それを知らず ◆2lsK9hNTNE
木々のひしめく森の中、鈍色の光りを放つのは伝説の刀鍛冶四季崎記紀が作りし完成形変体刀十二本の一つ、賊刀『鎧』。纏うのは人を人を喰らう生命体――アマゾンへと変貌させる溶原性細胞を内に秘める『オリジナル』のアマゾン、千翼。
まるで壁のような急勾配の坂を挟み、下で構えるのは剣を使わない剣法、虚刀流の七代目当主、無刀の剣士、鑢七花。
千翼が『鎧』を着るのは誰かを殺すための他に無く、七花の構えるも殺人剣術虚刀流を持って相対する相手を屠るために他ならない。
彼らがどのようにしてこのような状況に至ったのか、時間は少し巻き戻る。
PENTAGONでの激闘を終えた千翼は箱庭病院を目的地に定め歩いていた。
人を絶対に食べない決意を固める千翼だが当然腹は減るし体力も消耗する。リュックサックに入っている普通の食料は身体が受け付けないが、病院ならそれ以外の栄養源があるのではないかと考えたのだ。
後ろにそびえるPENTAGONを目印にすれば道を間違えることもなく進むことができた。それは鬱蒼とした森の中に入っても変わらない。もう少し暗ければそうはいかなかったかもしれないが、今は日に照らされたPENTAGONの威容が、振り向けば嫌でも目に入る。
七花を見つけたのはそうやって歩いて急勾配の坂を前に足を止めた時、坂の下を歩く彼の姿を発見したのだ。
山と病院と高い塔、どこか向かう悩んだ末に七花は塔――PENTAGONを選択したのだった。理由は見えていたからというただそれだけの理由だ。
しかし向かう途中で登るのが大変そうな坂にぶつかり、どこか他の道はないかと探しているのだった。
PENTAGONを背にして進む千翼とPENTAGONに目指す七花……出会うのは必然だったかもしれない。
千翼にとって幸運だったのは、その出会いが坂を挟んでのものだったことだ。坂の上にいた千翼は一方的に七花を見つけることができ、うつ伏せになって身を潜めた。
ここで千翼には二つの選択肢があった。
このままやり過ごすか。
それともここで七花を殺すか。
イユを生き返らせるためには全ての参加者を殺さなければいけないが、先程の戦いのダメージもまだ癒えていない。病院までは戦いを避けて進むのも一つの手だった。
しかし千翼が選んだのは前者であった。
理屈ではない。五月を殺した痛みが、重みが、千翼に人殺しから逃げる選択肢を許さなかった。
そうなるとまた別の二択が千翼の前に現れる。
賊刀『鎧』を着て戦うか、着ないで戦うかだ。
PENTAGONでの時のように戦闘中に着れる機会なんてそうそう無いだろう。着るなら戦闘を始める前だ。
しかし『鎧』を使うためにはあの姿――アマゾン態にならなければいけない。『鎧』で抑えているとはいえ制御の難しいあの姿にはできればなりたくない。
消耗しているとはいえ普通の人間相手ならアマゾンネオでも十分に圧倒できる。だが千翼はこの島に来てから何人も普通じゃない人間を何人も見てきた。むしろ普通の人間とほとんど会っていない。戦う力が全く無かったのは五月くらいのものだった。
千翼は前者を選ぶことにした。リュックサックを下ろし、なるべく音を立てないように『鎧』を着込む。ちょうど全て着け終えたところで七花が気づき、坂の上を見上げた。
まるで壁のような急勾配の坂を挟み、下で構えるのは剣を使わない剣法、虚刀流の七代目当主、無刀の剣士、鑢七花。
千翼が『鎧』を着るのは誰かを殺すための他に無く、七花の構えるも殺人剣術虚刀流を持って相対する相手を屠るために他ならない。
彼らがどのようにしてこのような状況に至ったのか、時間は少し巻き戻る。
PENTAGONでの激闘を終えた千翼は箱庭病院を目的地に定め歩いていた。
人を絶対に食べない決意を固める千翼だが当然腹は減るし体力も消耗する。リュックサックに入っている普通の食料は身体が受け付けないが、病院ならそれ以外の栄養源があるのではないかと考えたのだ。
