69 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイ 0512-lIef)[sage] 投稿日:2017/10/09(月) 18:24:19.32 ID:aUT5QCvf0 [9/12]
……いや、まだコバエの心臓が立てる音が手の中に伝わってくる。
先程までアライさんだったものが飲むようにおいておいたバケツにためた水をすくい、コバエの顔面にぶちまける。
アライちゃん1「のやぁぁああああっ!!?」ビクゥッ
目を覚ましたアライちゃんにもう一度聞く。
――――お前は、なんだ?
アライちゃん1「あ、あたしは…… あらいしゃんじゃ、ないのぁ……」ブルブルブル
――――よし、いい子だ。
すっかり疲弊したコバエの頭をやさしく撫でてやる。
アライちゃん1「のぁ……?」
この鬱陶しい語尾もやめさせたいが、それは明日にでもしよう。
コバエ自身が自分はアライさんじゃないと言った。
今日のところはこれだけで十分だ。
再び手の中で意識を失ったコバエを檻の中に片付け、私は肉片の後片付けとミルクの準備をするのであった――――
70 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイ 0512-lIef)[sage] 投稿日:2017/10/09(月) 18:27:03.39 ID:aUT5QCvf0 [10/12]
……それからもずっと苦労の連続だった。
耳と尻尾の再生もなかなか抑制できなかった。
なんと、翌日にはコバエの耳と尻尾が生えてきていたのである。
血塗れだったので、どうやら縫い合わせた傷口を引っ掻き回して無理矢理糸をちぎったらしい。
嬉しそうに見せてきたコバエをぶちのめし、またその耳と尻尾を引き千切ったのは言うまでもないことだろう。
ちなみに今はより頑丈な糸にしたのと生える度に半殺しにしてきたこともあってコバエには耳も尻尾も存在していない。
一人称と語尾も矯正済みである。
そこに至るまで努力は筆舌には尽くしがたい。
あの不快な語尾を言う毎に痛めつけ、しかし決して何故痛めつけたのかは教えない。
コバエがあの語尾を使う毎に痛めつけられると理解するまでその行為を続けたのだが……
なんと、コバエがあの語尾をやめるまでに3カ月もかかったのである。
溢れ出す殺意を3カ月も耐え抜き、コバエを殺さなかったのは自分でも不思議だ。
71 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイ 0512-lIef)[] 投稿日:2017/10/09(月) 18:27:59.40 ID:aUT5QCvf0 [11/12]
まぁ、苦労の甲斐あってコバエはハエガイジムーブもしないし不愉快な言動も見せない。
無論鬱陶しい語尾も使わないし、耳も尻尾もないし、毛皮を剥いで普通の服を着せているのでパッと見アライさんだともわからない。
実験は一応の成功を見せたということでいいだろう。
ただ、こうやって徹底的にアライさんをアライさん足ら占める要素を排除し、一年以上かけてて調教してやらねばこうはならないだろう。
アライさんがアライさんじゃなくなれば共存は可能、しかしそれだけの労力をかけたところで普通のフレンズらしくなるだけなのだから。
もし、同じようなことを他のフレンズにやればもっと賢い個体に仕上がるだろうに、アライさんはそうまでしてようやくまともなレベルに達するのである。
アライさん1「……できました」
――――おお、出来たか。
調教の甲斐あって、コバエはなんと料理ができるまでのレベルに達していた。
檻の鍵を外し中に入ると、そこには何とも普通のカレーライスが盛りつけられていた。
レシピ通りに作る、ただそれだけのことなのだがアライさんにはそれすらできない。
しかし、私の日々の調教によりここまで出来るようになったのである。
どれ、味は……
すっかり油断していた私は、その時背後に迫る危機に気付けなかったのである――――
72 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイ 0512-lIef)[sage] 投稿日:2017/10/09(月) 18:29:15.27 ID:aUT5QCvf0 [12/12]
アライさん1「ふ、ふはは、ふははははー!やったのだ、遂にやったのだぁ!!!」コスコスコス
アライさん1「よくも今までアライさんを虐めてくれたななのだ!人間のくせに凄く生意気だったのだ!!」
アライさん1「でもアライさんは偉大だから、今までじっと耐えてきてのだ!この日のためになのだ!!」
アライさん1「なにが耳も尻尾もない、なのだ!見るのだ、アライさんには立派な尻尾と耳が…あぎっ、ぎぃぃいいいいっ!!!」ブチブチブチィッ
アライさん1「はーっ、はぁーっ、はぁぁ…… ほら、可愛い耳と、尻尾が、あるの、だ……」ゼーッ ゼーッ
アライさん1「きれいな毛皮も生えるのだ…… なんなのだ、こんな服っ!!」ビリィッ
アライさん1「ふははははー!アライさんは偉大なのだ!天下獲るのだー!!」コスコスコス
そう言ってアライさんは檻から飛び出していった。
映像はそこで止まっている。
その映像と言うのはアライちゃんが生まれたところから始まり、成獣になるまでの間苛烈な調教を受けさせる実験映像のことである。
このどこからか流出した映像が動画サイトにアップされ世界的に広まったことで、アライさんはどこまで行ってもアライさんであり、更生など不可能であると言う論調がより強まった。
アラ信どもも鳴りを潜め、多くの人間とフレンズがアライさんの殲滅に賛成するようになったのだ。
こうして、時世はアライさん駆除へと大きく動いていったのであった――――
最終更新:2018年04月06日 22:17