ラリッサの日誌「テラー・バードの縄張り行動」

テラー・バードの縄張り行動
収穫月の第10日、CY593年
テラー・バードの一団に関して、私は島の東半島近くで研究を続けているところであり、今日、雄の群れがディメトロドンを追い払い、その獲物を横取りしているところを目撃した。この生き物は群れの縄張りである背の高い草の生える草原へと迷い込んで来て巨大サソリを倒したのである。あまり争った形跡もなく、その狩りはごく容易に行なわれたようである。しかしすぐに、その獲物を横取りするために執拗なスカベンジャー(清掃動物)であるテラー・バードが現れ、状況は変わった。
この背の高い鳥はかの捕食動物の周りをゆっくりと取り囲み、状況を観察していた。はじめ、ディメトロドンは彼らの存在に何の関心も抱いていなかったようで、時折近づきすぎた鳥をあしらいながら食事を続けていた。やがて、飛べない鳥類が自信を得ると、彼らは大いにその存在を示威し始めた―彼らはできる限り高く背伸びをし、頭部の羽毛を逆立てた。彼らは存在を示しながら前後に歩き、その胸部深くから低く共鳴するうなり声を上げていた。彼らの示威行動が食事中の捕食動物を威嚇することに失敗すると、何匹かが後ろ足をそいつの方に向け、そいつの顔に土を蹴り上げ始めた。この行動は、すぐにこの爬虫類の注意を惹くことになった。
不本意ながらもその獲物を諦め、ディメトロドンは後ろにぱっと飛びしさり、歯をむき出し、その攻撃者に大きな咆哮を浴びせ始めた。しかしこの威嚇は遅きに失しており、鳥たちは怒りに身を任せていた。挟撃態勢のテラー・バードたちがそいつの尾に噛みつき、ヒットエンドランを繰り返し、その攻撃目標を存分に苛立たせていた。それはあまり大した怪我を負わせてはいないようであったが、ディメトロドンは彼らを追い払おうとしてきりきり舞いさせられていた。この一瞬の隙をついて、別の鳥がすばやく突撃を行ない、その強力な嘴で突き刺し、素早く噛みついた。その瞬間、ディメトロドンは平衡を保とうとよろめいた。結局それで十分だったのだろう、その巨大なトカゲは獲物を放棄し、よたよたとした足取りで逃げて行った。その鳥たちは追跡を開始し、彼らの縄張りからその生き物を追い払いながら金切り声を上げていた。捕食動物の脅威がなくなると、ようやく彼らは、群れで待っている雛や雌たちのもとまで、半分食べかけのサソリを引きずって行った。
フラネスの他の地域では、これらの飛べない鳥たちはその地域における食物連鎖の最上位に位置する捕食動物であるが、ここでは、彼らは明らかに下層の清掃動物に過ぎない。もし彼らに数の力がなかったなら、確実にその巣を守ることなどできず、とうの昔にこの島から絶滅していたであろう。彼らはここの環境に合わせて的確に順応し、彼らが巣を作っている土地を脅かすほとんどの捕食動物を追い払う特筆すべき能力を示している。


最終更新:2017年09月30日 09:33