見守る柱、見届ける鬼 ◆0zvBiGoI0k
「―――女の慟哭と悲嘆を存分に聞いた気分はどうだ?」
闇からの声が、行動に出ようとする義勇を呼び止める。
誰かがいた、という事には驚きはない。
ひょこひょこと歩く名も知らぬ少女―――四宮かぐやの前方以外の周囲に人がいないのは既に確認してある。
銃を撃つかぐやを襲った、何者かの存在を念頭に置けば当然の対応だ。
遠ざかる足音も近づく気配もない森で、それでも声は義勇の索敵をすり抜けた。ならば答えはひとつ。
背中という死角に慌ただしく動じることなく、義勇は声のした方を振り向いた。
ひょこひょこと歩く名も知らぬ少女―――四宮かぐやの前方以外の周囲に人がいないのは既に確認してある。
銃を撃つかぐやを襲った、何者かの存在を念頭に置けば当然の対応だ。
遠ざかる足音も近づく気配もない森で、それでも声は義勇の索敵をすり抜けた。ならば答えはひとつ。
背中という死角に慌ただしく動じることなく、義勇は声のした方を振り向いた。
遠巻きに義勇が聞いていた、憶えのある声。
かぐやを叱咤し立ち上がらせ、同行を許諾した男。
そこにいたのは、義勇が立ち去るまでかぐやと共にいた外套の男―――巌窟王を名乗る復讐者、エドモン・ダンテスに他ならない。
かぐやを叱咤し立ち上がらせ、同行を許諾した男。
そこにいたのは、義勇が立ち去るまでかぐやと共にいた外套の男―――巌窟王を名乗る復讐者、エドモン・ダンテスに他ならない。
「奇妙なものだな。
森の木々に隠れ少女を窺う。隙だらけの背から襲うでも近づき交友を誘うでもなくただ覗き見るのみ。
立ち去ったかと思えば銃声を聞きつけて舞い戻り、また座視に回る。
影に潜みし騎士の真似か?ならばやめておけ。お前には向いていまい」
森の木々に隠れ少女を窺う。隙だらけの背から襲うでも近づき交友を誘うでもなくただ覗き見るのみ。
立ち去ったかと思えば銃声を聞きつけて舞い戻り、また座視に回る。
影に潜みし騎士の真似か?ならばやめておけ。お前には向いていまい」
義勇の今までの行動を把握されていたと思しき言葉。
太い木の枝―――義勇が瞬間に切り込める間合いより外―――に立つ、西洋式の外套と帽子に身を包んだ青年。
太い木の枝―――義勇が瞬間に切り込める間合いより外―――に立つ、西洋式の外套と帽子に身を包んだ青年。
病的なほど白い肌。
闇に炯々と灯る赫眼。
義勇が切り捨ててきた数多の鬼より鬼らしい風体。ともすれば見聞にある外見通りの鬼舞辻無惨であると錯覚しかけてしまうほど。
闇に炯々と灯る赫眼。
義勇が切り捨ててきた数多の鬼より鬼らしい風体。ともすれば見聞にある外見通りの鬼舞辻無惨であると錯覚しかけてしまうほど。
「……やはり鬼ではないのか」
だが同時に義勇の経験則と直感は、目の前の人物を鬼ではないと判断していた。
かといって完全な人でもない。全身を覆う炎とも雷とも言い難い禍々しさは、人の範疇を逸脱している。
かといって完全な人でもない。全身を覆う炎とも雷とも言い難い禍々しさは、人の範疇を逸脱している。
サーヴァント、英霊という概念を義勇は知らない。だが力は知っていた。柱の力。十二鬼月の力。
直接腕を交えずとも、男の力はそれらに劣らぬものを保有してると見抜けた。
あれは道を極めた先、力のひとつの極地に到達してると、知識も概要もないままに理解していた。
直接腕を交えずとも、男の力はそれらに劣らぬものを保有してると見抜けた。
あれは道を極めた先、力のひとつの極地に到達してると、知識も概要もないままに理解していた。
「鬼か。東洋でいうデーモンだったか?
