ハダカンボ南西沖海戦

ハダカンボ南西沖海戦は、ヤーディシア大戦でのリントヴルム朝ヤード帝国の潜水艦隊と立憲王政アーカルソン=リペルニアスルガの輸送艦隊との戦い。

経過

ヤーディシア大戦時のある一時期、スルガはアトリオンに軍需物資の発注と輸送の依頼を受けた。
軍閥割拠中でスルガを伺う軍閥も存在したために大戦には参戦しなかったが、独立時にアトリオンから多額の借り入れを行なっており、スルガはこの返済のために引き受けた。
当時シンファナ海の対岸にはリンディス軍がレオネッサと戦闘しており、スルガはカノミス王国からの難民を受けれていた。

スルガ輸送船団の目的地はタヴェリア南部のレオネッサ王国領東タヴェリア植民地。
22隻の輸送船は援助物資を積み込んで補給不足に悩むレオネッサ植民地軍のために出航することになった。しかしその情報は初めからヤード帝国に察知されていた。
スルガはヤード帝国がイクファターナ中央海を中心に、潜水艦による通商破壊を行っていることは承知していた。ジャーカルクの商船が撃沈されたことも記憶に新しかった。
またヤード帝国中央海艦隊は中央海に無尽に睨みを効かせており、これに対抗できるのはアトリオンの艦隊しかなかった。もちろん、貴重な決戦兵力をリスクに晒すことはどちらもしなかったが、駆逐艦一隻でも遭遇すれば輸送船団はなすすべもない。

駆逐艦は偵察任務にも使われる軍艦である。冒険小説と違い、輸送船が先に駆逐艦を見つけて退避する、などということはできない。

駆逐艦は輸送船よりも速く、一度見つかれば逃げることはできない。
制海権とはこれほど大きなものなのだ。

スルガには独立時に接収した礼帝国シンファナ艦隊の艦艇があった。
しかし航続距離の関係上、タヴェリアまでついていくことは不可能だった。

アトリオン艦隊もまた帝国艦隊の牽制と、自国の艦艇を護衛することに手一杯であったのだが、駆逐艦二隻を護衛に割くことが決定された。

アトリオンの駆逐艦の名称は「フラットコンプリート」「オーダーアンドハーモニー」。

22隻の輸送船団はスルガを出港し、一度西進した後、ゴーシュ沖でアトリオンの駆逐艦二隻と合流した。
タヴェリアへの航路には、もっとも危険な海域である中央海西海峡を避ける必要があった。そして帝国の勢力圏であるハダカンボについても、なるべく遠くの沖に迂回する必要があった。
しかし事前に情報を察知していた帝国はハダカンボ南西沖に総勢十隻の潜水艦を分散配置していたのである。
警戒を強めつつ航海を進める船団は、ついに帝国の潜水艦の一隻に発見されることになった。
潜水艦は船団の発見を司令部に打電。駆逐艦に発見されない距離を保持しつつ、追跡を開始した。
それぞれの海域を受け持っていた周辺の潜水艦たちは浮上して最大速度で船団に向かった。

帝国艦隊の無線が活発化したことでアトリオン司令部に緊張と衝撃が走った。
司令部からの警告により、輸送船団も自らが発見されたことを自覚した。
当時、水上艦が潜水艦に対抗する手段としては、浮上時に体当たりか砲撃を加えるしかなかった。爆雷の登場は大戦後期である。

ヤード帝国の潜水艦が装備している魚雷は、当たりさえすれば輸送船を一撃で撃沈せしめる威力を持っていた。
問題は、当てるためには接近せねばならず、発射すれば自分の位置が露見し、魚雷一発あたりのコストは乗組員全員の年収の合計に匹敵することだった。
オーダーアンドハーモニーの船長アルベドは、そういった帝国の潜水艦事情を把握しており、船団を一網打尽にするために、ある程度の数が揃うまでは攻撃してこないと踏んでいた。そして、ある程度の数が揃う前になんらかの対策を行わなければならないことも承知していた。

オーダーアンドハーモニーや輸送船たちは総動員して潜水艦を捜索したが、潜望鏡や怪しい船影はついに発見出来なかった。
夜間に差し掛かった時刻。アルベド船長は決断した。船団を二つに分け、別々のルートを取ることで被害を分散するという作戦だ。
潜水艦が一隻だけであれば半数を逃すことができるし、ある程度両者が離れてから再度分割すれば、潜水艦が二隻いる場合でも対応できる。

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最終更新:2019年05月19日 20:49