赤アラビジの集い

「ようこそ◯◯様、此方へ。」

入り口でペスト医師のような、だが高級感のある白地の仮面を着けた燕尾服の男が、見るからに傲慢そうな男を扉の奥へと通す。
どこかで聞いたようなオーケストラが小さな音で延々と流れる館内、お約束の高そうな赤いカーペット、うるさいくらいギラギラのシャンデリア。
絵に書いたような上級の会食の場だが、何故か奥取って付けたように板前寿司屋のようになっている。
板前のような、というのも、広いカンウター席の前のガラス張りには刺身は入っておらず。変わりに板前の手元、調理器具、まな板、水道、鍋などが全て座席から丸見えなのだ。
そして何より目を引くのは、包丁の確認をしているシェフの後ろ、金属の一枚板四肢を拘束され連なったアライさん達だ。

アライさん1「ぐぅぅぅぅ!やめるのだ!離すのだぁぁぁ!」

アライさん2「あぁ……もう嫌なのだ……やめのだぁ…………」

アライさん3「かえすのだぁぁ!かえすのだぁぁ!ごろじでやるぅぅぅぅぅ!!」ガンガン

アライさん達は漏れなくお腹を大きく膨らませて、妊娠というにはあまりにも巨大な、アライさん一人が入るほど膨張している。
傲慢そうな男はカウンターに着くも間もなく隣の男に挨拶をする。

「こんばんは、最近はどうです?」

「ああ、まあな。今は動きづらい時期だ。」

丸眼鏡の男はその社交辞令のような挨拶にまたさっぱりと返す。

「そういうあなたは少し派手に動きすぎてるのでは?」

丸眼鏡の後ろからひょっこりと小さな男が顔を出して言う。

「あなたが臆病なだけですよ。」
傲慢そうな男は嫌な所を突かれたのか、眉間をしかめた。小さな男は笑顔で、返された皮肉すら嬉しそうな受け取っている節がある。
全員、派手なスーツに身を包み。彼らが普通ではないのは後ろ姿を一目見ればわかるほどだ。
仮面の男が扉を厳重にロックすると。板前のほうに近づいてきた。

「さて、皆様揃いましたので、今晩の晩餐会を始めましょう。」

仮面の男はスタッフから柔らかそうな白い布を受け取り、大事そうに抱えている。
赤子だ。
男は赤子をタオルに包み抱えているのだ。
あやすように左右に揺すり、指を顔前で上下させる。

??「のらやぁ!けへへへへ!のりぁ!」

嬉しそうな赤子の声は、だが普通の赤子の声ではなかった。
タオルから覗かせたその顔は、既に産毛のようにか細い短い髪は生え、根元の黒に対して毛先は灰色がかった白、獣の耳が頭頂部付近についており、これが人ではないと判断できる。
アライちゃん、でもない。生まれたアライちゃんはヨチラーと言葉を発せられない事を除けば既に髪はショートボブまで生えており、大きさもハムスターほどで頭は以上に大きい。
これは、この生物は…人の赤子の頭身なのだ。
赤子の顔を3人に順番に覗かせる。赤子は笑顔を振り撒いた。

アライさん1「ちびぃ!ちびぃ!ちびをかえすのだぁ!どうするつもりなのだぁ!」ガシガシ

アライさん1が拘束を解こうと無駄な抵抗をしている。拘束具の隙間から肌が薄い赤みを帯びている所をみると。アライさん達は普段、拘束されている訳ではないことが伺える。

「おお?ふわふわですね、柔らかそうだ。初物ですか?」

「ええ!今回初参加のアライさんから生まれたてですよ!」

小さな男の問いに仮面の男がにっこり答える。

「ちょっと抱かせて貰っても?」

「はい、どうぞ。」

「あわわわ柔らかくて、ぽかぽかしてるなぁ。」

??「へけけけ!へけぇ!のりゃぁ!あぇー!」

赤子は傲慢そうな男に抱かれるもにこにことわらいかけ、まるでアライちゃんのように警戒心がない。
仮面の男は赤子を受け取り、ミュージカルよろしくわざとらしい挙動で叫ぶ

