ミミズクワーク 前編

組織の秘密

副組織長「では改めて説明を始めるのです。」
組織長「なのです。」

副組織長は来客用に使うであろう机に、説明で使用するA4サイズ程度の大きさの地図を置いた。

副組織長「今回の依頼があったのは〇〇〇村という小さな集落です。村民についても詳しい事は分かっていないそうなのですが、この村の西に位置する森から害獣の群れが畑の作物や家の食料を盗みに降りてくるそうなのです。この辺なのです。」

副組織長は地図に指を指した。

副組織長「依頼主曰く、害獣たちの規模は大体7匹~10匹らしいのです。それ以上にいるかもしれないのです。いないかもしれないのです。その詳細は全く分からないのです。」

俺「そんな規模で群れてるのか...?」

俺はその規模を聞き疑問に思った。自分のことを最優先に考えるアライさんの性格上、群れて行動することは基本ほとんどない事例である。それに、その規模のグループを作るとすると食料や個々のやり取りで確実にトラブルが起きるはずだ。

副組織長「そうです。ありえないと思いますが、そうなのです。」

俺「分かった。この依頼、必ず俺たちが成功させてやる。」

これまでハンターをしてきた経験を踏まえ、成功を確信したように言った。
俺はそう一言告げて席を立とうとした。

組織長「待つのです。」ガチャ

組織長はそう言うと、銃を持ち運びするようなガンケースを組織長がいつも座っている席の後ろから取り出した。
そのガンケースを机へ運んだ。

組織長「今回の依頼をスムーズに進めるための銃を取り寄せてきたのです。使うのです。」ガチャリ

そう言いながらガンゲースを開ける。
そこにはロシア特殊部隊のスペツナズが使用する、39口径の9mm亜音速弾を使用し、バレル全体がサプレッサーになっている「VSS自動消音狙撃銃」が入っていた。この国に、軍が使用するような銃を輸入してくることは法で禁じられているはずだ。なぜこんなものがここにあるんだ?

俺「ちょ、これはいくらなんでもまずいんじゃないんですか!? バレたら処分どころの話じゃなくなりますよ!」

組織長「安心するのです。防衛省から許可を取っているのです。害獣といえど、数で押されてはハンターの身が危ないのです。ちゃんと夜間の行動も出来るようにナイトスコープも取り付けてあるのです。」

組織長は俺の言葉には何も驚かず、そのまま落ち着いた様子で言った。

組織長「それに、あいつらのパワーは本気を出せば、訓練された大人といえど簡単に殺せるのです。それを踏まえてこれを許可を申請してまで輸入したのです。組織の倉庫には既に、このような品はゴロゴロあるのです。」

俺「そ、そうか...。」

その言葉に俺は安心と驚きを覚えた。なぜなら、法で禁じられているはずの品を防衛省から直接許可を受けて、輸入することができる。ハンターをする上で身の安全を守ることに関しては安心だろう。だが、輸入品が盗難でもされたらたちまち治安は悪化し、害獣駆除どころの騒ぎではなくなるだろう。

組織長「もし、警察に銃の所持が知られても、その場で組織の所属を証明すれば見逃してくれるのです。この件はちゃんと警察等には知れ渡ってるのです。」

俺「分かった。組織長の気持ちに答えるべく、こいつを使わせてもらうとする。」

そう言い、俺はそのガンケースを受け取り組織を後にした。

パートナー

俺は、今回の依頼を共に進める過去のパートナーと合流することにした。
14時頃、〇〇〇村の下見も兼ねて一度互いの顔を見せることを約束した。俺は〇〇〇村へ、組織から借りたミニバンを走らせ目的地へと向かった。

数十分、峠道を走り〇〇〇村へ到着した。
既に、パートナーは到着しているようだった。村の入り口の前に同じ組織名の書かれたミニバンが停まっていた。到着するのを見ていたであろうパートナーは、車から降り、俺のほうへと近づいた。

パートナー「やあ、ワヅツミ。久しぶりだね。」

爽やかな雰囲気で俺へ言う。

俺「久しぶりだな、『リョウ』。」

パートナーの名前は『リョウ』という。爽やか過ぎる野郎で、容姿もスタイルもそこらの男のより断然良い。過去、一緒に狩猟を嗜んだ仲で、組織に入った当初に狩りの対象のアライさんの特徴を教えてもらった。この容姿でこの仕事をしてるのかは謎だが、周りからの印象はとても良いようだ。
服装は上下とも、普通の猟師が着るような服を着て、手提げのバッグを持っている。

リョウ「それじゃ、再会したことだしね。改めてよろしく。」

俺「おう、よろしくな。一緒に頑張ろうぜ。」

リョウ「じゃあ早速だけど、今回の依頼で使う銃って何を持ってきてる?」

リョウはそう問いかける。

俺「あぁ、VSSって銃だな。ロシアのスペツナズが使うような銃だ。小音性能は抜群といってもいいし、それにナイトスコープもおまけで付いてきてる。あと、普通の狩りで使ってるダブルバレルのショットガンだな。」

リョウ「なるほどね。僕の方は「SVD」だね。これも、ワヅツミと同じように組織から支給された銃だよ。一応この銃は狩猟用として普通に使えるみたいだけど。」

俺「お国は、害獣に対して必死みたいだな。当たり前だが。」

こんな民事で使えない銃をわざわざ害獣駆除に使用できるようにしているのには、国は相当焦ってるのかもしれないな。放っておけば、絶滅危惧種の動植物を食われるかもしれないし、そうなるのも仕方無いかもしれないが。