だが――――――クク。鬼ではない、か。違うな、間違ってるぞ」
だが――――――クク。鬼ではない、か。違うな、間違ってるぞ」
義勇の呟きを耳聡く聞きとがめた男は訂正した。
愉しそうに。愉快な勘違いだと。
愉しそうに。愉快な勘違いだと。
「お前が思い浮かべる鬼と俺とは違うのだろう。だが察しの通り俺はとうに人ではない。
この世の地獄に貶められた男が、人の身のままで脱獄できるはずがない。地獄から這い出るは亡者のみ。
俺は復讐の鬼だ。この世界にあまねく理不尽と悪意を憎悪するモノ。お前達人間の象徴そのものだとも」
この世の地獄に貶められた男が、人の身のままで脱獄できるはずがない。地獄から這い出るは亡者のみ。
俺は復讐の鬼だ。この世界にあまねく理不尽と悪意を憎悪するモノ。お前達人間の象徴そのものだとも」
復讐者。悪逆の報いを与えんとする者。
その概念を義勇は理解している。痛いほどに、よくわかる。
鬼殺隊の大半は、鬼の犠牲者だ。
家族を鬼に食われた者。家族を鬼にされた者。
鬼によって奪われ、喪い、傷つき、けれど立ち止まる事なく歩んだ先には必ず鬼殺隊に行き着く。
その概念を義勇は理解している。痛いほどに、よくわかる。
鬼殺隊の大半は、鬼の犠牲者だ。
家族を鬼に食われた者。家族を鬼にされた者。
鬼によって奪われ、喪い、傷つき、けれど立ち止まる事なく歩んだ先には必ず鬼殺隊に行き着く。
男の背後に見え隠れする、黒炎の幻覚。血鬼術にも似たそれは報復を完遂するという証なのか。
だがそれは理解したが、それ以外はわからぬままだ。忌み名の巌窟王も、名簿にあるエドモンも知らぬままだ。
だがそれは理解したが、それ以外はわからぬままだ。忌み名の巌窟王も、名簿にあるエドモンも知らぬままだ。
「鬼殺隊、冨岡義勇だ」
なのでひとまず、自分から名乗る事にした。
不器用かつ、口下手であると自認する義勇にとって、自己紹介は数少ない交流手段である。
実を結んだ成果は、いまひとつであるが。
不器用かつ、口下手であると自認する義勇にとって、自己紹介は数少ない交流手段である。
実を結んだ成果は、いまひとつであるが。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……クク」
「……」
「……」
「……」
「……クク」
暫し、沈黙。
義勇は語らず、巌窟王も語らず。
義勇と対照的に饒舌なきらいのある復讐者だが、義勇のペースに合わせるには調子が些か狂うものがあった。
とはいえ難解な言葉のわからぬ幼子や、話を無視して拘束しようとしてくる鋼の人ほどではない。
義勇は語らず、巌窟王も語らず。
義勇と対照的に饒舌なきらいのある復讐者だが、義勇のペースに合わせるには調子が些か狂うものがあった。
とはいえ難解な言葉のわからぬ幼子や、話を無視して拘束しようとしてくる鋼の人ほどではない。
結局は、崩す事なく貫徹するに限る。
この男に接触したそもそもの理由。益のない監視者を罰する事こそが、彼の役割である。
この男に接触したそもそもの理由。益のない監視者を罰する事こそが、彼の役割である。
「話を戻すとしよう。お前も見ただろう嘆きの話だ」
前方でゆっくりと歩いているかぐやを横目に見る。
彼我の距離は離れてる。姿は木々に隠れ、声も届きはしない。
だが超人的な速力を誇る巌窟王には、同じく義勇にもすぐに追いつく事ができる。
彼我の距離は離れてる。姿は木々に隠れ、声も届きはしない。
だが超人的な速力を誇る巌窟王には、同じく義勇にもすぐに追いつく事ができる。
「俺は恩讐を司るものだ。悪逆と不平等に正統なる報復を求める者を肯定する。
故に、この地で目覚めて初めて会った、あの女の罪の行く末を見届ける」
「罪――――――彼女のか」
故に、この地で目覚めて初めて会った、あの女の罪の行く末を見届ける」
「罪――――――彼女のか」
