もしアライさんがかばんちゃんに怪我を負わせていたら・その1

61: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 19:17:28 ID:???Sd
ラッキービースト。

フレンズ達の世話や、人間へのガイドを行うロボットである。

普段はフレンズ達と話すことはないが、緊急事態に陥った時…

すなわち、パーク園内で人間が危機に陥った時、救出にフレンズの力を要すると判断した場合に、フレンズと話すことがあるという。

そのラッキービーストのうちの一機…『ボス』と呼ばれる個体は今、火山の山頂を目指し進んでいた。

『かばん』と呼ばれるヒト(のフレンズ)の少女と、サーバルのフレンズと共に。

サンドスターロウの噴出を止め、巨大黒セルリアンを倒すために、一行は山頂を目指す。


62: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 19:23:20 ID:???Sd
かばん「サーバルちゃん、何か変わったものがないか、探そう!」

サーバル「え?」

かばん「ここに何かが…今のうちに見つけたほうが良い気がして…」

サーバル「分かった!」

四神の石板を探す二人。
そこへ…

アライさん「たぁー!」ガバッ

かばん「わぁっ!?」ドサッ

かばんの背後から、アライグマのフレンズが飛びかかってきて、かばんを押し倒した。

アライさん「やっと見つけたのだ!帽子泥棒め!」ガシッ ヒョイ

倒れているかばんの帽子を奪うアライさん。

アライさん「取ったのだー!」キラキラ

うつ伏せのかばんにのしかかったまま、自慢気に帽子を眺めるアライさん。

フェネック「…ん?」

その時、遠巻きに見ていたフェネックは気づいた。

…帽子のつばに、血が付着していることに。

フェネック「…え」

フェネックは青ざめた。


63: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 19:28:58 ID:???Sd
アライさん「おい帽子泥棒!アライさんに何か言うことないのか!?」ガシッグイイッ

アライさんはかばんを掴み、ひっくり返した。

かばん「」ゴロン

…ところで。
アライさんはかばんを押し倒したとき、周囲の安全性を確認していただろうか。

押し倒したかばんが怪我をしないように、加減をしただろうか。

…アライさんの様子を見る限り、とてもそうは見えない。

そんな状況で、周囲の安全性も確かめずに人を背後から押し倒したら、どうなるか…。

かばん「」ドクドク

サーバル「…かばん、ちゃん?」

かばんは、額から血を流し、意識を失っていた。

倒れたとき、丁度額の位置に岩があり、それに頭を打ち付けたのである。

フェネック「っ…!」タタッ

遠巻きに見ていたフェネックは、即座にかばんへ駆け寄った。


64: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 19:41:22 ID:???Sd
サーバル「ちょっと…かばんちゃん!?ねえ、しっかりして!」ユサユサ

アライさん「な、何なのだ…アライさんのせいじゃないのだ!こいつが…こいつが、アライさんの帽子を取ったから…」

フェネック「ちょっと、大丈夫!?」スッ

フェネックはかばんの口元に、大きな耳を近づけた。

かばん『………スゥッ…………ハッ………ハッ………』

フェネック「…っ」

弱々しく、不安定だが。かばんは呼吸をしていた。

フェネック「ど、どうしよう…!ラッキーさん!」クルッ

フェネックはラッキービーストの方を見る。

ボス『救難信号、救難信号』ピーピーピー

ボスは既に信号を発していた。

ボス『非常事態発生、非常事態発生。サーバル、かばんをフレンズホスピタルへ連れていくのを手伝ってね』

サーバル「え…?ふ、ふれ…?そこに連れていけばいいの!?」ガシィ ヒョイ

サーバルはかばんを背負った。

ボス『こっちだよ』ピョコピョコ

そしてボスは、いつもよりやや早走りで歩き出した。

サーバル「も、もっと速く走ってよ!」

このままゆっくりとボスについていったら、かばんは手遅れになるかもしれない。



フェネック「ラッキーさん、私が担ぐから、案内して!」ガシィ ヒョイ

フェネックがラッキービーストを抱えあげた。


65: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 19:46:58 ID:???Sd
ボスよりはフェネックの方が足が速いはずだ。