後ろにそびえるPENTAGONを目印にすれば道を間違えることもなく進むことができた。それは鬱蒼とした森の中に入っても変わらない。もう少し暗ければそうはいかなかったかもしれないが、今は日に照らされたPENTAGONの威容が、振り向けば嫌でも目に入る。
七花を見つけたのはそうやって歩いて急勾配の坂を前に足を止めた時、坂の下を歩く彼の姿を発見したのだ。
山と病院と高い塔、どこか向かう悩んだ末に七花は塔――PENTAGONを選択したのだった。理由は見えていたからというただそれだけの理由だ。
しかし向かう途中で登るのが大変そうな坂にぶつかり、どこか他の道はないかと探しているのだった。
PENTAGONを背にして進む千翼とPENTAGONに目指す七花……出会うのは必然だったかもしれない。
千翼にとって幸運だったのは、その出会いが坂を挟んでのものだったことだ。坂の上にいた千翼は一方的に七花を見つけることができ、うつ伏せになって身を潜めた。
ここで千翼には二つの選択肢があった。
このままやり過ごすか。
それともここで七花を殺すか。
イユを生き返らせるためには全ての参加者を殺さなければいけないが、先程の戦いのダメージもまだ癒えていない。病院までは戦いを避けて進むのも一つの手だった。
しかし千翼が選んだのは前者であった。
理屈ではない。五月を殺した痛みが、重みが、千翼に人殺しから逃げる選択肢を許さなかった。
そうなるとまた別の二択が千翼の前に現れる。
賊刀『鎧』を着て戦うか、着ないで戦うかだ。
PENTAGONでの時のように戦闘中に着れる機会なんてそうそう無いだろう。着るなら戦闘を始める前だ。
しかし『鎧』を使うためにはあの姿――アマゾン態にならなければいけない。『鎧』で抑えているとはいえ制御の難しいあの姿にはできればなりたくない。
消耗しているとはいえ普通の人間相手ならアマゾンネオでも十分に圧倒できる。だが千翼はこの島に来てから何人も普通じゃない人間を何人も見てきた。むしろ普通の人間とほとんど会っていない。戦う力が全く無かったのは五月くらいのものだった。
千翼は前者を選ぶことにした。リュックサックを下ろし、なるべく音を立てないように『鎧』を着込む。ちょうど全て着け終えたところで七花が気づき、坂の上を見上げた。
「あんたは?」
「千翼」
「千翼」
七花の質問はいきなり現れた鎧姿に自然とこぼれただけで、具体的に訊きたいことがあったわけではない。それでも千翼は答えた。
「イユを生き返らせるために俺はお前を殺す」
自分への決意の言葉であったし、死ぬ前に理由くらいは教えておこうというせめてもの手向けでもあった。
人によってはここでイユという名が名簿に載っていたことを思い出し、その死を察することもできただろう。あいにく七花にそこまでの記憶力は無い。それでもイユというのが目の前の男にとって大切な存在だったということくらいはわかる。
この男は大切な存在を蘇らせるために戦っている。話し合いの余地は無い。もとより襲ってくる相手を説得できるような会話力など持っていない。
人によってはここでイユという名が名簿に載っていたことを思い出し、その死を察することもできただろう。あいにく七花にそこまでの記憶力は無い。それでもイユというのが目の前の男にとって大切な存在だったということくらいはわかる。
この男は大切な存在を蘇らせるために戦っている。話し合いの余地は無い。もとより襲ってくる相手を説得できるような会話力など持っていない。
「そうか、おれは鑢七花だ」
七花は構える。
かくして話は冒頭に戻る。
にらみ合う二人。千翼が鎧の中で吠えた。その姿をアマゾン態へと変え、触手が鎧の隅々まで行き渡る。
賊刀『鎧』を纏う『オリジナル』の千翼、虚刀流七代目当主七花。戦いの幕が今ここに落とされた。