この時、初めて義勇は巌窟王を見た。聞き逃がせない言葉に明確な意志を乗せて問うた。
「罪だとも。親しきものを理不尽に奪われながら、愛しきものの為に身を捧げるのをよしとせず、他者に犠牲を強いる事もない。
愛も生も望むものを全て手にせんとする、紛れもない『傲慢』の罪だ」
愛も生も望むものを全て手にせんとする、紛れもない『傲慢』の罪だ」
開幕式で死した少女を悼み悲しむ。
巻き込まれた大切な人の無事を祈るのを罪悪と、笑みを浮かばせて。
巻き込まれた大切な人の無事を祈るのを罪悪と、笑みを浮かばせて。
「裁定の時は遠からず訪れるだろう。手に余る願望は己が身を焼くは必定。たとえ万能の願望器があろうともそれは変わらぬ。
ただ燃える範囲が周囲に伝播するばかりで、本人が救われる事は決してない」
ただ燃える範囲が周囲に伝播するばかりで、本人が救われる事は決してない」
「なら――――――お前は俺の敵になる」
凪いだ心に波紋が起こる。
提げていた鞄が落ち、戦意と共に一本の抜き身の刃が露わになる。
名を無毀なる湖光。星の意志によって生み出された聖剣。
人類史に刻まれしまたとなき名剣であるが、只人である義勇にはその真価は発揮できない。むしろ愛刀と異なる重さは枷になりうる。
提げていた鞄が落ち、戦意と共に一本の抜き身の刃が露わになる。
名を無毀なる湖光。星の意志によって生み出された聖剣。
人類史に刻まれしまたとなき名剣であるが、只人である義勇にはその真価は発揮できない。むしろ愛刀と異なる重さは枷になりうる。
だが義勇に退く気はない。
少女の破滅を見越しながら傍観を決める復讐鬼を、このまま返すわけにはいかなかった。
悲劇に見舞われた人が、折れず立ち向かうのを望む義勇だが、手を血に染めて欲しいわけではないのだから。
少女の破滅を見越しながら傍観を決める復讐鬼を、このまま返すわけにはいかなかった。
悲劇に見舞われた人が、折れず立ち向かうのを望む義勇だが、手を血に染めて欲しいわけではないのだから。
「何を言う、お前達とてそうだろう。
鬼殺隊、鬼を殺すものか。名前だけでも分かるぞ。俺には分かるのだ。
お前達が刻まれた罪業を。奪った者への狂おしき激情の念を」
鬼殺隊、鬼を殺すものか。名前だけでも分かるぞ。俺には分かるのだ。
お前達が刻まれた罪業を。奪った者への狂おしき激情の念を」
奥底を見通すような鋭い眼光は的を射ている。
鬼殺隊の中で、鬼に激しい憎しみを持つ者は稀有ではない。
鬼と戦っていけば、誰であれ大なり小なり鬼の所業に憤る。
悪鬼滅殺を掲げ、この世から鬼が消えてなくなるまで、鬼舞辻無惨を討つ日まで戦い続ける。
だから鬼殺隊という枠組みは、確かに復讐者という呼び名をかけるのも間違ってはいないのだろう。
鬼殺隊の中で、鬼に激しい憎しみを持つ者は稀有ではない。
鬼と戦っていけば、誰であれ大なり小なり鬼の所業に憤る。
悪鬼滅殺を掲げ、この世から鬼が消えてなくなるまで、鬼舞辻無惨を討つ日まで戦い続ける。
だから鬼殺隊という枠組みは、確かに復讐者という呼び名をかけるのも間違ってはいないのだろう。
「……俺は彼らとは違う」
常に穏やかな笑顔の表情を張り付かせていながら、姉を惨殺された鬼への激情を内に滾らせる胡蝶とは違う。
家族を殺され、妹を鬼に変えられながら、鬼に残った人の部分に慈悲を与えて鬼を討つ炭治郎とは違う。
家族を殺され、妹を鬼に変えられながら、鬼に残った人の部分に慈悲を与えて鬼を討つ炭治郎とは違う。
鬼を許せぬ気持ちは無論ある。
けれどそれを猛々しく露わにする事も、堂々と宣言する資格も、義勇にはない。
運命の最終選別。抱いていたはずの憎しみを鬼に叩きつける事すらできず鬼殺の剣士になった義勇には。
けれどそれを猛々しく露わにする事も、堂々と宣言する資格も、義勇にはない。