「それで始めましょう!この子はどなたが頂きますか?」

「120万!!」

小柄な男が、高々と右手をあげて叫ぶ。
傲慢そうな男は大声に気圧され、遅れたと言わんばかりに舌打ちをする。

「まあいい、まだまだ後がある。」

未練はあるが文句はないそうだ。
丸眼鏡の男も黙って頷く。

アライさん1「あぁ!ちびがぁ!やめるのだぁ!ちびのお母さんはあらいさんなのだぁ!」ガシャン

アライさんは子供がとられると思ったのだろう。この小柄の男が里親になり、自分の事を忘れてしまうのだと…

「うーゆー!のりゃぇ!ええーえ!」

赤子はそれを知ってか知らずか、母親に向かって笑う。

「それでは最初の一品目!行ってみましょう!いかがいたしますか!?」

「踊り食いぃ!!」

小柄の男が間髪入れず答えると、仮面の男は赤子を板前に渡した。

「はい!!踊り食い承りましたぁ!!」

アライさん1「のだぁ?おどりぐい?ってなんなのだ…やめるのだ……ちびはまだおっぱいもちゃんと飲んでないのだ……」ガジャン……ガシャン

アライさん2「始まったのだ…………。」

アライさん1は事態を飲み込めずとも、これから恐ろしいことが起こる予感を察し、涙を浮かべて首を振っている。アライさん2は既にこの先を知ってか、生気のない目で見守った。
板前は赤子を受け取り、タオルを取り払う。
タオルの下の赤子はアライさんと同じような色と模様の赤子服を着ており、尾てい骨付近から大きくもふもふした濃灰色のしっぽを生やしている。赤子はいかにもアライさんという風な全体像を今始めてさらけ出した。
よほど人に触って貰うのが嬉しいのか、重量感のあるしっぽを右、左、右、左と振り回している。

「さてと」

板前は赤子を板の上に寝かせ。

「そんじゃ先生」

棚から何かを探し。

「んまー!んまー!へけぇ!」

赤子は自分の親指をしゃぶり、母親に向かって嬉しそうに足をばたつかせている。まだ立てないことすら理解できず、母親の元に向かおうとしているようにも見える。

アライさん1「あぁ……ちびぃ……お前!もしチビに何かをしたらゆるさないのだぁ!」ガシャン!

「今日も創らせていただきます!」

バシュッ
風を切るような音が小さく響く。
板前の手には長い包丁が既に握られている。

「ゆけぇ?」ピュピュピュピュピュ

親指を呑気にちゅーちゅー吸う赤子の服が赤くじんわりと染だしてくる。
服の前がプツンと弾けて開くと、赤子は皮膚、皮下脂肪も服と共に開かれ、ドクドクと動く筋肉が露出する。

アライさん1「あ……あ……あ……」

「ほぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

赤子の渾身の悲鳴が、ホールに響き渡る!

アライさん1「あ…あ…ああ……アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「いえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!さいっこうだぁぁぁぁぁぁ!初物悲鳴いただきぃ!おいおい見たかあの母親の顔!初物限定だぜぇ!」

小柄の男が下衆な笑いをみんなにふりまき、嬉しそうに喜んでいる。
無論

「騒ぐな…。」

「へ、あんたに先を越されたが、次は俺が……」

二人の反応はあまりよろしくない。
こうしてる間にも板前はテキパキと筋肉を切り分けている。

「ぎゃ!ふげぇ!のぎぃ!ぎぃ!ぎぇぁぁぁ!」

切る度、千切る度、開く度、赤子は産声とは違う、地獄の苦悶と悲鳴を上げる。

アライさん1「ちびぃ!ちびぃ!ちびぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!やめろぉ!やめるのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!のだぁ!!あああああ。お願いなのだぁ!やめるのだぁ!」ガシャガシャガシャガシャ

アライさん1は大粒の涙と鼻水を流しながら鬼気迫る顔で拘束を解こうと暴れ、拘束具付近の皮膚は破れ、血をボタボタと流している。

「えぎぁぁ!」ポキィ

遂に肋骨が砕かれた。この赤子は糞抜きをしていないので、胃腸は取り除かなければならない。

「の゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!」ブチブチ

板前は更に包丁を取り出し、オレンジ色に光る刃を持つ包丁だ。それを

「ぎぇぇ!ぴぎぃ!ぎゅるる!びぇぁ!!のぎぁ!」

右腕、右足、尻尾、左足、左手と手際よく切断した。切り口は焼け、血は出ない。

アライさん1「おげぇぇぇぇぇ!!」

あまりの光景にアライさんは吐瀉したようだ。
板前は切断した部位の肉を綺麗に削ぎ落とし。

「びぎぃぃぃぃぃ!?」

開いた赤子の腹に無理やり詰め込んだ。

「ぎ……ふぎ……」

いくら止血したとこで、赤子がこれだけの裂傷に耐えられるわけはなく、もはや死に際だ。
もちろんそれも想定済み。板前はサンドスター注入器を内蔵付近に注入し、無理やり蘇生を行った。

