Unearthed Arcana:未知なる神秘:軍勢ぶつかるとき(2015/3/2)

Unearthed Arcana: When Armies Clash

『Player’s Handbook』収載のD&Dの戦闘ルールは小規模グループの間の抗争―おそらくは3人~6人程度のキャラクターから成る冒険者パーティが1ダースを超えることはあまりない程度のクリーチャーと戦うような―をモデルにして設計されている。このスケールの戦闘は、まさに冒険者たちを焦点に当てたものである。
しかしながら、一部のD&Dキャンペーンでは、物語が何十あるいは何百ものモンスターと戦士たちが関わる戦闘によって動かされるということもありうる。ここで提供するルールは標準的な戦闘ルールを基にして、もっとずっと大規模な抗争を表現するために作られているが、それでも個人の冒険者が、敵連隊に突撃する軍勢を率いたり、意気消沈した兵士たちを乱戦の中に再び飛びこませるべく再結集をかけたり、あるいは強大な敵モンスターやリーダーを打ち破ったりといったことを可能にしている。
ほとんどの場合、軍勢がお互いに対立しているとき、片方の陣営の将軍をDMが務め、1人以上のプレイヤーが対立する陣営の将軍を務める。これらのリーダーは彼らの軍隊を構成する兵士たちに命令を与え、またテーブル上の全員が彼らの力だけで戦闘の流れを変え得る特別なチャンピオン(プレイヤー・キャラクターと重要なNPC)でもあるだろう。

戦闘員

The Combatants
このルールでは、軍隊の構成要素は同種類のクリーチャー10体を表現しているスタンドと、単独で行動することも、味方のスタンドに加わることもできる強力な個人であるソロである。スタンドは標準戦闘ルールにおける単体のクリーチャーとほとんど同じように行動し、独自のヒット・ポイント、セーヴィング・スロー、そして攻撃を持つ。
各陣営のスタンドとソロは、集合して数十体あるいは場合によっては何百体ものクリーチャーで構成されるユニットを構成する。ユニットは大抵の場合、そのメンバーの全員が毎ラウンド同じ戦略と戦術を用いることで、1つの存在として移動し攻撃を行なう。

ミニチュアとスケール

Miniatures and Scale
プレイの簡便さ、明瞭さ、そして戦闘解決のスピード性のために、このルールでは小規模戦闘で使用しているかもしれない方法と同じように、ミニチュアとグリッドの使用を前提としている。しかしながら、時間と距離はこのルールの下では若干異なる扱いになる。
時間
戦闘での各ラウンドは1分を表現している。
距離
1マスは各辺が20フィートを示す。
斜め方向
斜め方向に接するマス目(1つの角だけで接しているマス目)は隣接しているとは見なされない;お互いに相手から1マス 遠くに存在しているものとする。スタンドとソロは斜め方向に移動することができない。1つのマス目からもうひとつの間の距離を決定する際には、斜め方向には数えない。

スタンド

Stands
スタンドは一体の存在として移動し戦闘を行なう同等のクリーチャー10体で構成される。超大型サイズかそれよりも小さいクリーチャーだけがスタンドを構成することができる。巨大サイズのクリーチャーは常に個人として戦闘を行なう;この項の後述になる「ソロ」参照。
接敵面
1スタンドのクリーチャーは、1体のクリーチャーが4フィート・マスのグリッドを占めるのと同じように20フィート・マスのグリッドを占有する。
クリーチャー・サイズ マス目
中型サイズかそれ以下 1マス
大型サイズ 2マス×2マス
超大型サイズ 3マス×3マス
データ
スタンドはそのスタンド内にいるクリーチャーのデータと特殊能力、たとえばアーマー・クラス、ヒット・ポイント、攻撃とダメージ能力などを使用する。
移動速度
スタンドの移動速度はマス目で数え、それは個々のクリーチャーの移動速度を5で割ったものに等しい。たとえば、ホブゴブリンのスタンド(個々では移動速度30フィート)は6マスの移動速度を持つ。


