アライさんとフェネックの子育てごっこ

165 名前:SS書いたよ[sage] 投稿日:2017/06/15(木) 02:31:35.51 ID:BLM8TdKy0 [2/16]



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フェネック 「おはよーアライさん。どうかしたのー?」

   朝。フェネックが起きると、珍しいことに先に目覚めていたアライさんが、
   戸惑いの様子で立ち尽くしていた。
   その腕には、アライさんをミニサイズにしたような物体が抱えられている。

アライさん 「フェネック、朝起きたら、この子がいたのだ」

   アライさんの声を、さらに半オクターブ、かん高くしたようなボイスで鳴く。

ミニアライさん 「のだ、のだっ!」

   ───“それ”は、昨晩、地表に漂う微量のサンドスターが、アライグマの糞、
   あるいは抜け毛に当たって反応して生まれた、“ある種”のフレンズであった。

   フレンズは、正常であれば、年齢や種族にかかわらず、すべて、少女ほどの、
   同等の背丈となる。にもかかわらず、身長50センチほどしかないこの個体は、
   サンドスターの量が足りなかったり、噴出されて時間の経ち古い劣化サンドスター
   となっていたり、上手く反応しなかったりしたときに、生まれてしまうと考えられる、
   “奇形”の個体のようなフレンズであった。

   かつてヒトに、“失敗したフレンズ” “奇形のフレンズ” “フレンズもどき” などと
   呼ばれたフレンズである。


アライさん 「フェネックとちゅーしたから、子供ができてしまったのだ……」

    ※ あさっての方向の勘違い


166 名前:SS(14レスくらい)[sage] 投稿日:2017/06/15(木) 02:34:23.64 ID:BLM8TdKy0 [3/16]

ミニアライさん 「のだ~」
フェネック 「…………あー。(この子、ちゃんとフレンズになれなかったタイプの子だね~)」

   ミニサイズのアライの頭に手を置くフェネック。

アライさん 「………」

  最初は 『自分とフェネックに子供ができてしまった』 という事実 (※思い違いです。)に、さすがに戸惑っていたアライさん。

ミニアライさん 「のだ……のだ……?」

   だが、冷静なフェネックの様子と、ちびっこいアライさんの、その親心に訴えかけるような目
   (※ と、アライさんが贔屓目で思い込んでるだけのウザイ目つき)を見て、決心する。

アライさん 「…フェネック! アライさんは決めたぞ! お宝さがしは中断なのだっ、
       アライさんとフェネックのこども! ふたりで育てるのだー!」

フェネック 「アライさん………(うん。改めてみて思うんだけど、
 http://i.imgur.com/skGru8E.jpg   どうみてもそれ私の子じゃーないよねー。
 100%アライさん要素しかないもん。どうして私の子供だと思うかなー。
 普通なら、“不倫”ってやつを疑われてるところだよー。他のアライグマとの子供だって。

 まあでも、アライさんの子供、ってわけでも、ないからねえ。
 【元になった動物やその遺物】も……、そのへんにわんさか繁殖してくさむらにいる、
 動物の他のアライグマのだよーきっと)」

アライさん 「フェネック……(フェネックは嫌なのか? きのうあんなにアライさんにちゅっちゅしてきたのに)」


167 名前:SS[sage] 投稿日:2017/06/15(木) 02:35:53.94 ID:BLM8TdKy0 [4/16]

フェネック 「(こういう失敗した子って、ボスがすぐ“片付けちゃう”らしいから、アライさんは知らなかったんだね。
  ……産んでもいないのに、目が覚めたら傍にいたから自分の子供だと思っちゃうなんて、アライさんってばかわいいね~。
  このまま、いつもどおりー、アライさんが明後日の方向にいくの見てよーっと)」

フェネック 「……そうだね~。付き合うよー“アライさんママ”~」

アライさん 「っ よかったのだフェネック! ふっはっはー! なんだかアライさん照れるのだ! (たぶんフェネックも悩んでたのだな!)」

ミニアライ 「のだ! のだっ」
フェネック 「…」
アライさん 「“ちび”っ、お前のお世話は、アライさんにおまかせなのだ!」


   すっかり母親(父親)気分となったアライさんと、
   遊び心でそれを見守るフェネック。 (それでいいのか。)


   ───こうして、小さなアライグマのフレンズ(もどき)を使った、
   アライさんとフェネックの“子育てごっこ”が、始まった。


  ◇  ◇  ◇


168 名前:アライさんとフェネックの子育てごっこ[sage] 投稿日:2017/06/15(木) 02:37:51.48 ID:BLM8TdKy0 [5/16]

 【1日目】

  ミニサイズのアライさんをだっこしてあやすフェネック。
  チビながらもアライグマのフレンズらしく、しっかりしもぶくれした、
  ウザイほっぺを、つんつん突いてみる。

フェネック 「チビアライさんはかわいーね~」
ミニアライ 「のだ のだー。」

  なんとなく両手をあげる、小型アライグマさん。
  しかしその動作に、いまいち赤ちゃんらしさはない。
  片方は本気で、片方は趣味で、彼女を『自分たちの赤ちゃん』扱いしているが、
  別にこの子は赤子と言うわけではない。
  アライさんと同じく普通のアライグマのフレンズになるはずだったが、フレンズ化に失敗しただけの、
  小人症+知的障害の大人のようなもの。
  表情も、一見豊かなようだが、顔の筋力が足らず、このうざい顔つきのままほぼ固定されている。
  だが、そのいまいち赤ちゃんらしい可愛さに欠ける姿に、胸を張るアライさん。

