ミミズク害獣処理組織

俺「ふあぁ~、クッソ眠い。」

午前8時前といったところであろうか、朝早くに組織のトップであるお方からの電話で組織の建物へ車を走らせている。朝には頗る弱く、早起きは苦手である。

このまま車を走らせるのは危険かもな。眠すぎて事故っても困る。
そう考えた俺は、近くのコンビニエンスストアへ車を停め、エナジードリンクである『フレンズエナジー』を買うことにした。このフレンズエナジーはネットではよく『獣剤』と呼ばれ、圧倒的なカフェイン量の力で集中力を高め、眠気を抑える有名なエナジードリンクである。

車を降りかと思った矢先のことである。

泥棒アライさん「これはアライさんが先に見つけたのだ!全部アライさんのものだのだー!」スタコラサッサ
泥棒アライちゃん1「これはあらいしゃんたちがしゃきにみつけたのりゃ!ぜーんぶあらいしゃんたちのおいしいえしゃなのりゃ!」シッポフリフリ
泥棒アライちゃん2「あげぱんしゃんはおいしいのりゃー ここはあらいしゃんたちのためにあるやしゃしいにんげんしゃんがつくったこやなのりゃー」シッポブンブン
泥棒アライちゃん3「わっしぇ!わっしぇ!わっしぇ!わっしぇ!おかーしゃんがんばりゅのりゃー!!」スリスリ
泥棒アライちゃん4「ここのにんげんしゃんはあらいしゃんたちのけらいになっちゃのりゃ!あらいしゃんたちはさいきょーなのりゃ!」シッポフリフリ

1匹のアライさんとそれの肩と頭の上にしがみついた4匹のアライちゃんが、コンビニの商品を盗み逃げ出している瞬間だった。アライさんは普通の人間よりも走る速度は上であるが、1匹が約2kg程のアライちゃんを4匹も乗せて走っていればその速度は大して速いものではなかった。

店員「ゴラァー!泥棒害獣ー!待ちやがれェ!」ドタドタ

俺はすぐさまバッグに入れてあるスタンガンをポケットの中に入れ、全力疾走をし、逃げるクソ害獣の前へ先回りした。

俺「止まれ!クソ害獣!」スッ

泥棒アライさん「!?なんなのだお前は!クソガイジは早くどけなのだ!」

泥棒アライちゃん1「わゆいにんげんなのりゃ!あらいしゃんたちでやっちゅけりゅのりゃ!!」シッポブンブン
泥棒アライちゃん2「かかるのりゃー!!」ヨチヨチ
泥棒アライちゃん3「かかるのりゃー!!」ヨチヨチ
泥棒アライちゃん4「かかるのりゃー!!」ヨチヨチ

コバエ達はそう言うと母親である泥棒アライさんからごろごろと地面へ降り、俺の足へ攻撃してきた。

泥棒アライさん「チ、チビたち!なにやってるのだ!やめるのだ! チビたちじゃ勝てる相手じゃないのだ!」

泥棒アライちゃん1「あらいしゃんのつめでしぬのりゃ!」シュッシュッ
泥棒アライちゃん2「あらいしゃんのじまんのきばでやっつけてやりゅのだ!」カプッ
泥棒アライちゃん3「あらいしゃんはいだいなのりゃ!しっぽこうげきなのりゃ!」ペチペチ
泥棒アライちゃん4「みぎすとれーとなのりゃ!!」ペシッ

俺「お?何やってんだお前ら。全く痛くもねぇぞー?」サッ

当たり前である。俺は、軍人が履くような厚い皮のブーツを履いている。このコバエたちの攻撃など効く筈がないのである。

攻撃されている足を素早く上げるとこのコバエ共は仰向けに転がった。そして

グジャァ!!

泥棒アライちゃん1「ぴぃぃぃぃぃ!!ありゃいしゃんのぷりちーなしっぽがあああああ!!!」バタバタ
泥棒アライちゃん2「ぴぎゃぁぁぁ!あらいしゃんはわゆいことしてないのりゃああああ!!ピィ!ピィ!」ゴロゴロ
泥棒アライちゃん3「わゆいにんげんしゃんやめゆのりゃ...こんなことしたらありゃいしゃんのききなのりゃ...」ジョロロロロ
泥棒アライちゃん4「ピッ!ピッ!!ピィィィ!!あらいしゃんしっぽのだんしゅができなくなりゅのりゃああああ!!」ジタバタ

