赤アラビジの集い2・前編

アライちゃん1「のぉぉぉおぉぉぉん!おかーしゃーん!」ビェェェェン
アライちゃん2「おなかしゅいたのりゃ……。ごはんしゃん……」
アライちゃん3「しゃむいのりゃぁ!おねーしゃんあっためてぇ!」ガクブルガクブル

寒空の下、ハムスター用ケージの中に小さなアライちゃん達が閉じ込められている。足首はついており、ペットではないようだが糞尿対策のオムツをみなつけられている。
アライちゃん達が寂しさと寒さで泣いていると、突然ケージの側面を叩かれる。

アライちゃん達「「「ぴぃぃぃぃぃぃぃ!」」」

「うるせぇんだよゴキブリ共ぶっ殺すぞ。」イラッ

目付きと人相の悪い、黒服の男が拳をケージに突き立てていた。

アライちゃん1「ごきぶりじゃないのりゃぁぁ!」ムキー
アライちゃん2「あらいしゃんおかーしゃんのもとにかえりたいのりゃ。おじしゃんつれてかえってほしいのりゃ。」
アライちゃん3「顔が怖いのりゃ!こにゃいでぇぇぇ!」
ガシャァァァン
アライちゃん達「「「!!!?」」」

黒服の男が再びケージを更に強く叩き、睨む。まだ幼いアライちゃん達でも次はないと理解し、黙りこんだ。

アライちゃん1「ぴっく…ぴぃ……ちゅらいのりゃ~……。」ヒソヒソ
アライちゃん2「しまいでくっちゅけばぽかぽかなのりゃ。」モフモフギュー
アライちゃん3「おねーしゃんあったかいのりゃ~」ポカー

アライちゃん達は3匹で身を寄せ、お互いに尻尾を被せながら暖をとった。

アライちゃん1「いもーとたちはあらいしゃんのじまんなのりゃ!」ポカポカ
アライちゃん2「ふたりともずっといっしょなのりゃ!」ニコニコ
アライちゃん3「おねーしゃんたちとずっといっしょなのりゃ!」シッポフリフリ

「たいちょ~!揃いましたぁ!全員でぇ~す。」

隊員4が、地べたに座り込む人相の悪い男。隊長を呼んでいる。

「やっとかよ…ちょいとおせぇんじゃねぇのか?」

隊長は立ち上がると、ケージを荒々しく持ち上げ、中のアライちゃんなどお構いもなく雑に降りながら向かう。

アライちゃん1「やめぇ!ひとしゃん!あらいしゃんいちゃいのりゃ!」ゴロゴロ
アライちゃん2「たしゅけてぇー!」ゴロゴロ
アライちゃん3「ぴぇぇぇぇ!ぶぎぃ!」

アライちゃん3は転がった拍子に運悪く壁に顔面から激突し、額と鼻から出血した。

アライちゃん3「ぴぃぃぃぃいちゃい!いちゃいのりゃぁぁぁぁ!」ジタバタ
アライちゃん1「いもーと!ひとしゃんやめるのりゃ!いもーとがけがをしたのりゃ!」
アライちゃん2「いちゃしょうなのりゃー……」

隊長は聞く耳などもたない。相変わらず箱は乱暴に運んでいる。
隊員4の元に着くと、バンやトラック、ワゴンから出てきたであろう同じく黒服、それに加えて銃火器や保護具をつけた男達が整列していた。

「自衛官、機動隊、軍人、傭兵、ハンター、パークガイド…お~色とりどりな顔ぶれが揃いましたね~。」

隊員4は端末を見ながら一人一人指を差しで職業をぶつぶつと呟いき、一人で勝手に気だるげに驚いている。

「てかデビルハンターってなんすか?」

隊員4はあからさまに異様な風貌の男を指差しながら隊長に問い詰める。

「知らねぇよ……人事に聞け。」



「よう……ほとんどは初対面だな。これからお前らには俺らと一緒にこいつらを狩ってもらう。」

隊長が気だるげな足取りで皆に対面すると、ケージを雑にかかげる。

アライちゃん1「ぴぃ!」ガシャン
アライちゃん2「ひとしゃんだちてぇ!」ポロポロノォォン
アライちゃん3「いちゃいのりゃぁぁぁ!」ゴロゴロ

中の人に似た愛らしい生き物が悲しく泣いている事に数人が狼狽えたが、殆どは無表情のまま隊長を注視する。

「隊長!その子達は研究所の」
「あ~っとただの説明すっから落ち着いてください。喩えです喩え。」

隊員2が隊長に食いかかるのを隊員4が引きとめる。
隊長はケージを乱暴に下ろすとその上に足を置い
き、アライちゃん達は恐怖に怯えて身を寄せ会っている。

アライちゃんs「うぅ……うゅー……ぴぃ。」

「約2年前、セルリアンがじゃパリパークを占拠して運営はのこのこ尻尾撒いて逃げてきた。それだけならよかった。があろうことかそのに生息する野生のフレンズをどっかの大馬鹿がこの国に入れちまった。」

