114 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ガラプー KK93-h1lc)[sage] 投稿日:2017/11/13(月) 12:55:41.97 ID:HnbhNT+rK [1/2]
アライさんと僕
朝ゴミだしに捨て場に向かったらアライさんがゴミ袋を持ち去っていった。
こっそり追いかけると中身を近場の汚い川で洗ってたから、アライさんが持ち出したゴミをこっそり元のゴミ捨て場に戻しておいた。
自分のも出してたら、すごい息切らしながら僕からゴミ袋ひったくるアライさん。
「こら、それは僕のだよ。持ってくんじゃない」
って僕が言ったら何を勘違いしたか、宝を奪った悪人として認識しはじめたようだ。
「これはアライさんがさいしょにみつけたのだ…アライさんがとられたのだ!!」
必死にゴミ袋を渡すまいとするアライさんだったが、ゴミ回収車が現れると顔が真っ青になった。
「またこの畜生野郎めか!何回ブッ飛ばされれば解るんだ!?」
「違うのだ!アライさんは取り返しにきただけなのヴェェッ」
一人のおじさんが怒鳴り、二人目のおじさんが明らかに重そうなゴミ袋をアライさんの頭に叩きつけながら車に積みだす。
「兄ちゃん、帰宅したらちゃんと手ぇ洗っとけよ。こいつきったねえから」
踞り悶えるアライさんを足で小突きながら回収し終えると直ぐ様車を走らせた。
115 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 (ガラプー KK93-h1lc)[sage] 投稿日:2017/11/13(月) 13:02:57.77 ID:HnbhNT+rK [2/2]
空になったゴミ捨て場。うずくまり泣いているのだろうか?嗚咽を漏らすアライさんに少し同情してしまったが、僕も踵を返し帰路につく。
「アラ……アラ……グッス…のだぁ…」
僕は鳴き声を意識しないようにしても何度か振り返ってしまうのは嘲笑なのか同情なのか?考えるのはやめよう。
自宅の玄関を開ける前にあちらの方角からドンッ!という音がした。
身支度を整え職場へ向かう僕。今朝あんなことあったからかあのゴミ捨て場が気になり少し通勤ルートを変えてみた。
ゴミ捨て場前でハラワタを散らかし、虚ろ目をしたアライさんが転がっており、その腕は本来曲がるべきでは無い方へ向いていた。
「………ヒュー………フュー………」
さっきの音はアライさんが車に轢かれた音らしい。
開きぱなしの口から漏れるわずかな呼吸の音は命を繋ぎ止めるため必死の行為なのだろう。
濁った目でこちらを見据えると、折れた骨がつきだしている腕が僅かに動いた。
視線を剃らすと一羽のカラスと目があった。
「どけて」
カラスはそう言ってる様に感じた僕はそのまま歩みを進める。
背後では羽音が増えていた。帰宅時にはきっと無くなっているだろう、そう考えたら気持ちが軽くなった。
最終更新:2018年04月06日 02:11