リョウ「被害がどんどん拡大しているしね。仕方ないよ。」

リョウ「とりあえずだけどこの村の下見をしようか。一番西に近い畑から見てみよう。」

俺「おう、付いてくぜ。」

そう言われ、下見を始めた。
村を歩いていくと、途中に食い荒らされた跡がある野菜を見かけた。どうやら今から向かう西の畑付近だけでなく、全体に被害が出ているようだ。細道を歩いていると、その道の端に並んで

休憩アライちゃん1「ふゆ~、つかれたのだぁ~」コスリコスリ
休憩アライちゃん2「おねーしゃん!よちよちつかれたからここできゅうけいしゅりゅのだ」コスリコスリ
休憩アライちゃん3「ここはあらいしゃんたちのおおきいおうちなのをわかるようにしゅるためにためふんしておくのだぁ」プリプリ

ハエガイジムーブをしているコバエを見つけた。

リョウ「早くも見つけちゃったね...。あ、そうだ」

リョウは何か閃いた様に言った。

俺「ん?どうかしたのか? こいつら蹴散らしてやるか?」

リョウ「いや、もしかしたら例の森の奴らかもしれない。ここは...」

リョウはそう言い、ズボンのポケットから何かが入った小さい袋を取り出した。

リョウ「ある程度手懐けて、少しでもいいから情報を貰おう。」

そう言うとリョウはコバエ3匹に近づいた。

休憩アライちゃん1「うゆ!?にんげんなのだーーっ!!」ジタジタ
休憩アライちゃん2「あらいしゃんたちはなにもやってないのりゃ...」コスリコスリ
休憩アライちゃん3「にんげんしゃん!?あらいしゃんたちはいだいなんだぞぉ~!」シッポフリフリ

リョウ「いやぁ~、君達が可愛かったからご飯でもあげようかなってね。」ニコニコ

休憩アライちゃん1「ゆ?やしゃしいにんげんしゃんなのら?」シッポフリフリ
休憩アライちゃん2「うゆ?ごはんしゃんをくれりゅのだ?」スーリスーリ
休憩アライちゃん3「ふははは~!あらいしゃんたちのけらいなのりゃ!」シッポフリフリ

休憩アライちゃん2がリョウの履いている靴で頬ずりしている。

俺(うわぁ、早くこいつら殺してぇ。)

リョウ「ほらほら~」パラパラ

リョウはコバエ3匹の近くの地面に餌を撒いた。

休憩アライちゃん1「ごはんなのりゃーーーっ!!」ヨチヨチクッチャクッチャ
休憩アライちゃん2「ごっはん!ごっはん!なのりゃ!」マッハヨチヨチクチャクチャ
休憩アライちゃん3「ごはんなのりゃ!?おねーしゃ!あらいしゃんのぶんものこすのりゃ!!」ブーストヨチヨチ

リョウ「君達はほんとかわいいねー。飼って一緒に暮らしたいよー。」ニコニコ

休憩アライちゃん1「あらいしゃんたちをかってくれりゅのら?」クッチャクッチャ
休憩アライちゃん2「おかーしゃんはくそがいじだからあらいしゃんはいいのりゃ」クチャクチャモゴモゴ
休憩アライちゃん3「あらいしゃんのけらいになるっていみなのりゃ?いいのりゃー」クチャクチャ

リョウ「じゃあこの籠の中に入って大人しくしててもらってもいいかな?」

手提げのバッグから、小さいサイズの籠を取り出してそう言った。

休憩アライちゃん1「なのりゃー!」ヨチヨチ
休憩アライちゃん2「あらいしゃんはらくえんへいくのりゃ!」ヨチヨチ
休憩アライちゃん3「うゆ~、おねーしゃんまつのりゃー」ヨチヨチ

なんとそのまま籠に入っていった。ここまで餌をやるだけで警戒心が解けるのは流石といっていい頭の作りだな。

リョウ「えらいえらい!じゃあそこで大人しくしててね。」スッ

そのまま籠をバッグへしまった。

リョウ「それじゃ、行きましょうか。言ってなかったんですけど、なんとなくどんな感じに依頼を進めようかは考えれてるんですよね。」

俺「そうか。俺に聞かせてくれないか?」

俺はそう答えた。

リョウ「いいですよ。では...」

リョウ「僕の考えてるような都合のいい立地であれば可能なんですけどね。ある程度地図を見て把握したんですが、西の畑というと2つあるんですね。1つは南西、もう1つは北西に。大体150~200m離れた場所から互いに1つの畑の対応をするんです。勿論、その畑の主の方や近隣の方には安全の為に違う場所へ移動してもらいます。数匹駆除したところで、あとの害獣を泳がせるんです。身の危険を感じたら、奴らも自分たちの住処に逃げるはず。」

俺「なるほどな。それで見逃した保険の為にこいつらを捕まえたってところか?」

リョウ「その通りです。いいですね。そして住処には、奴らの子もうじゃうじゃいるはずです。案内してもらった後、成獣と一緒に元を絶つんです。これで子を成獣へ育つのも阻止できます。」

俺「いい案だな。乗った。」

俺はこの計画に賛成した。立地面で下見しないと分からないが、それ以外で欠けているものはないと感じたからだ。

リョウ「とりあえず進みましょう。立地を確認してからじゃないと計画の実行も変更もできないですから。」

そう言うと、俺たちは足を進めた。





最終更新:2019年06月17日 00:30