鬼は泥を見た。鬼は星を見た。 ◆uL1TgWrWZ.
まず、怒りがあった。
それから怒りがあり、屈辱があり、怒りがあった。
鬼舞辻無惨という悪鬼の中には、果てしない憤怒が渦巻いていた。
それから怒りがあり、屈辱があり、怒りがあった。
鬼舞辻無惨という悪鬼の中には、果てしない憤怒が渦巻いていた。
罪人のように首輪を嵌められ、全てを嘲笑するかのような態度の小娘に殺し合いを強制される。
ふざけるな。自分に命令を出していい存在などこの世にひとりとして居りはしない。
自分は限りなく完全に近い生命体だ。
限りなく不死に近く、不老であり、強大な力を持ち、いつだって慎重に事に当たって来た。
ふざけるな。自分に命令を出していい存在などこの世にひとりとして居りはしない。
自分は限りなく完全に近い生命体だ。
限りなく不死に近く、不老であり、強大な力を持ち、いつだって慎重に事に当たって来た。
殺し合いだと?
そんなものは無意味だ。時間の無駄だ。
鬼舞辻無惨を殺せる者など、あの忌々しい太陽以外には存在しないのだから。
勝者は自分だ。そんなことは最初からわかりきっている。
わかりきっていることをどうしてわざわざ実行する必要がある?
殺し合いなどというものは愚か者のすることだ。
優劣をつけずにはいられない畜生のすることだ。
自分のすることは常に正しい。自分は間違えない。自分だけが常に正しい。
己の進むべき道のために害虫を払うことはすれど、殺し合いなどという無益なものに態々精を出す気などさらさらない。
そんなものは無意味だ。時間の無駄だ。
鬼舞辻無惨を殺せる者など、あの忌々しい太陽以外には存在しないのだから。
勝者は自分だ。そんなことは最初からわかりきっている。
わかりきっていることをどうしてわざわざ実行する必要がある?
殺し合いなどというものは愚か者のすることだ。
優劣をつけずにはいられない畜生のすることだ。
自分のすることは常に正しい。自分は間違えない。自分だけが常に正しい。
己の進むべき道のために害虫を払うことはすれど、殺し合いなどという無益なものに態々精を出す気などさらさらない。
そんな完璧な存在であるはずの自分が、しかし首輪によって戒められている。
怒りのあまり衝動的に首輪を破壊しようとした無惨だが、万が一を考えてそれはやめておいた。
万が一だ。万が一ということがある。
例え鬼殺隊の日輪刀で頸を刎ねられても死なない無惨だが、それでも太陽の光は未だに克服できていない。
限りなく不死に近い存在であっても、今はまだ完全な不死ではない。
万が一、この首輪が無惨を殺害可能なものだとしたら?
怒りに身を任せて愚かに死ぬなど御免だ。
まずは適当な誰か……配下の鬼でもいい。首輪を外す実験を行ってから。話はそれからだ。
だから、今すぐ暴れ回って全てを壊したいという衝動に必死に蓋をした。
燃え上がるような怒りに、はらわたが踊り狂いそうだった。
いくつかの懸念があったから、どうにかすんでのところで激情を抑えていられた。
怒りのあまり衝動的に首輪を破壊しようとした無惨だが、万が一を考えてそれはやめておいた。
万が一だ。万が一ということがある。
例え鬼殺隊の日輪刀で頸を刎ねられても死なない無惨だが、それでも太陽の光は未だに克服できていない。
限りなく不死に近い存在であっても、今はまだ完全な不死ではない。
万が一、この首輪が無惨を殺害可能なものだとしたら?
怒りに身を任せて愚かに死ぬなど御免だ。
まずは適当な誰か……配下の鬼でもいい。首輪を外す実験を行ってから。話はそれからだ。
だから、今すぐ暴れ回って全てを壊したいという衝動に必死に蓋をした。
燃え上がるような怒りに、はらわたが踊り狂いそうだった。
いくつかの懸念があったから、どうにかすんでのところで激情を抑えていられた。
首輪のこともそうだが……あのBBを名乗る謎の女。
気付いた時には、無惨は首輪を嵌められた状態で会場に転送されていた。
いかなる鬼血術であれ、あるいは鬼舞辻無惨本人ですら、このような所業は不可能だろう。
どうやら幻覚の類でもないらしい。先ほどあの無能な鬼の全身を砕いた感触は、確かに本物だった。
即ち、これは極めて業腹なことではあるが――――主催者だというあの女は、なにか無惨の及び知らぬ『技』を持っているということ。
無惨が首輪を強引に外さなかった理由はこの予測に基づく部分が大きい。
鬼とも鬼殺隊の剣士とも違う、謎の力。それが無惨を殺害可能なものでないという証拠がどこにある?
目的もわからない。単独だという確証も無い。複数人による計画である可能性は十分にある。その方が、まだ現実的だ。
『勝者の願いを叶える』だと? それが真実であれば、無惨が千年追い求めていた完全なる不死が手に入るのか?
馬鹿馬鹿しい。そんなわけがない。そのように簡単に手に入るものなら、無惨はとっくに太陽を克服している。
なにもかもがわからない。意味がわからない。その事実が無惨に怒りの炎をくべていく。
気付いた時には、無惨は首輪を嵌められた状態で会場に転送されていた。
いかなる鬼血術であれ、あるいは鬼舞辻無惨本人ですら、このような所業は不可能だろう。
どうやら幻覚の類でもないらしい。先ほどあの無能な鬼の全身を砕いた感触は、確かに本物だった。
即ち、これは極めて業腹なことではあるが――――主催者だというあの女は、なにか無惨の及び知らぬ『技』を持っているということ。
無惨が首輪を強引に外さなかった理由はこの予測に基づく部分が大きい。
鬼とも鬼殺隊の剣士とも違う、謎の力。それが無惨を殺害可能なものでないという証拠がどこにある?
