ラリッサの日誌「ファナトンの生態」

ファナトンの生態
幸日月の第24日、CY593年
中央部のジャングル地帯をさまよい、この島の果てしないほどの多様性に富んだ植物相を分類するという手に負えない作業をしていたとき、私は奇妙な小型の霊長類の姿を捉えた。槍を持ち運んでおり、肩に鞄のようなものを提げており、地衣類に覆われた地面で茸を探し回っているように見えた。私の事には気付いていないようであったので、もっと近くで見ようと近づいてみた。
身長は2フィート弱、このクリーチャーはアライグマに似た外貌をしており、目の周りに黒い毛が密集し、尻尾には縞模様がついている。また、向かい合わせについた親指(訳注:人間と同じように物を掴むことができる手を持つという事)、物を掴むことができる尾といった、霊長類の仲間だと区別できる特徴を備えているが、奇妙なことに前足と後足の間に皮膚の膜が張っている(後日、これが木々の間を滑空するために使われるものであるのを目撃した)。
唐突にその目が私の目と合い、ほんの僅かな間、私はそのクリーチャーがこちらを詮索しているように見えたが、その直後、そいつは甲高く震える叫び声を上げた。ほとんど一瞬にして、もっとたくさんのそのクリーチャーが茂みから飛び出し、梢から落ちてきた―それこそ数え切れないほどに。私が何か行動を起こす前に、原始人が蔦で作った網を投げつけて私を捕らえ、棍棒や槍の柄で私を滅多打ちにし、ついに私は意識を失った。
目覚めたとき私の両手は後ろ手に縛られており、太古デクロ樹の大枝で支えられた木製の台に横たえられていた。どうやらジャングルの樹冠の高みに連れてこられたようで、食糧や調査ノートは私の隣に無造作に放り出されていた。周囲を見回すと、周囲の木々にはたくさんの同じような台が設えられているのが見え、蔦で縛って組んだだけの危なっかしい橋で繋がれ、また簡素な木製の小屋がいくつかあるのが見えた。彼らは村全体を木々の中に築いているのだ。私が意識を取り戻すと、近くの台の上から、小さな小屋の窓から、そして上の方の枝々の葉の間から、たくさんの小さな生き物たちが物珍しそうに私を見守っているのが感じられた。
私が落ち着いていると、その小さな生き物たちの中の1人(1匹?)が近づいてきて私の手の縛りを解いた。鮮やかな羽飾りを付けた独特の格好から、彼らのリーダーであろう。私は衝撃を受けた。柔らかなホーホーといった音や、奇妙に舌を鳴らす音で独特な言い回しに変化しているが、彼は粗野な森語を話したのだ。彼は非礼を詫び、彼の民が下の森の地面で薬草を収集しているところを私が驚かしたのだと説明した。彼は私の航海日誌を見つけ、私のドルイド的自然崇拝の事を知り、非常に申し訳ない誤解をしていたことに気付いたのだそうだ。その夜、彼らの善意のしるしとして、彼は私を村のご馳走と歓迎の宴に招待してくれた。
それから3日間、私はこの生き物たち―ファナトンという名前である事を知った―の下に滞在し、彼らの社会と文化について学んだ。私が立ち去るとき、ジャングルで私が最初に見つけた者、名前はハトイがガイドとして同行することを申し出てくれた―この生き物たちからの一種の和解の申し出だ。最初、ハトイは内気で用心深かったが、彼が私の航海日誌を見るようになったことで、彼との付き合いが始まった。彼は私のスケッチを気に入り、特に島の植物のものがお気に入りだった。彼はジャングルの植物相を分類することに非常に大きな価値を見出していたのだ。


最終更新:2017年09月30日 09:20