運命の最終選別。抱いていたはずの憎しみを鬼に叩きつける事すらできず鬼殺の剣士になった義勇には。
だから義勇は此処にいる。
『柱』に相応しくないと認めながら、『柱』を降りずに戦っている。
本来その座を担うはずだった男が救っていただろう命を、少しでも掬おうと。
『柱』に相応しくないと認めながら、『柱』を降りずに戦っている。
本来その座を担うはずだった男が救っていただろう命を、少しでも掬おうと。
「鬼を斬り、人を守る。それが鬼殺隊の、俺の役目だ」
鬼への憎悪ではない。人々の安寧を鬼に奪わせない為に、冨岡義勇は刃を握るのだ。
「――――――――フ。
見物両代わりには上々といえるか」
見物両代わりには上々といえるか」
僅かに、険の取れた声。
いつの間にか悪意の波動のようなものは露と消えていた。
いつの間にか悪意の波動のようなものは露と消えていた。
「安心しろ。俺は彼女にとっての、かの人を貶めたる三賢人になる気はない。
同じ復讐者に堕ちるならいざ知らず、あらゆる救いを断たれたこのバトルロワイアルに於いて、しかして希望し、生還を真に望むのならば―――」
同じ復讐者に堕ちるならいざ知らず、あらゆる救いを断たれたこのバトルロワイアルに於いて、しかして希望し、生還を真に望むのならば―――」
導かれなければならないのだ。
風に乗って消える淡い音は、確かにそう口にしていた。
……どうやら、試されたのは此方の方だったらしい。
はじめから、義勇の本音を引き出すのを目的に接触を図ったのだろう。まんまと芝居に付き合わされたらしい。
不器用な男だ。自分を棚に置いて義勇はそう思った。
はじめから、義勇の本音を引き出すのを目的に接触を図ったのだろう。まんまと芝居に付き合わされたらしい。
不器用な男だ。自分を棚に置いて義勇はそう思った。
疑念は、とりあえずは晴れた。
不穏な面はあるが、この男は彼女を貶めるような真似はしまい。安心して任せてられる。
不穏な面はあるが、この男は彼女を貶めるような真似はしまい。安心して任せてられる。
「竈門炭治郎、竈門禰豆子、吾妻善逸、煉獄杏寿郎、胡蝶しのぶ」
名を連ねて伝える鬼狩りの面々。
後に贈れるものは情報だ。必ずやこの催しに抵抗する者達。心身共に鍛えられた鬼滅の刃。
後に贈れるものは情報だ。必ずやこの催しに抵抗する者達。心身共に鍛えられた鬼滅の刃。
「彼女と話す機会があれば伝えろ。力になるはずだ」
「お前自身が出向けば済む話ではないのか?」
「夜が明ければ、俺は離れる」
「お前自身が出向けば済む話ではないのか?」
「夜が明ければ、俺は離れる」
鬼は陽の光を浴びれば即座に燃え尽きる。
逆に言えば夜は完全な鬼の領域だ。雑魚鬼や『下弦』までならともかく、『上弦』の領域は抑えるもののない暴威と化す。
最低でも一体、その上弦がここにはいる。それ知るからこそ義勇はかぐやの後を追っていた。
夜明けを迎える、最低でも森を抜けるまでは離れるわけにはいかなかった。
なら顔を見せてかぐやにそう言えばいいものなのだが、それをしないのが義勇という男の厄介な性分だった。
逆に言えば夜は完全な鬼の領域だ。雑魚鬼や『下弦』までならともかく、『上弦』の領域は抑えるもののない暴威と化す。
最低でも一体、その上弦がここにはいる。それ知るからこそ義勇はかぐやの後を追っていた。
夜明けを迎える、最低でも森を抜けるまでは離れるわけにはいかなかった。
なら顔を見せてかぐやにそう言えばいいものなのだが、それをしないのが義勇という男の厄介な性分だった。
だがその懸念も消えた。任せられる護衛がいる以上いつまでも留まる事はない。
そうして義勇は再び踵を返す。結局、一度もかぐやに顔を見せる事なく去り行く。
そうして義勇は再び踵を返す。結局、一度もかぐやに顔を見せる事なく去り行く。
「そうか。
しかし、夜はお前を待ってはくれないようだぞ?」
しかし、夜はお前を待ってはくれないようだぞ?」