目的もわからない。単独だという確証も無い。複数人による計画である可能性は十分にある。その方が、まだ現実的だ。
『勝者の願いを叶える』だと? それが真実であれば、無惨が千年追い求めていた完全なる不死が手に入るのか?
馬鹿馬鹿しい。そんなわけがない。そのように簡単に手に入るものなら、無惨はとっくに太陽を克服している。
なにもかもがわからない。意味がわからない。その事実が無惨に怒りの炎をくべていく。
だいたいなんなのだ、この名簿は。
無惨、鬼、鬼殺隊。
知った名前が並んでいる。これはまだわかる。
主催者の目的はわからないが、近しい者を集めようという意図はわかる。
今まで鬼殺隊との接触を避けてきた無惨からすれば、否が応でも鬼殺隊と事を構えざるを得ない状況は極めて業腹だが、理解できる。
あの有象無象どもめ、嬉々として無惨の首を狙いに来るだろう。
物理的に手が届く距離にいたからといって、本当に無惨の首が獲れるとでもいるのか。忌々しい。あまりに忌々しい。
無惨、鬼、鬼殺隊。
知った名前が並んでいる。これはまだわかる。
主催者の目的はわからないが、近しい者を集めようという意図はわかる。
今まで鬼殺隊との接触を避けてきた無惨からすれば、否が応でも鬼殺隊と事を構えざるを得ない状況は極めて業腹だが、理解できる。
あの有象無象どもめ、嬉々として無惨の首を狙いに来るだろう。
物理的に手が届く距離にいたからといって、本当に無惨の首が獲れるとでもいるのか。忌々しい。あまりに忌々しい。
ともあれそれ以上に問題なのは――――『死んだはずの者の名前』が名簿に並んでいることだ。
死んだはずの炎柱。
猗窩座が仕留め損なったのか? どこまでも使えない無能だ。忌々しい。
死んだはずの炎柱。
猗窩座が仕留め損なったのか? どこまでも使えない無能だ。忌々しい。
だが、累はどうだ?
アレは違う。アレは死んだはずだ。滅びたはずだ。
忌々しくも鬼殺隊の剣士に頸を斬られ、死んだはずではないか。
無惨は己の血を分け与えた鬼たちのことを知覚できる。
至近距離ならば心までも手に取るようにわかるし、遠くにいても位置は掴める。生死となればなおのこと。
その無惨が、累の死を確かに認識していたのだ。
だというのに、どうして累の名が名簿にある?
この会場にある累の気配は本物だった。今は島の南端の方にいるようだ。いいや場所などどうでもいい。
アレは違う。アレは死んだはずだ。滅びたはずだ。
忌々しくも鬼殺隊の剣士に頸を斬られ、死んだはずではないか。
無惨は己の血を分け与えた鬼たちのことを知覚できる。
至近距離ならば心までも手に取るようにわかるし、遠くにいても位置は掴める。生死となればなおのこと。
その無惨が、累の死を確かに認識していたのだ。
だというのに、どうして累の名が名簿にある?
この会場にある累の気配は本物だった。今は島の南端の方にいるようだ。いいや場所などどうでもいい。
――――――――累が、鬼舞辻無惨が血を与えて鬼とした下弦の伍が、十二鬼月が一鬼(いっき)が、『蘇っている』。
不死の鬼とて、一度滅ぼされれば蘇ることは適わない。
当たり前の話だ。だというのに、なぜ累が蘇っている?
主催者は命を操ることができるのか。死者を蘇らせることができるのか。
できるのだとすれば――――もしや本当に、無惨の望む不死すら思うままなのか?
浮かぶ考えを、無惨は心中で微塵に引き裂いた。
忌々しい。無惨の千年の探究を虚仮にしているのか。実にふざけている。屈辱だ。
当たり前の話だ。だというのに、なぜ累が蘇っている?
主催者は命を操ることができるのか。死者を蘇らせることができるのか。
できるのだとすれば――――もしや本当に、無惨の望む不死すら思うままなのか?
浮かぶ考えを、無惨は心中で微塵に引き裂いた。
忌々しい。無惨の千年の探究を虚仮にしているのか。実にふざけている。屈辱だ。
しかし、『死者の蘇生』……それを裏付ける名前が、他にもあった。
宮本武蔵、源頼光、沖田総司。その他歴史に名を遺した者どもの名。
平安の時分より俗世に交じって暮らしてきた無惨だ。その名は当時にも、後世にも聞き及んでいる。
なぜ宮本武蔵の名が二つあるのか、など疑問は尽きなかったが……もしも、彼らが本当に『蘇った死者』だとしたら?
不死の生物がいるのだ。蘇る死者がいてもおかしくはないではないか。
宮本武蔵、源頼光、沖田総司。その他歴史に名を遺した者どもの名。
平安の時分より俗世に交じって暮らしてきた無惨だ。その名は当時にも、後世にも聞き及んでいる。
なぜ宮本武蔵の名が二つあるのか、など疑問は尽きなかったが……もしも、彼らが本当に『蘇った死者』だとしたら?
不死の生物がいるのだ。蘇る死者がいてもおかしくはないではないか。
あるいは、無惨の他に鬼がいるのか?