「ぴぎぃぃぃぃぃぃぇぇぇ!」

勿論、赤子はまた痛みに悶える苦しみだした。
板前は包丁を手放すと赤子を皿に乗せ、小柄の男の前まで持ってきた。

「へいお待ち!アラ刺身踊り食い!」

四肢を失ったダルマ赤子は、今なお船皿の上で苦悶の表情で泣きわめき、首と胴体の筋肉だけでもぞもぞと動き回っている。サンドスターの活性化でショック死することもできず、お腹には刻まれた四肢が血色のいい赤色の刺身として丁寧に並べ盛り込まれている。

「ふぎゃぁぁぁぁぁぁ!のぎゃゃゃゃゃ!」

アライさんはサンドスターの影響で菌やウイルスから無縁の存在で、だからこそ刺身というワイルドな食べ方ができるのだ。

「んー!おいしい!さいこうだぁ!」

小柄の男は舌鼓をうみながら、アライさん1に見せつけるように刺し肉をつまんでいく。

アライさん1「げぇ!うぇ!ちびがぁ!ちびがぁ!」

「ふぎ…ぎ……ぎぇ……ふぎぃ……ぇ」

「おや?アライちゃんもうなけないの?まだ泣けるよね?ほら!」

小柄の男は刺し肉を平らげ、まだ脈打つ珍味を箸で赤子から器用に切り離す。

「ぎぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!きゅるるる!!!」

赤子は再び元気よく悲鳴をあげ、小柄の男は大変ご機嫌なようだ。

「んーこれだよ!これ!生命を繋ぎ止めるための臓器を悲鳴と共に頂く!なんと贅沢か!なんと至福か!」

アライさん1「やめるだぁぁぁぁぁ!もうちびをしなせてあげるのだぁぁぁぁ!!」ギチチチチチ

アライさん1の腕の皮膚は破れては自然回復を繰り返す。いつかこの拘束具が割れ、奴等を八つ裂きにしてやる。とでも考えているのだろうか?
拘束具は表面に擦り傷はあるものの、ボルト一つ歪むことなく、角すら凹んでいない。
小柄な男が内蔵を食べ終える頃、赤子は息絶えていた。
男は最後の最後まで活性剤を使い、大きな悲鳴を挙げさせては幸せの言葉を口走っていた。

アライさん1「……」シーン

アライさん1はあまりの光景に失神した。

「食事は静かにとるものだ。」

「へへへ、あんたはアラ虐ってもんがわからねぇのかねぇ。」

丸眼鏡の男が、この歪な会場で一般的マナーを語る。もちろんそんな話を聴くものなどいないが。それが彼の食へのこだわりである。
自身が食を嗜んでいる時、彼は誰一人として部屋に入れない。妻子さえ彼と食事の席を囲んだことはない。

「では、次の子に移らせていただきます!」

仮面の男が仕切り直すと、板前がアライさん2の前に立つ。

「私だな。」

「まあ、あの母親では楽しめそうにないからな。お先に譲りますよ。」

傲慢そうな男は丸眼鏡に先を譲る。二人とも既に心では決まっていたようだ。

アライさん2「はは……またなのだ……また……食べられるのだ。」

アライさん2の腹部にエコー装置のようなものを当て、スイッチを入れる。

アライさん2「あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

アライさん2は先程までの静けさに似合わぬ悲鳴をあげると、下腹部から何かを吐き出した。
先程と同じ、アライさんに似た赤子である。

「ふぇぇ!ぴぇぇ!のぇぇ!」

赤子は元気よく生命誕生の讃歌を歌う。まだ弱々しい体と似つかぬ、力強い産声だ。
板前は赤子の尻尾をつかみ持ち上げ、

「では、いつもの!作らせていただきます!」

「ふげぇ!ぴぇぇ!」

フライパンに投下した。

「ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!びぇぇぇぇぇぇぇん!」

赤子が仰向けで熱せられた鉄板で手足をじたばたと振る。板前は熱が均一になるよう、フライパンを前後左右に動かし、赤子を転がした。

「ぴぎぃぃぃぃぃ!のぎゃぁぁぁぁ!」

鉄板に焼かれたアライさんの裏側は表面が炭化をはじめ、皮下脂肪がじゅわーっとフライパンに染みだしてきた。

「うるさい」

丸眼鏡の男は、ポツリと口にだす。
赤子の悲鳴が煩わしくて仕方がないらしい。可哀想だとかゾクゾクするだの腹が立つといった感情はなく、騒音と一蹴する感情のない口調である。
丸眼鏡の男は立ち上がり、フライパンの上で踊る赤子の首筋に向かって中指を突きだした。

「おぎ……~~~~~~!!」

赤子の悲鳴が止んだ、が、

「~~~~!!」バタバタバタバタ!!