ユニット

Units
ユニットはスタンドが一体として戦い、行動する単一の団結した集団として組織化された集団である。ユニットは異なる種類のクリーチャーのスタンド、たとえばオークとオーガなどを含むことができる。ユニットは任意の数のスタンドを持つことができる。
スタンドは2つの異なる種類のユニットに集合することができる:遊撃隊連隊である。一般的に、遊撃隊は軽めの鎧を着用し斥候任務に焦点を当てており、その一方で連隊は攻撃や戦場における拠点防衛に焦点を当てている。ユニットの種類は戦闘開始前に設定されるものであり、いったん戦闘が進行し始めたなら変更することはできない。
遊撃隊:遊撃隊ユニットはゆるやかに組織化されている。彼らは素早く移動すること、ヒットエンドラン攻撃を行なうこと、そして主力部隊に先駆けて斥候任務を行なうことに秀でている。
遊撃隊ユニットは下記の特性を持つ:
  • このユニットの全てのスタンドは【敏捷力】セーヴィング・スローに“優位”を得る。
  • 遊撃隊ユニットはイニシアチブを決定する際にその構成要素のスタンドの中の最も高い【敏捷力】修正値を使用する。
  • ユニットは“隠れ身”アクションを取ることができる(下記の「戦闘アクション」参照)。
  • 味方のスタンドは遊撃隊のスタンドのいるマス目を通過して移動することができるが、その場所の中でターンを終えることはできない。
  • 味方のソロは遊撃隊のスタンドのマス目を通過して移動することができるが、そのスタンドに参加するアクションを使用するのでない限り、その場所の中でターンを終えることはできない。
  • 遊撃隊スタンドはその移動の一部を使い、アクションを取り、その後その移動を再開して終えることができる。
  • 孤立化することを防ぐために(下記の「ユニットの統合性」参照)、遊撃隊ユニット内の各スタンドはターンの終了時にそのユニットの他のスタンドから2マスよりも離れた場所にいてはならない。

連隊
連隊ユニットは厳格な隊列を組んで移動し、がっちりした隊形を形成している。彼らは遊撃隊ユニットよりも移動はゆっくりであるが、連隊は強力な攻撃を与え、戦場の重要拠点を保持したりすることに優れている。
隊列:連隊ユニットは、3つの隊列のうち、その将軍によって選択された1つの隊形で戦闘を開始し、戦闘中に3つの隊形の間で隊列を変更することができる。下記「隊列」の項参照。
連隊ユニットは下記の特性を持つ:
  • 連隊ユニットはイニシアチブを決定する際にその構成要素のスタンドの中の最も低い【敏捷力】修正値を使用する。
  • このユニットは“隊列結成”アクションを取ることができる(下記「戦闘アクション」参照)。
  • 味方のスタンドは連隊ユニットのスタンドのいる場所に入ったり、通過して移動したりできない。
  • 味方のソロはそのスタンドに参加するアクションを使用する場合に限り、連隊ユニットのスタンドのいる場所の中に移動することができる。
  • 孤立化することを防ぐために(下記の「ユニットの統合性」参照)、連隊ユニット内の各スタンドはターンの終了時に、そのユニットの中の少なくとも1つの他のスタンドと隣接していなければならない。


ソロ

Solos
ソロは戦場における重要なクリーチャーである―通常はプレイヤー・キャラクターや強力なNPCやモンスターである。
ソロは下記の特性を持つ:
  • ソロは無所属になることができ、戦場で独自に移動し行動することもできるし、あるいは“参加”アクション(下記「戦闘アクション」参照)を使ってスタンドやユニットに自分自身を所属させることもできる。
  • 無所属のソロは味方の遊撃隊スタンドのマス目を通過して移動することができるが、同じターンにそのスタンドに参加するためにアクションを使用するのでない限り、その場所でターンを終了することはできない。
  • 無所属のソロは、同じターンにそのスタンドに参加するためにアクションを使用する場合にだけ、味方の連隊ユニットのマス目に入る移動を行なうことができる。
  • スタンドに所属しているソロは指揮官になることができ、しばしばそうする。(次の項を参照)。
  • 1人のソロは戦場においてそのサイズのクリーチャーが構成するスタンドが占有するのと同じマス目を占有する。(巨大サイズのソロは4×4マスの接敵面を持つ。)
  • 孤立化することを防ぐために(下記の「ユニットの統合性」参照)、無所属のソロはターンの終了時に任意の味方スタンドから2マスよりも離れた場所にいてはならない。


指揮官

Commanders
指揮官は戦場形成において重要な役割を果たす。あらゆるプレイヤー・キャラクターが指揮官の役割を果たすことができ、DMが設定したNPCが指揮官になることができる。指揮官は常にソロであり、ソロはユニットの指揮官の役割を果たすにはスタンドに参加しなければならない。1つのユニットは1人の指揮官しか持てない;新しい指揮官が指揮を執る前に、現在の指揮官がその地位を退かなければならない。
そのユニットのスタンドの1つに参加しているなら、ソロはボーナス・アクションを使うことでユニットの指揮官になることができる。別のボーナス・アクションを使うことで、指揮官としての役割をやめることができる。またアクションを取ることができなくなったなら、もはや指揮官としての役割を果たさなくなる。
ボーナス・アクションとして、指揮官は下記の利益の1つをそのユニットに属するすべてのスタンドに適用することができる。

