地理:サザリン市

Sasserine
サザリンの名は都市ではなく、1人の女性の名前として始まった。700年以上前、サザリンという名前のウィー・ジャスのクレリックが、海からは巨大な崖によって遮断され、陸地からは湯気を発する沼とジャングルによって切り離された、人里離れた入江について、とりわけ鮮明な夢を見て夜中に目覚めた。この幻像の中で、彼女は繁栄する都市と深紅の石でできた輝く尖塔を見守っており、ウィー・ジャスが予言を携えて彼女のところへやって来た事を知った。サザリンは彼女の従者たち―その中にはコード神の兵士にして信者であり、彼女の恋人であったテラクニアンが含まれていた―を呼び集め、その隠された入江を探す旅に出た。病気、事故、そしてモンスターたちが次々と彼らに襲いかかり、とうとう、サザリンの巡礼者たちは絶望に捕らえられた。ついに、彼らの人数が出発時の4分の1を下回るまでになったとき、この巡礼者たちは、2つの海岸沿いの崖によって囲まれた、肥沃な土と珍しい植物相を持つ大きな土地を発見した。サザリンはこの土地こそがまさに目指す土地であるとすぐに気づいたが、ウィー・ジャスはこの入江を縄張りとするブラック・ドラゴンの存在を警告してくれなかった。巡礼者たちが有り余るほどの植物に感謝を捧げ、彼らが新たな土地を見つけたという希望に胸を膨らませてからほんの数時間後、ドラゴンのゼルカルーンが攻撃を仕掛けてきた。この最後の試練に対して怒りを燃やしたサザリンはドラゴンに対して一歩も引かず、それを打倒した―が、それには厳しい代償を伴った。最後の一撃が繰り出されるのに対し、サザリンはゼルカルーンとテラクニアンの間に割って入った;その一撃は彼を打ちつける代わりに、ちょうど彼女が天空から火の矢を呼びおろしてドラゴンを撃ち殺した瞬間、彼女を打ち倒したのである。
それからの数日間、新たにテラクニアンをリーダーに選んだ生存者たちは、発見したこの新天地に作る町にサザリンの名前を冠することを誓った。-124CYのことであった。それから7世紀の時が過ぎ、サザリン市は南方世界における大いなる神秘の1つとして発展を遂げることになった。

サザリン概要

サザリン市はアメディオ・ジャングルの西端に位置しており、荒波から保護された港に寄り添うようにしてある。地上を通るルートは危険に満ちているため、ほとんどの旅人は船を使ってサザリン市を訪れる。海からは、サザリン市はあまり良く見えない;海岸線から突き出した2つの荒れた崖があるだけで、そこには海鷹やカモメが巣を作るだけで、他にはほとんど何も住んでいない。それからその崖にある大きな裂け目が徐々に見えてきて、その頂上部分にきわめて大きかったであろう石の橋の崩れた残骸がかかっている。かつては橋を支えていたのであろう、ゆっくりと侵食されている石の橋脚の間を船で通り過ぎると、旅人は大海原から商業、捕鯨、陰謀に繁栄する港へと入ることになる。きっとこの都市の匂いにあっと驚くことであろう―異国風の香辛料、煙、人いきれ、そして汚物の入り混じった物凄い大騒乱が、感覚器を襲ってくる。サザリン市では香水と香り付きロウソクが一般的な日用品である。
サザリン市は7つの地区に分かれており、それぞれに固有の個性がある。これらの地区は内壁、運河や川といったネットワーク、あるいは単に時代によって区分けされている。地区の間では友好的な競争関係が一般的に成立しており、特にフェスティバルのときにはそれが顕著であるが、サザリン市の市民たちは、相互に援助しあうことを躊躇ったりはしない。文明世界の辺境地帯に位置しており、サザリン市はしばしば(もしかするといつも)陸と海からの襲撃に晒されている;深紅の艦隊の海賊たち、緋色団の海軍、周辺の沼地に生息する蛙に似たブリーワグたち、そして近くの山岳地からのオーガや巨人たちの略奪隊といったもののために、この都市は常に警戒態勢にあるが、この極めて自尊心の高い都市は一度だけ敵の手に落ちたことがあるが、そのときでさえ、この都市の最も悪名高い裏切り者の手引きがあったためである。
サザリン(大きな都市)
伝統的
属性 中立にして善
人口 15,650人
混成状態(77%人間、6%ハーフエルフ、5%ハーフリング、4%ノーム、4%ドワーフ、2%エルフ、1%ハーフオーク、1%その他)

