地理:ファーショア

Farshore
“恐怖の島”は長い間、雑多な伝説に彩られてきた。探検家王の時代にまで遡るその存在についての物語は、新米水夫を驚かしたり、水際の港に住む子供たちを喜ばせたりするのに使われてきた。それでもごく最近まで、この島は神秘的な幻想に過ぎなかったが、高名なる探検家ローリィ・バルバロッサの航海日誌の発見の報がもたらされた時、危険を恐れない者たちの間で、その遥かなる陸地を探し出そうという情熱が燃え上がった。
ヴォーウン海の奥深くに隠れ、北方の文明地から何千マイルも離れており、バルバロッサの航海日誌を頼りに“恐怖の島”を発見せんとした者たちは皆、それがすこぶる困難な事業である事を思い知らされ多くの船がその志半ばで遭難した。これまで、すなわち、バルバロッサの最初の乗組員の1人であった、“狂人”マドセン・アター船長がその悪名高い船、モーニングスター号で再びその南の水域へと出航するまでは。その過程で、彼は“恐怖の島”への最初の正確な海図を描きあげたのだ。
アターに同行した者にラリッサ・アイオムンディという名前の、冒険心に富んだ若い女性がおり、彼女はその極めて貴重な地図の写しを所持するほんの数人の中の1人となった。“恐怖の島”への旅程に成功してサザリン市に戻った後、ラリッサは彼女が経験した不思議な光景やエキゾチックな場所の事を忘れることができなかった。数年が過ぎ、彼女がある貴族家に嫁いだ後、彼女は夫となったヴェリク・ヴァンデルボーレンに彼女の旅について話をし、2人は乱暴な計画を立てた。彼らは島に戻るだけでなく、島に移住し、植民地を建設しようとしたのである。
4年前、相当な準備を整えた後、ヴァンデルボーレン家はこの旅のために2隻の船を用意した。彼らは探検家、船乗り、そして入植者たちの乗組員を集め、マンサレイ・メラヴァンチ卿の協力を取り付けた。彼はアメディオ・ジャングル探検のベテランの1人で、放蕩癖という彼の一族の悪名を免れている数少ないメラヴァンチ家の一員である。骨の折れる航海の後、入植者たちはついに“恐怖の島”に到着した。バルバロッサの日記に記された不気味な物語に引き込まれた他の連中とは異なり、ヴァンデルボーレンの探検隊は、そこに生活する原住オーマン人たちを略奪したり搾取したりしようとはしなかった。代わりに、彼らはオーマン人たちの信頼と、不承不承ながらも尊敬を勝ち取り、少なくとも取引で彼らが取る分に相当するだけの見返りを与えたのである。多くの取引がなされた後、ヴァンデルボーレン家は7つの村の人々と協定を結んで、テムートの小島の25平方マイルの支配権を獲得し、そこに入植地を建設したのである。
テムート(“放棄された場所”)は、この群島における最初の北方人の真の入植地となった。その初めの尽力は非常に挑戦的なものであった。テムートは何年もの間オーマン人も住まない無人島であり、植民地建設の援助を得るためにオーマン人を口説き落とすことは困難であることが分かった。金属は不足していた。最終的に、ヴァンデルボーレン家は再度の補給部隊を組織するために、マンサレイ卿に植民地の経営を任せて、いったんサザリン市に戻ることを決意したのである。その船の内の1隻、マーキュリアル号は怪物のリヴァイアサンの攻撃を受けた後に海で行方不明となったが、ブルー・ニクシー号はやっとのことで無事サザリン市まで帰り着いたのであった。ひどい損傷を受けていたためそれを修理するのに数ヶ月を要したが、その後、別の問題が発生して、ヴァンデルボーレン家の2人が多量の補給物資と共にファーショアに戻ることができなくなった。彼らはセンディングなどの呪文によってマンサレイ卿と定期的に連絡を取っていたが、ある理由によって帰還の試みは失敗に終わったのである。帰りの船旅でブルー・ニクシー号と同行する新しい船を購入した直後、ヴァンデルボーレン家の2人に裏切りが待ち受けていたのである。その処女航海において、彼ら自身の息子ヴァンサスが、彼らと彼らの新しい船に火を点けて灰燼に帰したのである。
そのため、ファーショアはこの数年間を彼らだけで過ごすことになった。原住オーマン人の村人たちは北方人たちが作り出す驚嘆すべき品々に惹きつけられ、ファーショアの拡張と建設に力を貸し、彼らの新たな故郷についての多くの秘密を彼らに教えた。この島の本島の探検はよく行なわれたが、奥地を探検しようと試みた者たちの大半は戻ってくることがなかった。2年ほどでこの植民地はほぼ完成し、テムート島に苦心の末に共同体を設立したのである。可能性には溢れているが、さらなる補給が必要であり、現在、ファーショアは根気良くサザリン市からの多量の物資が届くのを待っている状況である。それによって、最終的にファーショアはヴァンデルボーレン家の2人が何年も前に心に描いていた自立した交易地となることができるであろう。

