種族:ケンク

Kenku
我々が発見した地図はこの都市の廃墟となった区画のど真ん中に神官王の宝物庫への入り口があることを示していた。我々は問題なく目的地に近付いて行ったが、焼け落ちた建物に到着すると、突如周囲で不協和音が鳴り響いた。鳥がガアガア鳴き、猫はシャーっと叫び、犬はウーと唸りを上げた。リダは我々を都市の安全そうな通りへと下がらせた。衛兵たちが巡回している地域の中まで我々が下がったときにようやく、彼女はあの騒音が翼を持たない民があの領域を縄張りにしていることを示し、通過することは死を招く可能性があるものだと説明した。
――ギンブル、『宝探しの記録』

彼らの翼を奪われる原因となった古代の犯罪に悩まされているケンクは、人間社会の辺縁部で生活する浮浪者や強盗として世界をさまよっている。ケンクは全員が当てはまる訳ではない、不吉な評判を被っている。


古代の呪い

An Ancient Curse
かつてケンクは、他の次元界にいる、ある神秘的で強力な存在に仕えていた。一部の者が信じるところでは、彼らはグラッズドの手先であったとのことだが、また別の者が言う所では、彼らはアーカのウィンド・デュークに代わって斥候や探検家の役割を果たしていたと言う。真実が何であれ、伝説によれば、ケンクは彼らの主人を裏切った。美しく輝きを放つ宝物の誘惑に抵抗しかねたケンクは、秘かにその品物を盗み出し、物質界に逃げ出す計画を練った。
ケンクにとっては残念なことに、彼らの主人は彼らがその計画を実行する前にそれに気付いてしまった。腹を立てたその存在は彼らに3つの恐るべき呪いをかけた。第一に、ケンクの自慢の翼を萎びさせて彼らの体から奪い取り、彼らを地上に縛り付けた。第二に、彼らの発明の才と技能の腕前が囚人への反乱を企てる原因となったため、彼らの魂から創造力のひらめきを奪い取った。最後に、ケンクたちが二度といかなる秘密をも漏らすことができないようにするために、彼らの主人は彼らの声を奪い去った。この存在が、彼らが十分な罰を受けたと満足したとき、ケンクは物質界に追放された。
それ以来、ケンクはこの世界をさまよっている。彼らは受け入れてくれる場所に住みついている。通常は苦難に喘ぎ、犯罪が横行している、もの寂しい都市だ。


空を飛ぶ夢

Dreams of Flight
他の何にも増して、ケンクは飛行能力を取り戻したいと願っている。あらゆるケンクは空に飛び立ちたいという願望を抱いて生まれ、呪文発動を学ぶ者たちは、飛行できるようにしてくれる呪文を体得したいという希望を持って、それらを学ぶ。空飛ぶ絨毯や、飛行を可能にする箒、あるいはそれに類した物品といった魔法のアイテムの噂は、ケンクにそうしたアイテムを自分のものにしたいという強烈な欲求をかき立てる。
翼を持たないにも関わらず、ケンクは塔やその他の高い建物に居住することが大好きである。彼らは空まで届く廃墟を探し求めるが、彼ら自身はそうした場所を修繕したり、補強したりするような意欲も創造性も持ち合わせていない。それでもなお、彼らの軽い体重と体格のおかげで、人間やオークにはふさわしくない、崩壊寸前のガタのきた建物に居住することが可能となっている。
一部の盗賊ギルドはケンクを見張りやメッセンジャーとして使っている。ケンクはギルドが支配している最も高い建物や塔に居住し、最も高い階層に潜み下の町を見張り続けることが許されている。


救いようのない模倣家

Hopeless Plagiarists
創造性が欠如していることにより、ケンクは強力な主人の手下として最適である。鳥群のリーダーは訓練と抗争の最小化を執行するが、効果的な計画を練ったり、長期的な計画を立てたりすることは失敗する。
彼自身の言葉を話すことはできないものの、ケンクは耳にしたことがあるあらゆる音を、それこそハーフリングの声から丘の斜面を転がり落ちてくる岩の音まで、完璧に模倣することができる。しかしながら、ケンクは新しい音を生み出すことはできず、彼らが聞いたことがある音を使ってしか意思疎通を行うことができない。大部分のケンクは、彼らの意見や考えを伝えるために、立ち聞きした言い回しと擬音を組み合わせて使う。
同じ理由で、ケンクは新しい概念を発明したり、新しい物事を生み出したりする能力を持たない。ケンクは素晴らしい技能によって既存の品物を複製することができ、それによって素晴らしい職人や書記になることができる。彼らは本を複製したり、物品のレプリカを作ったり、その他、均質な品物を大量に製造することができる状況では成功をおさめることができる。この仕事に満足を覚えるケンクはごく少ない。なぜなら、彼らの飛行の自由への探求は、決まり切った仕事をするために定住するのにふさわしくないからだ。


理想的な手先

Ideal Minions
ケンクは鳥群と呼ばれるグループを作っている。鳥群は最も年を重ね、最も経験を積んでおり、引き出す知識の蓄えが最も広いケンク、しばしば“マスター”と呼ばれる者によって率いられている。
ケンクは新しい物事を生み出すことはできないが、詳細に学び、細部を記憶することについて才能を有している。それゆえ、野心的なケンクは素晴らしいスパイや斥候として衆に抜きんでることができる。他のクリーチャーによって発案された抜け目ない計画と策謀を学んだケンクはそれらを利用することができる。ケンクには策を即興で作ったり、変えたりする才能はないが、賢い“マスター”は同時に複数の策を動かし、手下たちが言われた通り命令に従うことができる確信を得るようにする。
こうした理由から、多くのケンクは盗賊ギルド、山賊、そのほかの犯罪カルテルのメッセンジャー、スパイ、そして見張りとして仕えることで安楽な生活を得ている。ケンクのネットワークは街のあちこちを鳥の鳴き声やそれに類する物音で中継することができ、仲間たちに衛兵の見回りを警告したり、強盗の絶好の機会を知らせたりするのに使われる。
ケンクはあらゆる音を正確に模倣することができるため、彼らが運ぶメッセージは内容に不備が出たり、意味合いが変わってしまったりといった事があまり起こらない。人間のメッセンジャーは単語や語句を入れ替えてしまったり、何気なくメッセージを歪曲してしまったりするかもしれないが、ケンクは彼らが聞いたあらゆる内容の完璧な複製を伝える。