準備

Prepare
指揮官は難易度15の【魅力】〈威圧〉あるいは〈説得〉判定を行なうことで、そのユニットに警戒を高めるよう命じることができる。もし成功したなら、そのユニットは指揮官の次のターンの終了時まですべてのセーヴィング・スローに対して“優位”を得る。

煽動

Incite
指揮官は難易度15の【魅力】〈威圧〉あるいは〈説得〉判定を行なうことで、そのユニットの兵士たちにもっと頑張るよう奮起させようと試みることができる。もし成功したなら、そのユニットはその次のターンに行なう全ての攻撃ロールに“優位”を得る。

再結集

Rally
指揮官は部隊を再結集させることで、士気判定に失敗したことによる効果を覆し、それによって彼らに戦いを再開させることができる。下記「士気の確認」参照。

ユニットの統合性

Unit Integrity
もしユニットの構成要素が戦場であまりに広がり分散したなら、味方から孤立化したスタンドとソロは敵によって圧倒される危険に晒される。
孤立化したスタンドやソロは孤立化が解けるまで攻撃ロールに“不利”を受ける。
孤立化したスタンドやソロが攻撃を受ける際には、攻撃者はその攻撃ロールに“優位”を得る。もしその攻撃が命中したなら、それは2倍のダメージを与える。
連隊
連隊ユニット内のスタンドは、そのユニットの別のスタンドと隣接していないなら孤立化する。
遊撃隊
遊撃隊内のスタンドは、そのユニットの別のスタンドから2マスより離れると孤立化する。
ソロ
無所属のソロはそのスタンドのユニットに関わらず、任意の味方スタンドから2マスより離れると孤立化する。

地形

Terrain
地形はほとんどの大規模戦闘における重要な要素である―戦場における味方とできるか、兵士に対抗するものとなるかに関わらず、それ自体が戦闘要素と考える必要があるくらいに重要である。
戦場の各マス目は下記の地形特性を有する。マス目が同時に移動困難地形でもあるかもしれないし、地形のうちいくつかの種類は、その説明に記載されている通り、常に移動困難である。DMは移動困難地形のマス目に印を付けておくべきである。
特性なし
特性なし地形は特別な利益や障害を何ももたらさない。瓦礫や荒れた地面に覆われた特性なしのマス目は移動困難地形である。
道路
もしスタンドの移動の最後のマス目が道路のマス目の中になったなら、そのスタンドは残りの移動速度に関わりなく、もう1マス移動することができる。“破壊”の目標として狙われて破壊されたのでない限り、道路のマス目は決して移動困難地形にはならない。(下記「目標を作る」参照)。
森林
森林のマス目にいるスタンドは、すべての攻撃に対して1/2遮蔽を得る。森林は常に移動困難地形である。
水域
水域のマス目は深い水域と浅い水域のどちらかである。浅い水域は移動困難地形である。水泳移動速度を持つクリーチャーで構成されたスタンドか、水泳移動速度を持つソロだけが、深い水域に入ることができる。
高地
水域以外のあらゆる地形が、同時にこの追加の特性を持つことができる。高地の地形には、より低い高度の近接マス目と比較した、相対的な高度を示す数値(20フィートの倍数単位)が与えられる。高地にいるスタンドかソロは、より低い高度にいる目標に対して行なう近接攻撃ロールに“優位”を得る。
より高い地形に入るための移動には、そのスタンドかソロが現在いる位置と、目的地となるマス目の間の高度差20フィートにつき1マス分の余分な移動コストを要する。
もしより高い地形が同時に移動困難地形でもあるなら、そこに入るためのコストは2倍になる。


戦闘の手順

Combat Procedure
集団戦闘における戦闘の手順は、標準のルールと概略において非常によく似ているが、1ラウンドの間に行なわれる行動が順次的に行なわれるのではなく、同時に行なわれる点が異なる。その他の相違点はこの項で概説する。また、集団戦闘におけるユニットは下記に説明されているような新しいアクションを利用することができる。

