ダラス

だらす

グラ・バルカス帝国外務省東部方面異界担当課員で文系出身。フルネームは「ダラス・クレイモンド」。Web版では、上に対しては卑屈で下に対しては尊大で高圧的という、小役人のステレオタイプのような男。書籍版でも、下に高圧的なのは変わらない。
年齢は、Web版では推定30代始め、書籍版では20代半ば*1。容姿は、均整の取れた体格の無精ひげを生やした蓬髪の男性として描かれている*2*3。官僚としては潔癖な人物*4で、理想論には否定的*5。主君や自身の意に沿わない人間に対して、思考が硬直しがちな欠点を持つ。

シエリアの部下で、書籍版では彼女を尊敬している*6。主君であるグラルークスに崇拝に近い忠誠心を抱いており、「帝王の言葉が果たされないことは悪である」とまで考えている。他のグラ・バルカス帝国人と同様に異世界の国家と人々(日本国を含む)に対する差別意識を持ち*7、その軍事力を軽視している。ただし、ギーニ・マリクスの殲滅主義的な主張は、将来に禍根を残すという観点から支持していない。

外交官としては、軍事力を背景とした脅迫外交を旨とする国の方針に沿った対応を取る。しかし、性格上の欠点と差別意識が合わさった結果、嘲笑や恫喝する場面ばかりで、柔軟に交渉して相手に要求を呑ませる描写は乏しい。シエリアから「挑発だけでは何も引き出せないから下がっていてくれと交渉から締め出された事すらある。また、軍事力を脅しに使う割に軍部に対する理解は乏しく、無茶な要求をしてトラブルを起こす事もしばしば。戦艦グレードアトラスターの乗組員から危険視された*8末にラクスタルからは半ば面従腹背で応じられ、ランボールと揉めた際には上司であるシエリアが非を認めて代わりに謝罪するなど、同じグラ・バルカス帝国人でも彼の思考や言動に辟易している人間は少なくない。

本格的な登場は、シワルフ率いる神聖ミリシアル帝国の使節団が先進11ヵ国会議の説明のためにレイフォリアを訪れた時。使節団に散々嘲笑を浴びせ*9、彼らに無礼な国という印象を残している。
先進11ヵ国会議後、各国の外交官達が捕虜返還交渉とシエリアの発言*10の真意の確認の為、レイフォリアを訪れた際には、格式の都合でシエリアに対応を委譲した*11

世界連合とのバルチスタ沖大海戦後に、朝田から最後通牒*12を突き付けられた際にも個人的な興味から同席したシエリアと共に対応。会談で日本の戦乱の歴史や技術力の一端を見せられるも、警戒心を抱いたシエリアとは異なり、技術に関する知識に疎い彼はその意義に気づけず、しかも欺瞞情報と判断してしまった。
彼の解釈としては、「映像の通りに敗戦を経験したならば、戦勝国によって軍備と軍事技術を取り上げられているはずである*13。それでもなお日本国の軍事力が帝国を上回るというならば、バルチスタ沖大海戦に不参戦だった理由が説明できない*14。」というもの。しかし、これらは欺瞞等ではなく紛れもない事実だった*15

そして、ムーへの侵攻後に日本国の参戦が本格化すると、そこで本当に軍がする事態が起きてしまう。敗北の説明と皇太子グラ・カバルの視察中止の要請で訪れたランボールとは、敗北の動揺と苛立ちで口論となり、上述の通りシエリアが謝罪を入れている。
その衝撃の冷めやらぬ中で今度はイシュタム壊滅のニュースが届き、愕然。中央歴1643年1月、偶然ダラスは外務大臣に「次の戦いと同時に別働隊を派遣して、ムーの首都オタハイトと商業都市マイカルを攻撃させる」という作戦を個人的に提案していた*16。これが上層部に承認され実行されていたのだが、結果は大失敗。派遣された「本国艦隊第52地方艦隊(通称イシュタム隊)」24隻は、日本国海上自衛隊第4護衛隊群とムーの戦艦ラ・カサミ改及び航空隊によって全滅。ムーのニュースを見るまで作戦の実行を知らなかった彼は、自分の放言が原因で取り返しのつかない結果が起きていた事に動揺する*17*18

