サザリン市周辺地勢

頻繁な降雨、湿気を帯びた熱波、流れの強い河川、そして季節的に訪れる雨季が、サザリン市周辺の地域に絡みつくジャングルと不規則に広がる湿地帯を育てた。敢えてこの野生世界に挑む者は、これらの肥沃な広がりの中に繁茂する、豊かでしばしば危険な植物相や動物相に遭遇することは確実である。これらの野外へと行く冒険を行なう際には、プレイヤーとDMは『Dungeon Master’s Guide』の第5章にある「荒野」のルールについて良く理解しておくべきである。

アメディオ・ジャングル

Amedio Jungle
青々と茂った熱帯のジャングルがこの地域を特色付けている。非常に老いた、広い間隔で生えた木々が密生した樹冠を形成しており、それによってジャングルの地面は永遠の緑の暗闇に閉ざされている。あらゆる種類の昆虫や動物(そのいくらかは怪物的なサイズを持っている)、捕食性の植物、粘体、そして時にはウィル・オ・ウィスプやハグ、ヒュドラ、ブラック・ドラゴンさえもが、この青緑の深淵に巣を作っている。文明から遠く離れ、リザードフォーク、ブリーワグ、そして奇妙な色の皮膚をしたゴブリンの一族が、オーマン人として知られる背の低い人間や、グルガックと呼ばれるしなやかで黒い皮膚をしたエルフの原始的な部族と共に生息している。
アメディオ・ジャングルの数えきれないほどの危険はその秘密がよく保たれているが、奇妙な噂や伝説が冒険者と探検家たちをその海岸へと引き付け続けている。ここには天然資源と人の手になる財宝が山ほどあるものの、同時に野蛮な人々、獰猛なモンスター、毒のある植物、伝染性の疾病、そして少なくとも4つの滅びた文明の手になる危険な遺跡の宝庫でもある。この異国風で野蛮な地域は山岳地と海によって他の文明圏から切り離されており、過失には相応の報いを求め、うぬぼれている者にはあっさりと恐るべき死をもたらす執念深い土地である。
アメディオには海から南と東に向かって風が吹き付けてきて、成長祭から醸造祭までの季節はほぼ毎日、午後になると巨大な嵐雲と激しい雨をもたらす。この半年間の季節は雨季であり、その後の残りの半年は比較的乾燥した乾季が続き、週に1~2日しか雨が降らなくなる。どちらの季節も日中の気温は華氏85度(摂氏29度)から110度(摂氏43度)にもなり、極端なときにはその幅よりも10~15度ほど上回ったり下回ったりする。気温はアメディオの北端の半島(シー・プリンス国の地図ではフック半島と呼ばれている)やオーマン諸島ではやや下がり、華氏75~95度(摂氏24度~35度)程度になっている。朝方には、しばしばジャングルの開けた場所が地霧に覆われる。霧が晴れた後ですら、熱波、密集して群れる羽虫、高い湿度から生じるかすかな靄によって、遠くの視界は遮られ、遠くの音はくぐもってしまう。
空気は昼夜を問わず湿度と温度が高い。金属製の鎧の着用は格別に不快なものとなる。そうした鎧の下に着用する分厚い詰め物は熱射病、過労、脱水を引き起こしうる。この地域に持ち込まれる詰め物やほとんどの衣類は、定期的に洗い、陰干しして乾かさないと白カビが生え、悪臭を放つようになる。鉄製の鎧、武器、そして道具は、注意深く油を塗って手入れをしなければ、数日で深刻な錆の被害を受ける。この地域の昆虫、ネズミ、そのほかの害獣は、急速に広がり、拷問のような苦痛と衰弱をもたらし、多くの者の生命を奪う恐るべき疫病の伝搬者であることが知られている。アメディオのほとんどの原住民は地元の疫病に対してある程度の耐性を獲得しているが、準備のできていないよそ者の多くはそうした疫病で死んでしまう。
雨季はこの地に最も恐るべき天候をもたらす:熱帯性高気圧から生じる嵐で、その暴風域は圧倒的な破壊力を持つハリケーンのような風力で、少なくとも2年に1回はこのジャングルを襲っている。しかしこうした損害は速やかに回復しており、5年も経てば、上空から見たとしても嵐の通過した痕跡は判別できないようになる。

鮮血湾

Blood Bay
鮮血湾の色には数多くの逸話が伝えられている。幾人かの老練な水夫は、船乗りによって大きな怪我を負わされて外海へと戻ることができなくなったガルロッサと呼ばれるクラーケンの血液によって真紅の波が生まれたと信じている。湾全体を赤く染めることで、彼らの秘密の取引を探ろうとする詮索好きな者たちを怯えさせて近寄らないようにさせるための海賊たちの陰謀であると信じる者たちもいる。賢者たちはこれらどちらの説も嘲笑しており、この湾の独特の色彩は、単にハングリー・フィッシュ川によって山から押し流されてきた鉄を含む堆積物のせいであると主張している。

クラブ川(蟹川)

Crab River
アメディオ・ジャングルのより大きな捕食者たちから――ある程度――切り離されており、クラブ川周辺の湿地帯の大部分は、その東側よりも安全であると考えられている。それゆえに、密輸業者、追放者、そして恐ろしい宗教団体の信者などが、この河岸に隠れ家を作っている。この川の名前にも関わらず、ザリガニやヤドカリの小さな個体群を除けば、この曲がりくねった流れには、それほど大きな種類の甲殻類は生息していない。地元の伝説によれば、信じ難いほど大きなチュールのようなクリーチャーが湿地帯の奥深くに巣を作っていると言われており、この川で誰かが謎めいた失踪を遂げた場合には、地元の民はすぐにそれが「オルレック・クローが彼らを連れ去った」と主張する。