無惨が知らないだけで、歴史の影では鬼と化した者どもが栄光を食い荒らしていたのか?
そも、無惨とて薬によって鬼となった人間である。
であるならば、原初の鬼が無惨だけとは限らない。そんな保証はどこにもない。
他に鬼がいるのか。それとも、鬼ですらない魔性の者がいるのか。
無惨が知らないだけで、歴史の影では鬼と化した者どもが栄光を食い荒らしていたのか?
そも、無惨とて薬によって鬼となった人間である。
であるならば、原初の鬼が無惨だけとは限らない。そんな保証はどこにもない。
他に鬼がいるのか。それとも、鬼ですらない魔性の者がいるのか。
見知らぬ名前が無数にある。
これはどういう基準で選ばれている?
忌々しい。なぜ自分はこのようなことで心を煩わせている。
無惨の心中で無限とも思える怒りがのたうちまわる。
これはどういう基準で選ばれている?
忌々しい。なぜ自分はこのようなことで心を煩わせている。
無惨の心中で無限とも思える怒りがのたうちまわる。
だから、無惨の中にはまず怒りがあった。
それから怒りがあり、屈辱があり、怒りがあった。
それから怒りがあり、屈辱があり、怒りがあった。
そんな無惨の前に現れた――――これはなんだ?
「む! 急に意味不明な場所に放り出されてイラついているところに丁度いいジュースが歩いてきたぞい……」
筋骨隆々とした大男。
背丈は、見たところ六尺はあるだろうか。
なにやらアルファベットの書かれた薄手の肌着を盛り上げる胸筋。同じく上腕二頭筋。
腕の筋肉は丸太のようで、僧帽筋は御山のようで、脚絆の下の大腿筋は獅子のようで。
のっしと歩けば熊のよう。にぃと嗤えば悪魔のよう。
体のつくりは羅漢のようで、邪悪な形相は鬼のよう。
黒の長髪を振り乱し、ぎらつく美貌から壮絶な怖気を放ちながら、森から出てきたその大男はばったりと無惨と出くわした。
背丈は、見たところ六尺はあるだろうか。
なにやらアルファベットの書かれた薄手の肌着を盛り上げる胸筋。同じく上腕二頭筋。
腕の筋肉は丸太のようで、僧帽筋は御山のようで、脚絆の下の大腿筋は獅子のようで。
のっしと歩けば熊のよう。にぃと嗤えば悪魔のよう。
体のつくりは羅漢のようで、邪悪な形相は鬼のよう。
黒の長髪を振り乱し、ぎらつく美貌から壮絶な怖気を放ちながら、森から出てきたその大男はばったりと無惨と出くわした。
「そっちから歩いてくるとは優秀な自動販売機だな!
難聴は治らんがこうして若返ることもできたし、死んだかと思えば蘇れたし……わしって本当についてるぞい!
きっと庶民どもに身分の差をわからせてやるために神様がわしにこの力をくれたんじゃぞい!
あのムカつく小娘をブチ殺す前に燃料補給としゃれこむぞいーーーーッ!」
難聴は治らんがこうして若返ることもできたし、死んだかと思えば蘇れたし……わしって本当についてるぞい!
きっと庶民どもに身分の差をわからせてやるために神様がわしにこの力をくれたんじゃぞい!
あのムカつく小娘をブチ殺す前に燃料補給としゃれこむぞいーーーーッ!」
大男が、そのたくましい腕を振りかぶる。
男からは、血の匂いがした。
明確な殺気。捕食者の笑み。
無惨は線の細い青年だ。そのような姿だ。
与しやすいと判断したのか。殺せると思ったのか。
鬼舞辻無惨を、殺せると思ったのか。
弱いと思ったのか。死にそうだと思ったのか。
鬼舞辻無惨が、『死にそうに見える』のか。
男からは、血の匂いがした。
明確な殺気。捕食者の笑み。
無惨は線の細い青年だ。そのような姿だ。
与しやすいと判断したのか。殺せると思ったのか。
鬼舞辻無惨を、殺せると思ったのか。
弱いと思ったのか。死にそうだと思ったのか。
鬼舞辻無惨が、『死にそうに見える』のか。
ぷつん、と。
無惨の中で、何かが切れる音が――――――――しなかった。
鬼舞辻無惨には、怒りがあった。
「が、っは――――――――!?」
気付けば、大男――――今之川権三は全身を打ち据えられ、数本の木々をなぎ倒しながら吹き飛んでいた。
巨木に背をぶつける。巨木がへし折れ、それでようやく止まった。
ずん、と木々が大地に倒れ伏す振動。
一体何が起きた?
僅かに遅れて権三の全身を激痛が襲った。
攻撃の瞬間、脳裏を迸った悪寒に従って全身を硬質化させたために致命傷は避けたのは幸いか。
硬質化した彼の肉体はダイヤモンドよりも硬い。だというのに、なぜダメージを受けている?
巨木に背をぶつける。巨木がへし折れ、それでようやく止まった。
ずん、と木々が大地に倒れ伏す振動。
一体何が起きた?
僅かに遅れて権三の全身を激痛が襲った。
攻撃の瞬間、脳裏を迸った悪寒に従って全身を硬質化させたために致命傷は避けたのは幸いか。
硬質化した彼の肉体はダイヤモンドよりも硬い。だというのに、なぜダメージを受けている?