赤子はより強く暴れだした。何かを求めているかのように。

「ひひひひ、静にしろ?あんたも品じゃ人のこと言えねぇなぁ……息を止める奴があるかい。」

「私は品性を語った覚えはない。」

丸眼鏡の男は安堵し席に深く座り直す。

「~~~~~~!!!」ジタバタ!ジタバタ!

相変わらず暴れまわる赤子に苦戦していた板前は。

「あらよ!」

「!!!!!!」

赤子をうつ伏せにひっくり返し、フライ返しで押し付ける。赤子は顔面から鉄板に押し付けられ、声のない悲鳴をあげる。
ジュージューと焼けるうちに、赤子は完全に動かなくなり、もうじき完成が近いことを実感させる。
板前は同じく熱せられた鉄板に赤子を盛り付け、仕上げのソースをかけて、丸眼鏡の男前に置いた。

「はい!アライステーキお待ち!」

赤子はうまれてすぐ誰かに抱かれることなく、毛皮のままやかれ、皮膚のタンパク質は白く熱せられた。背面と前面にはカリカリの焦げ目をつけ、その顔は呼吸停止と灼熱により苦悶に歪んでいた。

アライさん2「はは……アライさんのかわいいちびをおいしくたべるがいいのだ……。」

アライさん2はなげやりな言葉を吐き出し、抵抗らしい抵抗は一切しない。
丸眼鏡の男はアライステーキの頭と足をつかみ、そのままはらわたにかじりついた。
よく焼けた表面をパリパリと食い破り、ミディアムレアの肉をがぶがぶと貪る。さながら獣のように。

アライさん2「どうだ?うまいのだ?はは、お前たちは狂ってるのだ……。」

眼鏡の男は口を止め、アライステーキをそのままゴミ箱に放り投げた。

「不味い。今まで食ったステーキでも1,2位を争う不味さだ。」

アライさん2「……あ゛ぁ゛!?」

今まで生気のなかった。アライさん2の眼球が血走り、丸眼鏡の男を睨む

「こんなに不味いなら、食わなければよかったな。」

アライさん2「食わなければ?……お前………あれだけ痛め付けてちびを殺して……今さらなんなのだぁぁぁぁぁぁぁ!」

野生解放、アライさん2は今すぐこの畜生の首に噛み付き、刺し違えてでも地獄に送る決意をした。

「うるさい」

アライさん2「!!?」

アライさん2は、全身の力が急に脱力した事に気づく。手足の感覚がなくなり、首から下から寒気がする。

「おおびっくりしました。アライさん達は野生解放できぬよう施術した筈だったのですが。」

仮面の男がやや驚き気味に語る。ただし相変わらずわざとらしく、嘘臭い。
次は傲慢なそう男の番だ、板前はアライさん3の前で同じく装置を腹に押し付ける

アライさん3「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ぐるるるるるるるる!」

アライさん3は最早言葉を発せず、獣の咆哮のような叫びを繰り返している。赤子を産み落とした事に狼狽える様子もない。

アライさん3「ふしゅゅゅゅゅゅゅ!!がるるるるるるる!」

「まあまあ落ち着け、お前の娘は一番長生きさせてやるよ。」

傲慢そうな男は笑いながらアライさん3に約束を取り付けると、仮面の男に注文する。

「『そのまま』!!」

仮面の男が笑う。

「『そのまま』!!承りました!」

スタッフが、傲慢そうな男と丸眼鏡の男の間に透明なガラスを隔てさせた。
板前は生まれたばかりの赤子を……

「へい『そのまま』!!」

皿に盛り付けることも調理することなく、ただそのまま、傲慢そうな男の前においた。

「おぎゃぁ!のぎゃぁ!ふぎやぁ!」

産声をあげる赤子を優しく抱き上げる傲慢そうな男。その表情は赤子を初めて抱いた父親のように

「ぴぎぇ!!」

傲慢そうな男は赤子を強くテーブルに叩きつけた。

「ひぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

赤子は生まれて初めての衝撃に脳を揺らし、一層強く泣く。
傲慢そうな男は泣き顔すら可愛らしい赤子に何度も拳を入れ追い討ちをかけた。

「お前は!生きてるだけで!ゴミクズ以下の!クソ害獣だ!」ゲシ!ボコッ!バキッ!

