地理:旅の終わり

それについて、船乗りたちは“旅の終わり”と呼び、それについて話す際には押し殺した口調になる。
それはそのコレクションに加える新しい船を捜し続けて、海をさまよう浮かんだ墓場である。
船上の誰もこのサルガッソの到来には気づかない;それは、一面曇った空を隠れ蓑として、夜中に船へと迫る。
翌朝、乗組員たちは動揺させられるような光景に気づかされるのだ。
マザー・オヴ・オール(万物の母)のサルガッソ、これは“恐怖の島”へと向かう船舶が遭遇する中で最大の危険であると伝えられる。

シー・ワイヴァーン号の一等航海士アメラ・ヴェンカリーの日記からの抜粋

灰色の夜明けとともに、朝靄を通して断続的に光が海にさしこんでおり、何か水面下に奇妙なものがあるのが見えてきた。
それらはほとんど固体のように見え、あたかも海に奇妙な皮膜が張ったかのようだ。
風は死んだように凪ぎ、帆はだらりと垂れ下がり、遠のいた霧から漂う重い湿気が感じられた。
ついに霧が晴れ始め、姿を現したものは、穏やかに揺れる海の眺望ではなく、見渡す限りの海藻の緑色の平原であった。
その汚らしい緑は、あらゆる方向に向かって平らに広がっている。
船尾方向には、おそらく半マイルも伸びており、その向こうには嘲笑うかのような海の水が大きく広がっている。
それ以外のすべての方向には、地平線の彼方にまで海藻が広がっている。
この中には、はるか昔に捕らわれた船が何ダースも見受けられ、サルガッソから奇妙な角度でその船体を突き出し、マストはゆがみ、帆はぼろぼろに引き裂けて垂れている。
そうした船の中の1隻が左舷方向にわずか600フィートほどの場所で捕まっており、それ以外の船よりも良好な状態を保っているように見える。
しかしながらおそらく、最も狼狽させられた出来事は、その視界にはいるものでも、日に焦がされた海藻の臭いでもない。
その不自然なまでの静けさこそ恐ろしいものであり、シー・ワイヴァーン号を捕らえている分厚く密集した植物が、船体をひたひたと洗う水が起こす不思議と落ち着く音すらも消し去っているのだ。
これはまともな静けさではない、まるで墓場の静けさだ。
最終更新:2018年08月08日 15:36