「(何が起こったのか全然わからなかったぞい! あの『女王様』の時と同じじゃ! こいつも能力者なのか?)」
困惑。
しかし激痛により、権三の意識はどうにか現実へと引き戻される。
彼の脳に根を張るナノロボが、必死に肉体の再生を行い始めた。
視線の先では、無惨がゆらりと歩を進めている。幽鬼の如く。
しかし激痛により、権三の意識はどうにか現実へと引き戻される。
彼の脳に根を張るナノロボが、必死に肉体の再生を行い始めた。
視線の先では、無惨がゆらりと歩を進めている。幽鬼の如く。
「――――――――なぜ、死なない?」
鬼舞辻無惨は怒っていた。
確かに全身を打ち据えたはずなのに、この無礼な男が死んでいない。
鋼のような感触。鋼よりもなお硬い手応え。
加減を誤った。骨肉を砕くつもりで攻撃してしまった。
そして当然、人間が鋼よりも頑丈であるはずがない。
鬼殺隊の剣士とも、鬼の血鬼術とも違う力。
彼が鬼ではないということは気配でわかった。
同時に、『近い』ということもわかった。
鬼ではない。かといって、人でもない。
この男は何者だ?
確かに全身を打ち据えたはずなのに、この無礼な男が死んでいない。
鋼のような感触。鋼よりもなお硬い手応え。
加減を誤った。骨肉を砕くつもりで攻撃してしまった。
そして当然、人間が鋼よりも頑丈であるはずがない。
鬼殺隊の剣士とも、鬼の血鬼術とも違う力。
彼が鬼ではないということは気配でわかった。
同時に、『近い』ということもわかった。
鬼ではない。かといって、人でもない。
この男は何者だ?
「お前は人間ではあるまい。その力はなんだ?
なぜ死んでいない。私が殺すつもりで撫でてやったのだから、お前は死んでいなくてはならないはずだ」
なぜ死んでいない。私が殺すつもりで撫でてやったのだから、お前は死んでいなくてはならないはずだ」
この男を今すぐ殺したい衝動があった。
この男の正体を確かめたい衝動があった。
ふたつの衝動は激しくせめぎあい、怒りへと昇華されている。
この男の正体を確かめたい衝動があった。
ふたつの衝動は激しくせめぎあい、怒りへと昇華されている。
「答えろ。お前は何者だ?」
「お、おのれ~……!」
「お、おのれ~……!」
対する権三もまた、怒っていた。
前向きにあのBBとかいうムカつく小娘を含め全殺しをしてやろうと考えていた権三だったが、その根源は怒りだ。
理不尽な状況への怒り。不可解への怒り。
それは世界への怒りであり、世間への怒りでもあった。
だというのに、この状況はなんだ?
手始めに生意気そうな書生風の男をブチ殺してやろうと思えば、攻撃を受けている。
激しい怒りがあり、しかし彼は冷静に状況を観察していた。
あの男は格上だ。理性と本能が警鐘を鳴らしている。
逃げるにせよ攻めるにせよ、隙を作らなくてはならない。
まずは会話に乗って再生の時間を確保しなければ。
前向きにあのBBとかいうムカつく小娘を含め全殺しをしてやろうと考えていた権三だったが、その根源は怒りだ。
理不尽な状況への怒り。不可解への怒り。
それは世界への怒りであり、世間への怒りでもあった。
だというのに、この状況はなんだ?
手始めに生意気そうな書生風の男をブチ殺してやろうと思えば、攻撃を受けている。
激しい怒りがあり、しかし彼は冷静に状況を観察していた。
あの男は格上だ。理性と本能が警鐘を鳴らしている。
逃げるにせよ攻めるにせよ、隙を作らなくてはならない。
まずは会話に乗って再生の時間を確保しなければ。
「わ、わしだって昨日急にこんな力に目覚めたからさっぱりじゃぞい!
せっかく若返ったのに難聴は治らんしクソガキに殺されるし最悪じゃ!
74年も生きてて税金もたくさん払ってるのに――――」
「私はそんな話を聞きたいわけでは無い」
せっかく若返ったのに難聴は治らんしクソガキに殺されるし最悪じゃ!
74年も生きてて税金もたくさん払ってるのに――――」
「私はそんな話を聞きたいわけでは無い」
ゆらりと幽鬼の如く歩いていた無惨が――――気付けば権三の耳元で、冷たく言葉を放っていた。
驚く間もなく、再度攻撃。
今度は権三にも知覚できた。醜く巨大に変質した無惨の右腕が、権三に叩きつけられたのだ。
権三の巨体がゴミのように地面を転がっている。
加減をした。しっかりと加減をした。
今すぐこの男を殺したいとも思うが、その正体を確かめなければ気が済まなかった。
驚く間もなく、再度攻撃。
今度は権三にも知覚できた。醜く巨大に変質した無惨の右腕が、権三に叩きつけられたのだ。
権三の巨体がゴミのように地面を転がっている。
加減をした。しっかりと加減をした。
今すぐこの男を殺したいとも思うが、その正体を確かめなければ気が済まなかった。
「うぐっ……」
「74年だと……?
いたずらに年を重ねただけでそうも思い上がっているのか? その程度で?
ならば千年を生きる私は神か? 馬鹿馬鹿しい。お前は醜く老いているだけだ」
「せ、千年だとぉ……!?」
「74年だと……?
いたずらに年を重ねただけでそうも思い上がっているのか? その程度で?