ケンクの冒険者

Kenku Adventurers
ケンクの冒険者は通常、重い損失に耐えきれなくなった鳥群の生き残りであるか、あるいは少数の例では犯罪で生きる生活にうんざりしたケンクである。こうしたケンクは仲間たちよりもずっと野心家でずっと大胆である。他の者たちであれば自力で飛行の秘密の捜し出す事に失敗するところを、魔法を体得するか、あるいは彼らの呪いの秘密を暴きだし、それを打ち破る方法を発見しようとする。
ケンクの冒険者は、彼らの比較的旺盛な独立心にも関わらず、なおも、模倣し従うべき仲間を探そうとする傾向を持つ。ケンクはその選んだ仲間の声と言葉を模倣するのを好む。


ケンクの名前

Kenku Names
ケンクはあらゆる音を模倣することができることから、彼らの名前は膨大な種類の雑音と成句から引き出される。ケンクの名前は男女間に差異は設けられず、3つの区分に分解される傾向がある。
ケンクの悪漢、戦士、そして無法者たちは武器によって生み出される雑音を採用する。たとえばメイスが鎧にぶち当たる時のガチャンという音や、骨が折れるときに発生する音などだ。ケンクではない者はこの雑音を描写することによってそのケンクについて言及する。この種の名前の例としては、スマッシャー(砕くもの)、クランガー(ガチャンと鳴らすもの)、スライサー(薄切りするもの)、バッシャー(ぶちのめすもの)などがある。
ケンクの盗賊、詐欺師、そして追い剥ぎは動物の雑音、一般的には都市環境で一般的な動物のものを採用する。この種のものでは、ケンクはそれを立ち聞いた者が普通の動物が立てた音だと勘違いさせつつ、お互いに呼び掛けることができる。ケンクではない者は作られた音や、ケンクが模倣する動物を言及する名前を用いる。たとえばラット・スクラッチ(鼠の引っかき音)、ウィスラー(笛鳴き鳥)、マウザー(鼠取り)、グロウラー(唸るもの)などだ。
一部のケンクは犯罪から足を洗い、合法的な交易を行うようになる。これらのケンクは彼らの職能の一部として生み出される雑音を採用する。船乗りはバタバタとはためく帆の音を模倣し、その一方で鍛冶師は金属に打ち付けるハンマーのガチンガチンいう音を模倣する。ケンクではない者はこれらの民を彼らの交易品の音によって描写する。たとえばセイル・スナップ(帆のはためき)、ハンマラー(槌を打つもの)、カッター(切るもの)などだ。


ケンクの種族的特徴

Kenku Traits
ケンクのキャラクターは下記の種族的特徴を有する。

能力値上昇

君の【敏捷力】の値は2、【判断力】の値は1上昇する。

年齢

ケンクの寿命は人間よりも短い。彼らはおよそ12歳で成年に達し、60歳まで生きることができる。

属性

ケンクは混沌のクリーチャーであり、約束を果たすということはめったになく、こそこそ秘密を保つことを大切にしている。彼らは概して混沌にして中立の見解を有している。

サイズ

ケンクは身長およそ5フィート、体重は90から120ポンドである。君のサイズは中型サイズである。

移動速度

君の基本歩行移動速度は30フィートである。

偽造の達人/Expert Forgery

君は他のクリーチャーの筆跡や作品を模倣することができる。君は偽造物を作り出すためや、既存の物品の複製を作り出すために行う全ての判定に“優位”を得る。

ケンクの訓練/Kenku Training

君は下記の技能の内2つを選んで習熟する:〈隠密〉、〈軽業〉、〈手先の早業〉、〈ペテン〉。

ものまね/Mimicry

君は声も含めて、聞いたことがある音を模倣できる。君が発した音を聞いたクリーチャーは、君の【魅力】〈ペテン〉判定との対抗【判断力】〈看破〉判定に勝利することでそれが模倣に過ぎないことを知ることができる。

言語

君は共通語と風界語を読み、書くことができるが、喋ることは“ものまね”の特徴を使うことによってしかできない。


+ ケンクをロールプレイする
ケンクをロールプレイする
もし君がケンクをプレイしているのなら、絶え間なく騒音をものまねしようと試みることは、面白いというよりも、混乱を招き、イライラさせられるものとなるかもしれない。君は単に君のキャラクターが発する音とそれらが意味する所を説明するだけにすることができる。不可解で謎めいた様子を意図して狙っているのでなければ、君のキャラクターの意図についてははっきりとさせること。
君はこんな風に言ったら良いだろう。「スナッパーは金槌がゆっくりとリズミカルに石を叩くような音を立てて、彼がどれほど退屈しているかを表明します。彼はダガーを弄びながら、カウンターに座っている“領主同盟”のエージェントをじっくり観察します。」他のプレイヤーたちに暗号解読させるような騒音の語彙を作り出すのは楽しそうに思えるかもしれないが、それは混乱を招くものになること確実で、ゲームをスローダウンさせるものとなるだろう。


最終更新:2017年05月09日 21:34