足が地を叩き重い鎧が中へ跳ぶ。
ここで少し補足をしておきたいのだが、賊刀『鎧』には詳しい使い方の書かれた説明書きのような物は付いていなかった。いや、付いているには付いていたのだが、名前や鎧の着方などが書かれていた程度でその詳しい構造までは書いていなかった。
『鎧』のその圧倒的防御力の秘密は”受けた衝撃を他へと逃がす”という性質にある。
『鎧』そのものは特別頑丈でなくとも、衝撃を受けないことで無敵となる。どんな衝撃にも耐えるではなく、むしろどんな衝撃にも耐えないからこその絶対防御――それが賊刀『鎧』だ。
しかしその性質も良いことばかりではなく弱点も持っている。衝撃を逃がす地面や壁と鎧が接していないと――例えば歩いて降りるのが困難な坂を下るために跳んだ千翼のように空中にいると――逃がす先を失った衝撃が逆に内部で爆発して装着者に生身で受けるよりも強いダメージを与えるのだ。
ようするに何が言いたいかと言うと。
千翼は敗北した。一撃で。
歴戦のライダーや鬼殺隊の剣士相手に圧倒した千翼は、鑢七花のたった一発の攻撃に倒れた。
アマゾン態が解除され、身体が地面を転がり仰向けになる。守るはずだった『鎧』からもたらされた衝撃に身体中が肉は裂け、骨は砕けた。人間ではあるば確実に死ぬところをこの程度で済んだのはさすがといったところか。
『鎧』の特性を知らない千翼には何が起きたのかさっぱりわからなかった。ただこれだけはわかった。
殺される。
このままだと自分は殺される。イユを生き返らせなければいけないのに。そのために五月まで殺したというのに。
呆気なく簡単に何も成せなかったまま、死を振りまいただけで死んでいく。何も始まらずに、ただ死んでいく。嫌だ。そんなのは嫌だ。生きたい。俺は生きたい。
立ち上がれない身体で千翼は這ってでも七花から逃げようとする。しかしぼろぼろの身体に『鎧』の重さまで枷となってうつ伏せになることすら叶わない。
一歩一歩する。七花の足音。死の足音。前に出て、彼は千翼の顔を見下ろして止まり――しゃがみこんで目の前に黒い板を見せてきた。
かくして話は冒頭に戻る。
にらみ合う二人。千翼が鎧の中で吠えた。その姿をアマゾン態へと変え、触手が鎧の隅々まで行き渡る。
賊刀『鎧』を纏う『オリジナル』の千翼、虚刀流七代目当主七花。戦いの幕が今ここに落とされた。
足が地を叩き重い鎧が中へ跳ぶ。
ここで少し補足をしておきたいのだが、賊刀『鎧』には詳しい使い方の書かれた説明書きのような物は付いていなかった。いや、付いているには付いていたのだが、名前や鎧の着方などが書かれていた程度でその詳しい構造までは書いていなかった。
『鎧』のその圧倒的防御力の秘密は”受けた衝撃を他へと逃がす”という性質にある。
『鎧』そのものは特別頑丈でなくとも、衝撃を受けないことで無敵となる。どんな衝撃にも耐えるではなく、むしろどんな衝撃にも耐えないからこその絶対防御――それが賊刀『鎧』だ。
しかしその性質も良いことばかりではなく弱点も持っている。衝撃を逃がす地面や壁と鎧が接していないと――例えば歩いて降りるのが困難な坂を下るために跳んだ千翼のように空中にいると――逃がす先を失った衝撃が逆に内部で爆発して装着者に生身で受けるよりも強いダメージを与えるのだ。
ようするに何が言いたいかと言うと。
千翼は敗北した。一撃で。
歴戦のライダーや鬼殺隊の剣士相手に圧倒した千翼は、鑢七花のたった一発の攻撃に倒れた。
アマゾン態が解除され、身体が地面を転がり仰向けになる。守るはずだった『鎧』からもたらされた衝撃に身体中が肉は裂け、骨は砕けた。人間ではあるば確実に死ぬところをこの程度で済んだのはさすがといったところか。
『鎧』の特性を知らない千翼には何が起きたのかさっぱりわからなかった。ただこれだけはわかった。