ならば千年を生きる私は神か? 馬鹿馬鹿しい。お前は醜く老いているだけだ」
「せ、千年だとぉ……!?」
そんな馬鹿な。
……と、権三は切り捨てることができなかった。
なにせ実例がいる。
僅か数分で74歳の老人から20代の美青年にまで若返った、権三自身という実例が。
もしこの男が自分と同じような能力者で、千年を生き永らえていたとしたら?
それはあながち荒唐無稽な想像ではあるまい。
権三は己の能力が脳に寄生したナノロボによるものだということを知らなかった。
だからこそ鬼への理解が早かった。
己より圧倒的に格上の、強大な能力者――――理解は、それで十分だ。
……と、権三は切り捨てることができなかった。
なにせ実例がいる。
僅か数分で74歳の老人から20代の美青年にまで若返った、権三自身という実例が。
もしこの男が自分と同じような能力者で、千年を生き永らえていたとしたら?
それはあながち荒唐無稽な想像ではあるまい。
権三は己の能力が脳に寄生したナノロボによるものだということを知らなかった。
だからこそ鬼への理解が早かった。
己より圧倒的に格上の、強大な能力者――――理解は、それで十分だ。
「わ、わかった! わしの能力について話すぞい!
わしは若返る力に目覚めたんじゃ! つい昨日から!
腰痛もリウマチも治ったし歯も生え変わった!
なぜか難聴とか老眼とかは治らんが怪我も再生する! あと体を鉄みたいに頑丈にできるんだぞい!
人間の血を飲んで鉄分を補給すると調子がいいから多分それがエネルギー源じゃ!」
わしは若返る力に目覚めたんじゃ! つい昨日から!
腰痛もリウマチも治ったし歯も生え変わった!
なぜか難聴とか老眼とかは治らんが怪我も再生する! あと体を鉄みたいに頑丈にできるんだぞい!
人間の血を飲んで鉄分を補給すると調子がいいから多分それがエネルギー源じゃ!」
許しを乞うように、必死にまくし立てる。
屈辱だった。それでも媚びへつらった。最終的な勝利のために必要ならば安いものだった。
並行してナノロボによる再生が行われている。
鉄分が欲しい。血が飲みたい。肉体が再生に必要な栄養を求めているのがわかる。
しかし今はそれどころではない。
死が権三に迫っている。二度目の死。あるいは三度目か?
アドレナリンが分泌され、脳が激しく回転する。生き延びるための方策を必死で導き出そうとしている。
動き始めた腕で必死に静止を求めながら。
無惨はやはり、ゆらりと歩み寄る。
屈辱だった。それでも媚びへつらった。最終的な勝利のために必要ならば安いものだった。
並行してナノロボによる再生が行われている。
鉄分が欲しい。血が飲みたい。肉体が再生に必要な栄養を求めているのがわかる。
しかし今はそれどころではない。
死が権三に迫っている。二度目の死。あるいは三度目か?
アドレナリンが分泌され、脳が激しく回転する。生き延びるための方策を必死で導き出そうとしている。
動き始めた腕で必死に静止を求めながら。
無惨はやはり、ゆらりと歩み寄る。
「お前のような存在は他にもいるのか?」
「いる! それぞれ能力が違うらしい……声で人間を操る奴とか、骨を弾丸みたいに飛ばす奴とかがおったぞい!」
「………………………」
「いる! それぞれ能力が違うらしい……声で人間を操る奴とか、骨を弾丸みたいに飛ばす奴とかがおったぞい!」
「………………………」
鬼舞辻無惨には怒りがあった。
この期に及んでもやはり怒りがあった。
なんだそれは。
なんだその力は。
そんなもの――――――――鬼と同じではないか。
この期に及んでもやはり怒りがあった。
なんだそれは。
なんだその力は。
そんなもの――――――――鬼と同じではないか。
人の血を糧とし、不死の肉体を持ち、骨肉を自在に変化させて操り、個体によっては独自の術を操る。
それは鬼だ。
鬼舞辻無惨の生み出す鬼だ。
それは鬼だ。
鬼舞辻無惨の生み出す鬼だ。
難聴などは治らないと言うあたり、厳密には違うのだろう。
厳密には、鬼の方が優れた生物なのだろう。
その事実がかろうじて無惨の心を慰めた。
そうでなければ、この大男を既に十度は縊り殺していただろう。
己より優れた者などいてはならない。
だからこそ腹立たしい。この似て非なる鬼の存在が腹立たしい。
無惨の与り知らぬところで、無惨の生み出す鬼とは異なる鬼が誕生している?
その事実が、どうしても腹立たしく思えた。
厳密には、鬼の方が優れた生物なのだろう。
その事実がかろうじて無惨の心を慰めた。
そうでなければ、この大男を既に十度は縊り殺していただろう。
己より優れた者などいてはならない。
だからこそ腹立たしい。この似て非なる鬼の存在が腹立たしい。
無惨の与り知らぬところで、無惨の生み出す鬼とは異なる鬼が誕生している?
その事実が、どうしても腹立たしく思えた。
「なにかを感染させて能力者を増やす奴もいたから力はウィルスみたいなものなのかもしれん!
昼間っから他人にキスするハレンチな小娘だったがかなり強かったし奴が大本の可能性も――――」
「もういい。もうお前にはなにも――――――――待て」
昼間っから他人にキスするハレンチな小娘だったがかなり強かったし奴が大本の可能性も――――」
「もういい。もうお前にはなにも――――――――待て」
そんな彼の胸中も知らずにまくし立てる権三に腹を立て、無惨は始末をつけようとして――――止まった。
聞き捨てならない台詞があった。
この男が、鬼であると言うのならば。
いやまさか。そんなはずはない。
だがもしや。
確かめなければ。
ありえない。
しかし――――――――――――
聞き捨てならない台詞があった。
この男が、鬼であると言うのならば。
いやまさか。そんなはずはない。
だがもしや。
確かめなければ。
ありえない。
しかし――――――――――――
「――――――――――――まさかお前、太陽の下を歩けるのか?」
『昼間から』、と。
権三は言った。間違いなく。
言葉のあやか?