ファーショア概要

ファーショア(小村)
共和制(住民を代表する評議員と市長による統治)
人口 220人
(220人の人間、7人のハーフエルフ、6人のハーフリング、4人のドワーフ、3人のノーム)
防衛 村の成員による民兵隊

ファーショアの主要な権威

ファーショア市長候補ラヴィニア・ヴァンデルボーレン(中立にして善、女性の人間)ファーショア市長候補マンサレイ・メラヴァンチ卿(秩序にして中立、男性の人間)、評議員アルドワトル教授(混沌にして善、男性の人間)、牧師にして評議員ヴェサリン・キャサリー(中立にして善、男性のハーフエルフ)、評議員テルダ・サイレン(混沌にして善、女性のハーフエルフ)、評議員ウルヴァー・カバンジャ民兵隊長(秩序にして善、男性の人間)

ファーショアの現況(#05『恐怖の潮流』開始時点)

ファーショアは“恐怖の島”探検の出発地にして、物資をサザリン市へ輸出するための恒久的な根拠地として設立された。
入植者たちは、テムート島の西に面するヴェリクの入江と呼ぶ小さな港をその入植場所に選んだ。
なぜなら、そこは2つの天然の防潮堤があり、嵐と海からの襲撃に対する庇護を与えてくれているためである。
5人で構成される遠征評議会が入植地の関心事について毎週会合を開いていたが、ファーショアが発展するにしたがって、1人のリーダーを選ぶ必要が高まってきている。

この入植地はまだ発展途中であるが、建設は終わっている。
およそ60の建物が柵の内側に建てられており、主に現地の材料を使って、原住民たちとのバーター取引によって彼らの労働力を借りて建設された。
建造物は木造で、石は切り出すことが困難なため、入植地の雨水を蓄える井戸のためにだけ使われている。
建物はその大部分が1階建てで、周辺のジャングルから伐り出してきた木材を水平に隙間のないように組み合わせて作られている。
外装は、粘土、水、乾燥した草で作られた赤みを帯びたレンガで覆われており、建物の表面を滑らかにし、日中涼しく、夜暖かく保つようになっている。
屋根は暗赤色の瓦葺きで、瓦は町の中で焼かれている。

元々ファーショアは交易地として建設された。
ファーショアの海岸地区からヴェリクの入り江に向けて、様々な高さと長さを持つ、いくつもの短い木製の桟橋が突き出ており、波止場近くの長い倉庫群は貯蔵庫として使われている。
この入り江を囲んでいる崖からは石の突堤が伸びており、嵐や侵略からの防波堤となっている。

ファーショアには53の家族が暮らしており、その大部分は、かつてはサザリン市の住民であり、一か八かこの入植地に賭けてやってきた人々である。
またファーショアには、ごく少数のオーマン人原住民が半永久的な住居を建てているが、彼らの大部分は短期滞在の日雇い労働者や、周辺7ヶ村に住む交易商である。
この入植地の経済は、主に7ヶ村との交易によって維持されており、食料と衣類は現地で生産している。
漁労は日常的な活動であり、狩猟はテムート島や周辺の島々において豊富な獲物を獲られる。
原住民たちは、ファーショアにおいて真珠や貴重なサンゴを様々な産業製品と交換する。
珍しい木材、植物、香辛料がジャングルで採集され、将来北方へと出荷するために倉庫に蓄えられている。
全体として見ると、この入植地はサザリン市との交易路を確立することができさえすれば、非常に有望な将来性を持っている。

ラヴィニア・ヴァンデルボーレンのファーショアへの到着によって、この入植地における政治的状況は複雑なものとなる。
入植地の市民の3分の1はヴァンデルボーレンの家名に対して固い忠誠心を持つ支持者で、その嗣子が町に帰還したことを大いに喜ぶ。
また別の3分の1は、ヴァンデルボーレン家がこの入植地を見捨てていたのだと考えて大いに憤っており、マンサレイ・メラヴァンチ卿と、オーマン人の村のいくつかをサザリン市に併合しようという彼の計画の強力な支持者となっている。
残りの3分の1のファーショア市民はまだ態度を決していない。
PCたちが入植地に辿り着いたときには、すでに遠征評議会において、誰がファーショアの市長となるか決定するための選挙が計画されているところである。
ラヴィニア・ヴァンデルボーレンか、あるいはマンサレイ・メラヴァンチか。

最終更新:2018年08月08日 17:13