その、直前。
数度の叫びが、夜の静寂を震わせた。
数度の叫びが、夜の静寂を震わせた。
『――――――――!――――――――!」
耳を澄まし出処を探す。
距離は近くはない。地図で区切られた区間でいえばふたつほど離れてるだろう。
肉声とは違う、何かの機械で増幅されたような加工された音響。
鍛えられた聴覚には叫びの内容はともかく、性別の違いと、どのような色を帯びているかぐらいは判別がつく。
まして、先行して既に森の遮りを抜けている少女には。
距離は近くはない。地図で区切られた区間でいえばふたつほど離れてるだろう。
肉声とは違う、何かの機械で増幅されたような加工された音響。
鍛えられた聴覚には叫びの内容はともかく、性別の違いと、どのような色を帯びているかぐらいは判別がつく。
まして、先行して既に森の遮りを抜けている少女には。
「さあ、第二の試練の始まりだ。四宮かぐや。傲慢を抱く罪人よ。
お前は知らねばならない。此処が如何様な地獄であるか。
お前は選ばねばならない。無数に枝分かれした選択肢を。
そしてお前は――――――その時いったい、どうする?」
お前は知らねばならない。此処が如何様な地獄であるか。
お前は選ばねばならない。無数に枝分かれした選択肢を。
そしてお前は――――――その時いったい、どうする?」
◆
―――さっきから、誰かに見られているような気がする……。
ひたすら歩き始めて幾分か。
目を覚まして以来、かぐやの胸中にはそんな不安がずっと渦巻いていた。
目を覚まして以来、かぐやの胸中にはそんな不安がずっと渦巻いていた。
当然、かぐや以外には誰もいない。
立ち止まっても、咄嗟に振り向いてみても、あるのはかぐやが通ってきた道の暗闇だけだ。
何もないが、『出て』来そうな雰囲気はある。そんな感じだった。
立ち止まっても、咄嗟に振り向いてみても、あるのはかぐやが通ってきた道の暗闇だけだ。
何もないが、『出て』来そうな雰囲気はある。そんな感じだった。
夜の闇、葉の擦れ合い、枝の揺れに人は幽霊を見出したという。
科学が進歩してない時代にありがちな悲しい勘違いだ。現代人であるかぐやはそんな哀れな妄想には振り回されない。
……けど殺し合いという今の状況を思うと、ちょっと自信がなくなる。
先に死んだ藤原千花の幽霊が自分に会いに来たのでは、なんて考えも浮かんでしまいそうになる。
煩悩の塊みたいな子だ、さぞかし未練は残っていただろう。
その一部に自分も含まれていたら……だなんて思いたくもなるのだ。
科学が進歩してない時代にありがちな悲しい勘違いだ。現代人であるかぐやはそんな哀れな妄想には振り回されない。
……けど殺し合いという今の状況を思うと、ちょっと自信がなくなる。
先に死んだ藤原千花の幽霊が自分に会いに来たのでは、なんて考えも浮かんでしまいそうになる。
煩悩の塊みたいな子だ、さぞかし未練は残っていただろう。
その一部に自分も含まれていたら……だなんて思いたくもなるのだ。
巌窟王とかいう妄想(仮)も、幾ら呼べども出てこない。
妄想なら自分の都合のいいように出てきてもいいようなものなのだけど、妄想も上手くはいかないらしい。自分の知性の高さが少し恨めしい。
いないものはいないでしょうがない。縋りつくようになったらそれこそ取り返しがつかない。
妄想なら自分の都合のいいように出てきてもいいようなものなのだけど、妄想も上手くはいかないらしい。自分の知性の高さが少し恨めしい。
いないものはいないでしょうがない。縋りつくようになったらそれこそ取り返しがつかない。
―――とりあえず森を出よう。
木ばっかりな場所だからこんなに気になってしまうのだ。街に出れば少しは気も和らぐだろう。
森なんて地区、隠れるならまだしも他の参加者がそうそう寄って来る場所ではない。
正しい文明人であれば、街の光にこそ安心感を抱く。生徒会の皆だって、そう思ってるはずだ。