サザリン市の歴史

-124CYの設立から150年間、サザリン市は驚くべき成長を成し遂げた。30CYには、サザリン市は悪名高い緋色団の暗殺者たちと奴隷商人たちとの最初の戦争に巻き込まれた。緋色団のウィザードとクレリックたちはテラクニアンのアーチ橋として知られる石造の橋を破壊し、防御側が攻撃を撃退する前に海岸通りの大部分を焼き払った。それからの4世紀以上の間、サザリン市は、守護しているコーヒーや香辛料の広大な荘園に引き寄せられた緋色団、大王国、地元の巨人やブリーワグたちの部族による数え切れないほどの襲撃を10年に1~2回ずつ被ってきた。そうした襲撃によって、サザリン市の兵士たちは都市防衛に熟練してきた。テラクニアンのアーチ橋は十数回近く再建と破壊を繰り返してきた。最終的にこの橋は完全に放棄されることが決定され、唯一残された戦時の傷跡として、その廃墟のままに残されている。
長年の間、テラクニアンに連なる血族の市長が、ウィー・ジャス神とコード神の教会の助言を受けながらサザリン市を支配してきた。480CYの年には、オーレン・テラクニアンがこの市を支配していた。この数世紀の中で初めて、ウィー・ジャス教会が悪魔崇拝のでっち上げの告訴を受けてその信者が逮捕、監禁、さらに処刑までされた時に、その権力が剥奪された。オーレンの支配が耐え難いものになったちょうどその時、大きな艦隊がやって来た―北方のシー・プリンス国の代表団であった。オーレンの残酷な支配を終わらせるという約束を携えたこの侵略者たちは、内部の反乱者たちによる内応を得てこの都市を襲撃した。オーレン・テラクニアン政権は転覆させられ、シー・プリンス国がサザリン市の支配者であることを宣言した。そして1世紀以上に渡って、サザリン市の資源は収奪された。シー・プリンス国はサザリン市を外の世界から秘密にし続け、彼らが見つけられる限りの関連文献を破壊することで、侵略者たちからこの価値ある港を隠し続けようと企図した。世界中の地図製作ギルドや図書館にはスパイが侵入し、魔法で地図や海図を改ざんした。この都市への航路を知る船長たちは買収されるか殺害されるかした。サザリン市はこの100年をじっと耐え忍んできたが、この都市の市民の魂の奥底に潜んだ魂は死んではいなかった。
ついに彼らの祈りは、緋色団がシー・プリンスの支配者たちのほとんど全員を暗殺した584CYに1つの答えを得た。その結果起こった動乱はサザリン市を混乱に陥れた。本土の支援をなくしたこの都市のリーダーたちは、2週間のうちに打倒された。
解放されてから10年、サザリン市の人々は驚異的な熱意を持って都市を再建したが、まだ彼らの海軍の再興、北方の土地との交易路の再確立、そして仲違いしたままのコード神とウィー・ジャス神の教会の関係の修復といった問題に取り組んでいる。姉妹都市であるコールドロン市(最近そこはそこ自身の災厄を切り抜けた)で起こった出来事によって急速な発展を遂げ、サザリン市は栄光の絶頂に立っているように見える。

サザリン市の市民と敵

サザリン市はそれらをまとめて暁の評議会として知られる7つの貴族家による評議会によって支配されている。市民による投票ですべての決定を下すことは難しく、そこで投票の結果、貴族の間で指名された代議士が、暁の評議会で統治権を握る形を取っている。
交易路が再確立されるにしたがって、昔のように都市の財源に資金が流入するようになり、最近シー・プリンス国から解放されてそのまま持ち逃げした資金によっても充填された。サザリン市のファッションはボロから豪華なものまでさまざまだが、この暖かく湿度の高い都市において、すべての階級において共通する事柄は、薄着であるという点である。公衆の面前で裸になることは一般的に眉を顰められるような事だが、想像力を掻き立てるような服装はかなり一般的である(良くも悪くも)。
100年の抑圧の後、サザリン市の法は、ついに市民を束縛することを放棄した。殺人、放火、国家への反逆、強姦、窃盗、そしてその他の暴力的犯罪や破壊的犯罪は今でも違法であり、サザリン市の市警によって厳格に処罰されるが、より軽度な犯罪(麻薬取引、売春、賭博、浮浪生活、そしてそれらに類するような犯罪)は制限されていない。サザリン市へやって来る多くの者が、まさしくそうした、彼らの悪習を官憲の追及を受ける恐れなく続けることができるという理由でやって来る。いくつかの公的な集団(特に聖カスバート教会)は、より保守的な習慣を回復するように市警たちを駆り立てようと躍起になっているが、今は訪問者たちによってもたらされる収入と、最近までの抑圧の記憶とによって、この都市の大衆の大部分は何でも受け入れる広い心を持ち続けている。
サザリン市の7つの地区それぞれを代表しているものには、指名された貴族だけではなく、同盟する教会も存在する。伝統的には、サザリン市の7つの教会は互いに仲良くやってきているのだが、不幸なことに、過去100年間で彼らの間に甚だしい緊張関係がもたらされている。特に、ウィー・ジャスとコードの信者の間が悪くなっている。オーレン・テラクニアンの支配する時代にこれらの教会の間で形成された疑いと憎しみによる仲違いは、今日でも存在している。残る4つの主要な宗教にはオリダマラ(ウォーガルという名前の商人の架空のパトロン聖人のふりをしている)、ペイロア、ファラングン、そして聖カスバートがある。最後の教会は実際には3柱の海の神々を合祀する教会である:オスプレム、プロカン、そしてゼルボである。それぞれが異なる神々を祭るより小さな社がサザリン市には数多く見受けられるが、これらの社に50人以上の会衆が集まることは稀である。この都市の闇の部分には僅かながら悪の宗教も活動している―2つの最も重要なものとしては、歴史学者ギルドを隠れ蓑としているヴェクナの秘密のカルト教団、そしてこの都市の南の荘園にある屋敷の1つの地下に隠されたかなり大きなネラルの寺院である。
緋色団は伝統的にこの都市の敵であったが、時代は変わりつつあるようである。アンテキ・アルレシアンという名前の外交官のモンクが、サザリン市で緋色団を代表してやって来ている。アンテキのやり方は緋色団としてはやや変わっている―彼は自らが忠誠を捧げる相手をおおっぴらに認めており、彼の下に仕える者たちにも同様の対応を求めている。その一方で、サザリン市への緋色団の計画は秘匿されたままで、おそらくはこの人好きのする外交官に対してすら隠されたままである。

青空地区

闘士地区

棍棒地区

商人地区

貴族地区

暗闇海岸

旭区



最終更新:2017年03月08日 22:34