「…………」

隊員2は隊長に強く睨み付けられ、悔しそうにうつむいた。

「んでこの国で奴等は散々被害を出しまくってる。知性は人並み力は獣、デカイ図体ですぐ見つかるが人に似てるからと躊躇って撃てない。国とパーク運営はやっとのこと事態を重く見て、まず試験的に俺らが雇われたわけだ。フレンズ被害対策室、通称…」

「駆除隊だ。」

隊長は真剣な眼差しで。自分達の軽蔑の名前を口にする。

「いいかよく聞け?俺達はフレンズを殺す、それだけじゃない。場合によって闇取引のヤクザやマフィア、フレンズ崇拝のカルト、そして過激な動物愛護団体も殺す。世間様からの有難い非難がじゃんじゃんくる。そういう仕事だ。その覚悟がないなら今すぐ降りろ、ただのお荷物だ。」


…数秒、静寂に包まれた。
誰も降りない、覚悟のうえであることを再度確認した隊長は、ニヤリと笑う。

「オーケー…それじゃあ今夜は早速、人殺しのお仕事だ……。」

全員が黙々と乗車する。名前も装飾もない、黒一色の車が列をなして夕闇の町へと繰り出す、何かを殺すために。


……


町で無駄に高いレストラン、今日はオーナーの都合で17時で閉店した。その強気な店をドローン数台が覗き見ている。

「あ~多分表っす。微かに聞こえる悲鳴がアライちゃんの鳴き声と似てますね。」

隊員4が端末でドローンが集めた音、映像、熱、風のデータを解析してアライちゃんであろう悲鳴を探り当てた。

「警備は?」

「完全に油断してますね。表の入り口に一人、裏手に二人、あとは中なんでわかりませんが。」

ドローンが電線に張り付き、電波と回線のジャミングを開始する。

「はい、これでもう誰もきませ~ん。」

「おし、全員消音器の再確認だ、近所迷惑にならないように気を付けろよ。お前らついてこい、残りは裏手に回れ。」

「「「「了解」」」」

隊長が隊員2、3、5、6に同行するよう指示をだし、各自持ち場へと移動する。

「あのー自分も裏手で戦闘に参加した方がいいんですかね?」

隊員4はあり得ないことを聞き出す。戦闘に参加しないならなぜこの隊にいるのか甚だ疑問だが、これがはじめてのことではない。他の隊員の邪魔になるだけだろう。

「チッお前はそこで空中から見張ってろ。あと車が盗まれないように見とけ。」イラッ

隊員4は拳銃程度は流石に忍ばせているだろうが、銃器を手に持ち歩いてはいない。そもそも彼がまともに戦っているところを誰も見たことがないのだ。
それでも電子戦において役に立つから置いているが、この気の抜けたような態度としゃべり方は隊長の堪忍袋を的確に刺激する。

「あ、わかりました~!」

皮肉にも動じないこの戦闘嫌いぶりが、更に隊長な余計なストレスをかけた。



「うぇ……ぎもちわる……」

酒瓶をもった男がゆらゆらと店の入り口に近づいてくる目の焦点もあっておらず、今にも吐き出しそうにしている。

「なんだ?酔っぱらいか?」

「ちょ……ちょっとお店のトイレを貸してくれ
ま……うぇ……。」

「ふざけてるのか?近くのコンビニにでも行ってこい。ここは改装中だ。」

「うえ…もう我慢ができない。」

酔っぱらいは酒瓶を落とし、割った。
見張りが割れた音に注意がそれると、酔っぱらいは胸ぐらを掴み後ろに投げ飛ばした。
見張りは少し声をあげるとそのまま失神した。

「トーシロが…。入り口クリアだ。」

隊長の呼び掛けに隊員達が入り口の左右に張り付いた。
隊員2は気絶した見張りを拘束し、裏路地に隠した。
隊員3がアライちゃんのケージを隊長に渡す。

「……隊長……あなたはこの子達で何をするつもり何ですか……?」

隊員2は恐れと怒りの入り交じった声で、隊長を睨みながら質問する。

アライちゃん1「おかーしゃんにまだあえないのりゃ?」
アライちゃん2「……ぴぃ……あらいしゃんもういやなのりゃ……」
あらいしゃん3「どうしてあらいしゃんにしどいことするのりゃ……」