この後も戦況は悪化の一途を辿り、遂には視察を強行したグラ・カバルが日本の捕虜にされる事件が発生してしまう。これにより「日本懲罰作戦」が発動され、グラ・バルカス帝国連合艦隊を日本国に差し向けることが決定される。
ダラスは敗北続きから内心不安を感じるが、これまでの敗北は油断や慢心による戦略ミスの所為だと考え、本作戦の成功を信じていたが、結果はムーのニュースと軍部からの連絡で、信じられない様な一方的惨敗の報告とその内容に大きな衝撃を受ける。
ここに至ってようやく朝田の話が真実であり、日本の軍事技術が帝国のそれをはるかに凌駕している事実と、祖国に迫る亡国の危機を悟って戦慄。今まで相手を「蛮族」として滅ぼしてきた自分達が、より強大な相手に追い詰められている状況に激しい焦りと恐怖を感じつつ、国の未来を守ろうと力を注ぐ決意をする。
しかし、まだ勝利を諦めておらず、同化政策も視野に入れて行動をより悪い方向へエスカレートさせ始める。*19

ヒノマワリ王国の首都ハルナガ京に所用で訪れた際*20、同国第3王女フレイアの陳情*21に対応するが、相変わらずの恫喝に加えて暴力まで振るって一蹴したばかりか*22、彼女を危険だと見なし、独断で部下にフレイアの暗殺を指示する。
ところが暗殺計画が事前に露見していたため、暗殺は失敗し、これまでハルナガ京の奪還に消極的だったムー*23や日本国*24第二文明圏連合軍が駐留するバルクルスへの逃走を許してしまう。
しかもこの時、フレイアの顔は知っていても姉妹である他の王女達と見分ける事が出来ない暗殺の実行部隊は、ダラスの「確実に暗殺せよ」という指令を守る為にフレイア襲撃と同時に彼女達の屋敷も襲撃して暗殺。更に征統府は反乱を避けるべく、王家とヒノマワリ王国軍の連絡を遮断するため、すぐに王と王子達を幽閉する暴挙に出ていた。
第二文明圏連合軍に保護されていたフレイアがこの事態を知ると、非常時国家保護法によりヒノマワリ王国の実質的権限が自身に移行されたとして、ヒノマワリ王国内のグラ・バルカス帝国勢力の排除の協力をムー及び日本に要請した事で、攻撃の大義名分を与えてヒノマワリ王国奪還作戦を招く大失策となってしまう。

そして、征統府から宿泊先のホテルへ向かう途中でヒノマワリ王国奪還作戦が始まり、『帝国支配の象徴』と誇り直前まで仕事をしていた征統府がF-2LJDAMによる精密爆撃により眼前で破壊され、重要施設への的確な攻撃など、日本側の兵器の性能と威力を直に目の当たりにして狼狽。
かつての会談で否定した朝田からの警告*25を思い出し、彼の言葉通りの状況になってしまった屈辱と迫る死の恐怖に心を乱しながら、必死で単身、250km先の帝国支配圏への脱出を試みる。

しかし、なんとか250kmを踏破し、帝国が支配しているはずの地域にたどりついた時には、既にレイフォルの帝国軍は壊滅。グラ・バルカス帝国そのものがムー大陸から叩き出された後だった。
自分が致命的なミスを犯し、その所為で帝国が大敗北を喫した事も何も知らず、門番に素性を名乗った事が仇となり、ヒノマワリ王国の女騎士コウに散々痛めつけられた末に捕らえられ*26、ヒノマワリ王国へと引き渡されることになる。
関連項目
人物グラ・バルカス帝国シエリア

