ミシェル・ノストラダムス師の予言集

『ミシェル・ノストラダムス師の予言集』(ミシェル・ノストラダムスしのよげんしゅう、Les Prophéties de M. Michel Nostradamus)は、フランスの占星術師ノストラダムスの主著である。四行詩集を主体とするこの著作の中には、現在「ノストラダムスの予言」として引用される詩句・散文のほとんどが収められている。
『諸世紀』と呼ばれることもあるが、これは『ノストラダムスの大予言』の著者 五島勉によれば、次の経緯でつけられた名称であり、正式な名称ではないという。
『予言集』の原題は「ノストラダムス師の大予言」であり、そのまま訳すと、自分の著書『ノストラダムスの大予言』と区別が付けにくくなると考えた。そこで第2巻46番に Les Siècles という語が出てくることを元に、世界がいつまでも続くようにとの願いを込めて「諸世紀」という題名を、自分でつけた。

ノストラダムス

仏名ミシェル・ド・ノートルダム Michel de Nostredame。医師、予言者。
1503年、プロバンス地方、サン・レミの生まれ。父母ともにユダヤ人だが、キリスト教に改宗。
大学で医師免許をとると、ペストと戦い効果を上げるが、最愛の妻子をペストに奪われ、放浪の旅にでる。
1547年再婚してサロンの町に落ち着く。
1564年摂政カトリーヌ・ド・メディシスにより宮廷に招喚され、その子のフランス王シャルル9世の侍医となる。

『予言集』

『予言集』は、「百詩篇集」と名付けられた四行詩と、散文による2つの序文から成っている。生前に刊行されたのは642篇の四行詩と息子に宛てた序文のみである。死後、さらに国王アンリ2世に宛てた献辞(第二序文)と300篇の四行詩が増補・出版された。死後増補されたものは、ノストラダムスの自筆かどうかについて、現在でもなお様々な議論がある。17世紀になってから、さらに別の四行詩や六行詩などが追補された。

ノストラダムスが正しく未来を見通す能力を持っていたとする立場の論者たち(以下「信奉者」)は、「百詩篇集」には16世紀から遠い未来までの出来事が予言されているとして、数百年来、様々に解釈してきた。また、その過程で「的中例」の数々が喧伝され、いわゆるノストラダムス現象のひとつの原動力となってきた。

しかし20世紀以降、彼が基にしたと推測される文献なども次々と明らかになった結果、ルネサンス期にしばしば見られた百科全書的精神に基づく「科学詩」の一種などとして、『予言集』の文学史上の位置づけも考察されるようになっている。

構成

19世紀の注釈家アナトール・ル・ペルチエが編纂した『予言集』の校訂版は、3つのセクションに分けられている。便宜上、その3区分に従って構成を紹介すると、以下のようになる。

第1セクション

第一序文、百詩篇第1巻1番-第7巻42番。
1555年にリヨンのマセ・ボノムによって刊行された初版では、百詩篇第4巻53番までが収められていた。この版は1982-1983年にアルビ市立図書館とウィーンのオーストリア国立図書館で発見された二冊が現存している。
2年後の1557年、同じリヨンのアントワーヌ・デュ・ローヌによって百詩篇第7巻42番まで追補された版が刊行された。この版は1996年にユトレヒト大学図書館で現存が確認された。なお、百詩篇第6巻のみは、99番までの四行詩と全文ラテン語の四行詩1篇から成り立っている。

第2セクション

第二序文、百詩篇第8巻1番-第10巻100番。
第二セクションの初版は、1558年にリヨンまたはアヴィニョンで出されたという説もあるが、確証はない。現存する最古の版は、1568年にリヨンでブノワ・リゴーが出した版である。この年はノストラダムスの死後2年目に当たるため、第2セクションの信憑性を疑問視する見解もある。
なお、1568年版の『予言集』は、表紙の木版画、花模様、原文などが微妙に異なる複数の版が現存している。

第3セクション

百詩篇補遺、予兆詩集、六行詩集。
これらのほとんどは1605年版の『予言集』で初めて組み込まれ、その後多くの版にも収録されている。

ノストラダムスの予言と聖書の関係

ノストラダムスは、第二序文であるアンリ2世への序文の中で次のように述べている。

これらのことは、私共の後にくる人々によって見られることでありまして、
時は天文的計算により、また聖書と調和しているのであります。

陛下、私はこの談話で、関係のある当事者に対して、
すべての時を予言して混乱させているのであります。
それは来るべき時のために不明りょうにしてあるからです。
正確に記述するとなれば、私がやっておりますように、
天文学と聖書に従って正すことになりましょう。

すべてこれらの姿は、土星、木星、火星などと結合し、
聖書の中で天によって意図されたように、私の詩のいくつかに散見されるものであります。
私はそれをいっそう深く考慮し、結合させたいのです。
(「ノストラダムス予言原典 諸世紀」大乗和子訳より)

このように、ノストラダムスの予言は聖書を前提としている。


最終更新:2018年01月14日 19:17