ジンロウがジンロウ◆3SNKkWKBjc



アメリカ大陸西部にある都市・スノーフィールドで話題となっているのは『人狼』の存在だった。
神秘が遠のいたこの時代では些か遅れた都市伝説。
しかし、人々は「人狼を見た」「恐ろしい怪物が」「この世の終わりだ」と噂し合う。
ニュースキャスターは「我々は人狼の生贄なんだ」と悲観的な感想を口にし。
号外では「人狼現る!?」など不安を煽るような煽りを大きく記述する始末。
不可思議な事に、スノーフィールドは世紀末の最中。あるいは巨大隕石の衝突を目前に、絶望しきったかのような雰囲気を漂わせていた。


『人狼』の被害は止まる事を知らない。



●   ●   ●



随分とイカれた野郎だ。
俺は、そいつを殺した後で思った。

気付いた時、俺はゴミ捨て場でゴミ袋の山に埋もれていた。こうすれば寒さが凌げるし、多少温かい。
けど、俺はこんな場所に居た記憶はなく、理由を考えても、考える事が嫌いだったので止めた。
ゴミ袋をかき分けて、風を全身に浴びれば尋常ではない寒気が襲いかかる。
夜は凍死があっても不自然じゃない寒さだ。
ズボンに上手い具合に入っていたのは――ナイフ。
これで殺人を犯したのを思い出す。

そういえば長い事、人を殺していなかったと記憶を蘇らせれば、苛立ちが込みあげた。
誰でも良いから殺したい。
その中でも、幸せそうな奴を殺したかった。

しばらく周辺を徘徊し続けていると、一人の男と出くわす。
何も書かれていない真っ白な紙を手に、何故か上機嫌な様子だった。
『聖杯戦争』『サーヴァント』聞いた事ない単語をブツブツ呟きながらも、自分一人で盛り上がっている。
じっと俺が眺めていたのを男が視界に捉えて、ギョッと気味悪そうな顔色に変化させた。
当然だ。
俺の容姿はボロボロの包帯を全身に巻きつけたミイラ男。
例え、俺が餓鬼だったとしても見て見ぬフリで無視したくなるだろう。

「なんだお前っ、あっちにいけ!」

野良犬を追い払う仕草をする男。
俺としては、俺に恐怖する男の反応に高揚感を覚えたのだ。
以前、血で汚されたせいで白銀が輝きを劣化したナイフを握りしめ、男に見せびらかせば相手は小さな悲鳴を漏らす。
体を硬直している男へナイフを刺す。
何度も何度も心臓らしき部分だけを狙って、肉体に刃を滑り込ませば、やがて男は生命を停止した。

死体となった男には関心は一つも湧かない。
人形ごっこのように、死体をいたぶろうとは考えた事が無かった。
男が手にしていた真っ白な紙には血の色が染み込んでいる。
だけど、文字や記号ですら無い白さだ。こんなものに喜んでいたなんて、相当頭がどうかしていると俺が感じた時。
紙は突然消えた。
俺が周囲を見回してみるが、紙はどこにもない。


代わりに、犬が一匹いた。


結構な体格で、その気になれば俺を背負って走り抜けそうなほどだ。
澄んだ瞳で俺を眺めて来るのは、何故だろう。俺は餌なんか持っていない。
狼だったら、死体を喰ってもおかしくないけども、町中で狼なんて現れるのだろうか。
そもそも、犬と狼の区別だって分からなかった。

俺は死んだ男とは違って、その犬を追い払わなかった。最初は何もないと判断したのだ。
男の返り血の匂いにつられて犬が俺についてくる。
接近されると、びっくりするほど犬の体が大きく感じた。
何だかイラついて蹴ってみたが、ビクリともしないどころか感覚が無い。
ナイフで切ってみたが、確かに傷つけたつもりでも血の一滴すら流れなかった。

俺は最初、犬はお化けだと思った。
恐る恐る触ってみれば、ちゃんとゴワゴワと固い毛並みを実感できたので、実体はあるらしい。
犬を眺めていると変な記号が浮かびあがった。俺は文字が読めないけど、何故か『人狼』という読み方だと理解できた。
それと『聖杯戦争』に関する情報。色々ゴチャゴチャ面倒くさい余計なものばかり頭の中で浮かぶ。
どうでも良かった。
あまり深く考えると、折角人を殺したのに再び苛立ちが生じてしまう。俺は犬と一緒に街へ向かった。