昼間の、屋内の話か?
ならばいい。それでいい。そういうこともある。
権三は言った。間違いなく。
言葉のあやか?
昼間の、屋内の話か?
ならばいい。それでいい。そういうこともある。
だが――――鬼は、太陽の下を歩けない。
鬼舞辻無惨がそうであるように、鬼とは誰しもが『そうでなくてはならない』。
絶対の法則。
いずれ無惨が克服しなければならない悲願。
鬼舞辻無惨がそうであるように、鬼とは誰しもが『そうでなくてはならない』。
絶対の法則。
いずれ無惨が克服しなければならない悲願。
もし、この男がそうでないのなら?
もしもこの男が……この『鬼とは似て非なる鬼』が、『太陽を克服した鬼』だとしたら?
だから確認した。
万が一。万が一ということもあるから確認した。
もしもこの男が……この『鬼とは似て非なる鬼』が、『太陽を克服した鬼』だとしたら?
だから確認した。
万が一。万が一ということもあるから確認した。
権三が、不思議そうに首を捻った。
「は……? なに言っとるんじゃ。吸血鬼でもないし当然じゃぞい」
――――この鬼は、『太陽を恐れない』。
「――――――――――――――――――――――――」
まるで、電撃が全身を駆け抜けていくようだった。
歓喜。困惑。驚愕。
複雑な感情が浮かんでは混ざっていく。
太陽を克服した鬼。
十二鬼月の中にも存在しない特性。
そんな鬼はこの世に存在しないと思っていたが、よもやこんなところで!
いやまて、しかしだ。
慌てるな。この鬼は無惨が生み出した鬼ではない。
同じものとは限らない。同じで無いからこそ太陽に焼かれないだけかもしれない。
陽光の下を歩く人間を喰らって太陽が克服できるなら、とっくに無惨は太陽を克服している。
だとすればそれは屈辱だ。
無惨が千年の時で骨を折って求めてきた平穏を、この畜生は既に身に着けているということだ。
……だがそれでも、鬼と似た力を持つ存在が太陽を恐れないのであれば。
であれば、無惨が太陽を克服する方法も。
永く追い求めてきた、あの存在すらあやふやな青い彼岸花以外にも。
あるかもしれない。
増やしたくもない鬼を増やして探し続けてきた、真の意味で完全な生命体になる方法が――――!
歓喜。困惑。驚愕。
複雑な感情が浮かんでは混ざっていく。
太陽を克服した鬼。
十二鬼月の中にも存在しない特性。
そんな鬼はこの世に存在しないと思っていたが、よもやこんなところで!
いやまて、しかしだ。
慌てるな。この鬼は無惨が生み出した鬼ではない。
同じものとは限らない。同じで無いからこそ太陽に焼かれないだけかもしれない。
陽光の下を歩く人間を喰らって太陽が克服できるなら、とっくに無惨は太陽を克服している。
だとすればそれは屈辱だ。
無惨が千年の時で骨を折って求めてきた平穏を、この畜生は既に身に着けているということだ。
……だがそれでも、鬼と似た力を持つ存在が太陽を恐れないのであれば。
であれば、無惨が太陽を克服する方法も。
永く追い求めてきた、あの存在すらあやふやな青い彼岸花以外にも。
あるかもしれない。
増やしたくもない鬼を増やして探し続けてきた、真の意味で完全な生命体になる方法が――――!
――――――――――――そうして降って湧いた奇跡に興奮する無惨は、気付けなかった。
隙を晒した。
思考に夢中で、権三から意識を逸らしてしまった。
その隙を、権三は求めていたのだ。
食らいつかぬはずがない。
その一瞬の隙から、目を離すはずがない。
思考に夢中で、権三から意識を逸らしてしまった。
その隙を、権三は求めていたのだ。
食らいつかぬはずがない。
その一瞬の隙から、目を離すはずがない。
「よくわからんが隙ありッ!! くらえッ!!!」
前に突き出した手から――――指先から、鉄の弾丸を放つ。
権三が戦いの中で会得した奥の手。
指から鉄の塊を弾丸として射出する、権三式『骨銃(ボーン・ガン)』。
権三が戦いの中で会得した奥の手。
指から鉄の塊を弾丸として射出する、権三式『骨銃(ボーン・ガン)』。
弾丸が鋭く宙を裂く。
鬼舞辻無惨の脳天めがけ――――そして、無惨は軽く首を捻ってそれをかわした。
一瞬油断したが、なんということはない。
この程度の攻撃を受けると思われているのなら、不快ですらある。
苛立たしさが再びかま首を持ち上げた。
意識を現実に引き戻す。
まずはこの男を生け捕りにして、それから――――――――
鬼舞辻無惨の脳天めがけ――――そして、無惨は軽く首を捻ってそれをかわした。
一瞬油断したが、なんということはない。
この程度の攻撃を受けると思われているのなら、不快ですらある。
苛立たしさが再びかま首を持ち上げた。
意識を現実に引き戻す。
まずはこの男を生け捕りにして、それから――――――――
――――――――そう思った時には、既に権三の姿は無かった。
……逃げられた。木々が風に揺れていた。
図体の割に逃げ足が速い。
苛立たしい。しかし晴れがましい。
希望が見えた。あの大男には逃げられたが、この分だと他に似たような例があるかもしれない。
自分以外に自分の知らぬ不死者がいるという事実は無惨を苛立たせた。
が、それによって太陽を避けて暮らす屈辱から解放される可能性があるのならば耐えられる。
しかし、万が一ということもある。
