イエス・キリスト

ここでは聖書の登場人物であり、キリスト教の開祖であるイエス・キリストについて簡潔に述べる。神学上の「神の子」イエスに関する議論はキリスト論を参照。

名前

イエス

イエス・キリストとよく称されるが、名前はイエスであり、キリストとは救世主を意味するギリシャ語である。
イエスの名は、アラム語で "ישוע (Yeshua, イェーシューア)" であり、ヘブライ語ではヨシュア "יְהוֹשֻׁעַ (Yehoshua, イェホーシューア)" に等しい。「ヤハウェの救い」「ヤハウェは救い」「救う者」を意味し、ヨシュア記で活躍するヌンの子ヨシュアと同じ名前である。
イエスや "Jesus" という名は、ギリシャ語名であるイエスス "Ίησοῦς (Iēsūs イエースース、古典ギリシア語再建音)" に由来する慣用名である。

キリスト

キリストとは、古典ギリシア語「クリストス(Χριστός, Khristos)」の慣用的日本語表記である。「クリストス」は「膏(油)を注がれた者」を意味するヘブライ語「メシア(מָׁשִיַח, Māšîªḥ マーシアハ)」の訳語であり、旧約聖書中の預言者たちが登場を預言した救世主を意味する。

出自

イエスの出自は、マタイ福音書ルカ福音書にそれぞれ独自に掲載されたイエスの系図があるが、それぞれ矛盾を抱えている。両者の共通点は、イエスがダビデの子孫であり、シャルティエルとゼルバベル親子をその先祖に持つということである。
マタイ福音書、ルカ福音書、さらにヨハネ福音書によれば、イエスの父(養父)ヨセフは古代イスラエルの王ダビデの末裔とされるが、メシアはダビデの家系に生まれるという伝承があったためと考えられる。家系図に矛盾があることからも、実際にヨセフがダビデ王の末裔かどうかは定かでない。

イエスの生涯

福音書はイエスの言行録であり、イエスの生涯か書かれている。
高等批評では、共観福音書であるマルコ福音書マタイ福音書ルカ福音書は比較的史実に基づいていると考えられている。

イエスの誕生

イエスの誕生については、『福音書』の記述に違いがある。
母マリアの処女懐胎は、マタイ福音書とルカ福音書に記されているが、マルコ福音書とヨハネ福音書には記述がない。
イエスの生誕の地については、マタイ福音書ルカ福音書によればイエスはベツレヘムで誕生したことになっている。これはイスラエルの救済者メシアはダビデの町であるベツレヘムで生まれるという伝承がユダヤ教にあったためと考えられており、実際にベツレヘムに生まれたかどうかは定かでない。

イエスの幼少時代

イエスの幼年期や少年期については不明な点が多いが、ルカ福音書にはイエスが12歳の時、すでに旧約聖書を理解していたという旨の記述が見られる。

洗礼

洗礼者ヨハネより洗礼を受けたイエスは、ガリラヤへ戻り宗教活動を開始する。

公生涯

福音書の記述の主な対象は、宗教活動を始めた時期のイエスである。その中で彼は、様々な教えを説き、奇蹟を起こした結果、弟子の集団が構成されたことになっている。福音書にはイエスがさまざまな病人の治療を行い、重い皮膚病患者を癒し、死者をよみがえらせたなど、多数の奇蹟が記されている。

イエスは宣教の際に、比喩(たとえ話)を多く用いた。
イエスには多くの弟子ができ、福音書はペトロを筆頭とする十二使徒をその代表としている。十二使徒はすべて男性だが、女性であるマグダラのマリアが筆頭の弟子だったという有力な説がある。

イエスの死

イエスは、伝統的なユダヤ教の一派であるファリサイ派のあり方、形ばかりで内容のともなわない見せかけの善行を痛烈に批判し神殿から商人を追い出すなど様々な批判を行った。このことは神殿貴族であるサドカイ派に対する大きな脅威であったため、イエスは「神の子」「ユダヤ人の王」と名乗ったことにより、政治犯としておもにサドカイ派の人間によってローマ帝国に訴えられ、エルサレムのそばのゴルゴタの丘で、ローマ帝国の法に従って十字架刑に処された。
イエスは岩窟式の墓に葬られた

イエスの復活と昇天

それから3日目の朝、イエスの弟子たちが墓を訪ねると、墓を閉じていた岩が取り除かれ、イエスの遺体が無くなっていることに気づいた。それから、復活したイエスは弟子たちの前に姿を現した。40日後、昇天していったという。

イエスの昇天後

弟子たちは各々、宣教の為に世界中に散らばっていった。
この経緯を詳しく説明したものが使徒言行録である。
最終更新:2018年01月27日 19:47