冬のアライさん一家 ~極寒の冬を逞しく生きる~・前編

937 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ワッチョイWW df4c-y74W)[sage] 投稿日:2017/11/10(金) 23:22:48.40 ID:A4sQ7WIA0 [3/3]
寒い雪がふる季節に山に住むアライさん親子のアライさんだけ殺して小さいアライちゃんだけで冬を越せるのか実験してみたい

980 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ポキッー 5fba-PffV)[sage] 投稿日:2017/11/11(土) 21:41:49.71 ID:oSH8Zqvx01111
恐怖に震えるアライちゃんのSS読みたい

きょうはポッキーの日か
串刺しになってるアライさんの日だね


64 名前:前スレ>>937>>980に捧ぐ(1/25) (ワッチョイ ff12-x5jG)[sage] 投稿日:2017/11/12(日) 18:20:46.41 ID:eaZ7umBs0 [1/26]
アライさん「うぅ…… 寒いのだ……」ブルブルコスコス

寒風吹き荒ぶ銀世界を一つの影が蠢いている。

人間を不愉快にさせることに特化したその顔、行動を見るに間違いなくアライさんである。

アライさん「うぅぅぅ…… 食べ物はどこにあるのだぁ……」ガチガチコスコス

アライさん「さ、さぶいのだぁ…… でも、チビ達がぁ……」コスコスジュルル

どうやらこのアライさん、冬の真っただ中に出産してしまったようだ。

何もない銀世界にわずかに残された食べ物を、巣で待っているチビ達のために必死に探しているようだ。

だが、探せど探せど何も見つからない。アライさんのイライラは寒さのせいもありあっという間に頂点に達した。

アライさん「いや、そもそもなんでアライさんがチビ達のためにこんな寒い中頑張らなきゃいけないのだ……?」ピタッ

アライさん「考えれば考えるほどおかしいのだ!こんな寒い冬はアライさんが生き延びることすら厳しいのだ……!」コスコスコス

アライさん「そうなのだ!チビ達よりもアライさんが生き残る方が大事なのだ!!」ピカピカコスコス

しれっと育児放棄を決意したアライさん、これが野生で生きていくもののシビアな感性なのだろうか。

いいや、違う。そんなものではない、只のアライさん特優の自己中心的な考えである。

アライさん「さて、そうと決めたらさっさとお家に帰るのだ!……のだ?」コスコスコス ピタッ

アライさん「それは駄目なのだ。そしたらあのチビ共がおかーしゃんおかーしゃんとせっつくに決まってるのだ……!」ブルブルコスコス

アライさん「もうあのお家は捨てて別のお家を探すのだ……!」ガチガチコスコス

そう言って森の奥へと向かうアライさん、新しい巣穴を求めて彷徨い始めた。


65 名前:前スレ>>937>>980に捧ぐ(2/25) (ワッチョイ ff12-x5jG)[sage] 投稿日:2017/11/12(日) 18:25:25.72 ID:eaZ7umBs0 [2/26]
アライさん「ずずっ…… 鼻水で鼻が詰ってるのだ…… うぅ、寒いのだぁぁ……」ガクブルコスコス

ハエガイジムーブで暖を取りつつ彷徨うアライさん、その目の前に大きめの穴がぽっかりと空いているのが見えた。

アライさん「のだっ!?いい所を見つけたのだ……!」ダッ

鼻水を垂らしながらアライさんは意気揚々と洞穴目がけ奪取する。

ああ、この時この鼻水を一旦かんでいれば、これから起こる悲劇を防げたのであろうか。

アライさん「たぁ~っ!ふはははーっ!ここがアライさんの新しいお家なの……だ?」クビカシゲ

喜び勇んで突撃した洞穴の奥、そこには黒いもじゃもじゃがあった。

それに気づいた瞬間、冬の寒さとはまた違う悪寒がアライさんの背筋を駆け抜けた。

アライさん「……まずいのだっ!」ダッ

言うが早いか、アライさんは折角見つけた新しいお家の出口目掛け全力ゴキダッシュをしようとした。

そう、しようとしたのである。

しようとしただけであって、出来たわけではない。


66 名前:前スレ>>937>>980に捧ぐ(3/25) (ワッチョイ ff12-x5jG)[sage] 投稿日:2017/11/12(日) 18:28:57.23 ID:eaZ7umBs0 [3/26]
アライさんは全力ゴキダッシュをしようとした直後に凄まじい一撃を背中に喰らったのである。