サーバル「あ、あなた…!」

フェネック「ラッキーさん、案内急いで!速く!」

ボス『そのまま前に進んでね』

フェネック「わかった!」タタッ

サーバル「かばんちゃん、大丈夫だからね!」タタッ

二人のフレンズは、フレンズホスピタルという施設を向かって走り出した。



アライさん「ちょっと待つのだぁ!!!」

フェネック「な、なに!?」ピタッ

フェネックはアライさんに呼び止められ、足を止めた。

フェネック「今急いでるの!何かあるなら早くして!」

アライさん「あ、あ…」ワナワナ

フェネック「?」





アライさん「…そいつは悪い奴なんだぞぉっ!帽子泥棒なんだぞぉ!そいつに味方する前に!まずはアライさんへ謝らせる方が先なのだぁ!!」


フェネック「」

サーバル「」

…とんでもないことを言い出した。
今がどういう状況か分かっていないのだろうか。


66: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 19:50:25 ID:???Sd
フェネック「そういうの今いいから!付き合ってらんないの!」タタッ

サーバル「かばんちゃん!」タタッ

…だが二人はアライさんを無視し、向こうへ走っていった。

アライさん「…え?」ポカーン

今までずっと自分の味方をし、世話を焼いてくれたパートナー、フェネック。

彼女が今、自分を眼中に入れず、『付き合ってらんない』などと言った。

アライさん「う…うぬぬ~!たあ~!」タタッ

アライさんも二人のあとを追いかけて走った。


67: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 19:56:08 ID:???Sd
ボス『ここから左の道に行ってね』

フェネック「はぁ、はぁ…ぜぇはぁっ…」ドタドタ ハァハァ

サーバル「はぁ、はぁ…!」ドタドタ ハァハァ

かばん「」ガクンガクン

息を切らしながら、必死に走る二人。


アライさん「待つのだぁ!フェネック!フェネック!」ドタドタ


そこへアライさんが追い付いた。

フェネック「何なの!!」ドタドタ

フェネックは走りながら耳を貸す。

アライさん「ふぇ、フェネック、なんでそんなに怒ってるのだ!?なんか機嫌悪いのだ!アライさんがなんかしたのか!?」ドタドタ

フェネック「」

…自分が何をしたか、分かっていないのか…?

誰のせいでこんな事態に陥ったと思っているのか。

そう言いたくなる気持ちを抑えて、フェネックは走り続けた。

アライさん「無視しないでなのだぁ!フェネック!フェネックぅ!」ドタドタ

フェネック「うるさい!今急いでるの!ぜぇはぁっ!」ドタドタ

しつこく絡んでくるアライさん。

せめてどっかへ行ってくれれば足を引っ張られずに済むというのに。


68: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 20:00:52 ID:???Sd
アライさん「ふぇ、フェネ…」

フェネック「うるさい!!話しかけるな!!!」ドタドタ

サーバル「邪魔しないで!かばんちゃんが大変なのに!あなたのせいで!」ドタドタ

アライさん「え…?」ポカーン ドタドタ

アライさんは器用にも、ぽかんとしながら二人に並走する。

アライさん「ふぇ、フェネック!アライさんが何かしたのか!?アライさんのせいで怒ってるのか!?」ドタドタ

フェネック「そうだよ!」ドタドタ

そうだと気付いたのなら、邪魔だからどこかへ行って欲しい、と切に願うフェネック。

フェネックは決してアライさんが嫌いではなかった。

今まで共に旅をしてきて、仲のいい友達として、相棒として、一緒に過ごしてきた。

…だが今、フェネックは怪我人を救うことが最優先。

厄介な足手まといの相棒の相手なぞしていられない。

アライさん「ご、ごめんなさいなのだ~!」ドタドタ

フェネック「…っ、はぁ、はぁっ…」ドタドタ

やっと謝った。
これで去ってくれるだろうか。


69: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 20:05:56 ID:???Sd
アライさん「アライさんは謝ったのだ!だから仲直りするのだ!フェネック!フェネックぅ!」ドタドタ