森なんて地区、隠れるならまだしも他の参加者がそうそう寄って来る場所ではない。
正しい文明人であれば、街の光にこそ安心感を抱く。生徒会の皆だって、そう思ってるはずだ。
慣れない森林に足と気力を取られながらも、漸くかぐやは森を抜けた。
土と葉の香りが薄らぎ、コンクリートで敷かれた道路がやけに新鮮に感じる。
とりあえず手近な電柱の下の腰かけに座り、デイバッグから出した地図を広げる。
土と葉の香りが薄らぎ、コンクリートで敷かれた道路がやけに新鮮に感じる。
とりあえず手近な電柱の下の腰かけに座り、デイバッグから出した地図を広げる。
地図上での位置ではかぐやがいるのはC-6。
本当は南のD-7に生きたかったのだが、やはり森の中で方位を狂わせられてしまったのが痛い。
会長なら星を見て方角を割り出せたのかしら……と、思いを馳せらせたところで我に返って地図に視線を戻す。
近場にある施設では美術館があるが、かぐやが目指す場所はそこではない。
本当は南のD-7に生きたかったのだが、やはり森の中で方位を狂わせられてしまったのが痛い。
会長なら星を見て方角を割り出せたのかしら……と、思いを馳せらせたところで我に返って地図に視線を戻す。
近場にある施設では美術館があるが、かぐやが目指す場所はそこではない。
秀知院学園。かぐやと、白銀御行と石上優も在籍する学園。
真っ先に二人が目指す目星がつく施設。何か事情があって後回しにするとしても、合流できる可能性が最も高いのはここしかない。
真っ先に二人が目指す目星がつく施設。何か事情があって後回しにするとしても、合流できる可能性が最も高いのはここしかない。
―――少し休んで……それから行こう。
今すぐにでも向かいたいところだが、今まであった出来事で心身の疲労は溜まっていた。
同時に、会長達に会いたい焦りも大きくなってくる。居場所もわからず闇雲に探し回る愚を犯したくないからこそセーブが効いていた。
せめて息が整うまではここにいよう。そう妥協して深呼吸して流行る気を落ち着ける。
同時に、会長達に会いたい焦りも大きくなってくる。居場所もわからず闇雲に探し回る愚を犯したくないからこそセーブが効いていた。
せめて息が整うまではここにいよう。そう妥協して深呼吸して流行る気を落ち着ける。
『――――――――!――――――――!」
「え?」
そうして、かぐやはその音を聞いた。
拡声器でも使った、加工された大音響。
距離は少し離れてる。地図でいうならおおよそ2ブロックほどだろうか。
ノイズが走ってるのもあって、言葉の内容はよく聞き取れない。なにか叫んでるのまではわかるがかえってそれで聞こえにくくなってる。
拡声器でも使った、加工された大音響。
距離は少し離れてる。地図でいうならおおよそ2ブロックほどだろうか。
ノイズが走ってるのもあって、言葉の内容はよく聞き取れない。なにか叫んでるのまではわかるがかえってそれで聞こえにくくなってる。
他の人が聞いても、ただの雑音にしか聞こえなかっただろう。
他の人の声だったら、聞こえても理解できなかっただろう。
他の人の声だったら、聞こえても理解できなかっただろう。
なのにかぐやは、その声を聞き取れた。
精確に、一言一句違わずに内容を理解できた。
なぜなら、
精確に、一言一句違わずに内容を理解できた。
なぜなら、
「――――――石上君?」
それはかぐやがよく知っている、聞き慣れた後輩の声だったから。
【C-7/1日目・黎明】
【冨岡義勇@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、無毀なる湖光、ランダム支給品1~2
[思考・状況]
基本方針:鬼舞辻無惨を討つ。鬼を切り、人を守る。
1:…………。
2:少女に声をかけるか否か。
[備考]
※参戦時期、柱稽古の頃。