戦闘の準備

Setting up the Fight
当然、アクションを始める前に、対立しあう軍隊が戦場に配置されなければならない。この活動を行なう前と行なっている間に、いくつかの決定を行なう必要がある:
  • スタンドはユニットに組織化されていなければならず、これらのユニットは遊撃隊か連隊のどちらかに設定される。
  • 各連隊は3つの隊形のうち1つで開始されなければならない(下記「隊列」参照)。
  • 各ソロは無所属かスタンドに参加しているかのどちらかで開始されなければならない。スタンドに所属しているソロは戦闘開始前に“参加”アクションを取っているものと見なされるため、その最初のターンに別のアクションを取ることができる。
  • スタンドに参加しているソロは指揮官に設定される資格がある。
陣営の記録に関して若干の推奨事項がある。どのスタンドがどのユニットに所属するのかのリストを作成することで、スタンドが孤立化するときや、ユニットが崩壊するかもしれないときを判断できるようにしておくのだ(下記「士気の確認」参照)。
これらの作業すべてを慎重に行なった後で、戦闘開始のときがやって来る。

イニシアチブ

Initiative
各ユニットはそのスタンドの中で最も高いか最も低い【敏捷力】修正値(そのユニットが遊撃隊であるか連隊であるかによって決まる)を使用してイニシアチブをロールする。これにはそのターンの開始時にユニットの所属していたソロも含まれる(下記「参加」参照)。
またDMは、戦闘開始時の状況に基づいて、一部のユニットや無所属のソロが不意討ちを受けたと裁定するかもしれない。

移動

Movement
ユニットのターンにおいて、そのユニットに属する各スタンドは、そのユニットの種類毎のルールに従って、移動速度に応じたマス目の数だけ移動することができる。遊撃隊のユニットはその移動の一部を使用して、アクションを取り、その後残りの移動を続けることができる。
他のスタンドに隣接する
このルールでは機会攻撃は存在しない。代わりに、スタンドはいったん敵スタンドと隣接すると、“撤退”アクションを取らない限り、移動できなくなる。この制限はそのユニットに属する他のスタンドが通常通りに移動することを妨害したりはしない―敵スタンドに隣接しているスタンドにだけ適用されるのである。
戦場から敗走する
もしスタンドが意図してにせよ、意図せずにせよ、グリッドで示されているエリアの外へ移動したなら、それは戦場から敗走したものと見なされ、排除される。

戦闘アクション

Battle Actions
このルールにおける戦闘の1ラウンドは、1分間の戦闘の総合的な結果を表現している。
ユニットのターンにおいて、そのユニットのアクション1つを選ぶこと。そのユニットの個々のスタンドがそれぞれにそのアクションを取るか、何もアクションを取らないかする。他に特記事項がない限り(下記「呪文の発動」参照)、同じユニット内のスタンドは異なるアクションを取ることはできない。

攻撃

Attack
ユニット間の攻撃は、ここに説明されている点を除き、標準の戦闘ルールと同じように行なわれる。
“攻撃”アクションを取ったユニットは1つ以上の他のユニットと戦い、各スタンドは個別に攻撃を行なう。ユニット内の各スタンドは他の目標スタンドに対してその攻撃を向ける。スタンドはその構成要素のクリーチャーと全く同じように攻撃を行なう。たとえば、クリーチャーが“複数回攻撃”能力を持つのであれば、それらのクリーチャーで構成されるスタンドも同様の能力を持つ。その能力に基づいて、異なるスタンドは異なる攻撃形態を選ぶことができる。たとえば、オークのスタンドはグレートアックスによる近接攻撃を行ない、その一方で同じユニット内の別のオークのスタンドはジャヴェリンで遠隔攻撃を行なうことができる。
フィート単位で表現される遠隔効果を生み出すモンスターの能力については、スタンドの移動速度を計算するための同じルールを使い、その距離を5で割ってマス目単位に変換すること。たとえば、ミノタウロスの“突撃”は目標を10フィートまで押しやることができる。したがって、ミノタウロスのスタンドは敵スタンドを2マスまで押しやることができる。
標準の戦闘ルールと同じようにスタンドの攻撃とダメージをロールし、ダメージを目標スタンドのヒット・ポイントに対して適用すること。
近接攻撃
近接攻撃を行なうスタンドは隣接するマス目にいる1つのスタンドか1体のソロを目標としなければならない。
間合いの長い武器
その近接攻撃で10フィートかそれ以上の間合いを持つスタンドは“攻撃”アクションの一部として1回のボーナス攻撃を行なう。この利益はスタンドが攻撃を行なうときにメンバーがより多くの相手を攻撃できる点を表現したものである。
遠隔攻撃
通常通りに射程を決定すること(各マス目の一辺が20フィートであることを思い出すこと)。もし攻撃の射程が最低でもあるマス目に10フィート延びているなら、その攻撃はその升目に対して完全に効果を及ぼす。同様に、たとえ攻撃の射程が20フィート未満であっても、隣接するマス目にいるスタンドやソロを目標とすることはできる。