殺される。
このままだと自分は殺される。イユを生き返らせなければいけないのに。そのために五月まで殺したというのに。
呆気なく簡単に何も成せなかったまま、死を振りまいただけで死んでいく。何も始まらずに、ただ死んでいく。嫌だ。そんなのは嫌だ。生きたい。俺は生きたい。
立ち上がれない身体で千翼は這ってでも七花から逃げようとする。しかしぼろぼろの身体に『鎧』の重さまで枷となってうつ伏せになることすら叶わない。
一歩一歩する。七花の足音。死の足音。前に出て、彼は千翼の顔を見下ろして止まり――しゃがみこんで目の前に黒い板を見せてきた。
「あんたこれの使い方わかるか?」
「え?」
「え?」
それはタブレットだった。千翼にタブレットを扱った経験はないが、長瀬たちが似たような物は使っていたし使い方は何となく知っていた。
「……わかるけど」
あまりに予想外の質問に千翼は何も考えずに正直に答えた。遅れてこれが自分の生死を分かつ質問かもしれないと気づいたが、時はすでに遅しだ。もっとも今回の場合は千翼の答えで正解だった。
「あんたおれの使ってくれないか?」
「は?」
「おれは本当もとがめに使われたいんだけどさ、さっき姉ちゃんにさらわれちまったんだ。どうにか取り戻さなきゃいけないんだけど姉ちゃんは強いし、おれは考えるのは苦手だからさ。取り戻すまでの間の仮の持ち主を探してたんだ」
「は?」
「おれは本当もとがめに使われたいんだけどさ、さっき姉ちゃんにさらわれちまったんだ。どうにか取り戻さなきゃいけないんだけど姉ちゃんは強いし、おれは考えるのは苦手だからさ。取り戻すまでの間の仮の持ち主を探してたんだ」
いきなりと思える七花の言葉だが、一応彼なりの論理はある。
そもそも七花はとがめの代わりの持ち主を探すために動いていたのだ。千翼に対しても向こうからに敵意が無ければそのための話し合いをするつもりだった。
聞く耳持たなそうだったので応戦したが。しかし七花が殺す気で放った攻撃を受けながらも千翼は死ななかった。
襲ってくる相手を説得できるような会話力は七花にはない。だが叩きのめして身動きできない相手と話すくらいの会話力はある。
七花はとがめすら使い方を知らなかったタブレットを見せることで、千翼の頭脳を測った。タブレットの知識があるからといって、必ずしも頭がいいとは限らないことは七花にもわかっている。しかしとがめすら知らない知識を持っているということは、とがめに思いつけないことも思い点ける可能性があるということだ。とがめより自分を上手く扱える人間がありえない以上、それは大きな点だった。
もちろんどんなに自分を上手く扱えても危ない奴とは一緒にいられないが、七花から見た千翼は一撃で倒せた雑魚だ。死ななかったことには驚いたが体力だけいくらあったところで驚異ではない。
実際のところは倒せたのは完全に偶然であり、地面に接して『鎧』の特性が十全に発揮している今、とどめを刺すことすら一筋縄ではいかないのだが、そのことに七花は気づいていない。
断れば死ぬのだから絶対に断らないだろうという計算もあった。七花にさえできる簡単な計算だ。当然千翼にもできる。だが、
そもそも七花はとがめの代わりの持ち主を探すために動いていたのだ。千翼に対しても向こうからに敵意が無ければそのための話し合いをするつもりだった。
聞く耳持たなそうだったので応戦したが。しかし七花が殺す気で放った攻撃を受けながらも千翼は死ななかった。
襲ってくる相手を説得できるような会話力は七花にはない。だが叩きのめして身動きできない相手と話すくらいの会話力はある。
七花はとがめすら使い方を知らなかったタブレットを見せることで、千翼の頭脳を測った。タブレットの知識があるからといって、必ずしも頭がいいとは限らないことは七花にもわかっている。しかしとがめすら知らない知識を持っているということは、とがめに思いつけないことも思い点ける可能性があるということだ。とがめより自分を上手く扱える人間がありえない以上、それは大きな点だった。