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過去のコメント
  • シエリアと一緒に桜田門前で斬殺がいいな。 - 名無しさん (2021-05-23 12:28:09)
    • ヤケノハラとなったラグナでギロチンかな - 名無しさん (2021-05-28 07:09:57)
  • 「悪いことをするとアサダが来るよ?] -   (2021-05-23 16:45:55)
    • どこのモンゴル人だよw - 名無しさん (2021-05-23 22:28:16)
    • 朝田との再会は絶対あるだろうな。レミールみたいに。 - 名無しさん (2021-05-24 16:17:36)
  • しかしコメント欄では本編以上にフルボッコにされてるな。レミールと違ってヘイト集めてるというよりは馬鹿にされている感。 - 名無しさん (2021-05-25 21:28:25)
    • レミールはどうしようもないという事実を理解する知恵があって、今更後悔しても許さないという方向でしょうが、ダラスは「何もしないほうがまだマシ」という、無能な働き者を体現してますからね。 - 名無しさん (2021-05-27 00:28:14)
  • 1年間走らされっぱなしで草生える - 名無しさん (2021-11-04 12:57:57)
    • まだ半年やで - 名無しさん (2021-11-06 09:16:34)
  • 別働隊(イシュタム)をムーへ派遣する案やヒノマワリでの暗殺指令がなかったら、多少歴史が変わったかな? - 名無しさん (2021-11-06 12:54:56)
  • この男の名前の由来もしかして「堕落」?出世欲はあるけどやり方は軍事力を背景にした恫喝ばかり、軍部にお世話になりっぱなしなのに感謝するどころか都合が悪くなると喚き散らすばかりだし - 名無しさん (2021-12-16 21:39:43)
    • 馬鹿だか何だか(悪い)意味の方言で だらず だかなんかがあったような気がする - 名無しさん (2021-12-18 20:24:09)
    • アメリカにダラスって都市があるからそこからとったのかと思ってた。 - 名無しさん (2022-03-10 21:42:15)
  • さて、頼みの綱のレイフォルの基地もご覧のあり様になったわけだが、必死こいてたどり着いた光景がこれだった心境はいかにだなw - 名無しさん (2021-12-16 21:48:01)
    • レイフォルでの陸戦が始まったので、彼の登場もあるだろうな。驚愕、絶望、怨嗟の言葉を期待。 - 名無しさん (2021-12-17 13:43:15)
  • 表紙のイラストは初見でムーのモブ軍人かなと思ってた、サブタイトルが激動のムー大陸なので尚更 - 名無しさん (2021-12-25 11:55:30)
  • 生きて帰っても同化政策の話が広まれば嫁さんと母ちゃんに殺されるのだ… - 名無しさん (2021-12-26 08:27:13)
    • 彼の家族についての描写はなかったなあ。多分いないな。 - 名無しさん (2021-12-26 08:44:57)
  • 残念ながら(?)未だ消息は不明 - 名無しさん (2022-01-31 13:21:38)
    • しぶとく生きてたな。是非虫を食べさせてやろう - 名無しさん (2022-04-04 00:18:47)
  • ダラスとゲスタって地位に差があるせいか会うこともなく、一緒に語られないな。ダラスのほうが、小物だが面白い奴と感じる。報いをうけろって点では同じだが。 - 名無しさん (2022-02-02 11:21:02)
  • (速報)ダラス選手、ついに帝国領250km走破!! - 名無しさん (2022-04-04 10:09:46)
    • そのまませめて日の丸ゴールに飛び込めばまだナンボかマシなものを、何で寄りによってヒノマワリゴールにダイブするかねえ。 - 名無しさん (2022-04-04 12:28:56)
  • このままヒノマワリでの裁判で死刑判決のナレ死か? もうちょっと出続けて欲しいな。 - 名無しさん (2022-04-04 16:25:35)
    • ゲスタとどっちがましか。 - 名無しさん (2022-04-07 15:24:57)
    • こいつが捕らえられた事が分かったら、あっちこっちから取り調べの為に引き合いがあるな。 - 名無しさん (2022-04-28 17:47:35)
  • 理想に燃えていた頃の回想を出してほしいな。その頃のグ帝は穏健派のハイラスがまだ生きていたのだろうか? - 名無しさん (2022-04-08 00:44:30)
  • レミールと似た立場じゃない? 裁判になるとされてそのままフェードアウト? 外交関係はシエリアが引き受ける - 名無しさん (2022-04-08 14:05:13)
  • (2021-04-26 20:28:06) で書いたものです。ダラスの冒険1年近く続いたけど、あっけなく終わっちゃったミ☆ 次回ダラスの裁判最終回「オイぃい!?俺の扱い小さいのかよ!?いったいどんな判決…アッー!極刑ですか?そうですか…。ですよね~。」お楽しみに! - 名無しさん (2022-04-09 06:53:39)
    • この世界だと極刑が死刑じゃない可能性もある。拷問→回復魔法みたいな無限の苦しみを与える刑罰もあるかも知れない。 - 名無しさん (2022-12-01 22:34:03)
  • 講和交渉に来たパルゲールとテレビ面談をして、自国の敗北とヒノマワリ王国への条約違反行為に対する懲罰で解任・追放を言い渡されるとかあればいいですが… - 名無しさん (2022-04-09 21:26:09)
    • 個人的には同化政策の生き証人として、ただでさえ悪い自国の立場をますます悪化させる材料として交渉の場に引きずり出されて、敵味方双方から立場を失くす展開とか見たいですね。あれでも国とグラルークスに害をなすものと見られるのが一番堪えるようなので。 - 名無しさん (2022-04-10 10:08:52)
  • ゲスタもそうだったが、こいつも自分の愚かさに気付きそうも無いな。そもそも自分が愚かだという発想が無いのだから。 - 名無しさん (2022-05-01 14:57:42)
  • 評価できるのは250kmを踏破した体力と表紙の剽悍な絵面かな - 名無しさん (2022-05-01 20:27:20)
    • 東京から名古屋までで約263km - 名無しさん (2022-05-13 15:55:54)
    • 直線距離でだ。すごい体力と言わざるをえないな。 - 名無しさん (2022-05-13 16:02:15)
      • 革靴+スーツ 水は道端の川や池や水たまり 食料も道端の草?で250キロ走破 陸軍の特殊部隊でも通用するんじゃなかろうか? - 名無しさん (2022-05-26 10:50:39)
        • 書籍の挿絵見た限り革靴でスーツではないと思うが - 名無しさん (2022-06-22 08:44:11)
  • 愛国者なのに祖国を全力で滅亡に向かわせてるの良いよね - 名無しさん (2022-07-15 12:14:29)