それからというもの。
犬は未だに俺から離れないが、悪くはなかった。
俺と犬を見た奴らは「人狼だ!」と叫んで喚く様子をしているのが面白かった。
俺にビビってるのか。犬にビビってるのか。多分、両方だ。

犬はよく『人狼』と呼ばれるから、人間に化けられるかと観察してみるが全然そんな事が無い。少しつまらない。
ただ、犬は鼻がよく効いて、ゴミの中から直ぐに食べられそうな物を見つけてくれる。
俺と犬は一緒になって捨てられた食べ物を貪っていた。


結局、俺が街に来ても往くアテはない。
帰る家だって、俺には何もなかった。犬にやる餌すらない。
最終的に辿り着いたのは、浮浪者の溜まり場だった。
ボロボロの俺と犬を見かねた悪臭漂わせる浮浪者の一人が、ダンボールで小さな家を作ってくれた。
犬も一緒に入ったら非常に窮屈だが、お陰で寒くはない。
聖杯戦争や人狼のことはサッパリ分からないが、この日、俺は久しぶりに熟睡できた。

深い眠りに就く間際。
さっき、俺にダンボールをくれた浮浪者が仲間と話しているのが僅かに聞こえた。


「なぁ。さっき包帯まみれの子供と恐ろしい人狼が来てな………あれ?」



○   ○   ○



アメリカ大陸西部にある都市・スノーフィールドで話題となっているのは『人狼』。
目撃情報は多彩で、どれもこれも同じ姿で確認されていない。
「ああじゃない」「こうでもない」と目撃者は色々と表現を加えようと必死だが、未だに全貌が明らかではなかった。
ただ。
凶暴で残酷な人狼という事実だけが残されていた。
警察や猟師、興味本位の人間を含めて人狼を捕獲しよう、討伐しよう。なんて声が絶えない。



しかし、未だ『人狼』による死傷者は発見されていなかった。







【クラス】アサシン
【真名】人狼(SCP-488-JP)@SCP Foundation
【属性】中立・中庸

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:C 魔力:D 幸運:C 宝具:C


【クラススキル】
気配遮断:C
 自身の気配を消す能力。
 完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。


【保有スキル】
怪力:E
一時的に筋力を増幅させる。
アサシンの情報改変の逸話でどうにか会得した為、発動には幸運判定に成功しなければならない。

情報抹消:B
 対戦が終了した瞬間に目撃者と対戦相手の記憶から
 アサシンの能力・真名・外見特徴などの情報が消失する。


【宝具】
『我、我らこそが人狼なり』
ランク:C 種別:対情報宝具 レンジ:∞ 最大補足:∞
 アサシンの所有する情報改変能力。アサシン自身に関する文書・音声・肉声の情報を改変する。
 改変は一部もしくは追加形式のみであり、客観性に欠けた『凶暴で残酷な人狼』である事を示すだけ。
 アサシンは人狼ではないし、強靭な能力は備わっていない。
 だが、アサシンの真の実体を伝えるのは困難を極めるだろう。


【人物?背景】
改変能力を持ったオオカミの一種。
並のオオカミよりも活動能力が劣っている為、能力を駆使して生存を図っていた。
故に、願いは以下の通りとなる。


【サーヴァントとしての願い】
種族の繁栄


【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP Foundationにおいてme_te_de_ko氏が創作されたSCP-488-JPのキャラクターを二次使用させて頂きました。

ttp://ja.scp-wiki.net/scp-488-jp






【マスター】
アイザック・フォスター@殺戮の天使

【人物背景】
母親が連れてきた男によって生々しい火傷を負い。悪質な孤児院へ放りこまれる。
孤児院を経営していた夫婦を殺害。
その後、盲目の老人と僅かな期間だけ暮らした。
老人が死んだ後。凶器を持って再び街へ獲物を探しに彷徨う。
参加時期は小説版の過去編ラストから。殺人鬼へと名を上げる前の子供時代の彼。


【weapon】
ナイフ
 割と長持ちする


【能力・技能】
生存能力が結構強い
何日も飲まず食わずでも生きているレベル
考える事は苦手で、文字は読めない。


【マスターとしての願い】
なし。聖杯戦争についてもよく分かっていない。




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最終更新:2016年11月27日 00:31