もちろんどんなに自分を上手く扱えても危ない奴とは一緒にいられないが、七花から見た千翼は一撃で倒せた雑魚だ。死ななかったことには驚いたが体力だけいくらあったところで驚異ではない。
実際のところは倒せたのは完全に偶然であり、地面に接して『鎧』の特性が十全に発揮している今、とどめを刺すことすら一筋縄ではいかないのだが、そのことに七花は気づいていない。
断れば死ぬのだから絶対に断らないだろうという計算もあった。七花にさえできる簡単な計算だ。当然千翼にもできる。だが、
「なんで――自分を物みたいに言うんだ」
七花の言い方は千翼の癇に障るものだった。
「なんで――俺に使ってくれなんて言えるんだ。俺は皆を殺そうとしてるんだぞ!」
「うーん上手く言えないんだけどさ、ようするに俺は刀なんだよ。刀は一々斬る相手を選んだりしないだろ。そりゃもちろんとがめを殺せとか言われたら流石に断るけどさ」
「うーん上手く言えないんだけどさ、ようするに俺は刀なんだよ。刀は一々斬る相手を選んだりしないだろ。そりゃもちろんとがめを殺せとか言われたら流石に断るけどさ」
生きているのに人であるにも関わらず、自分は刀であると、そう七花は言った
イユは周りから物として扱われていた。死んで生き返った時に感情を忘れたから。二度と感情を取り戻すことのない動く死体だと。そう扱われた。
でもこの男は違う。感情はあるし、死体でもない。常人離れこそしているが生きた人間だ。なのにこいつは自分が刀だと主張する。イユは自分で主張することすらできないというのに。
イライラした。計算なんて関係ない。どんな利益があるとしてもこんな男となんて一緒にいたくない。
だが千翼は善逸を裏切った。五月を殺した。仲間を逃がすために一人残ったあの男も殺した。今更手段を選り好みするなんて、そんなことが許されるわけがない。
イユは周りから物として扱われていた。死んで生き返った時に感情を忘れたから。二度と感情を取り戻すことのない動く死体だと。そう扱われた。
でもこの男は違う。感情はあるし、死体でもない。常人離れこそしているが生きた人間だ。なのにこいつは自分が刀だと主張する。イユは自分で主張することすらできないというのに。
イライラした。計算なんて関係ない。どんな利益があるとしてもこんな男となんて一緒にいたくない。
だが千翼は善逸を裏切った。五月を殺した。仲間を逃がすために一人残ったあの男も殺した。今更手段を選り好みするなんて、そんなことが許されるわけがない。
「……お前に指示をするのは構わない。でも持ち主にはならない。お前は人間として俺に協力するんだ」
だからこれが妥協点。物として扱わない。人として一緒にいてもらう。
「よくわかんないけど、それで別にいいぜ。それで俺は何をすればいいんだ?」
七花は深く考えずに適当に同意する。それもまた千翼には不快であったがこれ以上言い聞かせることは諦めた。
「……鎧を外すのを手伝ってくれ」
『鎧』は内部からしか開けることができない仕組みだが、今の千翼の力では外しても持ち上げることができない。
七花は言われた通りに、外した部位からリュックサックに片していく。全て片し終わったところでまた言った
七花は言われた通りに、外した部位からリュックサックに片していく。全て片し終わったところでまた言った
「次は何をすればいいんだ?」
「俺をかついで病院に連れて行ってくれ」
「病院か。傷の手当をするんだな?」
「違う。栄養を取れる物を探すんだ。それがあれば傷は治せる」
「俺をかついで病院に連れて行ってくれ」
「病院か。傷の手当をするんだな?」
「違う。栄養を取れる物を探すんだ。それがあれば傷は治せる」