そのまま俺はこのコバエ共の尻尾を思いっきり踏んづけた。

泥棒アライさん「チビ達になにしてるのだ!その足を退けるのだ!アライさんがお腹を痛めて産んだチビ達の危機なのだ!」アセアセ

俺「じゃあ、その持ってる盗んだ食べ物を今すぐ店員に返すんだ。そしたら足を退けてやってもいいぜ?」ニヤリ

俺は目の前の害獣に向かって、交換条件を突き出した。

泥棒アライさん「一体なにを言ってるのだ?これはアライさんが一番最初に見つけたものなのだ!そこの人間が取らなかったからとってやったのだ!弱肉強食なのだ!だからこれはアライさんの物なのだ」エヘン

そう自分のことしか考えることの出来ないクソ害獣は答えた。
俺はコバエ共の尾を踏んづけている足と反対の足を上げ

グジャッ!メキメキ!

泥棒アライちゃん1「ぐぁ..ッゴバァッ!ッピ...」

4匹の内の1匹のコバエの頭を踏んづけて潰し、1匹のコバエの処理をした。踏んづけた場所を中心に、真っ赤な丸い血溜まりを作った。

泥棒アライちゃん2「ピッ...ピィィィィィ!!!おっ...おねーしゃああああああん!!!!」
泥棒アライちゃん3「ピィィィ!!!おっ...おねーしゃああああああん!!!!」
泥棒アライちゃん4「ピッ!!!おっ...おねーしゃああああああん!!!!」

泥棒アライさん「あ...あぁ...あ、アライさんの大事な娘がぁぁぁぁ!!」

涙を流しながら、害獣は叫んだ。

俺「早くその手に持ってる物を返せ!返さねぇなら後の3匹もこいつみたいになるぞ?」ニヤニヤ

不気味な笑顔を作りながら害獣にそう言う。

泥棒アライさん「わっ分かったのだ!これはあの人間に返すのだ!だから後のチビには手を出さないで欲しいのだ」

害獣はそう言い後ろを振り向き、店員に向かって盗んだ食べ物を返そうとする。

泥棒アライさん「こ、これはアライさんが優しいから返すのだ。今回は特別なのだ。今度からは自力で素早く物を取るのだ。じゃないとこの弱肉強食の世界を行きぬくことは出来ないのだ。」エッヘン

俺はその一言で胸糞悪くなった。そのままコバエ共を全部踏んづけ、息の根を止めた。

グジャッ!グジャッ!グジャッ!グジャッ!
グジャッ!グジャッ!グジャッ!グジャッ!
メキメキメキッ!メキメキ!メキメキメキッ!メキメキ!

泥棒アライちゃん2「グガガガガ...オボボボボ...」
泥棒アライちゃん3「」ビクンビクンビクン!
泥棒アライちゃん4「ピィィィィ!!!」ゴポォ...

それぞれのコバエは胴体を踏んづけたことで内臓は破裂し、大量の血液を吐血した。肛門からも大量の血が溢れ出し、この状況で生きることは出来まい。

俺「あぁ?俺はそんな汚ねぇ言葉を発して返せなんて一言も言ってないが?」
俺「あーあ、その余計なのが無かったらちゃんとチビは生きてたのにな?」

泥棒アライさん「な・・・なんでチビを殺すのだ...。アライさんは言われた通りに返そうと...しただけなのだ...。」ウルウル

俺「決まってるだろ!?はっはっは...この状況で『特別に返す』だと?人様の物を盗んでおいてよく言えるぜ!」

そのままポケットに入れてあるスタンガンを手に取り、害獣に電極部分を突き付けボタンを押した。
バチバチと音を立て、害獣が気絶するまで感電させていく。

泥棒アライさん「ぁ...ぁ...」ドサッ

ちゃんと気絶させたことを確認すると俺は店員に言った。

俺「...朝っぱらからおっかねぇこと起こしちまってすまなかった。こいつらは俺が後処理をしておくよ。」

店員「分かった。迷惑を掛けてすまない。」

俺「気にしないでくれ、俺はこいつらを駆除するのが本職なだけだ。何も迷惑なんかじゃない。」

素早くこの害獣の死骸を処理していく。気絶させたアライさんは車のトランクにある籠へ入れ、無様な格好になったコバエ共は常時持ち合わせている『アライ回収袋』で残骸を回収し、水の入った2Lのペットボトル数本で血痕を流していく。
後処理が終わると、それを店員に伝え、当初の目的であったフレンズエナジーを買い、このコンビニを後にした。

さっきの泥棒アライさんを生け捕りにしたのは、朝の電話の相手である組織長が、アラジビ用のアライさんを調達して欲しいと言葉を漏らしていたからだ。それくらい組織長は気になるのだろう。

俺は車を走らせ、組織の建物へ再び向かった。

ピーッピーッピーッピーッ

建物の駐車場に車をバックで駐車し、トランクから生け捕りにした泥棒アライさんの入った籠を持つ...

