若波羅蜜経27巻の解説書であり、仏教全体の解説書でもある。
- 『舎利礼文』:仏陀釈尊が御入滅し、火葬された後に残された遺骨、いわゆる仏舎利に対する、礼敬の意を述べた文言である。よって、狭義でのお経、つまり仏陀の言動録である経典ではない。
日本の大乗仏典
- 『答叡山澄法師求理趣釈経書』
- 親鸞聖人『正信念仏偈(正信偈)』:親鸞聖人の「教行信証」の最後に出てくるもので、「教行信証」のエッセンスともいわれる。
- 『曹洞教会修証義』:在家信者と僧侶のための「曹洞宗教化の標準書」と呼ばれ、法要・葬儀・施食会などで読経される。
密教仏典
最終更新:2017年09月09日 11:11