※かぐやにすぐに駆けつけられる距離から見つめています。
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、無毀なる湖光、ランダム支給品1~2
[思考・状況]
基本方針:鬼舞辻無惨を討つ。鬼を切り、人を守る。
1:…………。
2:少女に声をかけるか否か。
[備考]
※参戦時期、柱稽古の頃。
※かぐやにすぐに駆けつけられる距離から見つめています。
【エドモン・ダンテス@Fate/Grand Order】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:復讐。脱獄。その手助け。
1:巌窟王として行動する
2:何のかんの言いつつ、かぐやに陰ながら同行し、そのピンチには駆けつける(?)
[備考]
※参戦時期、他のFate/Grand Orderのキャラとの面識、制限は後続に任せます
※かぐやにすぐに駆けつけられる距離から見つめています。
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:復讐。脱獄。その手助け。
1:巌窟王として行動する
2:何のかんの言いつつ、かぐやに陰ながら同行し、そのピンチには駆けつける(?)
[備考]
※参戦時期、他のFate/Grand Orderのキャラとの面識、制限は後続に任せます
※かぐやにすぐに駆けつけられる距離から見つめています。
【C-6/1日目・黎明】
【四宮かぐや@かぐや様は告らせたい】
[状態]:疲れ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2、H&K MP7@仮面ライダーアマゾンズ
[思考・状況]
基本方針:私はスキを諦めない
1:今の声―――石上君?
2:会長たちと合流したい
3:あの巌窟王……って人、私の妄想では……?
4:なんだか銃の使い方がわかった気がする
[備考]
具体的な参戦時期は後続に任せます
[状態]:疲れ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2、H&K MP7@仮面ライダーアマゾンズ
[思考・状況]
基本方針:私はスキを諦めない
1:今の声―――石上君?
2:会長たちと合流したい
3:あの巌窟王……って人、私の妄想では……?
4:なんだか銃の使い方がわかった気がする
[備考]
具体的な参戦時期は後続に任せます
【無毀なる湖光@Fate/Grand Order】
アロンダイト。
冨岡義勇に支給。円卓の騎士、ランスロット卿の愛剣である神造兵装。
決して刃毀れせず、険を抜いた間に全ての能力を上昇させ、ST判定において成功率が2倍になる。
……が、魔力を持たない義勇さんがこの能力を発揮できるかは怪しい。
さらに本来なら光の斬撃として飛ばす魔力を、斬りつけた相手の傷から解放する裏技も存在するが、魔力なんか持たない義勇さんには使用できない。
アロンダイト。
冨岡義勇に支給。円卓の騎士、ランスロット卿の愛剣である神造兵装。
決して刃毀れせず、険を抜いた間に全ての能力を上昇させ、ST判定において成功率が2倍になる。
……が、魔力を持たない義勇さんがこの能力を発揮できるかは怪しい。
さらに本来なら光の斬撃として飛ばす魔力を、斬りつけた相手の傷から解放する裏技も存在するが、魔力なんか持たない義勇さんには使用できない。
竜退治の逸話を持つため、竜属性を持つ相手に対して追加ダメージを負わせる。
こっちは使い手が義勇さんでも大丈夫。
こっちは使い手が義勇さんでも大丈夫。
前話 | お名前 | 次話 |
泥の水面 | 冨岡義勇 | “ぞわり” |
LOVE BULLET KAGUYA SAMA | エドモン・ダンテス | |
四宮かぐや |