七花の見立てではとても自然に治りそうな傷には見えなかった。
しかし七花は真庭蝙蝠のように理屈を無視しているとしか思えない忍法を使う者を知っているし、ここに来てからは火と弾が出る未知の武器や、とがめを襲ったどうみても人外の存在と接触している。本人がそういうならそうなんだろうと思うことにした。
しかし七花は真庭蝙蝠のように理屈を無視しているとしか思えない忍法を使う者を知っているし、ここに来てからは火と弾が出る未知の武器や、とがめを襲ったどうみても人外の存在と接触している。本人がそういうならそうなんだろうと思うことにした。
「栄養が欲しいなら『たぶれっと』もあるぞ」
「タブレットなんかでどうやって栄養を取るんだ」
「ああ、いや、さっきの『たぶれっと』じゃなくて。俺の支給品にこんな物もあったんだよ」
「タブレットなんかでどうやって栄養を取るんだ」
「ああ、いや、さっきの『たぶれっと』じゃなくて。俺の支給品にこんな物もあったんだよ」
そういって七花がリュックサックから取り出したのは、ビンに入った食べる方のタブレット。
「本来のは『なのろぼ』ってもんの栄養源として作られたらしいんだけどな、人間が飲んでも効果はあるらしいぜ。ただ一日が三つが限度で四つ飲むと頭が爆発するらしいけどな」
とがめは「そんな怪しい物飲めるか!」と言っていたが、千翼が飲むかどうかは本人が判断することだ。
タブレットの存在を知っている千翼からみてもそれは怪しいし、飲みたくない代物だったが、これ以上栄養が足らなくなるといよいよ人を食うことも我慢できなくなりそうだ。病院まで無事に辿り着ける保証もない。
千翼は意を決することにした。
タブレットの存在を知っている千翼からみてもそれは怪しいし、飲みたくない代物だったが、これ以上栄養が足らなくなるといよいよ人を食うことも我慢できなくなりそうだ。病院まで無事に辿り着ける保証もない。
千翼は意を決することにした。
「口に入れてくれ」
「わかった」
「わかった」
七花はタブレットを取り出そうとして、しかし蓋の開け方がわからず、千翼は回して開けるんだと教えた。
効果はすぐに現れた。自分の中でエネルギーが増えていくのを明確に感じる。傷の治りも目に見えて治っていく。空腹もいくらマシになったようだった。
扱いに注意は必要だし怖い代物だが、これは食事すらまともに取れない千翼にはこれ以上無い支給品かもしれない。
効果はすぐに現れた。自分の中でエネルギーが増えていくのを明確に感じる。傷の治りも目に見えて治っていく。空腹もいくらマシになったようだった。
扱いに注意は必要だし怖い代物だが、これは食事すらまともに取れない千翼にはこれ以上無い支給品かもしれない。
「すげえな。本当に治ってる」
七花も無邪気に感心している。
二人は知らない。このタブレットがとある世界のとある歴史において、史上最悪の厄災をもたらす原因の一つであったことを。
思えばこの二人はいつも知らないでいた。千翼は母が生きていたことを知らず、自分が溶原性細胞を振りまく存在であると知らず、鑢七花もまた英雄視していた父親がやったことの本当の意味をとがめと出逢うまで知らず、そして自分がどのような意味を持つ存在なのかも知らないでいた。
二人は知らない。このタブレットがとある世界のとある歴史において、史上最悪の厄災をもたらす原因の一つであったことを。
思えばこの二人はいつも知らないでいた。千翼は母が生きていたことを知らず、自分が溶原性細胞を振りまく存在であると知らず、鑢七花もまた英雄視していた父親がやったことの本当の意味をとがめと出逢うまで知らず、そして自分がどのような意味を持つ存在なのかも知らないでいた。
【C-7/1日目・早朝】
【千翼@仮面ライダーアマゾンズ】
[状態]:ある程度の空腹、ダメージ再生中、イユへの強い想いと人を食べない鋼の決意、自己嫌悪 、痛み