手加減してるとはいえ、大の大人が乳児を殴打しているのだ。皮膚はみるみる紫色になり、鼻からは血をダバダバ流し、尿を漏らしている。

「ふぎぇ!のぇぇぇぇん!きゅるぅっっっ!」

まだ首も座らぬ赤子が泣きながら、震える手足で机の上を這いずり本能で痛みから逃げよとする。

「にげるなぁ!」

傲慢そうな男は逃げようとする赤子の腕に噛み付き、みちみちと音をたてながら肉を食いちぎった……食いちぎられた傷口から、骨が露出している。

「ぎゅるるるるるるる!!?」

赤子は腕から大量の血を吹き出し、痛みにコロコロと悶え周りそこらじゅうに血を撒き散らす。
傲慢そうな男は顔から血液をベッタリと浴び、服も赤黒く汚れた。
丸眼鏡の男と小柄な男はガラスの隔てで事なきを得ている。

アライさん3「ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!コロスコロスコロスコロス!!!」

足、脇腹、右耳、尻尾、左耳、脇腹、尻尾、足、腕。
傲慢そうな男は、そうやって赤子の肉をじわじわと食い破っていく。

「ふぎぇぇぇぇぇぇ!びぇぇぇぇぇ!!」

赤子は全身から血肉を露出させながら、それでも生きようと本能で這いずる。
傲慢そうな男はそれをわざと許してはまた食いちぎるのを何度も繰り返している。
赤子の体は最早皮膚が残っている部分のほうが少なくなり、這いずりはただ血をカウンターに塗りたくるだけの作業になっていた。
多量の出血で弱りきっている赤子を見て、傲慢そうな男はニヤリと笑った。

「ああ!愛しの赤ちゃん!許さない!誰がこんなことを!は!?おまえかぁ!」

傲慢そうな男は赤子を抱き上げ三文芝居をはじめ、まるで犯人はあいつだとばかりにアライさん3を指差す。

アライさん3「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

アライさん3は遂に怒りの力で右手首を切断し、拘束のとけたその腕を傲慢そうな男に向かって伸ばす。
届かない。一目瞭然の距離だ。だがアライさん3ははち切れんばかりに腕を突きだした。

「ハハハハハハァ!!」

傲慢そうな男はご機嫌に赤子を抱いてはくるくる周り、たかいたかいをしている。

「のぎ……ぎぇ……」ピクピク

「なんだ? もう限界か。根性がないな。」

傲慢そうな男は大きく口を開け

「さようならだな。」

赤子の頭にかぶりついた。

「ぴぎぃ!ぎいぃぃぃぃぃぃ!!」

赤子の頭はギリギリと音をあげ、開かれることのなかった。瞳が白目を向いている。そして。
グチェァ!

「ノギォ!」

赤子の頭が噛み砕かれ、絶命した。
断面から視神経が露出し、体はゴキガイジムーブでバタバタと暴れている。傲慢そうな男は頭骨と脳の混じったそれをごりごりと咀嚼する。

「ふぅ、ごちそうさま。」

傲慢そうな男の顔は、とても満ち足りていた。
スタッフが隔てを回収し、数人がテーブルと男の血を拭き取っている。

「それでは、私はこれで。」

丸眼鏡の男が急に立ち上がり、表の扉とはうって変わった質素な裏手口へとわざわざ向かう。

「?もうお帰りですか?デザートはよろしいんですか?」

「……少し仕事が入った。」

傲慢そうな男は興奮に少し水を刺されたようで少し不機嫌そうに言い、丸眼鏡の男は相変わらず淡々と返す。

「ひひ、まあまた次の機会があります。たまにはいいいじゃないんですか?」

小柄な男に諭されるのは少々癪だが、傲慢そうな男は不満を飲み込むこととした。

「では、また今度お会いしましょう。」

「ええ、『また今度』。」

丸眼鏡の男がカウンターを離れ、裏手口に向かう通路の角を曲がり、姿を消した。
────同時に男達の後ろから、炸裂音が轟いた。


110: 名無しさん (バックシ 7794-01a7) :2019/05/06(月) 22:23:44 ID:cGVd1c7.MM
101
髪を短くし忘れたのだ!




111: 名無しさん (スプー 6179-ef82) :2019/05/07(火) 20:47:47 ID:h6.ZNUjASd
赤アラビジ乙です
結局アライちゃんではない赤子は何だったんだろう…?


112: 名無しさん (バックシ 7794-01a7) :2019/05/07(火) 23:58:39 ID:cGVd1c7.MM
111

続き実は書いてますので待っててください!




最終更新:2019年05月26日 23:45
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