ラリッサの日誌「ロコ草の効能」

ロコ草の効能
豊穣祭の第7日、CY593年
ここ数日の間、私は島の北西の内陸湖近くで草を食んでいるアンキロサウルスの群れを観察している。この集団の中にいる1頭の雄が、とりわけ珍しい振る舞い、暴力的で非社会的な行動を示している。私はこれが単純に興奮したことによる行動であろうと考えていた。この出来事の間、群れの他の個体は彼を避けるべきことを知っていたようで、彼は届く範囲のあらゆるものに対して尻尾を振り回していた。彼が従順で、その植物の影響下にないときでさえ、群れの仲間や、その地にいる他の草食動物たちは、彼に十分なスペースを与え、彼の怒りのとばっちりを受けないようにしている。彼の傷だらけの向こう脛を見れば、最大級のディプロドクスですら彼を用心するに十分なようだ。
より多くの植物を食糧とするため、巨大な爬虫類にはより強力に作用したようで、その草が彼を極度に攻撃的にさせ、目に入るあらゆるものを攻撃するようにさせたようだ。この出来事の間、彼の遠近の感覚は狂っていたようで、昨日、彼が向こう見ずにもジャングルの木の幹に突撃を敢行しているのを発見した。彼は怒りに任せて30本以上の木々を薙ぎ倒し、そのままジャングルの中へと消え去って行った。
およそ2時間後、麻薬の効果が切れ始めた。かの個体は空腹、倦怠感、そして刺激への過敏性を失ったようである;これまで、その植物の効果で走り回った後、彼はどこででも卒倒していたものだった。彼がぐっすりと寝込むと、群れは再び日常的な草食みを始めた。
このアンキロサウルスはある植物への肉体的中毒を示しており、群れの他のメンバーに避けられていた。その草の繁茂している場所を見つけることができない時には、彼は極度のうつ状態になるが、彼がこのグループのはぐれ者になるその振る舞いこそが、社会的な拒絶を受けた理由なのであろう。
この草について原住民のパニトゥベ族に尋ねると、あたかも何か身内にだけ分かるジョークか何かのように、彼らは互いに顔を見合わせてにんまり笑った。それは彼らがそれの事を良く知っていると分かる態度だった。ふと彼らの1人が、それのことを“クアロコ・ツァカトゥル”と呼んでいるのが耳に入った。オーマン語で“怒り草”という意味だ。しかしながら、商用語を話すことができる数人の原住民たちは、それを乱暴に通訳して“ロコ草”と呼んでいた。


最終更新:2017年09月30日 09:30