[道具]:基本支給品一式、万能布ハッサン@Fate/Grand Order(※イユの亡骸内包済)、ネオアマゾンズレジスター(イユ)@仮面ライダーアマゾンズ、賊刀・鎧@刀語 、ナノロボ用タブレットの瓶詰め@ナノハザード
[思考・状況]
基本方針:イユの痛みになって、一緒に生きる明日を目指す。
1:イユを生き返らせるために優勝する。そのために全員殺す。
2:イユと一緒に生きられる自分であり続けるために、絶対に人は食べない。
3:…………善逸、五月。ごめん。
4:アマゾン態になる時はできるかぎり鎧を纏うことで人を食う可能性を減らす。
[備考]
※参戦時期は10話「WAY TO NOWHERE」
※人肉を食すことで、自分の人格が変わり願いに影響が出てしまうことを強く忌避・警戒しています。
※賊刀・鎧をアマゾン態で装着時は若干サイズが小さくフィットしませんが、隙間を触手で埋めることで補っています。
※魔剣グラムは破壊されました。
※ダークウィングが蓮の仇として鏡の中から追跡しています。
[状態]:ある程度の空腹、ダメージ再生中、イユへの強い想いと人を食べない鋼の決意、自己嫌悪 、痛み
[道具]:基本支給品一式、万能布ハッサン@Fate/Grand Order(※イユの亡骸内包済)、ネオアマゾンズレジスター(イユ)@仮面ライダーアマゾンズ、賊刀・鎧@刀語 、ナノロボ用タブレットの瓶詰め@ナノハザード
[思考・状況]
基本方針:イユの痛みになって、一緒に生きる明日を目指す。
1:イユを生き返らせるために優勝する。そのために全員殺す。
2:イユと一緒に生きられる自分であり続けるために、絶対に人は食べない。
3:…………善逸、五月。ごめん。
4:アマゾン態になる時はできるかぎり鎧を纏うことで人を食う可能性を減らす。
[備考]
※参戦時期は10話「WAY TO NOWHERE」
※人肉を食すことで、自分の人格が変わり願いに影響が出てしまうことを強く忌避・警戒しています。
※賊刀・鎧をアマゾン態で装着時は若干サイズが小さくフィットしませんが、隙間を触手で埋めることで補っています。
※魔剣グラムは破壊されました。
※ダークウィングが蓮の仇として鏡の中から追跡しています。
【鑢七花@刀語】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、アンデルセンのタブレット@Fate/Grand Order
[思考・状況]
基本方針:姉ちゃんからとがめを取り戻す。姉ちゃんから。あの姉ちゃんから……
1:姉ちゃんからとがめを助ける。
2:ひとまず千翼に従う。
[備考]
※作品前半、とがめの髪がまだ長い頃。5話より前
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、アンデルセンのタブレット@Fate/Grand Order
[思考・状況]
基本方針:姉ちゃんからとがめを取り戻す。姉ちゃんから。あの姉ちゃんから……
1:姉ちゃんからとがめを助ける。
2:ひとまず千翼に従う。
[備考]
※作品前半、とがめの髪がまだ長い頃。5話より前
【ナノロボ用タブレットの瓶詰め@ナノハザード】
名前の通りナノロボ用のタブレットだが、ナノロボは普段人間が取っているような栄養も有効なので逆もOK、そういうことにしておく。
どうやらアマゾンとは相性が良いらしく、特に効果が高い。
名前の通りナノロボ用のタブレットだが、ナノロボは普段人間が取っているような栄養も有効なので逆もOK、そういうことにしておく。
どうやらアマゾンとは相性が良いらしく、特に効果が高い。
前話 | お名前 | 次話 |
禁断の華を手折るのならば | 鑢七花 | 南海怨身八裂心技 |
PHANTOM PAIN | 千翼 |