呪文の発動

Cast a Spell
このルールでの呪文の効果を、その呪文が目標を定める必要があるのか、それとも効果範囲を覆うものであるかに応じて、またそれをスタンドに対して発動するのか、あるいはソロに対して発動するのかに応じて、決定すること。
もしユニットが呪文を発動することができるスタンドと、できないスタンドを有しているなら、呪文を発動できないスタンドは、代わりに彼らに選択することが通常許されている任意のアクションを取ることができる。
距離
武器による遠隔攻撃の場合と同じように、呪文の距離を決定すること(上記参照)。もし呪文の距離が最低でもマス目の中に10フィート延びているなら、その攻撃はそのマス目全体に対して有効である。同様に、たとえ呪文の距離が20フィート未満であっても、呪文は隣接するマス目にいるスタンドやソロを目標とすることができる。
目標型の呪文
呪文が目標を必要とするなら、術者のスタンドは距離内の他のスタンドを目標にすることができる。複数クリーチャーを目標にする呪文はそれが目標にすることができるクリーチャーの数毎に1つのスタンドか無所属のソロ1体に効果を与えることができる。
孤立化したソロに対してスタンドが攻撃ロールを必要とする呪文については、そのスタンドは攻撃ロールに“優位”を得て、さらに呪文のダメージは2倍になる。もしその呪文がセーヴィング・スローを許可するものであるなら、ソロはそのセーヴィング・スローに“不利”を受け、セーヴィング・スローに失敗すると2倍のダメージを受ける。
ソロは他のソロに対して目標型の呪文を発動することができ、その呪文に関する通常のルールに従う。そうした呪文は、通常5体以上のクリーチャーを目標とする場合にだけスタンドに有効である。
効果範囲
効果範囲を持つ呪文はその範囲にいるすべてのスタンドに効果を及ぼす。もしその効果範囲がスタンドが占有しているマス目すべてを含めないのであれば、その呪文はそのスタンドに対して半分のダメージを与えるか(それがダメージを与えるものであるなら)、何の効果も持たないかのどちらかである。
もしスタンドがそうした呪文を発動したなら、すべての術者が同じ効果範囲を狙って使用したものと見なす。目標は通常通りにセーヴィング・スローを行なうが、その呪文からは2倍のダメージを受ける。ソロは効果範囲内にいるソロやスタンドに対して通常通りに効果範囲型の呪文を発動する。
もし効果範囲型の呪文が“自身”の距離を持つなら、その起点は術者のマス目の辺のひとつの中心点となる。もしその呪文に他の任意の距離があるなら、その起点までの距離は術者のマス目の辺のひとつの中心点を開始点として勘定する。
円錐
戦場における円錐の長さは20フィートごとに1マスである。最初の1つ目より後の効果範囲の各マス目は起点に最も近いマス目に隣接していなければならない。円錐は起点から遠ざかれば遠ざかるほど幅が広くなる。その長さに沿った任意の地点での円錐の広さは、そのマス目と起点の間のマス目の数に等しい。可能な限り均等になるよう円錐の両側に長さ分だけマス目を加えること。
立方体、円筒、球形
戦場における立方体の寸法や円筒の半径や、球形は20フィート毎に1マスである。起点を含むマス目を超えた効果範囲のあらゆるマス目は起点の1マス以内になければならない。もし効果範囲がそれらのマス目をさらに超えているなら、追加のマス目それぞれは起点のマス目の2マス以内でなければならない。
直線
戦場における直線の長さは20フィート毎に1マスである。最初の1マスを超えた効果範囲の各マス目は起点に最も近いマス目に隣接していなければならない。

隊列結成(連隊に限定)

