ハエガイジとイエイヌ2

437 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2017/07/14(金) 20:39:08.14 ID:1zqIXP/T0 [6/22]
イエイヌ「? なんの音なの?」

ご主人がいなくなってからすぐ、イエイヌは奇妙な音がしたのを感じた。生き物か何かが茂みの中で動き回っているような、ガサゴソという音だ。
イエイヌが音の発生源の方へ視線を向けると、ちょうど茂みの中から灰色の耳が姿を見せたところだった。
耳に続いて、奇妙に変色した頭髪が姿を現す。黒い手袋をしたかのような手と紫色の身体、そして釣り目の激しい顔が、イエイヌの視界に映ってきた。

アライさん「苦しかったのだ! この……緑色の奴め! アライさんを殺そうとしたな! 許さないのだ!」

その生き物……おそらくフレンズであろう……は、植物に対して何やら罵倒しながら拳を繰り出している。不用心なことに、イエイヌはその生命体に近づいていった。

イエイヌ「それは植物なの。お話する相手じゃないの」

アライさん「お前は誰なのだ。アライさんに何の用なのだ?」

イエイヌ「わたしはイエイヌ。ご主人さまの家族なの」

アライさん「お前、飼いフレンズなのか? ふん、道理で頭が悪そうな面をしているのだ」

アライさんはイエイヌの姿を、不躾な視線で撫でまわしてからそう言った。

438 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2017/07/14(金) 20:40:15.53 ID:1zqIXP/T0 [7/22]
アライさん「馬鹿なお前に忠告してやるのだ。そこの緑色には近づかない方がいいのだ。アライさんだからなんとか脱出できたが、お前みたいなアホはそいつに殺されてしまうのだ」

イエイヌ「植物はフレンズを殺したりしないの」

アライさん「馬鹿な奴なのだ。アライさんの言葉を信じないとひどい目にあうぞー? アライさんは偉大なのだ!」

イエイヌ「ところで、アライさんは何をしていたの?」

アライさん「なんでアライさんがアライさんだって分かったのだ!? さてはお前、アライさんのファンなのかー?」

イエイヌ「別にそんなことはないの」

アライさんの一人称は『アライさん』である。そのことから、ある程度の知能を持つものならこの生命体の名前が『アライさん』であることは容易に想像がつく。

444 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2017/07/14(金) 20:43:32.61 ID:1zqIXP/T0 [8/22]
イエイヌは鼻をくんくんと動かした。奇妙な匂いが近くを漂っている。アライさんの姿を見ると、それが何なのかがイエイヌには理解できた。
アライさんの口の周りには、食事のあとであろう汚れがこびりついている。
毛皮には生ごみから分泌されたであろう液体がつき、白い首元の毛皮は黒と赤で薄汚いグラデーションがついている有様だ。
それに、どうやら風呂にも入っていないようだ。汗と排泄物のドギツイ匂いがアライさんの全身から漂っている。
ご主人に風呂で身体を洗ってもらっているイエイヌとは大きな違いだ。
ちなみにイエイヌが風呂に入る時は、水着を着用している。ご主人は童貞なのでイエイヌの裸は刺激が強いのだ(謎の中傷)。

アライさん「いい身分なのだ、全く」

アライさんはそう言うと、イエイヌの鼻を強く摘まんだ。イエイヌは顔をしかめた。

イエイヌ「痛いの」

アライさん「アライさんは、前スイカを食べようとして思いっきり殴られたことがあるのだ。それよりは全然マシなのだ」

447 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2017/07/14(金) 20:44:51.44 ID:1zqIXP/T0 [9/22]
イエイヌ「わたしは泥棒をしたことなんてないから、殴られたことなんてないの」

アライさん「アライさんも、地面に落ちていたスイカを食べようとしただけなのだ」

イエイヌ「それを泥棒って言うの。せーとーな対価としてきんせんをしはらうことで、ヒトは食料を手に入れることができるの。それをしなかったら泥棒として、ほうとちつじょのもとにさばかれる? ことになるらしいの」

アライさん「お前は何を言っているのだ」

イエイヌ「この前、ご主人さまと一緒に見た光る板の中で、小人がそんなことを言っていたの。確かテレビとか言ったの」

アライさん「板の中に閉じ込められているヒトがいるのだ?」

イエイヌ「電波とかいうので送られてきているらしいの。板の中じゃなくて、その電波とか言うのに閉じ込められてるみたいなの」

アライさん「人間は怖いのだ」

イエイヌ「そうでもないの。お金をもらえるからみんな入りたがるらしいの」


最終更新:2017年10月26日 00:59