求めしもの ◆Wott.eaRjU
既に日が落ちた暗闇の中を一つの影が闊歩する。
その影は周囲の景色に溶け込むように漆黒をまとっていた。
オルタナティブ・ゼロと呼ばれる鎧に身を包むものは、かの豊臣家に使える隻腕の武士。
豊臣軍最強と名高い御馬廻七頭七手組の武士、犬養幻之介その者であった。
その影は周囲の景色に溶け込むように漆黒をまとっていた。
オルタナティブ・ゼロと呼ばれる鎧に身を包むものは、かの豊臣家に使える隻腕の武士。
豊臣軍最強と名高い御馬廻七頭七手組の武士、犬養幻之介その者であった。
(……いまだ一人として出会わぬとは)
幻之介にはこの殺し合いで殺生を取り合う用意があった。
だが、幻之介はここに至るまでに自身以外の参加者と接触できずにいた。
死合う覚悟はあれども相手が見つからなければ意味はない。
時間は無限ではなく限りあり。自然と足が急ぐのは幻之介の願いによるもの。
自身がかつて犬として貶め、無惨にも純粋な命を散らした男を救う。
そのためには、たとえ悪鬼に身をついやしてでも歩みを止めるつもりはない。
だが、幻之介はここに至るまでに自身以外の参加者と接触できずにいた。
死合う覚悟はあれども相手が見つからなければ意味はない。
時間は無限ではなく限りあり。自然と足が急ぐのは幻之介の願いによるもの。
自身がかつて犬として貶め、無惨にも純粋な命を散らした男を救う。
そのためには、たとえ悪鬼に身をついやしてでも歩みを止めるつもりはない。
(タケル……どうか無事でいてくれ)
たった一人で薩摩のぼっけ者達から愛する民達を守り続けていた猛丸。
猛丸はまさに千人に値する戦士であり、彼がそうそう遅れを取るとは思えない。
だが、猛丸とて数で押しつぶされてしまうことはある。
それに付け加えて大阪の陣を凌ぐともいえるほどの異質なこの殺し合いの場では何が起きるかはわからない。
こうしている間にも猛丸の身に危機が迫っているかもしれない。
幻之介の歩みはさらに早くなっていく。
猛丸はまさに千人に値する戦士であり、彼がそうそう遅れを取るとは思えない。
だが、猛丸とて数で押しつぶされてしまうことはある。
それに付け加えて大阪の陣を凌ぐともいえるほどの異質なこの殺し合いの場では何が起きるかはわからない。
こうしている間にも猛丸の身に危機が迫っているかもしれない。
幻之介の歩みはさらに早くなっていく。
(それにしても、見れば見るほどに奇な)
思うは先ほど、水面に映した自身の姿。
オルタナティブ・ゼロ。一人の大学教授が鏡像の世界を閉じるために造りし鎧。
カードデッキと共に同封された簡素なマニュアルの内容は幻之介にとって理解しがたいものだった。
ただ、オルタナティブ・ゼロが力になることは明白だった。
武器であれば刀と鎧と同じ。自身の手足になるべくただ使えばいい。
オルタナティブ・ゼロの外装を自身の肉体になじませることでいくつか発見があった。
力の使用。すなわち“変身”は永劫行えるわけではなく、何らかの時間的な制約はあるとのこと。
また、変身中は平時に比べて疲労の度合いが大きいということを幻之介は身をもって体感した。
無闇な変身は避けるべきなのだろう。それでも幻之介は少しでも自身の力とするためにも、今この時はその姿を変えていた。
その行動にはやはり、彼の焦りが一因となっているに違いない。
オルタナティブ・ゼロ。一人の大学教授が鏡像の世界を閉じるために造りし鎧。
カードデッキと共に同封された簡素なマニュアルの内容は幻之介にとって理解しがたいものだった。
ただ、オルタナティブ・ゼロが力になることは明白だった。
武器であれば刀と鎧と同じ。自身の手足になるべくただ使えばいい。
オルタナティブ・ゼロの外装を自身の肉体になじませることでいくつか発見があった。
力の使用。すなわち“変身”は永劫行えるわけではなく、何らかの時間的な制約はあるとのこと。
また、変身中は平時に比べて疲労の度合いが大きいということを幻之介は身をもって体感した。
無闇な変身は避けるべきなのだろう。それでも幻之介は少しでも自身の力とするためにも、今この時はその姿を変えていた。
その行動にはやはり、彼の焦りが一因となっているに違いない。
(かような力といえども……この腕が戻ることはないか)
うずく。以前、確かに自分の一部があった場所がうずいている。
たとえオルタナティブ・ゼロと呼ばれる異形の力によっても、身を変えたとしても戻ることはない。
隻腕となった武士など最早死に場所を見失った亡霊にしか過ぎない。