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最終更新:2022年06月26日 11:54

*1 20代後半のシエリアより若いため。web版では彼女より年上と設定されている。

*2 年齢に比して老け顔ないしはやつれ気味な印象を与える。

*3 初出は書籍版第六巻表紙。なろう版初登場(2016年)から4年近くかかっていたためか、官僚としてのイメージや普段の言動からは、やや意外めな姿をしていたためか、初見でダラスだと分かった人がほぼいなかった。

*4 汚職官僚による不正や軍人の快楽目的の殺人を嫌う。

*5 理想に燃える頃があったが、現実との狭間でその気持ちを失い、その反動で現在のようになったらしい。

*6 web版では、彼女の下にいる事に不満を抱いている節がある。

*7 書籍第四巻53・54・308・315頁等

*8 書籍第四巻110頁

*9 「我が国の戦艦たった1隻に降伏した弱小国レイフォルが、本当に列強とは!!」「あまりにもあなた方現地人の基準が低すぎて、笑わざるを得ないのです!」などと発言

*10 「我が国に降れ」と言う宣戦布告

*11 そこでも彼らを散々挑発するが、その所為で対応した朝田に「帝国は品が無い」と言われ、逆に憤慨することになる

*12 帝国がムーに侵攻したら、日本国がムー側で参戦する。

*13 日本国憲法がその傍証と考えている。

*14 理由は、遠かったから。世界連合は神聖ミリシアル帝国主導の元に早期殲滅を目的として編成されたため、日本国や第三文明圏の国々は遠距離ゆえに出撃に間に合わないず不参加になった。

*15 読み違いからくる言動は日本側から見れば滑稽でしかなく、朝田からは挑発が下手な事も含めて呆れられている。また、シエリアに交渉から締め出されたのはこの時

*16 書籍第五巻80頁

*17 彼は雑談程度の感覚だったらしく、本当にやるとは思っていなかった。作戦の内容そのものは理にかなっていたためか、処分も受けていない。

*18 書籍第六巻315頁

*19 その方法が後にゲスタによって語られたが、なんと兵士に現地の女性を凌辱させて混血を作り、彼らを優遇させることで自分たちに協力的な味方を作ると同時に連合軍に攻撃を躊躇させると言う、えげつないが日本にとっては有効ともいえる策だった。もっとも、時間がかかりすぎる策ではあるが。

*20 この頃には、日本国が帝国の基準から見ると特殊な外交方針を取っている事や不本意な形で帝国に降った国々に配慮している事に気づきはじめていた。

*21 ヒノマワリ王国民に餓死者が出ているため食料を供給してほしいという内容

*22 硬直した思考を変えられず、手なずけて利用するのではなく、より強い圧力をかけて盾にしようとしている。

*23 ヒノマワリ王国は1万2000年に及ぶ友好国であり、王国民に多数の犠牲が出る軍事作戦は政治的に許されない。

*24 グラ・バルガス帝国支配下の国々に対する外交交渉の実績に乏しく、終戦後の国交締結を円滑にするために侵略者ではなく解放者だという大義名分が必要だった。

*25 「70年以上の技術格差があり、戦争になれば確実に帝国は敗ける」

*26 その際に「帝国がムー大陸から叩き出された」事実を告げられるも、信じることができず感情的に喚いた結果、顔が2倍に腫れ上がるまで殴られ、のちのヒノマワリ王国の裁判記録には「被疑者が逮捕を免れようとしたため、逮捕に伴って多少の有形力の行使を行った……」と小さく記される。