アライちゃん達は涙を浮かべ、怯えきっている。

「仕事に使うからここに連れてきたんだろ……当たり前のこと聞くな?」イライラ

「その子達は研究用アライから産まれた子供です……。駆除対象じゃありません。」

「チッなるほどな……安心しろ、わかってる。」

隊長がケージを開け、アライちゃん達に液体をかける。

アライちゃん1「ちゅめたいのりゃ~」キャッキャッ
アライちゃん2「ぴぃぃ!やめちぇ!」ノギァァ
アライちゃん3「のみちゃいのりゃ!」レーロレロ
アライちゃん3は飲もうとするも飲めなかった。

「よーくわかってるぜ?」

隊長がアライちゃんたちを掴みんで出し、体に何かをテープでくくりつける。

アライちゃん1「なんなのりゃ!やめちぇぇぇ!」グルグルグル
アライちゃん2「しめちゅけられていちゃいのりゃ!」ジタバタ
アライちゃん3「いちゃいのりゃ!いちゃい!」グルグルグル

「指向性爆弾設置完了。」

隊員5、6が扉に爆弾を設置した事を知らせる。

「……」

隊員3はアライちゃん達を静かに見ている。筒をガムテープで巻き付けられ、涙を流しながら隊長の横で座り込んでいるアライちゃん達。本来アライちゃんならば声をあげて逃げるのが普通だが、研究所産まれのためか側を離れようとしない。

「……わかってるけどな。」

隊長がアライちゃん達を雑に持ち上げ。

アライちゃん達「あちゅぃぃぃ!」

アライちゃん達の尻尾に火を付け、筒の信管を抜いた。

「行きます!爆発!」

隊員5が扉を爆破。

「だがなぁ、『生かす』なんて確約は……ねぇんだよぉ!」

「やめてぇ!」

隊長は隊員2の制止を無視し、アライちゃん達を入り口から投げ入れた。

アライちゃん1「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ポイー
アライちゃん2「あじゅいょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」ポイー

アライちゃん3「びぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」ポイー

「な、なんだぁ!」

警備達が扉の爆発に気づいて構える、が

アライちゃん1「あじゅいよぉぉぉぉどっでぇぇぇぇぇぇぇ!」モクモクモクモヨチヨチ
アライちゃん2「いゃぁぁぁ!いゃなのりゃぁぁぁぁぁぁぁ!」モクモクモクヨチヨチ
アライちゃん3「しんじゃうのりゃぁぁぁぁ!」モクモクモクヨチヨチ

「なんなんだ?」

アライちゃん達は尻尾についた火から逃げようと高速でフロア中をヨチヨチし、背中につけられた煙幕を撒き散らす。

隊員2はその行動に残酷さを覚え、ただ震えていたが、

「突入だ!」

隊員6の声に呼び戻され、突入しようとする。

「待て!」

隊長が隊員達全員を無理やり制止すると、深呼吸し、壁に張り付いたまま叫んだ。

「警察だ!全員おとなしく投降し…」

煙幕の向こうから弾丸が降り注いできた。

「やっぱりな、本物のポリだったら今頃蜂の巣だったな……」

隊長はニヤリと笑うと、銃弾の飛んできた方めがけて撃った。断末魔はないがぐじゃりとした湿り気を帯びた落下音とシルエットから、一人殺った事を確認する。

「ひぃ!警察じゃねぇ!駆除隊の奴等だぁ!」

他の警備の奴等が死体の破損を見たのだろう。怯えた声が聞こえてくる。

隊員2は窓から声のする方へと撃つ。

「ぎょべっ」

叫び声が上がり、弾幕がまた薄くなった。

アライちゃん1「いじゃいいじゃいいじゃい!」ヨチヨチ
アライちゃん2「かーしゃんだじゅげでぇぇぇぇ!」ヨチヨチ
アライちゃん3「ありゃいしゃんのあちがぁぁぁぁ!」ジタバタ

「くそぉ!てめぇらじゃまなんだぉ!」

警備の最後の男がアライちゃん3を踏み潰した。

アライちゃん3「じぇびぃ」グチャァ
アライちゃん2「いもーちよぉぉぉぉ!」

「そこだなぁ!」

さらにアライちゃん2の位置を探り当て、脳天を撃ち抜いた。

「じぇば !」 パァァァン

アライちゃん1「びぇぇぇぇんおがーじゃん!いもーとたちがぁぁぁぁぁ!あじゅいぃぃぃたしゅけでぇぇぇ!」ヨチヨチヨチヨチ

「残りはおまえだギョ」

警備の男の子目玉がとびだし、頭が割れた。

隊員5の射撃が当たったようだ。

「警備はあらかた片付いたろ、あとは……おとなしく投降しろ!命だけは助けてやるよ!」




最終更新:2019年05月26日 23:51