万が一、それらが鬼にとって毒となる性質を持っていては敵わない。
となれば、まずは実験をしなくては。
……逃げられた。木々が風に揺れていた。
図体の割に逃げ足が速い。
苛立たしい。しかし晴れがましい。
希望が見えた。あの大男には逃げられたが、この分だと他に似たような例があるかもしれない。
自分以外に自分の知らぬ不死者がいるという事実は無惨を苛立たせた。
が、それによって太陽を避けて暮らす屈辱から解放される可能性があるのならば耐えられる。
しかし、万が一ということもある。
万が一、それらが鬼にとって毒となる性質を持っていては敵わない。
となれば、まずは実験をしなくては。
権三を追おうという考えはまったくなかった。
悲願への可能性ではあるが、しかし急ぐ事柄でもない。
なにせ忌々しくも無惨たちはこの島に閉じ込められ、殺し合いを強いられている。
腹立たしいことではあるが、今だけはそのことを褒めてやってもいい。
奴らは誰も逃げられない。幸いにして、配下の鬼どももこの場に呼ばれている。
手駒を増やしてもいいが、ともあれあの役立たずどもがようやく務めを果たす時が来た。
他の参加者を殺し、調べ、実験を繰り返す――――そうだ。鬼どもは、こんな時のために作っていたのではあるまいか。
実際に殺し合いなどをするのは鬼どもでいい。
命令するまでもなく、連中は勝手にそうするだろう。
そうでなくては、なんのためにあの醜い鬼どもを増やしたのかわからない。
悲願への可能性ではあるが、しかし急ぐ事柄でもない。
なにせ忌々しくも無惨たちはこの島に閉じ込められ、殺し合いを強いられている。
腹立たしいことではあるが、今だけはそのことを褒めてやってもいい。
奴らは誰も逃げられない。幸いにして、配下の鬼どももこの場に呼ばれている。
手駒を増やしてもいいが、ともあれあの役立たずどもがようやく務めを果たす時が来た。
他の参加者を殺し、調べ、実験を繰り返す――――そうだ。鬼どもは、こんな時のために作っていたのではあるまいか。
実際に殺し合いなどをするのは鬼どもでいい。
命令するまでもなく、連中は勝手にそうするだろう。
そうでなくては、なんのためにあの醜い鬼どもを増やしたのかわからない。
さぁ、まずは色々と試さねばならない。
支給品などという背嚢すら、無惨はまだ開けてはいないのだ。
こんなもの誰が開けるものか。馬鹿馬鹿しい。
自分を憐れんで物を恵むなどという態度が腹立たしいし、罠の可能性もある。
しかし何か役に立つものが入っているかもしれない。鬼どもに代わりに開けさせるとしよう。
まったく役立たずの鬼どもはなにをしているのか。
十二鬼月に名を連ねながら主が必要とする時に真っ先に馳せ参じないとは、度し難いほどに無能だ。
しかし今だけはそれを許そう。
無能であれ、今は役に立ってもらわなくては困る。
支給品などという背嚢すら、無惨はまだ開けてはいないのだ。
こんなもの誰が開けるものか。馬鹿馬鹿しい。
自分を憐れんで物を恵むなどという態度が腹立たしいし、罠の可能性もある。
しかし何か役に立つものが入っているかもしれない。鬼どもに代わりに開けさせるとしよう。
まったく役立たずの鬼どもはなにをしているのか。
十二鬼月に名を連ねながら主が必要とする時に真っ先に馳せ参じないとは、度し難いほどに無能だ。
しかし今だけはそれを許そう。
無能であれ、今は役に立ってもらわなくては困る。
「――――ク、クク、ハハハハハ……!」
鬼舞辻には、怒りがあった。
そして同時に――――歓喜が、彼の中にはあった。
そして同時に――――歓喜が、彼の中にはあった。
【D-3/那田蜘蛛山の麓/1日目・深夜】
【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:健康。極度の興奮。
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:あの忌々しい太陽を克服する。
1.この状況は気に食わないが、好機でもある。
2.配下の鬼に有象無象の始末は任せる。
3.配下の鬼や他の参加者を使って実験を行いたい。
[備考]
※刀鍛冶の里編直前から参戦しているようです。
【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:健康。極度の興奮。
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:あの忌々しい太陽を克服する。
1.この状況は気に食わないが、好機でもある。
2.配下の鬼に有象無象の始末は任せる。
3.配下の鬼や他の参加者を使って実験を行いたい。
[備考]
※刀鍛冶の里編直前から参戦しているようです。
「はぁ、はぁ、はぁ――――ここまで来れば安全か……」
一方、木々を跳び移ってまんまと逃げおおせた権三は、周囲を見渡しつつひと息ついた。
恐ろしい相手だった。まさしく怪物だった。
千年を生きる不死者?
あまりにも途方もない数字で実感が湧かなかった。
しかし、権三を軽くあしらった実力は本物だ。
ナノロボは肉体の再生を行っているが、僅かに残る痛みが恐怖を想起させる。
恐ろしい相手だった。まさしく怪物だった。
千年を生きる不死者?