フェネック「」ドタドタ

フェネックは今、はっきりと鳥肌が立った。

アライさん「ごめんなさいないなのだ、ごめんなさいなのだ!だからもうアライさんを怒らないでなのだあ!」ドタドタ

…アライさんは、己の罪を悔いてかばんへ償いをしようとしているのではない。

なんか知らんが怒っているフェネックへ、とりあえず形だけでも謝り、己の罪を帳消しにしてもらおうとしているようだ。

フェネックはそれを感じ取った。

フェネック「もういいからどっか行って!!邪魔なんだよ!!どっか行けぇ!はぁ、はぁっ!」タタッ

フェネックは頭に血が回り、普段は絶対言わないようなことをアライさんへ言った。

アライさん「うぬぬ~!まだ怒ってるのかぁ、フェネックぅ!」ドタドタ

だがアライさんはまだついてくる。


70: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 20:15:14 ID:???Sd
アライさん「分かったのだ!アライさんもなんか手伝う!手伝うのだ!何すればいいのだ!?アライさんにお任せなのだ!」ドタドタ

フェネック「」ドタドタ

とうとうアライさんも何かする気になったらしい。

だが、今までのやり取りで、フェネックはアライさんへ心底失望していた。

フェネック「じゃあどっか行ってて!もうそれでいいから!許すから!」タタッ

アライさん「うぬぬ~!それじゃアライさんの気が済まないのだ!困難は群れで分け合えってかばんさんも言ってたのだ!」ドタドタ

フェネック「ーーーーーーーーーっ!!!!!」ドタドタ

お前はこの状況で、『自分の気が済むかどうか』がそれほど大事なのか。

何の罪もないのに暴力を振るわれ、命の危機に陥った目の前の少女のことを何とも思わないのか。

フェネック「もういやあああ!何とかしてラッキーさぁん!!」ドタドタ

フェネックはラッキービーストへ助けを求めた。


71: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 20:20:24 ID:???Sd
ラッキービーストは、普段はフレンズ達と話すことはないが、緊急事態に陥った時…

すなわち、パーク園内で人間が危機に陥った時、救出にフレンズの力を要すると判断した場合に、フレンズと話すことがあるという。

ボス『フェネック、僕の顔をアライグマへ向けてね』

フェネック「こ、こう?」クルッ

フェネックはアライさんへボスの顔を向けた。

まさしく今ラッキービーストは、かばんを救うためにフェネックの力を必要としたのである。


72: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 20:24:40 ID:???Sd
ボス『麻酔針、発射』ビシュッ

アライさん「ぐげ!」ドズッ

アライさんの首に、ボスの顔から飛んだ麻酔針が突き刺さった。

アライさん「痛いのだ!何するのだフェネック!ふぇ、ね…」グラッ ドサッ

アライさん「zzz…」スヤスヤ

…ラッキービーストはアライさんを、かばんの生存確率を下げると予測される『外敵』と判断され、排除されたのである。

フェネック「アライさん!!」

いくら邪魔だと言っても、長年付き添ってきたパートナー。

いきなり倒れたら心配にもなる。

かばんに対してもそうだったように。

ボス『眠ってるだけだよ。それより急いで』

フェネック「わ、わかった!」タタッ

倒れたパートナーが眠っているだけと聞き、安心したフェネック。

サーバル「はぁ、はぁ…大丈夫!?休憩する!?」ゼェハァ

フェネック「大丈夫…行こう!」ダッ

ボス『ホスピタルはもうすぐだよ』

アライさん「zzz…」スヤスヤ

二人はすやすやと眠るアライさんから遠ざかっていき、地平へと消えていった。

アライさん「zzz…」スヤスヤ


73: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 20:30:01 ID:???Sd
ラッキービースト1『拘束、拘束』ガサッ