アライさん「のだあああああっ!?いだいのだぁぁあああああっ―――――!!!」ジタバタバタ

突如自信を襲った鋭い痛みにアライさんは全身を戦慄かせ悲鳴を上げる。

そのダミ声が鬱陶しいとでも言うかのようにさらに重い一撃がアライさんの腹部を殴打し、鋭い何かを深く深く食い込ませる。

アライさん「のぎゃああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!!!」ゴボッ パシャパシャッ

アライさん「いだあ゛あ゛あ゛い゛゛い゛っ!!いだいのだぁああああああああああっっ!!!」ジタバタバタ

もうおわかりだろう、先程の黒いもじゃもじゃの正体にしてアライさんを襲った激痛の正体。

それは、クマである。

アライさん「ば、ばなずのだぁぁ…… あ、アライさんはお前がいるなんて知らなかったのだ……」ガクガクガク

アライさん「だからアライさんは何も悪くないのだ……!こんな理不尽、アライさんが、かわいそう、なのだ……」ガクガクガク

凄まじい論理の飛躍である。全く持って謎の理論である。

アライさん「あ、アライさんは死ねないのだ…… アライさんには、アライさんのこと、待ってる、チビ達が…… いるのだ……」ゼヒーゼヒー

先程あっさり見捨てた自分の子どものことを持ち出すアライさん。これで同情を引く気であろうか。

しかし相手は獣、言葉の雰囲気は何となく察せても意味までは理解できない。

まぁ、言葉を解する人間やフレンズであっても同情することはないだろうが。

冬眠を妨げられ怒る熊はアライさんを許す気など毛頭ないだろう。アライさんの命はここで尽きてしまうのだろうか。

可愛いはずの我が子をすぱっと見捨ててまで生きようとしたアライさんの生きる価値の無い命はここで終わってしまうのか。


67 名前:前スレ>>937>>980に捧ぐ(4/25) (ワッチョイ ff12-x5jG)[sage] 投稿日:2017/11/12(日) 18:30:08.45 ID:eaZ7umBs0 [4/26]
アライさん「の、のだ……?」ガクガクズピッ

鼻に詰っていた鼻水が先程の醜い悲鳴と同時に排出されていたのか、アライさんは鼻腔をくすぐる匂いを感じた。

アライさん「の、だ…… お前、雄なのだな……」ガクガクガク

どうやらこの熊は雄のようだ。アライさんの鼻はそのにおいを嗅ぎ付けたのだ。

生きることにはどこまでも意地汚いアライさんの悪知恵が急速に働いていく。

この絶体絶命のピンチを乗り越える答えを導き出す。

アライさん「の、だ!アライさんは雌なのだ…… み、見逃してくれるのなら、お前と交尾してやってもいい…のぎゃばっ!?」グチャア

なんと、阿呆な答えなのだろうか。

本能的に馬鹿にされたと感じたのであろう、熊はアライさんがその身の毛がよだつような言葉をすべて吐き終える前にその頭を潰した。

アライさん「―――――」ガクッビクビクビクビグゥゥッバタタッバタジタバタタバタタ

見るに堪えないゴキガイジムーブが終わるのを待つこともなく熊はアライさんをねぐらの外へと放り投げた。

この熊の眠りを妨げるものが春までは訪れないことを願うばかりである……


71 名前:前スレ>>937>>980に捧ぐ(5/25) (ワッチョイ ff12-x5jG)[sage] 投稿日:2017/11/12(日) 18:55:03.88 ID:eaZ7umBs0 [5/26]
―――
――

アライちゃん1「ちゃむい、のりゃ……」プルプル

アライちゃん2「ぽんぽん、くーくーなのや……」クルルルル

ところかわってこちらは巣の中のアライちゃんたち。

勿論この仔たちは母親にあっさりと見捨てられてこともその母親があっけなく死んだことも知らない。

母親たるアライさんが自分達にご飯を持ってきてくれることを信じて疑わず、ここでじっと寒さと飢えに耐えているのだ。

しかし、アライさんがこの巣を離れて既に三日が経とうとしていた。

アライちゃん1「……のりゃあ!もうあんな奴おかーしゃんじゃないのりゃ!おやこのえんをきってやるのりゃっ!!」プンプン

アライちゃん2「のや?おかーしゃん、おかーしゃんじゃないのや?」クビカシゲ

アライちゃん1「そうなのりゃ!あんなガイジのことはほっちょいて、アライしゃんたちだけでいきぬくのりゃ!!」コスコスコス

アライちゃん2「いきぬく……ってどうするのや?」クビカシゲゲ

アライちゃん1「……とりあえずおいちーものをたべにそとにいくのりゃ!」

アライさんをそのまま小さくしたようなアライちゃんは思考形態もアライさんそのままである。

自分たちの面倒を見ようとしないアライさんをガイジ、母親ではないとあっさり見限るのであった。

そして、身の程を知らないアライさんと同じく身の程知らずな独立宣言をかます始末。


73 名前:前スレ>>937>>980に捧ぐ(6/25) (ワッチョイ ff12-x5jG)[sage] 投稿日:2017/11/12(日) 19:00:07.30 ID:eaZ7umBs0 [6/26]
アライちゃん2「だったやいもーともつれていくのや……」グイッ

アライちゃん3だったもの「―――――」クン

体温調節も自分ではろくにできないようなアライちゃん、普段なら母親が自身の体温で温めるのだがその母親は既にこの世からGet Away.