アライさん 「チビはちょっと大人みたいなのだっ、アライさんに似てりりしいのだー」
ミニアライ 「のだ?」

  ミニアライは脳も小さいので、その言葉が通じることもない。



169 名前:アライさんとフェネックの子育てごっこ[sage] 投稿日:2017/06/15(木) 02:40:51.63 ID:BLM8TdKy0 [6/16]

  ◇  ◇  ◇


  “子供がいる”……最初はそれだけで嬉しかったアライさんだが、
  子に次から次へと、新しいことを望むようになるのは、親としてのさがというもの。

アライさん 「しかしずっとぺたんと座ったままなのだ。チビは歩けないのだ??」
ミニアライ 「のだー」

アライさん 「よしっ!」  「歩くのはこうやるのだぞ。ついてくるのだ」 すたすた
ミニアライ 「のだ のだ!」 じたじた

        アライさん 「早くこっちまで歩いてくるのだー!」 (遠くから大声で)

ミニアライ 「のだ」

        アライさん 「どうしたのだー!!? どうしてこないのだ?」

フェネック 「アライさん、この子には、ちょっと早いんじゃ~(無理だよ、きっと)」
ミニアライ 「ののだぁー」 うつらうつら

      アライさん 「ぬわー! どうしてチビが歩かないのだ」 (ダッシュで帰ってくるアライさん)

  ミニアライさんの体は、フレンズ化の失敗のため、手足は短過ぎ、関節はしっかりと機能しなかった。
  その半面、尻尾が大きすぎて重りになってしまっている。
  これで歩けと言っても、宮崎駿がマジギレしそうな動きしかできないだろう。
  そもそも、歩こうというそぶりすら見せない。

ミニアライ 「のだーぁ?」
アライさん 「それじゃだめなのだ! ちび! 歩かないとお水も飲みにいけないし、
 セルリアンから逃げられないのだ! 自分の身は自分で守るのがパークのおきてなんだぞー!」 (※自分の言葉のように言っているが受け売り)


170 名前:アライさんとフェネックの子育てごっこ[sage] 投稿日:2017/06/15(木) 02:42:01.57 ID:BLM8TdKy0 [7/16]

フェネック 「……(体が小さすぎるし、骨もちゃんとしてなくて立って歩けないんだね)
       …アライさーん、、この子、まだ赤ちゃんだからだめなんじゃないかなー」
アライさん 「そんなのおかしいのだ! だってアライさんはすぐ歩けたぞ! よく覚えてないけどたぶんそうだったのだ!
  アライさんそっくりの子供なら、アライさんと同じですぐ歩けるし、むてきのはずなのだぁ」
フェネック 「~(これはノーコメントだね~)」


ミニアライ 「のだー」
アライさん 「ほら、ものぐさしないで歩くのだ!」 「むむむ……さては、ちび、アライさんとフェネックが
 四六時中、だっこしてたから、きっと楽を覚えてしまったのだな……めっ、だぞ
 そんなものぐさものだと、ウシのフレンズになってしまうのだー!」


   ミニアライさんの手をつかんで、ずるずると引きずるアライさん。
   思わず物言いかけて手を持ち上げるフェネックだが、止めはせず観察を続ける。

   ミニアライさんは、歩く代わりに、じょ~と小便を垂らし、引きずられながら道に水で線を引いた。
   頬をかすかに緩ませるフェネック。


  ◇  ◇  ◇


171 名前:アライさんとフェネックの子育てごっこ[sage] 投稿日:2017/06/15(木) 02:43:07.67 ID:BLM8TdKy0 [8/16]


   ちびに食事をさせようと四苦八苦するアライさん


アライさん 「ほら、ちび、『あーん』して、ジャパリまんを“食する”のだ!」
ミニアライ 「だっ…」

フェネック 「食べないねぇ」
アライさん 「食べないのだ…」
ミニアライ 「だぁっ…のだ」
フェネック 「(たぶん消化器官もちゃんとできてないんだろうね)」
アライさん 「ちび、好き嫌いはいけないのだー! アライグマは何でも食べるすごい動物なんだぞ」
ミニアライ 「のだー」

   じゃぱりまんをちぎってみたり、水で洗ってみたりしたが、どうやってもダメ。
   しびれを切らして、ミニアライの口の中にむりやりじゃぱりまんを詰め込むアライさん。

ミニアライ 「もご、も、の、だもも」
アライさん 「それー! 一気なのだー」

ミニアライ 「エレエゲーー」 だぱー
アライさん 「のわー! 吐いてしまったのだー!」
フェネック 「だめだよー。アライさーん。こういうときは……」

フェネック 「鳥とかのフレンズがやるんだけどね、こうやって……もぐもぐ……自分で咀嚼して、それで、口移しで、食べさせてあげるんだぁ」
ミニアライ 「の、むちゅー……ごくごく……」
アライさん 「フェ、フェネック……」

   口移しでぐちゃぐちゃにしたエサを与えるフェネック。
   生まれつきの奇形であり、長く生きられないと分かっている、うざい見た目の、“失敗フレンズ”に対してそこまでする、
   その心の闇深さを感じさせる姿に、アライさんも本能てきな部分がぶるっと悪寒を覚えた。

  ◇  ◇  ◇




最終更新:2018年04月03日 00:00