Configure (Regiments only)
連隊は下記の隊列の1つで戦闘を開始する。再度このアクションを取るまでは選択した隊列であり続ける。
援護
援護隊形のユニットが近接攻撃を行なうために“攻撃”アクションを使うとき、そのユニットに属する個々のスタンドは他のスタンドの近接攻撃を支援するために彼らの攻撃を差し控えることができる。そのようにしたスタンドはそのユニット内の隣接する1つのスタンドによって行なわれる近接攻撃ロールに“優位”を与える。スタンドはそれ自体の攻撃を行なうことができる目標を持っていないとしても、この方法で“優位”を与えることができる(負傷兵の代わりを前線に送り出したり、反撃にさらされた側面をカバーしたり、遠隔射撃によって敵を撹乱したりといったことを表現している)。
援護隊形を取っているユニットは、そのメンバーの一部が前進するだけでなく、隊列内を縦横に移動していることを反映させるために、半分の移動速度(必要なら端数切り捨て)で移動する。
防衛
ユニットが防衛隊形を取っているとき、その連隊に所属するすべてのスタンドはACに+2のボーナスを得る。この隊形を取っている間、ユニットは“攻撃”アクションを使うことができない。
防衛隊形のユニットは、そのメンバーが前進することではなく、自分たちの身を守ることに集中していることを反映させるために、半分の移動速度(必要なら端数切り捨て)で移動する。
行軍
行軍隊形の連隊はその完全な移動速度で移動する。

疾走

Dash
“疾走”アクションを取るユニットは通常の移動速度にその移動速度に等しいボーナスを得る。
援護や防衛の隊形を取って“疾走”アクションを取る連隊は、そのターンに完全な移動速度(半分の移動速度ではなく)で移動できる。

隠れ身(遊撃隊とソロに限定)

Hide (Skirmishers and solos only)
このアクションを取ることは、標準の戦闘ルールに従う。隠れようとしているユニット内の各スタンドについて【敏捷力】〈隠密〉判定を行なう。視認困難な地形や、照明の欠如といった状態によって、ユニット内の一部のスタンドは隠れようと試みることができるが、別のスタンドはできないといったこともありうる。
隠れることができないスタンド(あるいはその試みをすることを選択しないスタンド)は、そのユニットの現在のターンの間他のいかなるアクションも取ることができない。

参加(ソロに限定)

Join (Solos only)
スタンドへの参加はソロ・クリーチャーに対してある程度の守備を与えるため、結果、孤立化によるペナルティを受ける危険がなくなる。
“参加”アクションを取るには、ソロはまず味方のスタンドのマス目に入る移動をしなければならない。その移動はその時点(入った時点)で中断される。その後、そのターンにおけるアクションとして、ソロは“参加”アクションを取り、そのスタンドの一部となる。
ソロがそのスタンドよりも1段階よりサイズ分類が大きい場合、ソロはそのスタンドに参加できない。この制限内であれば、何人のソロでも1つのスタンドに参加することができる。
戦場からソロを排除し、スタンドにその中にソロがいることを示す何らかの印を付けること。
ソロがスタンドに参加しているとき、呪文による目標とされることに関してはスタンドの一部と見なされるが、呪文に対するACとセーヴィング・スローは自分自身のものを維持し続ける。
スタンドが移動するとき、ソロは自動的にそれと一緒に移動する。そのターンにおいて、ソロは通常通りに自分のアクションを取るが、自分自身の移動を取ることはない。移動の代わりに、スタンドから抜ける(隣接する誰にも占有されていないマス目に入る)か、そのユニットの中の別の隣接するスタンドに即座に参加するかのどちらかができる。
もしそのスタンドが排除されたなら(下記「負傷部隊の排除」酸書)、そのスタンドに参加していたあらゆるソロは盤面に残される。新たな無所属のソロはそのユニットに属する隣接するスタンドに即座に参加するか、あるいは以前のスタンドが占有していたマス目を占有して無所属のままでいるかできる。

撤退

Retreat
このアクションを取ったユニットのあらゆるスタンドが、たとえターンを敵スタンドと隣接した状態で開始したあのであろうが、あるいは移動の途中で敵スタンドと隣接したのであろうが、移動することができる。

ダメージ

Damage
個々のクリーチャーに対する場合と同様に、スタンドのヒット・ポイントにダメージを適用する。もしスタンドがその現在のヒット・ポイントを超えるダメージを受けたなら、超えた分のダメージは、そのユニット内の同一性能を持つ隣接するスタンドがいるなら、そのスタンドに対して適用される。
1ラウンドに行なわれるアクションは同時に行なわれるものと見なすため、0ヒット・ポイントまで減少してもスタンドは即座に崩壊するわけではない。スタンドは負傷部隊となるが、そのラウンドの終了時まで盤面に残され、すでに現在のラウンドにおけるそのターンを取っているのでなければ、通常通りにアクションを取り(攻撃も含め)、移動する。そのスタンドはあたかも1ヒット・ポイントを残しているかのように扱われる。君はそのスタンドのミニチュアを横向きにするか、あるいは他の何らかの印を付けて負傷部隊であることを表現することができる。

