益獣フレンズ、アライさん・前編

1 :家畜 ◆.xYpVG0Kr2 [sage]:2017/08/22(火) 21:17:26.25 ID:hde7sgbY0
最近増えてきたアライさんSSに触発されて書いてしまいました
よろしければお付き合いください


2 :家畜 ◆.xYpVG0Kr2 [sage]:2017/08/22(火) 21:19:47.50 ID:hde7sgbY0
かつてアライさんは害獣と呼ばれていました
並外れた生命力と異常な繁殖力を持って人類を脅かす敵対者
自然を荒らし、田畑を荒らし、家屋を荒らす厄介者
中途半端に意思疎通が可能だからこそ、決して相容れることがない嫌悪の対象だったのです

…しかしそれも昔の話
皆様既に御存知の通り、現在においてはアライさんは人類にとってはなくてはならない大切な存在となっています
我々の生活を支えてくれるアライさん、その活躍について少しご紹介させていただきます


3 :家畜 ◆.xYpVG0Kr2 [sage]:2017/08/22(火) 21:20:20.91 ID:hde7sgbY0
アライさんの用途としては、食用…家畜として用いるのが最も一般的だと言えるでしょう
野生にアライさんが広く繁殖し重大な社会問題になっていた頃から、処理によっては非常に美味であるということは知られていました
しかし、当時はアライさんの容姿がヒトに似たものであることから、生理的な嫌悪感が先んじてしまいあまり一般的には食べられてはいませんでした
殺処分したアライさんはそのまま骨まで焼却する、深く埋め立てるなどで処理されるケースが多かったとされています
我々の感覚からすればもったいないとしか言いようがありませんが、当時の常識を現在の感覚で語っても仕方がありません
そういった時代からの積み重ねがあるからこそ今があるのです

さて、それでは実際の養殖の様子を見てみましょう


4 :家畜 ◆.xYpVG0Kr2 [sage]:2017/08/22(火) 21:21:09.26 ID:hde7sgbY0
ノダーノダー
キャッキャ
ビエエエエーン

…不愉快な鳴き声、鬱陶しい笑い声、気持ち悪い泣き声、そして糞尿と腐敗物の匂い
ここではアライさんの幼獣、いわゆるアライちゃんの一括管理を行っています
今更語るまでもありませんが、アライちゃんは非常に頑丈でおよそ食べられそうなものならなんでも食べる生き物です
戦いに向いているわけではないので外敵には弱いのですが、それ以外の要因ではまず死ぬことはありません
こうして隔離された環境で、一般的には廃棄される腐りかけの…時には腐りきった…食料を与えればそれ以外は何も必要ないのです
それぞれのケージに満員電車の倍程度の密度で複数のアライちゃんを詰め込み、水と生ゴミを与え続ける
抗生物質も予防接種も何も必要がないため、非常に安価での飼育が可能なのです

ヒトシャン…ダシテ…ココカラダシテ…
ウンチデタノダー…
イイニオイガスルノダァ…デモ…ウゴケナイノダ…
タチュケテ…ホチイノダ…

泣き声だけではなく、かろうじて言葉を使える個体もいるようですね
アライちゃんは生後一ヶ月ほどで体が倍以上に大きくなり、言葉も話し始めます
誰に教わるまでもなく、本能で言葉を操るのです
ここから更に育って言葉をもう少し話せる時期になれば、ケージから取り出してまとめて洗浄し、個体ごとの管理に移っていきます


6 :家畜 ◆.xYpVG0Kr2 [sage]:2017/08/22(火) 21:26:52.07 ID:hde7sgbY0
さて、最終的にはケージのサイズに対して体が大きくなりすぎるアライちゃん
出る寸前ともなれば身動きがほとんどできなくなるレベルで押し合いへし合いのぎゅうぎゅう詰めです
アライさん養殖の黎明期においては、本当に圧死することも少なからずあったのだとか
しかし、怪我の功名とでも言いましょうか
あえて圧死寸前まで追い詰めるなどして強いストレスを与えることで、生来の傲慢さを薄れさせる個体が現れることがわかったのです
成長し個性が現れ舌っ足らずだった発音もまともになるこのくらいの時期にもなると、もうアライちゃんとは呼べません
通例に習い、これからはアライしゃんと呼ぶことにしましょう


アライしゃんA「やったのだ! でられたのだ…やっとお外に出られたのだ! ここから天下を取るのだ!」
アライしゃんB「ううっ、助かったのだ、もうだめかと思ったのだ、ツラかったのだ、お前は命の恩人なのだ」

さて、ちょうどわかりやすそうな個体がありますね
アライしゃんAとアライしゃんBと呼ぶことにしましょう


7 :家畜 ◆.xYpVG0Kr2 [sage]:2017/08/22(火) 21:28:17.41 ID:hde7sgbY0
アライしゃんAは、なんというかこう、いかにも調子に乗っていますね
聡明なアライさんは自力で脱出したのだー、とでもいわんばかりの態度で目もつり上がっています
アライしゃんBもどこか偉そうではありますが、同時に出してくれた飼育員に恩義を感じてもいるようです
目もなんだか垂れ目気味で、覇気がありません
アライしゃんにもそれぞれ個性がありますが、基本的にはだいたいどちらかのパターンに分岐するそうです

こういった雰囲気などから判断して、飼育員はアライしゃんを2グループに分けていきます
Aタイプは反骨心が高いことが多く、もう少し育てば脱走したり飼育員を襲う確率が高いとされています
一般に想像されるアライさんは大抵これですね
実際、ほとんどのアライしゃんはこのAタイプに分類されます
万が一にも脱走されればかつて起こったアライさん大繁殖の二の舞いになりかねません
その後の管理はアライちゃんだった頃と比べても厳重なものになります

幸い、アライしゃんはAであってもこのまだヒトに対してそこまで反抗的ではありません
そもそもにおいて、アライちゃんの認識では生まれたときから自分たちはケージの中にいたわけですからね
食べ物を奪われたわけでもなし、ヒトと積極的に敵対する理由などありません
ですので食べ物を与えれば飼育員の指示する方についてくるくらいはしてくれます
さて、連れて行かれた先でアライちゃんAはどう扱われるのでしょうか


8 :家畜 ◆.xYpVG0Kr2 [sage]:2017/08/22(火) 21:29:35.22 ID:hde7sgbY0
アライしゃんA1「なんなのだ! ここから出すのだ!」
アライしゃんA2「ひどいのだ! せっかく脱出したのにまた出られないのだ!」
アライしゃんA3「この悪者め! アライさんがやっつけてやるのだ!」

アライさんAは、ケージから出たその日のうちに、それぞれが今度は直径1メートルほどの檻に入れられます
流石に閉じ込められたことに気づいたアライしゃんは怒り狂います
この時点で完全にヒトを敵と認識することになりますが、しかし何ら問題はありません
なぜなら出荷時…早い話が屠殺の時が来るまでアライしゃんがこの檻から出ることは二度とないからです
エサと水は一定時間ごとにオートメーションで檻の隙間から差し入れられ、人間が直接関わることがありません
数ヶ月後、次に人間を目にする時は、すなわちそのアライしゃん…その頃にはほぼアライさん…が死ぬ時になるわけですね




最終更新:2018年04月06日 01:56