笛口リョーコ&アサシン

ぐつぐつと、シチューが煮えていた。
鍋から漂ってくる濃厚な香りは、並外れて敏感な嗅覚を刺激する。
より正確には、肉の臭いなのだが。

「それで、Mrs.リョーコ。方針は決まりましたかな?」

鍋を掻き回しながら、サーヴァント…アサシンは、マスターへと問いかける。彼女は静かに、頭を降った。
それを見たアサシンは、対して落胆したような風もなく……

「大丈夫ですよ。悩み、選択するのは貴女のように今を生きるものの特権。せめてシチューが煮え上がるまでの合間くらいは、存分に悩みなさい。Mrs.リョーコ」

彼はそうしている合間にも、作業の手を止めなかった。
アサシンのマスター……笛口リョーコは喰鬼である。彼らは人肉のみを食料とする、社会からは排除される化物。
だが、リョーコは人を直接に狩ったことはない。
それは、笛口リョーコという女性が、人食いの種族とは思えないほど、争いを好まない、比較的穏やかな性格をしているからだ。
それは美徳と言えるかもしれないが、優柔不断とも取れる。
聖杯戦争、彼女はこの争いで、他者を殺めることに躊躇していた。
つまりーー踏ん切りがつかないのだ。

「焦る必要はないのですよ。貴女も混乱しているでしょうし、落ち着いて考えてください」

煮えきらない態度のマスターに、アサシンは、紳士的な態度で対処してくれた。
「こうした方が落ち着くでしょうから」と、こうして食事を用意してくれてもいた。
もっとも、喰鬼であるリョーコは食べられないのだが。

「…………」

叶えたい願いはないのか?それは違う。
聖杯への願いは、確かにあった。

冬木にやってくる前に、リョーコは死んだ。いや、殺された。
CGO……喰鬼対策局の鳩に、駆除されたのだ。

幸いにも娘…雛美だけは逃がせたが、夫も殺され、ひとり残されたあの子を思うと不安に駆り立てられる。
もしも、もしもまた、夫と雛美、家族三人で暮らせるのなら……

「アサシンさん」

「何ですかな?」

 仕込みが終わったのか、シチューを皿に盛り付けていたアサシンが聞き返す。人を安心させるような微笑みを浮かべていた彼だったが、リョーコの真剣な表情を見て気を引きしめたのか、真顔になる。
 そんな彼に、笛口リョーコは、彼の目を見て、はっきりと告げた。

「私は……聖杯が、欲しいです。 …協力、してください」

 無言で続きを促すアサシンに、リョーコは時分の胸の内を正直に話した。彼女が秘匿するべき喰鬼のことも含めて、この冬木にマスターとして召喚される前の、すべてを。

「家族とまた一緒に居られるのなら… 私は、私はーー」

 アサシンはそっと、彼女を制した。その痩せぎすの顔に柔らかな微笑みを浮かべ、彼が発したのは肯定だった。

「大丈夫ですよ。こうして私のような者が、かの聖杯に招かれたのも何かの縁です。勿論、つつしんで協力させていただきますよ。えぇ」

 その言葉に、ホッとしたように胸を撫で下ろした彼女に、しかしアサシンは付け加えるようにこう告げた。

「ところで、私が貴女のために協力するのは構わないのですが、あれです、投下交換……という言い方は風情がないですが、ちょっとしたお願いがありまして、いやなに、そんな難しいことではございません。ちょっとした、本当に簡単にできることですのでご安心を」

 彼が懐から取り出した物を見て、リョーコは顔色を変えた。
 それは半分に切られ釘の打ち込まれたベルトだった。
 それを彼女の手に押し付けると、彼は何時もと換わらずにこやかに申し出た。 

「これで私の尻を殴ってください。全力で」

 意味がわからなかった。

「……は?」

 呆然とするマスターを放置しつつ、「すみません。説明が足りなかったですね」と謝罪しつつ、アサシンは話を続ける。

「家族と共に過ごしたい? えぇ、素晴らしい願いですね。では私の願いは世界平和なんてどうでしょう。…いや、そんなことは置いておきましょう。些細なことです。
 大事なのは、私は人に叩かれるのが好きだ。ということです。鞭や板が私の尻を叩くのが快感なのです。
 サーヴァント……というのは、奴隷。という意味も込められています。つまり、貴女のサーヴァントである私は貴女の奴隷ということ。
 つまり奴隷の躾はリョーコ、貴女の義務であり、つまり私を満たすのは貴女でなくてはならやいのです」

 説明を聞いても良くわからなかった。

「さぁ!! 叩いてください! Mrs.リョーコ!!私を満たすのです!さぁ!!」

 そこには、未亡人に尻をつき出す老紳士というシュールな光景が繰り広げられていた。

(……帰りたい)