ラウンドの終了

End of Round
標準のD&D戦闘ルールとは異なり、このルールには各戦闘ラウンドの終了時に若干の特殊な段階を踏む必要がある。
いったん戦闘に関わる全員がターンを取ったなら、全員が次のターンを取る前に、まず負傷部隊について確認し、それから士気を確認しなければならない。

負傷部隊の排除

Eliminate Casualties
ラウンドの終了時、すべての負傷部隊は排除される(戦場から取り除かれる)。スタンドが排除されたとき、そのユニットを指揮している人物は即座に隣接する味方スタンドを空いた場所に移動させるという選択肢を持つ。(部隊が戦線を維持するために移動するのだが、そうすることで別の場所に別の空隙ができることになる。)
ソロの排除
ダメージ、死、そして瀕死(プレイヤー・キャラクターの場合)に関してソロはすべて標準の戦闘ルールを使う。瀕死状態のソロはそのラウンドの終了時に最大10回の死亡セーヴを行ない、1回毎にその生死の運命を見定める。

士気の確認

Check Morale
死にたいと思っている兵士はほとんどいない。ユニットが甚大な損害を受けた後、生存者は戦う勇気を失うかもしれない。踏みとどまって戦うよりも、ユニットの生存者は逃げようと試みる。
もし任意の生存したユニットがその開始時点のスタンドの半数以上を失ったなら、そのユニットは即座に士気判定を行なわなければならない。士気判定は難易度10の【判断力】セーヴィング・スローであり、そのユニットを構成するスタンド(そのユニット内で生存しているスタンドに参加しているあらゆるソロも含める)の中で最も高い【判断力】修正値を用いる。
士気判定に失敗すると、ユニットは崩壊する。残りの戦闘の間、崩壊したユニットは“撤退”アクションしか取ることができなくなる。ユニットの移動する場所はDMが決定するが、敵ユニットから離れる安全な道を探さなければならない。
スタンドに参加しているか無所属であるかに関わらず、ソロは決して崩壊しない。崩壊したユニットと共に移動することもできるし、あるいは任意のターンの開始時に即座にそのユニットを離れることもできる。
再結集
崩壊したユニットに指揮官がいるなら、そのユニットはそのターンの開始時に再結集するチャンスがある。ユニットはその指揮官の【魅力】修正値に等しいボーナスを得て、難易度10の【判断力】セーヴィング・スローを再度行なう。もしセーヴに成功したなら、そのユニットは崩壊状態ではなくなる。そのターンを通常通りに取ることができる。


目標と勝利ポイント

Objectives and Victory Points
片方の軍隊がもう一方を全滅させるまで戦闘が続くことは稀である。片方がその目的を達した時点で、それ以上の戦闘が無益であると知るため、通常はその敵が戦場を退く。この項のルールは、それぞれの軍隊に適切な目的を与え、誰が勝者であるか決定する方法を提供することで、DMが大規模戦闘をキャンペーンに組み込む際の助けとなるようにデザインされている。
目標はなぜ2つの軍隊がぶつかり合っているのか、そしてその戦場で勝利とは何かを定める。『Dungeon Master’s Guide』第3章に説明されている遭遇の目標と同じように、戦闘の目標は過去にその伏線を張られていたり、その目的が与えられていたり、その結果が重要なものとなったりすることで、物語に根付くものである。
目標が戦闘の目的を与えるものである一方で、勝利ポイント(VP)は成功の度合いを測るものである。軍隊はその目標を達成することで勝利ポイントを獲得する。その得点が10勝利ポイント以上になったとき、軍隊は戦闘に勝利する。

