ラリッサの日誌「グリーンヴァイスの生理機能」

グリーンヴァイスの生理機能
善良月の第19日、CY593年
今日、私は最近恐竜の群れが踏み荒らしたらしい空き地を見つけた。その足跡は大きく重たげで、非常に大きな範囲が荒廃していた―ディプロドクスの群れか他の大きな草食動物によって付けられたもののようである。ここには攻撃者の足跡のしるしは見当たらず、おそらくこの大恐慌の原因は空からやって来たのであろうと推測される。
荒廃した地上の状況を調査しているとき、私は大きな植物、グリーンヴァイスを発見した。それはほとんど15フィートもの高さがあり、荒廃した地面に必然的に蹂躙されて倒れていた。いまだ、その巨大なハエトリソウのような口は激しくぴくぴくと動いており―見た目は、死してなお飢えているようである―突発的な出来事がその長い幹を薙ぎ倒したようで、その植物の巻きひげは小刻みに動きながら、何か木を振るわせるような音を立てていた。
グリーンヴァイスの喉として機能する茎のだいたい半ばから下、この植物が死ぬ前にその口を収縮する原因となった蠢く塊が見えていた。この食虫植物の内側にいる物が何であれ、それはまだ生きており、脱出しようともがいていた。その内側に捕らわれている何者かを解放してやろうとその茎を切り裂いたとき、かなりの抵抗にあった―グリーンヴァイスの分厚い茎は、熟したメロンよりもはるかに切り裂きにくいものだと判った。切れ込みから粘着質の泡が吹き出し、地面にじくじくと溢れ出し、多肉質植物の果汁を思い起こさせた―ただし、この樹液にはとてつもない悪臭が伴っていたが。
茎の内側には、その植物の消化器官へ向かって下向きに生えた棘が密生して列を成しており、そのように棘が並んでいるために、捕らえた獲物が口の方へ戻って脱出できないようになっている。相当大きなカエルが、棘の向こうから私を見つめており、私が切り開いた開口部へ辿り着こうと必死になって棘を越えようとしているのを見つけた。私はそれを落ち着かせようと話しかけたが、精神的ショックを大きく受けていたそれは、脱出することだけに全神経を集中していた。そのカエルが、元はグリーンヴァイスの移動力を作り出していた活性器官の1つを蹴りつけたのでしょう。その植物の巻きひげの1つが痙攣し、私の足を薙ぎ払って地面に釘付けにしてきた。
自由になろうともがいていると、強力な翼が羽ばたく音が聞こえ、2頭のワイヴァーンが犠牲者を探し回っている姿が目に入り、私はその場で身動きが取れなくなってしまった。その生き物たちこそ、あの大蹂躙の原因だったのだろう。彼らは再び大破壊をもたらすべく舞い戻ってきたのだ。直感的に、私は小型の蛇に姿を変え、ゆっくりと這いずりながらその人食い植物の茂みを抜け出し、捕食動物が去るのを待つための隠れ場所を探した。私の目の前で、その下級の竜たちはグリーンヴァイスを、カエルも植物も区別なく引き裂いた。少なくとも、あの哀れな生き物は長く苦しむことはなかっただろう。


最終更新:2017年09月30日 09:38