ラッキービースト2『拘束するよ』ガサッ ピョコピョコ

ラッキービースト3『ヒトに危害を加えたアニマルガールを拘束するよ』ガサッ ピョコピョコ

ラッキービースト4『拘束、拘束』ピョコピョコピョコピョコ

アライさんのもとへ、4機のラッキービーストが集まってきた。

ラッキービースト1~4『『ワイヤー射出』』ビシュッ

アライさん「」グルグルギュルギュル ギュウッ

ラッキービースト達は、アライさんをワイヤーで縛り拘束した。

ラッキービースト1~4『『連行、連行』』ピョコピョコピョコピョコ…

アライさん「zzz…」ズルズル

アライさんはどこかへ運ばれていくようだ。


74: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 20:37:40 ID:???Sd
~フレンズホスピタル~

かばん「」スゥ…スゥ…

かばんがホスピタルへ連れ込まれてから2日経った。

今もかばんは昏睡状態となっている。

ベッドへ寝かせられ、人工呼吸器へ繋がれ、点滴を打たれている。

スキャンの結果、幸いにも脳を損傷しているわけではないようだったが…。

サーバル「かばん…ちゃん…お願い…目を覚まして…」

フェネック「…かばんさん…」

ボス『二人とも、ジャパリまんだよ』スッ

サーバル「ありがとう、ボス…」モグモグ

フェネック「ありがと…」モグモグ

食事を済ませ、かばんを見守り続ける二人。

フェネック「…ごめん、サーバルさん。アライさんを私が止めなかったから、こんなことに…」

サーバル「フェネックのせいじゃない…違うよ。こうなったのは…」



サーバル「…運が、悪かったんだと思う」

フェネック「…運?」

サーバル「アライグマは、悪気は無かったんでしょ?ちゃんと言えば、仲直りすれば、いいよ…ぐすっ…!」

サーバル「だから、かばんちゃん、起きてぇ…!」ウルウル


75: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 20:39:49 ID:???Sd

サーバル「すぅ、すぅ…」zzz

フェネック「すぅ、すぅ…」zzz

いつの間にか、二人は昼寝をしていた。

「ん、あ、あれ…ここは…」

サーバル「!?」ガバッ

フェネック「かばんさん!?」バッ

かばん「…」キョロキョロ

かばんが、目を覚ました。

サーバル「か、かばんちゃん!私だよ、分かる!?かばんちゃん!」

フェネック「かばんさん!!」

かばん「…」

かばんは二人を見つめいている。


76: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 20:42:37 ID:???Sd
かばん「…おはよう、サーバルちゃん」ニッコリ

かばんはベッドに寝たまま、にっこりと微笑み返した。

サーバル「かばんちゃん!」ダキッ ギューッ

フェネック「良かった…良かったっ…!」シクシク

ボス『サーバル、かばんはまだ絶対安静だよ。ベッドから離れて』

サーバル「あ…ごめん」

かばん「僕は…どうしたんだろう。二人が…助けてくれたの?ありがとう」


やがてかばんの体調は回復し、退院することができた。

めでたしめでたし。


77: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 20:44:30 ID:???Sd
…いや。

全くめでたくなど無い。

頭のおめでたい奴が一匹、ラッキービーストに拘束されている。

この事件を引き起こした張本人が。


…まだここで、物語を終えるわけにはいいかない。


78: 19vndrf8Aw★ :2019/02/13(水) 20:45:02 ID:???Sd
つづく


79: 名無しさん (スプー 6763-fba1) :2019/02/13(水) 21:39:07 ID:ln/QbiTASd
お楽しみはこれからですね
乙です


80: 名無しさん (ワッチョイ 3da6-6c3b) :2019/02/14(木) 20:54:39 ID:6fo12Xrw00
wktk




最終更新:2019年04月09日 00:40