エメラルド川(緑玉川)

Emerald River
エメラルド川は、ゆっくりと流れる川面に生える独特な形状の藻類からその名をとっている。河岸から鉱物を奪い取り、地獄炉山脈から流出してくるこの緑の植物は、遠くから見ると、まるで浮遊するエメラルド色の薄膜のように見える結晶質の層を形成する。非常に美しいものではあるが、この輝く藻類は、滑らかな鱗を持つクロコダイル、スネーク、フロッグ、そしてその他ありとあらゆる、その中に潜む巨大生物たちに完璧なカモフラージュを提供することになる。

地獄炉山脈

Hellfurnaces
火山性の不安定さ、極めて移ろいやすい様相、極寒の風、そして焼けつく溶岩の流れといったものが、この恐ろしい山地の特徴のすべてである。大方の生物にとってここは旅することが極度に困難な場所であり、生活するにはあまりに不毛な場所であるが、最も粗野で意志強固なクリーチャー――しばしば、焼けつくような高温や炎を好む者たち――は、この危険な高地において狩りを行なう。

ハングリー・フィッシュ川(飢魚川)

Hungry Fish River
密生したジャングルの広がりの中を流れ、タイガー川と合流し、鮮血湾に流れ込んでいるこのハングリー・フィッシュ川は、危険な動物がたくさおり――もっと悪いことには――この川の名前の由来ともなっている、その浅瀬に潜む凶悪なピラニアの群れが付け狙ってくるために、地元の人々からも避けられている。この超小型の魚は、群れを成して舷側から殺到することで、カヌー(丸木舟)やスキフ(1人用ボート)を転覆させる方法を知っているという噂がある。

ジェクリー湾

Jeklea Bay
一方では地獄炉山脈によって、もう一方ではフック半島によって青空海から切り離されている海域であるこのジェクリー湾は、緋色団によって画策された政府の混乱と暗殺によって無政府状態に陥るまでは、長年シー・プリンス国の支配下にあった。現在は自治権を持っているサザリン市は、この地域の中心的な権力として存在感を示し始めているが、いまだに、南方の肥沃で資源豊富なジャングルを確保するために、頻繁にこの海岸沿いを緋色団の船団が航行している。この湾の形状のおかげで、穏やかな波が、海岸沿いを反時計回りに流れおり、商人、密輸業者、そして奴隷商人の船の水路をはかどらせており、彼らによるアメディオにおける植民地の急速な再建に拍車をかけている。

クラーケン入江

Kraken's Cove
伝説的なクラーケン、ガルロッサによって守護されているという噂があるこの入江は、神秘のベールに包まれている。岩がちな崖の中に暗い断片として僅かに見えている、ここにあるすべての安全な港は、幅広い帯状の暗礁、岩、そして場合によっては、マストの先端だけが波間から顔を覗かせているような難破船によって、湾の他の部分から遮断されている。

スカイフロス川(空泡川)

Skyfroth River
地獄炉山脈から轟音を立てて流れ下り、激しく滝のように墜落し、容赦ない速さで走り抜けるという表現が、この泡立つ白い流れにぴったりである。2つの最大規模の滝、クラッシュウォーター(サンダー川から5マイル地点)とジェレイダーズ・リープ(サンダー川から10マイル地点)とによって、この水路は商業や旅のために使用するには役に立たないものとなっている。しかしそれだからこそ、“咆哮道の話者”と呼ばれるモンクたちの半永久的な野営地が、この2つの大滝の間に無数に存在する、より小さな滝や崖面の洞穴といった場所に存在している。

サンダー川(雷川)

Thunder River
サンダー川は、サザリン市で発達している製材業にとっての活力源である。レイキン城の南の密生したジャングルの上流では、樹木伐採人がとてつもない数の異国風の堅木を伐り倒し、枝を払って丸太にして川を遡行させて、製材所や船積みのために下流のサザリン市まで運ばれる。その道中、この丸太は勇敢で向こう見ずなログライダー(丸太乗り)たちによって面倒を見られる。彼らは大雑把に縛られた丸太の集まりの上に平衡をとって乗り、長い槍を使って流れが詰まってしまうのを防いだり、利害関係のある伐採業者たちから船団を護衛したりするために、30マイル以上の行程を旅する。樹木伐採人たちとログライダーたちへの賃金はどちらも高いものである。彼らの仕事には、仕事本来の危険に加えて、リザードフォークや川のモンスターたち、そしてこの川の名前の由来ともなった容赦ない早瀬や滝を見逃さないように注意しなければならないためだ。

タイガー川(虎川)

Tiger River
タイガー(虎)やその他の大型の捕食動物たちがこのアメディオ・ジャングルの東側一帯に棲息しているが、タイガー川はその水棲動物の残忍性からその名を取っている。この川は希少な淡水種のシーキャットが少数生息していることで最も良く知られている。この熱帯種魔獣の光り輝く鱗と皮革は高額で取引されるため、とてつもない利益をもたらすものとしてこの水棲種の大型猫が狩りの対象となる原因となっている。


最終更新:2017年03月11日 19:16