あまりにも途方もない数字で実感が湧かなかった。
しかし、権三を軽くあしらった実力は本物だ。
ナノロボは肉体の再生を行っているが、僅かに残る痛みが恐怖を想起させる。
「クソ~~あの男、わしのことを無視してバカにしおって……メチャムカつくぞい!
なにが千年じゃ! 絶対わしの方が税金を多く払ってやってるぞい! 顔が貧乏くさいから多分間違いないぞい!」
なにが千年じゃ! 絶対わしの方が税金を多く払ってやってるぞい! 顔が貧乏くさいから多分間違いないぞい!」
言いがかりである。
日頃から若者に対して『目上を敬え』と怒鳴り散らしていた権三だったが、それは単純に傲慢な自尊心と支配欲によるものである。
ムカつくやつは全員自分に土下座してひれ伏すべきである――――それだけだ。
故に、千年を生きる『目上』である無惨に対する敬意などひとかけらも持ち合わせてはいなかった。
日頃から若者に対して『目上を敬え』と怒鳴り散らしていた権三だったが、それは単純に傲慢な自尊心と支配欲によるものである。
ムカつくやつは全員自分に土下座してひれ伏すべきである――――それだけだ。
故に、千年を生きる『目上』である無惨に対する敬意などひとかけらも持ち合わせてはいなかった。
「しかしあの男は相当ヤバイ……女王様の時以上にヤバイと感じたぞい。
まずはどこかで鉄分を補給するとして……作戦を練るか」
まずはどこかで鉄分を補給するとして……作戦を練るか」
かといって、能力者としての格の違いを理解していないほど愚かなわけでもない。
なにせ権三はつい昨日『脳力』に目覚めたばかりなのだ。
千年生きたという無惨の言葉が真実であれば、その年季には雲泥の差がある。
無惨に対する敬意はなくとも、実力についての分析は冷静だった。
あの男を殺すためにはなにかしらの作戦を練らなければならない。
あるいは、成長を。
宿主の意志と危機に応じて成長するナノロボは、今この瞬間も成長の可能性がある。
なにせ権三はつい昨日『脳力』に目覚めたばかりなのだ。
千年生きたという無惨の言葉が真実であれば、その年季には雲泥の差がある。
無惨に対する敬意はなくとも、実力についての分析は冷静だった。
あの男を殺すためにはなにかしらの作戦を練らなければならない。
あるいは、成長を。
宿主の意志と危機に応じて成長するナノロボは、今この瞬間も成長の可能性がある。
「それにしても……」
――――そして、もうひとつ。
「あいつが千年も生きていたということは、わしもそのぐらい生きられるってことだな!
あのツンツン頭のクソガキに殺されなければわしも不老不死だったんじゃ!
わしのことをナメてコケにしたクソ庶民どもを皆殺しにして、わしの帝国を作るぞい!」
あのツンツン頭のクソガキに殺されなければわしも不老不死だったんじゃ!
わしのことをナメてコケにしたクソ庶民どもを皆殺しにして、わしの帝国を作るぞい!」
権三の存在が無惨にとって福音であったように、権三にとっての無惨の存在もまた、福音であった。
実際には権三と無惨の能力はまったく違うものだが、権三はそれに気づかない。
しかし実際、医療用ナノマシンの暴走によって若返りの脳力を得た権三には、不老不死へと至る可能性が十分にあった。
希望が無限に湧き上がる。
まずはこの会場の連中とあのBBとかいう小娘をブチ殺して、自分だけの千年帝国を作るのだ。
実際には権三と無惨の能力はまったく違うものだが、権三はそれに気づかない。
しかし実際、医療用ナノマシンの暴走によって若返りの脳力を得た権三には、不老不死へと至る可能性が十分にあった。
希望が無限に湧き上がる。
まずはこの会場の連中とあのBBとかいう小娘をブチ殺して、自分だけの千年帝国を作るのだ。
「待ってろよ市民ども……この今之川権三様のキングダム……ZOI帝国の誕生じゃぞい!!」
権三には、怒りがあった。
それと同時に、いやそれ以上に――――輝かしい可能性の未来が、彼の中にはあった。
それと同時に、いやそれ以上に――――輝かしい可能性の未来が、彼の中にはあった。
【D-3/那田蜘蛛山の麓/1日目・深夜】
【今之川権三@ナノハザード】
[状態]:全身に負傷。再生はほとんど完了。
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:全員ブチ殺してZOI帝国を作るぞい!
1.基本的に出会った奴は全員ブチ殺すぞい。
2.しかしあの千年男はヤバイぞい。一旦逃げて作戦を練らなければ……
3.とりあえず鉄分を補給したいぞい。ジュースはどこだ?
[備考]
※本編で死亡した直後からの参戦です。
【今之川権三@ナノハザード】
[状態]:全身に負傷。再生はほとんど完了。
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:全員ブチ殺してZOI帝国を作るぞい!
1.基本的に出会った奴は全員ブチ殺すぞい。
2.しかしあの千年男はヤバイぞい。一旦逃げて作戦を練らなければ……
3.とりあえず鉄分を補給したいぞい。ジュースはどこだ?
[備考]
※本編で死亡した直後からの参戦です。
前話 | お名前 | 次話 |
鬼と鬼と鬼 | 鬼舞辻無惨 | 貴方の隣に立ちたくて |
拝啓、桜舞い散るこの日に | 今之川権三 | 石上優は叫びたい |