目標を作る

Creating Objectives
目標は軍隊の基本的な目的を表現している。2つの対立する軍勢は同じ目標を持つかもしれないし(橋の奪取)、相反する目標を持つかもしれない(橋の破壊とそれの防衛)。場合によっては、2つの軍隊は無関係な目標を追っているかもしれない(捕虜になった指揮官の救出と要塞の防衛)。
戦闘場面を設定する際、目標を決定する際に下記の内容を考慮すること。
漸減
一方の陣営は単純に他方の陣営を消耗させようとしている。それぞれの敵ユニットを排除することで、この目標を持つ軍隊は、DMによって決められたように、また戦場にいるユニット数に応じて、何点かの勝利ポイントを獲得する。
破壊
軍隊は価値あるリソースを敵に与えないことを目指し、たとえば、川にかかる橋の破壊であるとか、そのままにしておけば侵略軍を養うことになりかねない作物を刈り取るなどである。
もしゲームでこの目標が掲げられるなら、DMは戦場のマス目のいくつかを、その価値あるリソースのある場所に選択し、そこの各マス目に10~100に相当するヒット・ポイントを割り当てる。スタンドやソロは目標のマス目に対して、敵を攻撃する場合と同じように攻撃することができる。マス目には近接攻撃は自動的に命中し、すべてのセーヴィング・スローは自動的に失敗する。呪文の場合、その効果範囲がそのマス目を完全に覆う場合にだけマス目はダメージを受ける。スタンドによって発動された目標型の呪文はマス目にダメージを与えるが、ソロによって発動されたものはダメージを与えない。
この目標を持つ軍隊は指定されたマス目を0ヒット・ポイントまで減少させることで勝利ポイントを獲得する。DMは各マス目に対して、その目標の重要性に応じて1~5点の勝利ポイントを割り当てる。
守備
この目標には重要拠点やリソースを攻撃者から防衛することが含まれる。これは常に上記の“破壊”の目標と同時に使用される。
各ラウンドの終了時に、この目標を持った軍隊は、その目標に2つ以上のスタンドが隣接しており、0ヒット・ポイントまで減少していないなら、また敵のスタンドやソロがその目標の2マス以内に存在しないなら、1勝利ポイントを得る。
目標をあつらえる
独自の目標を作る際には、その目的を達成するために軍隊が満足しなければならない特定の行動や、状態に対して、通常は1~5点のVPを単純に割り当てること。
独自の目標には指揮官の殺害や無力化、特定の境界が定まった範囲に敵軍隊を押しやる、あるいは特定の場所を占拠し保持し続ける、などが含まれるだろう。

目標を公平に割り当てる

Assigning Objectives Evenly
いったんその戦闘に関する目標が定まったなら、両方の軍隊がおおまかに同じだけの点数の勝利ポイントを獲得する機会があることを確認すること。多少の差異があっても問題ないが(すべての戦闘が公平な訳ではない)、勝利ポイントを獲得する方法をたくさん持っている軍隊は全体としての勝利を確保する可能性が高くなる点によく注意しておくこと。もし君が互角になるようにしたいなら、両陣営に同じ数の機会を与えるようにすること。
各軍隊が単一の特定の目標を持つ戦場では、この仕事は簡単である。たとえば、橋の破壊は10VPの価値があり、それを破壊させないことも10VPの価値がある。
ゲームに複数の目標が存在するもっと流動的な状況では、各陣営に少なくとも勝利ポイント獲得の機会を5つは与え、陣営毎に合計すれば10を超えるVPを割り当てておくこと(おおよそ12~15くらい)。この方法で目標とその報酬を分散させることで、指揮官には勝利と戦闘を柔軟に行なうためのいくつかの選択肢が与えられる。

戦闘の終了

Ending a Battle
片方の陣営がラウンド終了時に最低でも10VPを獲得したとき、戦闘は終了する。このとき、各陣営の勝利ポイントの合計を算出すること。
もし片方の陣営が他方よりも最低でも3VP以上多く有しているなら、完全な勝利を獲得する、戦闘で生き延びた敗者側のユニット1つにつき1回d20をロールする。10以上であれば、そのユニットは排除される;その生存者たちは逃げ散り、脱走する。
片方の陣営が他方より1か2VP多く有しているなら、勝者は戦術的な勝利を得る。敗者側はその残存する軍勢を残したまま戦場から退去し、両陣営とも負傷者の世話にあたる・・・おそらくは再びの開戦を計画するだろう。
もし両陣営ともに同じ勝利ポイントを持って戦闘が終了したなら、DMは戦闘は引き分けであったと宣言することもできるし、あるいは勝者を決するために軍隊はもう1ラウンド戦うこともできる。
目標が抗争活動をどのように特徴付けているかによって、戦闘で敗北した軍隊であっても、良い結果を持って立ち去ることができることもある。たとえプレイヤー・キャラクターたちが敗北した陣営で戦っていたとしても、彼らと彼らの軍隊がキャンペーンにおける戦略上の目標の何がしかを満足するのに必要な目標を達成できるということはありうる。


マイク・ミアルスはD&Dのリサーチ・アンド・デザイン・チームのマネージャーである。彼はD&D第5版におけるリード・デザイナーの1人であった。彼がクレジットに加わる他の作品としては、『Castle Ravenloft』ボード・ゲーム、第4版の『モンスター・マニュアル3』、そして第3版の『プレイヤーズ・ハンドブック2』が含まれる。


最終更新:2017年05月21日 12:23