組織とは、正式な名は「ミミズク害獣処理組織」である。
火山の噴火で異常なまでに大量発生したアライグマのフレンズの駆除、及びフレンズ化していないアライグマの駆除を目的とし、防衛省から設立された。
ここの組織を総括するのは「アメリカオオコノハズクのフレンズ」と「ワシミミズクのフレンズ」である。元々、このフレンズ2匹はジャパリパークの住人であった。この2匹が選ばれた理由は、フレンズ化の元の動物が、アライグマの天敵であるから、試験での成績がトップという理由で選ばれた。実際に彼女らはこの組織の総括する素質があるのかどうかの試験で、猛威を奮った。狩りでも5匹で群れていた害獣を1撃でまとめて駆除したそうだ。
彼女らは、ジャパリパークを離れている間にも数々の功績を残したことで有名である。

組織の建物は4階建てのそれなりの大きさの建物で、中に入ると、入り口の大きなホールがある。そこから組織である証明が出来る組織員カードをエレベーターのボタンの横のリーダーをスライドさせ、節電モードから稼動モードへ切り替える。そうするとエレベーターがボタンに反応するようになり、呼び出すことが出来る。

チーン

エレベーターが到着した合図を鳴らすと、自動ドアが開く。そのまま組織長室のある階のボタンを押し、到着を待った。

エレベーター「4階です。扉が開きます。」

ドアが開くとそのまま廊下を通り、組織長の部屋へ向かう。

コンッコン!

俺「ワヅツミです。入ります。」ガチャー

組織長の部屋に入り、一礼をする。

俺「失礼します。駆除の依頼の件で参りました。」

組織長「遅いのです。一体どこで油を売っていたのですか。」

副組織長「それよりその籠の害獣はなんなのですか。生きているようにみえますが。」

俺「これは組織長がお電話のときにアラジビについて興味をもたれていたようで...。」

電話の内容通りのことを話した。

副組織長「それは本当なのですか。組織長。」

組織長「そ、そうなのです。アラジビ料理が気になっていたところなのです。」アセアセ

組織長は、少し身体を細め、汗を流している。

副組織長「...興味が出るのも仕方ないのです。われわれはグルメなので。」

その言葉を聞いて組織長はほっとしたようだ。細めた身体も戻っている。

組織長「では、話の本題に入るのです。これは助手が説明してくれるのです。」

副組織長「ワヅツミ、お前宛の依頼なのです。今回はこの組織の中のエリートに頼まなければいけない重い仕事なのです。」

重い仕事...。

俺「...その重い仕事というと?」

副組織長「この〇〇村です。数日前から害獣による被害が多発しているそうなのです。依頼主曰く、この害獣は複数で群れている可能性があるのです。万が一のことを考えると、普通の組織員ではこっちに被害が出るかもしれないのです。」

俺「その複数で群れてるっていうのはどのくらいの規模なのでしょう?」

副組織長「大体、成獣であるアライさんが10匹はいるそうなのです。」

なるほど、組織長が電話をかけてまで呼び出すはずだ。

俺「それで、何か策はあるのか?」

副組織長「一人だけでは厳しいのです。昔、お前のパートナーとして行動していた『あの男』を同行させるのです。」

あの男か...。
男というのは、俺がまだこの組織に入りたての頃によく世話になった人物だ。アライさんの性質や性格について、駆除をするための狩りの仕方から全てを学ばせてくれた。冷静で、何に対しても自信に満ち溢れていた。俺はその人物と同行しながら、学び、時には楽しみ優雅な時を過ごした。
だが、とある狩りの時。俺は害獣に大怪我を負わされた。決めの一撃が飛んで来ているのを、あいつは俺のためだけにかばった。あいつはその一撃で、重症を負った。
この一件で俺は、誰にも迷惑をかけることはしたくないと誓った。それからは猟犬と共に、単独で狩りをするようになった。

副組織長「...ワヅツミ、聞いていたのですか?」

俺「あっあぁ...すまない。考え事をしてしまっていた。もう一度頼む。」

副組織長「もし疲れているのなら無理をしないのです。別の人にも頼めるのです。」

俺「いや、大丈夫だ。俺宛に依頼が飛んできてるんだ。やらせてくれ。」

副組織長「分かったのです。ではまた話すのです。」





最終更新:2019年06月03日 00:04