戦場に出る事すら叶わず、己の刀を腐らせた者の末路には相応しい。
それでも考えたことはあった。
自分が、御馬廻七頭七手組が戦場に出て入れば何かが変わったのだろうか、と。
たとえば薩摩のぼっけ者達が言うように、真田毛利軍と力を合わせればあるいは。
あの強大な徳川をも打ち破る力をも産めたのだろうか、と。
たとえオルタナティブ・ゼロと呼ばれる異形の力によっても、身を変えたとしても戻ることはない。
隻腕となった武士など最早死に場所を見失った亡霊にしか過ぎない。
戦場に出る事すら叶わず、己の刀を腐らせた者の末路には相応しい。
それでも考えたことはあった。
自分が、御馬廻七頭七手組が戦場に出て入れば何かが変わったのだろうか、と。
たとえば薩摩のぼっけ者達が言うように、真田毛利軍と力を合わせればあるいは。
あの強大な徳川をも打ち破る力をも産めたのだろうか、と。
しかし、それはやはりただの夢物語りに過ぎないことを幻之介は知っている。
自身の主君があの場で、自らの護衛を外してでも自分達を戦場に向かわせることはない。
何故なら主君はかの豊臣の血を受け継ぐものなのだから。
身分に勝るものはなく、幻之介自身もそれが誤っているとは思わない。
誰しもの心に根付く身分の檻。猛丸は、幻之介が知る唯一その心の檻を持たない人間だった。
自身の主君があの場で、自らの護衛を外してでも自分達を戦場に向かわせることはない。
何故なら主君はかの豊臣の血を受け継ぐものなのだから。
身分に勝るものはなく、幻之介自身もそれが誤っているとは思わない。
誰しもの心に根付く身分の檻。猛丸は、幻之介が知る唯一その心の檻を持たない人間だった。
(ニライカナイ。腕だけでも俺にはすぎたもの)
かつて猛丸が語ったニライカナイ。王も奴婢も等しく命の価値は同じと謳われる国。
まるでおとぎ話にも等しいような話しであっても、幻之介には真実に思えた。
猛丸を今度こそ救い、夢を馳せたニライカナイの景色をその眼に映す。
その隣に肩を並べるのは彼が愛した人間だけが居ればいい。
自分のような、友を狂犬達に売るような人間に資格はないのだから。
まるでおとぎ話にも等しいような話しであっても、幻之介には真実に思えた。
猛丸を今度こそ救い、夢を馳せたニライカナイの景色をその眼に映す。
その隣に肩を並べるのは彼が愛した人間だけが居ればいい。
自分のような、友を狂犬達に売るような人間に資格はないのだから。
「タケル……今度は俺が犬となろうぞ」
視界に通り過ぎるは病院と書かれた施設。
得体のしれない施設に用はない。たとえ籠城を決めた者がいようとも、その行動をとった時点で知れている。
知らぬ内に淘汰されるであろう存在に手間をかける義理もない。
幻之介は狙う。今しがた彼が吐き捨てた犬のように。
猛丸の害となるべき強大なものを斬り捨てるためにも、
幻之介の覚悟はすでに完了し、必要なものは相対だけであった。
たとえかような存在であっても。
相対すれば、彼は力を奮うだけである。
得体のしれない施設に用はない。たとえ籠城を決めた者がいようとも、その行動をとった時点で知れている。
知らぬ内に淘汰されるであろう存在に手間をかける義理もない。
幻之介は狙う。今しがた彼が吐き捨てた犬のように。
猛丸の害となるべき強大なものを斬り捨てるためにも、
幻之介の覚悟はすでに完了し、必要なものは相対だけであった。
たとえかような存在であっても。
相対すれば、彼は力を奮うだけである。
ただ、運命の兄弟のために。
【B-7 病院周辺/1日目・黎明】
【犬養幻之介@衛府の七忍】
[状態]:健康
[装備]:オルタナティブ・ゼロのカードデッキ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:タケルを生かす。
1.殺す。
2.タケルの害になるものを効率的に殺す
[備考]
※タケル死亡後、豊臣秀頼たちの前に行く前からの参戦。
【犬養幻之介@衛府の七忍】
[状態]:健康
[装備]:オルタナティブ・ゼロのカードデッキ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:タケルを生かす。
1.殺す。
2.タケルの害になるものを効率的に殺す
[備考]
※タケル死亡後、豊臣秀頼たちの前に行く前からの参戦。
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