幼い害獣同士で身を寄り添って温め合っていたものの一番小さなこの個体は尊さのかけらもない命を散らしていた。

アライちゃん1「のりゃ!」ペチッ

アライちゃん2「ぴぃっ!いちゃいのやぁ!」ビエェェ

アライちゃん1「そのガイジもほっとくのりゃ!それももーいもーとじゃないのりゃっ!」シャーッ

死んだ個体にこだわっていてもしょうがない、とここまでなら野生の厳しい掟といったところだ。

だがしかし、アライちゃんの思考はそんな野生故の非常な判断でも何でもない。

アライちゃん1「このガイジはずっとまえからアライしゃんのことをむしすゆのりゃ!」プンプン

アライちゃん2「アライしゃんもむしされたのや」フンスッ

アライちゃん1「こんなガイジ、ここにすてていくのりゃ!どーせつれていったとこよでおっぱいしかのめないようなやつはてんかとれないのりゃ!」ヨチヨチヨチ

このアライちゃんにとって死んだ個体は自分を無視する嫌な奴なのである。

であるからして、そこに野生の掟などはなく、ただただアライちゃんが気に入らないから置いていく。それだけであった。

もう一度言おう。これが只のアライさん特優の自己中心的な考えである。

74 名前:前スレ>>937>>980に捧ぐ(7/25) (ワッチョイ ff12-x5jG)[sage] 投稿日:2017/11/12(日) 19:05:06.30 ID:eaZ7umBs0 [7/26]
アライちゃん2「……おねーしゃん、おねーしゃん」クイクイ

アライちゃん1「のりゃっ!アライしゃんはおねーしゃんなのりゃ!おまえもはんこーすりゅななのりゃ!」シャーッ

早く生まれたといってもその差は1,2分程度、にも関わらずアライさんらしい横暴な態度である。

アライちゃん2「ぴぃぃっ!で、でもおねーしゃん、つれてかないならあれ、もったいないのや……」コスコスコス

アライちゃん1「のりゃ……?」クビカシゲ

今度は僅かに先に生まれただけのアライちゃんが首をかしげる番であった。

ちょびっとの差で妹となったアライちゃんの言っていることが理解できないようだ。

アライちゃん2「だかや、あれ、いもーとじゃないなや、ただのおにくなのや」ピカピカ

アライちゃん1「のりゃ……!?」ゾクゥッ

屈託のない笑顔で妹を食べようと誘ってくるアライちゃん、それを見て先生まれアライちゃんの背筋が一瞬にして凍る。

自分が捨てていこうとしていた妹を連れて行こうとしておきながら、いざ置いていくとなったら只の食料としか見ていない。

アライちゃんは強く思った。

アライちゃん1(こいつもガイジなのりゃ……!すきをみせたらアライしゃんまでたべゆきなのりゃ……!!)ノダァァァァン

75 名前:前スレ>>937>>980に捧ぐ(8/25) (ワッチョイ ff12-x5jG)[sage] 投稿日:2017/11/12(日) 19:10:17.54 ID:eaZ7umBs0 [8/26]
この時点で姉アライちゃんは二匹で一緒に生きていくという手段を取りやめた。

自分が生き延びるためにこのガイジを利用してやる、そう心に決めたのだ。

アライちゃん1「ふ、ふははははーっ!いもーとのいうとおりなのりゃ!このガイジをアライしゃんたちのちにくにしてやるのりゃ!!」ヨチヨチヨチ

アライちゃん2「ちにくにすゆのやーっ!!」ヨチヨチヨチ

こうして2匹のアライちゃんは3日振りの食事にありついた。

共に遊び、共に夜を過ごし、色々な思い出を共有した家族への思いは微塵もない暴食であった。

骨にこびりついた僅かな肉片すらこそぎ落とす情のかけらもない惨い食事であった。

アライちゃん1「おなかいっぱいなのりゃ……」カエルバラッ

アライちゃん2「のやぁ……」カエルバラァッ

飢えと渇きを癒したアライちゃんは一番下の妹だったものの毛皮に仲良くくるまりながら眠りに就いた。

おそらくこれが、3匹のアライちゃんが一緒に過ごす最後の一日になるであろう。




最終更新:2018年04月06日 22:33