 笛口リョーコという喰鬼は、切に願うのだった。





【クラス】
アサシン

【真名】
アルバート・フィッシュ

【原典】
史実

【パラメーター】
筋力C+ 耐久B+ 敏捷C+ 魔力C 幸運C 宝具B

【属性】  
混沌・悪

【クラススキル】

気配遮断:B
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは困難。

【保有スキル】

精神汚染:A(EX)
 精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
 アルバートが紳士という自分を偽っている限り、意思疏通は成立するように見える。……ときおり本性が覗くだろうが。
 平時ですら最高ランクの精神汚染は、満月の夜に評価規格外へと至る。

マゾヒスト:B
 欲望に身を任せることで痛みによる恐慌や畏怖を無効化するが、
 戦闘中の状況判断に悪影響を及ぼす。
 このランクであれば、ダメージを受けるごとに一部パラメーターが上昇していく。

サディスト:B
 欲望に身を任せることで、こちらが攻撃している間、
 他者からの干渉を高確率で無効化する。

拷問技術:B 
 卓越した拷問技術。 
 拷問器具を使ったダメージにプラス補正がかかる。
 彼は、ありふれた道具を用いたオーソドックスな拷問を極めている

【宝具】

『満月の日に狂え、殺人鬼よ(ムーン・マニアック)』
ランクB 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
 アルバート・フィッシュが得た異名「満月の狂人」を基として具現化された宝具。
 満月の日にのみ発動できる宝具で、発動後のアサシンは、バーサーカーのAランク『狂化』に匹敵するほどの高い戦闘力ボーナスを獲得出来る。
 ただし、一度この状態に至ったアサシンは『精神汚染』スキルがEX(評価規格外)までランクアップし、普段の紳士的な態度をかなぐり捨てて快楽を貪ろうとするため、マスターの制御下を離れ暴走する可能性が非常に高くなる。
場合によってはマスターすらもアサシンの加虐・被虐の対象となるため、発動は危険極まりない。
 朝になれば強制解除される。

『人を貪る、喰人鬼(ミスターグレイマン)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:2
 アサシンの行った食人を体現する宝具。
 人間を殺し、調理し喰らうことで全パラメーターが上昇していく。
 普通の人間を食らった場合、ランクを一つ上げるのに最低でも百人喰らう必要がある。 
 アサシンが倒したサーヴァントは消滅せず、それを調理し、喰らうことによって、喰らった相手の持つスキルや肉体に依存する宝具を使用することが出来る。
 得られるスキルや宝具は相手の耐久が低ければ低いほど多くなる


【weapon】 
『食人鬼の調理鞭』
 アサシンが制作・使用した半分に切られ釘の打ち込まれたベルト。
 アサシンは子供の肉を柔らかくするために、これで子供たちを鞭打ちにした。
 アサシンはこの鞭を『地獄の器具』と呼んでいる。
 相手が、これによりダメージを受けると耐久のパラメーターがダウンする

【外見】
シルクハットを被ったちょび髭。

【人物背景】
アメリカの連続殺人者、食人者。
「満月の狂人」、「グレイマン」、「ブルックリンの吸血鬼」などの異名で知られている。
正確な数字は明らかではないが、多数の児童を暴行して殺害(1910年から1934年までに400人を殺したと自供)
肉を食べる目的で殺害された児童もいる 。また、成人も殺害しているとされる。なお、「満月の狂人」という異名は、犯行が満月の日に行われたことが多かったことに因む。
アメリカ犯罪史上最悪の殺人鬼と呼ばれている。
彼はマゾヒスト、サディスト、ペドフェリア、糞性愛、尿性愛など数多のフェティシズムを患っていた。
幼少の頃より鞭で叩かれることを喜び、その最中に勃起した。
自らの子供に尻を叩かせ、射精を見せつける。
自慰行為で、自らの陰茎に29もの針を突き刺した。
また、彼はライターオイルをしみこませた綿球を自身の直腸に入れて火をつけ、身体の内部が焼けるような感覚に酔いしれたと言う。
この頃に、貧しい黒人を殺しはじめ遺体を食らい、尿や血液、排泄物までを食べたという。
彼が逮捕された事件では、気のいい老人を演じて少女やその両親を信頼させ 、
誕生パーティに連れて行くという名目で誘拐し殺人、シチューにして食べたのである。
彼は食べた少女のシチューを「うまかった」と語っている。

彼は死刑執行人により電気椅子に皮ひもで固定されている際にも、
電気処刑の執行を「一生に一度しか味わえない、最高のスリル」、「わくわくしますよまだ試したことがないですから」と言って、喜んでいたという。

【サーヴァントとしての願い】
サーヴァントとしてリョーコに従う

……従うことで、快楽が満たされるのならば、だが




【マスター】
笛口リョーコ@東京喰鬼

【能力・技能】
喰鬼。赫子は甲赫。

【人物背景】
笛口雛実の母親である喰種。
夫の笛口アサキはCCGに殺害された。
自分で人を殺すことができないため、あんていくから食料を分けてもらっていた。

【マスターとしての願い】
家族に会いたい

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最終更新:2016年09月03日 22:42